君の声が聞きたい

梔子

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1話

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「これから隣の席の人とレポートの感想を交換してもらいます。」
国語教師がめんどくさいことを言い始めた。するなら席替えの前にしてくれよ。
席替えは昨日行われたばかりで、慣れた面子とはばらけてしまった。特別仲良かったわけではないが、慣れてしまっていたので、ただ、楽だった。
「おっおい、これ俺のレポート」
レポートをぎこちなく昨日隣の席になったばかりの遠坂一葉とおさかかずは に手渡した。
遠坂はそれを一切の音を立てずにそっと受け取る。
そうして、少し体を横に向け、自分のレポートを俺の机に置いたと思ったらすぐに、正面に向き直った。
遠坂一葉。長い前髪に、ひどい猫背、おまけに声なんて一度も聞いたことがない。まず、声を発さない。
だからって俺に被害がなければ、人の見た目にどうこう言う気はないけど、隣の席になったが故に、少なからず関わらなければならない。
今みたいに。
内容は相手のレポートを読んで参考になったことなどの感想を書けというものだった。
まあこういうのは、適当に、末尾に参考になりました。って書いとけばいいもんだ。
2分足らずで書き終えて遠坂の方を見る。遠坂はすでに書き終えているようで、手を膝に置き相変わらずの猫背で下を向いていた。
書き終えるの早いな。俺もかなり早く書いた方なのに。
「俺、書けたから。これ。」
そういって遠坂の机の上に感想が書かれた紙を置いた。遠坂も同じように俺の机に置く。
とりあえず遠坂が書いた俺のレポートの感想でも読むか。暇だし。

え、、、遠坂の感想文を見た瞬間びっくりした。そこには感想が丁寧にびっしりと綴られていて、隣でずっと下を向いている奴が書いたとは思えない文章だった。
「すごいな。こんな短時間でこんなに書けるなんて、」
と、思わず話しかける
、、、無視か、。だよな。話しかけて話すような相手じゃないぐらいは知っている。
遠坂の方を向いていた首を正面に戻しかけた時、
その瞬間だった。すごい勢いで目の前に、一枚の紙が差し出された。俺の感想文の裏のようだ。
そこには〃ありがと〃と書かれている。
....これは俺の言葉に対して反応ってことなのか?
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