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第十一章 支える者たち
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それから一年後の、早春。
ワクは三十四歳になっていました。
食料品店で買い物のついでに、主人と世間話をしていると、戸口に一人の老人が入ってきました。ふと目をやった主人が、
「ああ、オジジ!」
相好を崩します。
「やあ、しばらくじゃったな。」
優しげに目を細めながら答えた老人は、真っ白な髪と無精ひげを蓄えた、立派に老人と言えるような風貌ではありましたが、その動きはかくしゃくとしていました。
「またしばらくいてくれるかね。」
「そうだね。しばらくお世話になるよ。かすみ荘はまだやっているかの? カイジは帰ってきたかの?」
「ああ、コハルは元気にやっているよ。カイジは結局帰ってこないで、今はこの若いのが、コハルと一緒に宿を切り盛りしているんですわ。」
「ほう。」
「ワクと言います。よろしくお願いします。」
「こちらこそ。かすみ荘にはこれまで何度も厄介になってな。コハルさんにもたんと世話になった。」
「で、カアサもご一緒ですかい?」
「ああ。今、かすみ荘の方へ先に行っておる。」
「そりゃいい。コハルも喜んでいるだろう。」
「今回はもう一人、若いのを連れておるでの、また今度紹介させてもらうよ。」
「へー、そりゃ。今回はどのくらい滞在の予定で?」
「そうだな、はっきりは決めておらんが…。わしもカアサも、もう若くないからな、そろそろ定住も考え始めにゃならんと思っとるところさな。」
「何を言っているか! そんな元気な様子で。」
そこへ奥さんも出てきて、
「まあ、オジジさん! お久しぶり!」
「やあ、あんたも元気そうで。」
「ええ、ええ、元気過ぎますとも! カアサは? 宿の方?」
「ああ。」
「あとで顔見に行くわ。ああ楽しみ!」
オジジと一緒にかすみ荘へ戻ると、コハルは忙しく客の世話を焼いていました。カアサという女性とゆっくり話したいだろうと思い、ワクは客の応対を一手に引き受けました。
「ありがとう。じゃ、ちょっとだけ。何しろ久しぶりだもので!」
コハルも心なしかウキウキしています。
オジジと一緒に、奥の大部屋へと入って行きました。
二人はよほど慕われているようです。たしかに、オジジという人は、少し接しただけですが、その穏やかさ、聡明さ、温かさは十分に感じ取れました。カアサという人もそうなのでしょう。
それにしても、オジジとカアサとは変わった名前だな、と思っていると、後でコハルから、「あら、もちろんあだ名よ。」と笑われました。ただ、本名はコハルも覚えていないそうです…。
オジジたちがかすみ荘に来てから数日後の夜。
ワクとコハルが夕食の後片づけを終え、コマリと三人でしばしゆっくりしているとき、オジジの一行の中の若者が、ワクたちの部屋を訪ねてきました。
「あの…。」
入口の戸の影から、蚊の鳴くような声がします。最初はコマリのはしゃぎ声にかき消されて聞こえませんでした。
「あの、すみません…。」
「あ? だれか来たか?」
「そう?」
戸を開けると、若者が、申し訳なさそうにポツンと立っています。色白で眼鏡をかけ、その視線はあちこちに泳いでいます。いかにも気の弱そうな青年です。
「はい、あ、お客さん、どうも。ミイルさんとおっしゃいましたね。どうされました? 何かご入用でも?」
ワクが話しかけると、いよいよ決まり悪そうに、
「すみません、あの、すみませんが、ちょっとだけ、あの、お話しが、いえ、あの、すみませんです、お願い、というか、すみません、本当に…。」
すみませんを連発します。
「あ、何か足りないものがありました? あ、夕食が物足りなかったとか? それか、布団が湿っている?」
「いえいえ、と、とんでもありません。そんなことは決して。すみません…。」
「?」
「そういうんじゃなくて、あの、ちょっと、お願いごとがありまして。いえ、お願いというか、ご相談というか。」
「はあ。どんなことでしょう。」
もじもじする青年を部屋の中へ招き入れ、少しずつ聞き出したことには――。
自分とオジジ、カアサは、「お助け団」というグループ名で活動をしている。この町を一端とし、片やここから歩いて三年ほどのところにある村をもう一方の端として、その間をおそよ六年かけて往復している。「お助け団」は、旅先で出会う、困りごとを抱えた人たちを何かと手助けすることを旨としている。代金はもらわないので、ボランティアのようなものだが。もっとも自分はまだ見習いのようなものだけれども。
「そうね、前回オジジたちがここにお泊りになったのは、だいたい六年くらい前だわ。ワクが来るほんの少し前だから。」
「そうですか。その頃は僕はまだいませんでしたが、四年くらい前にオジジさんたちに拾われて、それからご一緒しているんです。ですからこの町は初めてなんですけれど。」
「ふうん、大した活動をしているもんだなぁ。すげえや。」
「いやあ、そんな。ボクはホントに大したことをしていなくて…。」
ようやく慣れてきて、思っていることを少しはスムーズに口に出せるようになってきたようです。
「で? 相談事というのは何だい?」
「はい、実は…。」
青年の話によると――。
この町に来てすぐに、食料品店の主人からオジジが相談を受けた。主人の姪――正確には奥さんの姪であるアミについてである。もう二十三になるが、店を継ぐでもなく、他の仕事をするでもなく、結婚するでもなく、ほとんど家にこもって暮らしている。何とかならないか、とのこと。
「ちょっと待て。あの子、アミちゃんというのか。娘じゃなくて姪っ子なのか? 俺がこの町へ来たときからもうあの家に住んでいたが。店を継ぐって?」
「それは私が説明するわ。」
コハルが事情を説明してくれました。アミはあの奥さんの姉夫婦の子供だが、もう十年以上も前に、夫婦が事故で亡くなったため、妹夫婦であるあの夫妻が引き取って育てている。アミのお父さんにあたる人はこの地方では少しだけ名の売れた歌い手だったが、アミもその血を引いたのだろう、歌や楽器が得意な芸術家肌である。叔父夫婦とはごく仲が良く、夫婦に子供がいないこともあって、アミのことを本当の娘のように可愛がっているようで、家族仲に特に問題はないが、アミは、愛情を持って育ててくれた叔父夫婦の店を継ぐのが務めだろうという思いと、芸術方面へ進みたいという思いとの間で悩み、結果、何もせず家にこもったような生活になってしまっているという。
「そんな事情があったのか。今まであの子と話す機会もなかったし、おやっさんも進んで話したがらなかったからな。今までよく知らなかったよ。」
「そうね。」
「そうなのですね。…それで、ご主人からオジジさんへ相談があって。」
「で、どうするんだ?」
「ご主人と奥さんは、何もアミさんに店を無理やり継いでもらわなくてもよいと考えていらっしゃるそうで。それよりも、彼女が自分を虐めるような生活をやめて、生き生きと好きなことをして暮らせるようになってほしい、と。」
「なるほど。」
「そこで、オジジさんが考えたのは、今度の春祭りでアミさんが歌を披露するようにお膳立てする、ということなんです。…というか、僕がオジジさんに提案したのですが…。」
と言って青年は、恥ずかしそうに下を向きました。
「まずは何かしら世間の人との交流を持たないと、と思って。」
「そうだが、でも、交流なら、まずは何か、店の手伝いをするとか、そういうところからじゃねえか? いきなり皆の前で歌うって。」
「それが、僕も何度か会ったんですが、あまり地味な仕事に向いている性質ではないな、と確かに思うんです。」
「なんだ、怠け者なのか?」
「いや、そうじゃなくって。なんと言うか…。」
「私は分かるわ。子供のころからのアーちゃんを知っているから。あの子は舞台の上で皆からの喝采を受けて立ち直るタイプかも。派手好き、とか目立ちたがり屋、というのとも違うけれど。生まれつきのスター気質というか。賞賛を受けてやっと自分を許せる、というか。」
「へー、なんだか難しい性格だな。そんな風に見えなかったけどな、ちらっと見た限りでは。こう、地味ぃな感じでよ。」
「そうね、最近はこもってばかりだから…。」
「で、肝心の歌は上手いのか?」
「それは私が保証するわ。でも、この町の人でも、あの子の歌を聞いたことがある人はわずかだと思う。だからたしかにいい考えね。」
「なるほどな。お前が考えたのか?」
宿泊客を、すでにお前呼ばわりしているワクです。
「は、はい…。」
真っ赤な顔でうつむきます。
「じゃあ、あとは本人の気持ちだな。本人にやる気がなきゃ、どうしようもねえ。」
「ええ、それはカアサさんが。」
「ああ、カアサが乗り出してくれれば、アーちゃんもその気になるかもね。」
「すごいな、カアサって人は。」
「ええ、私たちの心の母なの。」
俺の心の母はお前だよ、コハル、とワクは心の中でひとりごちて、一人勝手に照れていました。
「で、俺たちに相談って、何だよ?」
「ああ、ご主人にお願いが。」
ご主人と呼ばれて、ドキッするとワクです。ときどき宿泊客からご主人と呼ばれることがあります。が、そのたびごとにちょっと気恥ずかしい思いをする、ウブなワクでした。
「な、何だい?」
「アミさんの立つ舞台を用意したいのですが、彼女のためだけに用意した舞台ではあまりに大げさなので、もっとさりげなく、もともとあった舞台の企画のひとつとしてアミさんも出る、くらいにしたいのです。」
「へえ。よく考えるもんだな。それもお前の考えなのかい?」
ワクには、その発想の繊細さが新鮮でした。
「はい。」
「大したもんだな。」
「いえ、そんな。」
「分かった。舞台の企画を祭りに取り入れることは、そう難しいこっちゃないだろうな。シンさんに話してみよう。」
シンさんというのは、三軒隣りに住む、ワクより三つ四つほど年上のシンジロウという男性で、さしずめ若者組のリーダーのような存在でした。春祭りにおいても中核メンバーのひとりですし、町伝統の太鼓のたたき手のひとりでもあり、祭りでも太鼓舞台に出演する予定です。
ワクは久しぶりに、心がワクワクするのを感じていました。日常的な幸せも良いものですが、こうした企画ものには、やはり心躍るものがありました。ワクの面目躍如といったところでしょうか。
それにしても、ミイルもかなり変わった名前だとワクは思いました。
「変わった名前だな? あだ名かい?」
後日ワクが聞くと、さすがにややムッとしたように、
「ボクの生まれ育った地域では、ごくありふれた名前なんです。」
と答えました。
いったいどんな風にしたのか、カアサの説得によってアミは「出演」の話をのみました。
一方、ワクはシンジロウと相談し、祭りの一角に舞台を設えること、その舞台で色々な催しを行い、そのひとつにアミの歌も盛り込むことを決めました。そしてワクは、その舞台関連の責任者になったのでした。
事前打ち合わせのために、アミがワクのもとを訪れました。
これまで何度か、食料品店の店先で見かけたことはありますが、ちゃんと話をするのはこれが初めてです。
「こんにちは。どうぞよろしくお願いします。」
思ったよりハキハキした、礼儀正しい娘です。引きこもりめいた生活をしていている雰囲気もありませんし、派手な芸術家タイプにも見えません。ただ、長い黒髪と、色がとても白いのが印象的でした。
「歌はどんな歌でもよいのですか?」
「ああ、アミちゃんが普段歌っている、得意な歌を何曲かお願いしたいな。」
「私が作ったオリジナルですけど…。」
「いいじゃねえか。」
かすかに笑った顔がとても魅力的でした。
お茶を運んできたコハルが、
「ありのままのアーちゃんを見せれば、町の人みんなきっとアーちゃんの魅力に驚くわ。」
「やだ、コハル姉ちゃん…。」
「ちょっと歌って聞かせてくれよ。」
「ここで? 恥ずかしい!」
「いいじゃねえか。」
「分かったわ。」
一旦家へ戻って、楽器を持参したアミ。それは、この地方の伝統的楽器である、竪琴でした。
物悲しいような、慰めるような絶妙な音色に、アミの澄んだ歌声が乗ります。それは、聞いたものが思わず引き込まれて、夢見心地になってしまうような歌声でした。これはいける! うまくすれば、祭りの一番の目玉になる。ワクはそう思いました。
それからワクは、宿の仕事と並行して、祭りの舞台の準備で大忙しでした。いや、本当を言うと、宿の仕事は大部分コハルに任せて、舞台の準備にかまけていたと言うべきでしょう。舞台の、アミ以外の出し物の手配。舞台の設備自体の手配。ワクは例によって、ワクワクし通しでした。
そして当日。
町の一番の大通りに、祭りの飾り付けが施され、町の住人の九割方は着飾ってこの大通りを訪れます。以前参加させてもらったコウサクの村の祭りのように、神輿があるわけではなく、この大通りの出店と、シンジロウたちの太鼓が目玉なくらいで、どちらかというと地味な祭りなのですが、この町の人々は年一回のこの祭りをたいそう楽しみにしているのです。ワク自身もこの数年、毎年祭りを楽しんでいましたが、今年は特に深い関わりを持つことになりました。
舞台の催しものも順調に進んでいます。落語、寸劇、合唱、さまざまな出し物が観客から拍手喝采を受けています。出演者も観客も、みんな一様に楽しそうです。ワクもとても楽しいときを過ごしました。その隣には、コハルとコマリ。ワクはコハルの肩を横からぎゅっと抱き、時々顔を見合わせます。そして舞台がよく見えないというコマリを肩車しました。
アミの出番が回ってきました。薄い水色に染めた絹を身体に巻いて、普段より濃いめ、きつめの化粧を施したアミ。ワクは一目見て、思わずため息を漏らしました。美しい――。女性は化粧や衣装でこうも印象が変わるものでしょうか。いや、アミの場合は特に、舞台でたくさんの人に注目されることでより輝くのかもしれない、と思いました。そこにアミの天性の才能を見た気がしました。
少し向こうでは、オジジ、カアサ、ミイルもアミの晴れ姿を見つめています。
歌が始まると、周囲が一瞬でシン、となります。憂いを帯びたような、それでいて聴くものを楽園にいざなうような透明な歌声。だれもがその虜になっているのが感じられました。歌の間、その周辺だけが別世界に引き込まれたような空気に包まれました。
終わると、割れんばかりの拍手。といっても、観客はせいぜい二、三十人なのですが。
その二、三十人ばかりの観客は、アンコールを繰り返し、ひとしきりアンコールが終わると、今度は、太鼓との共演を要求し始めました。
「太鼓と一緒に歌ってくれ!」
「そうだそうだ、太鼓と一緒に!」
「太鼓、太鼓、タ・イ・コ、タ・イ・コ!」
数人が舞台に上がり、アミの手を引きます。そのまま舞台から下ろし、離れた一角で太鼓演奏をしているシンジロウ達のところへ連れて行きます。
アミは戸惑った表情のまま、引かれるままに走ります。観客たちは、アミについて、太鼓の舞台へと移動していきました。
シンジロウたちは、ちょうど休憩時間で、座ってくつろいでいましたが、集団がわあわあ騒ぎながら駆けてくるのを見てびっくり。思わず立ち上がると、そこへ到着するアミ。
「共演! キョ・ウ・エン、キョ・ウ・エン!」
思わずアミを見つめるシンジロウ。アミは申し訳なさそうな顔で微笑みながら、頭を下げます。事情を察したシンジロウは、黙ってうなずき、静かな音で即席のリズムを奏で始めました。そこへアミが、竪琴の音と歌声をのせます。
その流麗なことと言ったら!
祭り太鼓と竪琴と女性の歌声。言ってみれば他流試合のようなものです。ですがその融合は、見事に人の心を掴む芸術になりました。心を洗われるような、どこか原始の記憶を呼び覚ますような旋律とリズム。観客の半分はポカンと口を開けて聞き入り、残りの半分は――泣いていました。
コハルは、ワクの腕にしがみつきながら泣いていました。コマリも、子供なりに感じるものがあったようで、やはりじっと聞き入っていました。オジジ、カアサ、ミイルも、それから、いつの間に来ていたのか、カイ先生夫妻も、やはり聞き入っていました。けれど、一番感動していたのは、食料品屋の夫妻でした。その涙は、愛する娘の幸せを願う、親の涙でした。
「お助け団」の一行は、その数週間後、かすみ荘を発って行きました。そこにはなんと、アミが同行することとなりました。
アミはあの祭りの夜の後、叔母夫婦と話し合い、食料品店を継ぐ必要はないことを改めてはっきりと、叔父叔母の口から聞きました。そこで自分のこれからを考えたときに、頭に浮かんだのは、「お助け団」の一員として旅をし、自分の音楽を活かして人助けをすることができないか、ということでした。オジジやカアサも、これは大歓迎です。ミイルも、顔には出しませんがとても喜んでいました。
出発の朝。かすみ荘の玄関前。
食料品店の主人はアミに言いました。
「淋しくなるな。これでもうこいつと二人きりだ。」
「二人きりで悪かったわね!」
アミは口に手を当てて、あはははと笑っています。あの日から、アミは少しずつ明るくなっていました。
「六年たったらまた戻ってくるんじゃないの。なにも永遠の別れじゃあるまいし。」
「六年なんて、気の遠くなりそうな…はぁ!」
ただ、その場の空気には、別れの淋しさだけでなく、将来への希望も確かに混ざっていました。
「オジジ、カアサ、どうかこの子をよろしく。」
「ああ、任せておくれ。大丈夫じゃ。この子は旅に向いとるでの。」
ワクには、あの舞台上のアミと、今目の前にいるアミが、どうしても同一人物のように思えませんでした。舞台上で輝く人種というものはこういうものかと感心ひとしおでした。
「では、皆さん、ご無礼いたします。」
「さようなら。」
「ワクさん、コハルさん、お元気で。本当にお世話になりました。」
と、これはミイル。
「コハル姉ちゃん、ワクさんとお幸せにね。今度こそ。」
これはアミ。コハルはアミを軽く睨みつけてから、ワクを見て優しく笑いました。
皆は「お助け団」一行が見えなくなるまで、玄関先で見送っていました。
ワクは三十四歳になっていました。
食料品店で買い物のついでに、主人と世間話をしていると、戸口に一人の老人が入ってきました。ふと目をやった主人が、
「ああ、オジジ!」
相好を崩します。
「やあ、しばらくじゃったな。」
優しげに目を細めながら答えた老人は、真っ白な髪と無精ひげを蓄えた、立派に老人と言えるような風貌ではありましたが、その動きはかくしゃくとしていました。
「またしばらくいてくれるかね。」
「そうだね。しばらくお世話になるよ。かすみ荘はまだやっているかの? カイジは帰ってきたかの?」
「ああ、コハルは元気にやっているよ。カイジは結局帰ってこないで、今はこの若いのが、コハルと一緒に宿を切り盛りしているんですわ。」
「ほう。」
「ワクと言います。よろしくお願いします。」
「こちらこそ。かすみ荘にはこれまで何度も厄介になってな。コハルさんにもたんと世話になった。」
「で、カアサもご一緒ですかい?」
「ああ。今、かすみ荘の方へ先に行っておる。」
「そりゃいい。コハルも喜んでいるだろう。」
「今回はもう一人、若いのを連れておるでの、また今度紹介させてもらうよ。」
「へー、そりゃ。今回はどのくらい滞在の予定で?」
「そうだな、はっきりは決めておらんが…。わしもカアサも、もう若くないからな、そろそろ定住も考え始めにゃならんと思っとるところさな。」
「何を言っているか! そんな元気な様子で。」
そこへ奥さんも出てきて、
「まあ、オジジさん! お久しぶり!」
「やあ、あんたも元気そうで。」
「ええ、ええ、元気過ぎますとも! カアサは? 宿の方?」
「ああ。」
「あとで顔見に行くわ。ああ楽しみ!」
オジジと一緒にかすみ荘へ戻ると、コハルは忙しく客の世話を焼いていました。カアサという女性とゆっくり話したいだろうと思い、ワクは客の応対を一手に引き受けました。
「ありがとう。じゃ、ちょっとだけ。何しろ久しぶりだもので!」
コハルも心なしかウキウキしています。
オジジと一緒に、奥の大部屋へと入って行きました。
二人はよほど慕われているようです。たしかに、オジジという人は、少し接しただけですが、その穏やかさ、聡明さ、温かさは十分に感じ取れました。カアサという人もそうなのでしょう。
それにしても、オジジとカアサとは変わった名前だな、と思っていると、後でコハルから、「あら、もちろんあだ名よ。」と笑われました。ただ、本名はコハルも覚えていないそうです…。
オジジたちがかすみ荘に来てから数日後の夜。
ワクとコハルが夕食の後片づけを終え、コマリと三人でしばしゆっくりしているとき、オジジの一行の中の若者が、ワクたちの部屋を訪ねてきました。
「あの…。」
入口の戸の影から、蚊の鳴くような声がします。最初はコマリのはしゃぎ声にかき消されて聞こえませんでした。
「あの、すみません…。」
「あ? だれか来たか?」
「そう?」
戸を開けると、若者が、申し訳なさそうにポツンと立っています。色白で眼鏡をかけ、その視線はあちこちに泳いでいます。いかにも気の弱そうな青年です。
「はい、あ、お客さん、どうも。ミイルさんとおっしゃいましたね。どうされました? 何かご入用でも?」
ワクが話しかけると、いよいよ決まり悪そうに、
「すみません、あの、すみませんが、ちょっとだけ、あの、お話しが、いえ、あの、すみませんです、お願い、というか、すみません、本当に…。」
すみませんを連発します。
「あ、何か足りないものがありました? あ、夕食が物足りなかったとか? それか、布団が湿っている?」
「いえいえ、と、とんでもありません。そんなことは決して。すみません…。」
「?」
「そういうんじゃなくて、あの、ちょっと、お願いごとがありまして。いえ、お願いというか、ご相談というか。」
「はあ。どんなことでしょう。」
もじもじする青年を部屋の中へ招き入れ、少しずつ聞き出したことには――。
自分とオジジ、カアサは、「お助け団」というグループ名で活動をしている。この町を一端とし、片やここから歩いて三年ほどのところにある村をもう一方の端として、その間をおそよ六年かけて往復している。「お助け団」は、旅先で出会う、困りごとを抱えた人たちを何かと手助けすることを旨としている。代金はもらわないので、ボランティアのようなものだが。もっとも自分はまだ見習いのようなものだけれども。
「そうね、前回オジジたちがここにお泊りになったのは、だいたい六年くらい前だわ。ワクが来るほんの少し前だから。」
「そうですか。その頃は僕はまだいませんでしたが、四年くらい前にオジジさんたちに拾われて、それからご一緒しているんです。ですからこの町は初めてなんですけれど。」
「ふうん、大した活動をしているもんだなぁ。すげえや。」
「いやあ、そんな。ボクはホントに大したことをしていなくて…。」
ようやく慣れてきて、思っていることを少しはスムーズに口に出せるようになってきたようです。
「で? 相談事というのは何だい?」
「はい、実は…。」
青年の話によると――。
この町に来てすぐに、食料品店の主人からオジジが相談を受けた。主人の姪――正確には奥さんの姪であるアミについてである。もう二十三になるが、店を継ぐでもなく、他の仕事をするでもなく、結婚するでもなく、ほとんど家にこもって暮らしている。何とかならないか、とのこと。
「ちょっと待て。あの子、アミちゃんというのか。娘じゃなくて姪っ子なのか? 俺がこの町へ来たときからもうあの家に住んでいたが。店を継ぐって?」
「それは私が説明するわ。」
コハルが事情を説明してくれました。アミはあの奥さんの姉夫婦の子供だが、もう十年以上も前に、夫婦が事故で亡くなったため、妹夫婦であるあの夫妻が引き取って育てている。アミのお父さんにあたる人はこの地方では少しだけ名の売れた歌い手だったが、アミもその血を引いたのだろう、歌や楽器が得意な芸術家肌である。叔父夫婦とはごく仲が良く、夫婦に子供がいないこともあって、アミのことを本当の娘のように可愛がっているようで、家族仲に特に問題はないが、アミは、愛情を持って育ててくれた叔父夫婦の店を継ぐのが務めだろうという思いと、芸術方面へ進みたいという思いとの間で悩み、結果、何もせず家にこもったような生活になってしまっているという。
「そんな事情があったのか。今まであの子と話す機会もなかったし、おやっさんも進んで話したがらなかったからな。今までよく知らなかったよ。」
「そうね。」
「そうなのですね。…それで、ご主人からオジジさんへ相談があって。」
「で、どうするんだ?」
「ご主人と奥さんは、何もアミさんに店を無理やり継いでもらわなくてもよいと考えていらっしゃるそうで。それよりも、彼女が自分を虐めるような生活をやめて、生き生きと好きなことをして暮らせるようになってほしい、と。」
「なるほど。」
「そこで、オジジさんが考えたのは、今度の春祭りでアミさんが歌を披露するようにお膳立てする、ということなんです。…というか、僕がオジジさんに提案したのですが…。」
と言って青年は、恥ずかしそうに下を向きました。
「まずは何かしら世間の人との交流を持たないと、と思って。」
「そうだが、でも、交流なら、まずは何か、店の手伝いをするとか、そういうところからじゃねえか? いきなり皆の前で歌うって。」
「それが、僕も何度か会ったんですが、あまり地味な仕事に向いている性質ではないな、と確かに思うんです。」
「なんだ、怠け者なのか?」
「いや、そうじゃなくって。なんと言うか…。」
「私は分かるわ。子供のころからのアーちゃんを知っているから。あの子は舞台の上で皆からの喝采を受けて立ち直るタイプかも。派手好き、とか目立ちたがり屋、というのとも違うけれど。生まれつきのスター気質というか。賞賛を受けてやっと自分を許せる、というか。」
「へー、なんだか難しい性格だな。そんな風に見えなかったけどな、ちらっと見た限りでは。こう、地味ぃな感じでよ。」
「そうね、最近はこもってばかりだから…。」
「で、肝心の歌は上手いのか?」
「それは私が保証するわ。でも、この町の人でも、あの子の歌を聞いたことがある人はわずかだと思う。だからたしかにいい考えね。」
「なるほどな。お前が考えたのか?」
宿泊客を、すでにお前呼ばわりしているワクです。
「は、はい…。」
真っ赤な顔でうつむきます。
「じゃあ、あとは本人の気持ちだな。本人にやる気がなきゃ、どうしようもねえ。」
「ええ、それはカアサさんが。」
「ああ、カアサが乗り出してくれれば、アーちゃんもその気になるかもね。」
「すごいな、カアサって人は。」
「ええ、私たちの心の母なの。」
俺の心の母はお前だよ、コハル、とワクは心の中でひとりごちて、一人勝手に照れていました。
「で、俺たちに相談って、何だよ?」
「ああ、ご主人にお願いが。」
ご主人と呼ばれて、ドキッするとワクです。ときどき宿泊客からご主人と呼ばれることがあります。が、そのたびごとにちょっと気恥ずかしい思いをする、ウブなワクでした。
「な、何だい?」
「アミさんの立つ舞台を用意したいのですが、彼女のためだけに用意した舞台ではあまりに大げさなので、もっとさりげなく、もともとあった舞台の企画のひとつとしてアミさんも出る、くらいにしたいのです。」
「へえ。よく考えるもんだな。それもお前の考えなのかい?」
ワクには、その発想の繊細さが新鮮でした。
「はい。」
「大したもんだな。」
「いえ、そんな。」
「分かった。舞台の企画を祭りに取り入れることは、そう難しいこっちゃないだろうな。シンさんに話してみよう。」
シンさんというのは、三軒隣りに住む、ワクより三つ四つほど年上のシンジロウという男性で、さしずめ若者組のリーダーのような存在でした。春祭りにおいても中核メンバーのひとりですし、町伝統の太鼓のたたき手のひとりでもあり、祭りでも太鼓舞台に出演する予定です。
ワクは久しぶりに、心がワクワクするのを感じていました。日常的な幸せも良いものですが、こうした企画ものには、やはり心躍るものがありました。ワクの面目躍如といったところでしょうか。
それにしても、ミイルもかなり変わった名前だとワクは思いました。
「変わった名前だな? あだ名かい?」
後日ワクが聞くと、さすがにややムッとしたように、
「ボクの生まれ育った地域では、ごくありふれた名前なんです。」
と答えました。
いったいどんな風にしたのか、カアサの説得によってアミは「出演」の話をのみました。
一方、ワクはシンジロウと相談し、祭りの一角に舞台を設えること、その舞台で色々な催しを行い、そのひとつにアミの歌も盛り込むことを決めました。そしてワクは、その舞台関連の責任者になったのでした。
事前打ち合わせのために、アミがワクのもとを訪れました。
これまで何度か、食料品店の店先で見かけたことはありますが、ちゃんと話をするのはこれが初めてです。
「こんにちは。どうぞよろしくお願いします。」
思ったよりハキハキした、礼儀正しい娘です。引きこもりめいた生活をしていている雰囲気もありませんし、派手な芸術家タイプにも見えません。ただ、長い黒髪と、色がとても白いのが印象的でした。
「歌はどんな歌でもよいのですか?」
「ああ、アミちゃんが普段歌っている、得意な歌を何曲かお願いしたいな。」
「私が作ったオリジナルですけど…。」
「いいじゃねえか。」
かすかに笑った顔がとても魅力的でした。
お茶を運んできたコハルが、
「ありのままのアーちゃんを見せれば、町の人みんなきっとアーちゃんの魅力に驚くわ。」
「やだ、コハル姉ちゃん…。」
「ちょっと歌って聞かせてくれよ。」
「ここで? 恥ずかしい!」
「いいじゃねえか。」
「分かったわ。」
一旦家へ戻って、楽器を持参したアミ。それは、この地方の伝統的楽器である、竪琴でした。
物悲しいような、慰めるような絶妙な音色に、アミの澄んだ歌声が乗ります。それは、聞いたものが思わず引き込まれて、夢見心地になってしまうような歌声でした。これはいける! うまくすれば、祭りの一番の目玉になる。ワクはそう思いました。
それからワクは、宿の仕事と並行して、祭りの舞台の準備で大忙しでした。いや、本当を言うと、宿の仕事は大部分コハルに任せて、舞台の準備にかまけていたと言うべきでしょう。舞台の、アミ以外の出し物の手配。舞台の設備自体の手配。ワクは例によって、ワクワクし通しでした。
そして当日。
町の一番の大通りに、祭りの飾り付けが施され、町の住人の九割方は着飾ってこの大通りを訪れます。以前参加させてもらったコウサクの村の祭りのように、神輿があるわけではなく、この大通りの出店と、シンジロウたちの太鼓が目玉なくらいで、どちらかというと地味な祭りなのですが、この町の人々は年一回のこの祭りをたいそう楽しみにしているのです。ワク自身もこの数年、毎年祭りを楽しんでいましたが、今年は特に深い関わりを持つことになりました。
舞台の催しものも順調に進んでいます。落語、寸劇、合唱、さまざまな出し物が観客から拍手喝采を受けています。出演者も観客も、みんな一様に楽しそうです。ワクもとても楽しいときを過ごしました。その隣には、コハルとコマリ。ワクはコハルの肩を横からぎゅっと抱き、時々顔を見合わせます。そして舞台がよく見えないというコマリを肩車しました。
アミの出番が回ってきました。薄い水色に染めた絹を身体に巻いて、普段より濃いめ、きつめの化粧を施したアミ。ワクは一目見て、思わずため息を漏らしました。美しい――。女性は化粧や衣装でこうも印象が変わるものでしょうか。いや、アミの場合は特に、舞台でたくさんの人に注目されることでより輝くのかもしれない、と思いました。そこにアミの天性の才能を見た気がしました。
少し向こうでは、オジジ、カアサ、ミイルもアミの晴れ姿を見つめています。
歌が始まると、周囲が一瞬でシン、となります。憂いを帯びたような、それでいて聴くものを楽園にいざなうような透明な歌声。だれもがその虜になっているのが感じられました。歌の間、その周辺だけが別世界に引き込まれたような空気に包まれました。
終わると、割れんばかりの拍手。といっても、観客はせいぜい二、三十人なのですが。
その二、三十人ばかりの観客は、アンコールを繰り返し、ひとしきりアンコールが終わると、今度は、太鼓との共演を要求し始めました。
「太鼓と一緒に歌ってくれ!」
「そうだそうだ、太鼓と一緒に!」
「太鼓、太鼓、タ・イ・コ、タ・イ・コ!」
数人が舞台に上がり、アミの手を引きます。そのまま舞台から下ろし、離れた一角で太鼓演奏をしているシンジロウ達のところへ連れて行きます。
アミは戸惑った表情のまま、引かれるままに走ります。観客たちは、アミについて、太鼓の舞台へと移動していきました。
シンジロウたちは、ちょうど休憩時間で、座ってくつろいでいましたが、集団がわあわあ騒ぎながら駆けてくるのを見てびっくり。思わず立ち上がると、そこへ到着するアミ。
「共演! キョ・ウ・エン、キョ・ウ・エン!」
思わずアミを見つめるシンジロウ。アミは申し訳なさそうな顔で微笑みながら、頭を下げます。事情を察したシンジロウは、黙ってうなずき、静かな音で即席のリズムを奏で始めました。そこへアミが、竪琴の音と歌声をのせます。
その流麗なことと言ったら!
祭り太鼓と竪琴と女性の歌声。言ってみれば他流試合のようなものです。ですがその融合は、見事に人の心を掴む芸術になりました。心を洗われるような、どこか原始の記憶を呼び覚ますような旋律とリズム。観客の半分はポカンと口を開けて聞き入り、残りの半分は――泣いていました。
コハルは、ワクの腕にしがみつきながら泣いていました。コマリも、子供なりに感じるものがあったようで、やはりじっと聞き入っていました。オジジ、カアサ、ミイルも、それから、いつの間に来ていたのか、カイ先生夫妻も、やはり聞き入っていました。けれど、一番感動していたのは、食料品屋の夫妻でした。その涙は、愛する娘の幸せを願う、親の涙でした。
「お助け団」の一行は、その数週間後、かすみ荘を発って行きました。そこにはなんと、アミが同行することとなりました。
アミはあの祭りの夜の後、叔母夫婦と話し合い、食料品店を継ぐ必要はないことを改めてはっきりと、叔父叔母の口から聞きました。そこで自分のこれからを考えたときに、頭に浮かんだのは、「お助け団」の一員として旅をし、自分の音楽を活かして人助けをすることができないか、ということでした。オジジやカアサも、これは大歓迎です。ミイルも、顔には出しませんがとても喜んでいました。
出発の朝。かすみ荘の玄関前。
食料品店の主人はアミに言いました。
「淋しくなるな。これでもうこいつと二人きりだ。」
「二人きりで悪かったわね!」
アミは口に手を当てて、あはははと笑っています。あの日から、アミは少しずつ明るくなっていました。
「六年たったらまた戻ってくるんじゃないの。なにも永遠の別れじゃあるまいし。」
「六年なんて、気の遠くなりそうな…はぁ!」
ただ、その場の空気には、別れの淋しさだけでなく、将来への希望も確かに混ざっていました。
「オジジ、カアサ、どうかこの子をよろしく。」
「ああ、任せておくれ。大丈夫じゃ。この子は旅に向いとるでの。」
ワクには、あの舞台上のアミと、今目の前にいるアミが、どうしても同一人物のように思えませんでした。舞台上で輝く人種というものはこういうものかと感心ひとしおでした。
「では、皆さん、ご無礼いたします。」
「さようなら。」
「ワクさん、コハルさん、お元気で。本当にお世話になりました。」
と、これはミイル。
「コハル姉ちゃん、ワクさんとお幸せにね。今度こそ。」
これはアミ。コハルはアミを軽く睨みつけてから、ワクを見て優しく笑いました。
皆は「お助け団」一行が見えなくなるまで、玄関先で見送っていました。
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