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もと料理係、慰問に行きます。
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「嬢ちゃん知ってるか? ずっと西の方の国じゃ星の月25日は大きな祭りがあるんだ」
そんなことを突然言い出したのはジャンゴさんです。いいんですか、騎士団のお仕事忙しいんだろうにふらふら遊びに来たりして。いえ、ジャンゴさんが私の作るお菓子目当てなのはよくわかっています。
というわけで、ただいまジャンゴさんと絶賛お茶中のピアです。こんにちは。
ジャンゴさん、この時間になると私の部屋へひょっこりと顔を出しておやつを食べていくのが習慣になりつつあります。もともと彼は近衛騎士団の一員で、アラステア様専属の護衛なのです。
で、唐突に始まったこのお祭りの話ですが。
「全然知りませんよ。西国の話なんて村まで流れてきませんでしたからね」
「そうか。盛大な祭りでな、何でも西国の国教の教祖様が産まれた日の記念なんだそうだ。この日はみんなでご馳走やケーキを食べ、プレゼントを贈るらしいぜ」
「プレゼント!」
「でな、子供たちにとっては有名な伝説があってな。サンタとかいう人物が子供たちが寝静まった夜中にプレゼントを配って回る、っていうんだ」
素敵な伝説ですね! 興味を引かれて思わず身を乗り出して話に乗ってしまいます。
「サンタはな、すげーんだぞ。真夜中に大きな角の生えた鹿の魔獣トゥナ・カーイが曳くそりに山ほどプレゼントを乗せてな、一晩で子供たちにプレゼントを配って回るんだ。世界中にどれだけの子供がいると思う? いいか、サンタは1軒あたり0.0003秒でプレゼントを配るんだ」
なんだか語りに熱が入っていましたね、ジャンゴさん。そのままジャンゴさんのサンタうんちくは続きます。
やれサンタの乗るそりの大きさだとか(長さは150ペロ。ペロってどんな単位だ)サンタの人物像とか(昔の偉い人だとか妖精だとかいう説がある)サンタを迎える作法だとか(寝る前に枕元に靴下を飾って、ミルクとクッキーをサンタのために用意しておく)。
――――ジャンゴさん、あなたひょっとしてサンタのガチヲタ……
延々続く語りにドン引きな私の視線に気がついたのか、ジャンゴさんはオホンと咳払いを一つしました。
「んでな、それにあやかって俺もちょーっとばっかり善行をしてみようかとな」
「はあ」
そこでがばり! と私に向かって頭を下げてきました。
「頼む! 今度の孤児院への慰問、俺も混ぜちゃくれねえか」
「はあ? どういうことですか?」
「――――実はな」
ジャンゴさんの話をまとめるとこういうことです。
ちょうど噂の星の月25日に私は孤児院の慰問に行くことになっているのですが、その行き先の孤児院は昔ジャンゴさんがお世話になっていた施設だというのです。
「俺はご覧の通りの平民出、それも孤児院の出身だ。幸い孤児院の院長先生の伝手で剣の腕を磨く機会に恵まれてな、こうやって騎士団に籍を置けるようになったんだ。だが、忙しくなりすぎてちっとも院長先生の所へ顔を出せないどころか何の礼もできちゃいない。だから、俺に取っちゃあまたとない機会なんだよ――――って、おい」
ううう。いい話です。涙がぼろぼろこぼれてしまいます。
ジャンゴさん、いつも飄々としたオヤジだと思っていましたが、そんな過去が――――! サンタうんちくしつこいとか思ってごめんなさい。
そうです、ジャンゴさんにはいつもお世話になっているのです。ここは不肖このピアちゃんが、一肌も二肌も脱がせていただきましょう!
その場で問い合わせたら、忙しくて慰問に同行できないアラステア様はすぐにオッケーしてくれました。
ジャンゴさんとは昔の仲間だということ以上に信頼があるのですね。いいなあ、男の友情!
「いや友情って、アラステア殿下は主だからな? 友情とか不遜な言葉はやめてくれ」
ジャンゴさん、ムスッとしてますけど顔が赤いですよ。ふふふ。
「いやー、年は離れてても友情……じゃない、信頼関係は不滅ですねっ!」
「離れててもって、俺は殿下と三歳しか離れてないんだが」
「えっ」
「殿下は二十二歳だろ? 俺、二十五だから」
「えっ」
「何?! その『えっ』と沈黙は! おま、俺のこと何歳だと思ってたんだ」
「ええと……よんじゅ」
「二十五!」
はい、わかりました。二十五歳なんですね。
ああ、目に見えてジャンゴさんが落ち込んでしまった。ここは何とか元気を出してもらわなきゃ。
「ええっと、ところでジャンゴさんはサンタさんのことすごーく詳しいですよね。お好きなんですか?」
「ああ、そうだな。昔、孤児院に絵本があってな――――」
そこからまたジャンゴさんのサンタうんちくが始まりました。けれど一瞬何か思いついたようにニヤリと笑ったように見えたのは気のせいでしょうか。
まあ、いいか。浮上してくれるなら。
この時はそう思ったんです。甘かったですけど。
「サンタといえばまず真っ赤な衣装だな。それに黒のベルトとブーツ。帽子も赤だ。それに袖や裾に白い縁飾りがついてな」
「結構派手ですねえ」
「でも、その衣装を着られるようになるまでには修行期間がある。最初は赤のゼッケンをつけるだけなんだ」
「ゼッケン――――ですか?」
「こう、ひし形に見えるように胸に当ててな、胴体をしっかり隠すんだ。ああ、そうだよ。そのゼッケン以外は身に着けないんだ。
で、大きな鹿の魔獣を操るにはしっかりした筋肉とトゥナ・カーイをテイムする技術が必要だ。そこで訓練としてクレセントベアって魔獣と戦闘訓練を」
「プレゼント配るのに戦闘訓練?!」
「おう、まずはトゥナ・カーイに力を見せて主人だと認めさせなきゃいかんからな。何しろトゥナ・カーイは空を飛べるからな、奴がいないとプレゼントを配りに行けないんだ。で、クレセントベアを投げ飛ばして子分にして、それからはクレセントベアにまたがって乗馬の稽古を」
「――――それ、本当にサンタの話ですか?」
「何しろ一晩で世界中の子供にプレゼントを配る猛者だぞ? それくらいできなきゃ」
はあ。そのニヤニヤした顔を見ていればジャンゴさんが私をからかっていることくらいわかりますよ。そのクレセントベアと戦う話は確か東の国のおとぎ話じゃなかったでしょうか。それってプレゼント担いだサンタじゃなくてマサカリ担いだキンタですよね。
まだまだジャンゴさんのほら話は続きます。
「そして一人前になると赤い服を支給されて」
「ほう、それはおもしろい話だ。そのサンタとやらにはもちろんお前がなるんだよな、ジャンゴ?」
その時背後から地の底を這うような低い声とブリザードのような酷寒の気配が。
「アラステア様」
「ひっ! 殿下」
「やあピア。どうやら慰問に私も行けそうだからそれを伝えに来たんだ」
「本当に! 嬉しいです。けど、無理して予定を調整されたんじゃないですか?」
「大丈夫だよ。私もピアと一緒に行きたいんだよ。周りの者も協力してくれてね」
「なら良かったです」
「しかし、ここに来て一つ問題ができたんだ」
アラステア様が眉を寄せて真剣な顔をしています。
「どうやらそのサンタとやらに扮すれば子どもたちも喜ぶだろう?」
そりゃそうでしょう。ジャンゴさんは孤児院でその絵本を読んだと言いました。つまり、孤児院の他の子どもたちもおそらくサンタさんのことを知っているということです。
「ならば院長先生にご恩を返すためにも気合を入れてサンタになりきらなくては。なあ、ジャンゴ」
「へ? はい?!」
ジャンゴさん、声が裏返ってますよ?
「ああ困った、しかしジャンゴを立派なサンタにするためにはあまりに時間が足りない! まずはクレセントベアと特訓か。それから騎乗訓練、それにトゥナ・カーイをテイム。短期間でやれるところまで頑張らねば」
真面目くさった顔でアラステア様がうんうんと頷いています。ジャンゴさんは「いや冗談……」と逃げようとしましたが、それより速くアラステア様がガシッとジャンゴさんの肩を掴みました。
「逃さないよ……?」
「ひっ、ひいいぃぃっ!」
「サボってた罰だ。そもそも私だって忙しくてピアとの時間が取れないっていうのに、おまえは」
そっちが本音ですね、アラステア様?
すっかり冷めた紅茶を半分ほど残したままジャンゴさんはアラステア様に引きずって行かれてしまいました。「たーすーけーてー」と遠くから聞こえたのは気のせいでしょう、きっと。
お達者で。
★☆★☆★
アラステア様は細かい銀の刺繍が華やかな真っ赤なフロックコートに白のズボン、黒のブーツ姿。
私は首元と手首、そしてふんわりと広がった裾を真っ白い毛皮で飾った真っ赤なロングワンピース。
ちょっとサンタを意識した装いで、たくさんのお菓子や本、おもちゃなどをどっさりと携え、星の月二十五日に予定通り孤児院を訪れました。ここまで来る道すがら、馬車に襲いかかった巨大なイノシシの魔獣レッドボアをさっくり捌いて塩漬けを作り(もちろん魔法体質のおかげでしゃらっと完成)、手土産に加えておきました。
そうそう、本人が言っていたとおりの赤いサンタ装束で顎に真っ白い髭をつけたジャンゴさんは、心なしか逞しくなっている気がしますけど、きっとこれも気のせいでしょう。見なかったことにします。
赤いゼッケンだけの姿じゃなくてよかったですね! ジャンゴさん!
子どもたちはジャンゴさんのサンタ姿に大喜び、一人ずつお菓子の詰め合わせをもらっています。どの子も嬉しそうな笑顔です。それを見ている私も幸せな気分になってきます。
「贈り物ってもらう人だけしゃなくてあげる方も嬉しくなりますね」
「そうだね。そんなピアを見ていると私も嬉しい気分になるよ」
そう言ってアラステア様がおでこにキスを一つくれました。
子供も大人も、すべての人が今夜は幸せな気持ちでいられますように。
そんなことを突然言い出したのはジャンゴさんです。いいんですか、騎士団のお仕事忙しいんだろうにふらふら遊びに来たりして。いえ、ジャンゴさんが私の作るお菓子目当てなのはよくわかっています。
というわけで、ただいまジャンゴさんと絶賛お茶中のピアです。こんにちは。
ジャンゴさん、この時間になると私の部屋へひょっこりと顔を出しておやつを食べていくのが習慣になりつつあります。もともと彼は近衛騎士団の一員で、アラステア様専属の護衛なのです。
で、唐突に始まったこのお祭りの話ですが。
「全然知りませんよ。西国の話なんて村まで流れてきませんでしたからね」
「そうか。盛大な祭りでな、何でも西国の国教の教祖様が産まれた日の記念なんだそうだ。この日はみんなでご馳走やケーキを食べ、プレゼントを贈るらしいぜ」
「プレゼント!」
「でな、子供たちにとっては有名な伝説があってな。サンタとかいう人物が子供たちが寝静まった夜中にプレゼントを配って回る、っていうんだ」
素敵な伝説ですね! 興味を引かれて思わず身を乗り出して話に乗ってしまいます。
「サンタはな、すげーんだぞ。真夜中に大きな角の生えた鹿の魔獣トゥナ・カーイが曳くそりに山ほどプレゼントを乗せてな、一晩で子供たちにプレゼントを配って回るんだ。世界中にどれだけの子供がいると思う? いいか、サンタは1軒あたり0.0003秒でプレゼントを配るんだ」
なんだか語りに熱が入っていましたね、ジャンゴさん。そのままジャンゴさんのサンタうんちくは続きます。
やれサンタの乗るそりの大きさだとか(長さは150ペロ。ペロってどんな単位だ)サンタの人物像とか(昔の偉い人だとか妖精だとかいう説がある)サンタを迎える作法だとか(寝る前に枕元に靴下を飾って、ミルクとクッキーをサンタのために用意しておく)。
――――ジャンゴさん、あなたひょっとしてサンタのガチヲタ……
延々続く語りにドン引きな私の視線に気がついたのか、ジャンゴさんはオホンと咳払いを一つしました。
「んでな、それにあやかって俺もちょーっとばっかり善行をしてみようかとな」
「はあ」
そこでがばり! と私に向かって頭を下げてきました。
「頼む! 今度の孤児院への慰問、俺も混ぜちゃくれねえか」
「はあ? どういうことですか?」
「――――実はな」
ジャンゴさんの話をまとめるとこういうことです。
ちょうど噂の星の月25日に私は孤児院の慰問に行くことになっているのですが、その行き先の孤児院は昔ジャンゴさんがお世話になっていた施設だというのです。
「俺はご覧の通りの平民出、それも孤児院の出身だ。幸い孤児院の院長先生の伝手で剣の腕を磨く機会に恵まれてな、こうやって騎士団に籍を置けるようになったんだ。だが、忙しくなりすぎてちっとも院長先生の所へ顔を出せないどころか何の礼もできちゃいない。だから、俺に取っちゃあまたとない機会なんだよ――――って、おい」
ううう。いい話です。涙がぼろぼろこぼれてしまいます。
ジャンゴさん、いつも飄々としたオヤジだと思っていましたが、そんな過去が――――! サンタうんちくしつこいとか思ってごめんなさい。
そうです、ジャンゴさんにはいつもお世話になっているのです。ここは不肖このピアちゃんが、一肌も二肌も脱がせていただきましょう!
その場で問い合わせたら、忙しくて慰問に同行できないアラステア様はすぐにオッケーしてくれました。
ジャンゴさんとは昔の仲間だということ以上に信頼があるのですね。いいなあ、男の友情!
「いや友情って、アラステア殿下は主だからな? 友情とか不遜な言葉はやめてくれ」
ジャンゴさん、ムスッとしてますけど顔が赤いですよ。ふふふ。
「いやー、年は離れてても友情……じゃない、信頼関係は不滅ですねっ!」
「離れててもって、俺は殿下と三歳しか離れてないんだが」
「えっ」
「殿下は二十二歳だろ? 俺、二十五だから」
「えっ」
「何?! その『えっ』と沈黙は! おま、俺のこと何歳だと思ってたんだ」
「ええと……よんじゅ」
「二十五!」
はい、わかりました。二十五歳なんですね。
ああ、目に見えてジャンゴさんが落ち込んでしまった。ここは何とか元気を出してもらわなきゃ。
「ええっと、ところでジャンゴさんはサンタさんのことすごーく詳しいですよね。お好きなんですか?」
「ああ、そうだな。昔、孤児院に絵本があってな――――」
そこからまたジャンゴさんのサンタうんちくが始まりました。けれど一瞬何か思いついたようにニヤリと笑ったように見えたのは気のせいでしょうか。
まあ、いいか。浮上してくれるなら。
この時はそう思ったんです。甘かったですけど。
「サンタといえばまず真っ赤な衣装だな。それに黒のベルトとブーツ。帽子も赤だ。それに袖や裾に白い縁飾りがついてな」
「結構派手ですねえ」
「でも、その衣装を着られるようになるまでには修行期間がある。最初は赤のゼッケンをつけるだけなんだ」
「ゼッケン――――ですか?」
「こう、ひし形に見えるように胸に当ててな、胴体をしっかり隠すんだ。ああ、そうだよ。そのゼッケン以外は身に着けないんだ。
で、大きな鹿の魔獣を操るにはしっかりした筋肉とトゥナ・カーイをテイムする技術が必要だ。そこで訓練としてクレセントベアって魔獣と戦闘訓練を」
「プレゼント配るのに戦闘訓練?!」
「おう、まずはトゥナ・カーイに力を見せて主人だと認めさせなきゃいかんからな。何しろトゥナ・カーイは空を飛べるからな、奴がいないとプレゼントを配りに行けないんだ。で、クレセントベアを投げ飛ばして子分にして、それからはクレセントベアにまたがって乗馬の稽古を」
「――――それ、本当にサンタの話ですか?」
「何しろ一晩で世界中の子供にプレゼントを配る猛者だぞ? それくらいできなきゃ」
はあ。そのニヤニヤした顔を見ていればジャンゴさんが私をからかっていることくらいわかりますよ。そのクレセントベアと戦う話は確か東の国のおとぎ話じゃなかったでしょうか。それってプレゼント担いだサンタじゃなくてマサカリ担いだキンタですよね。
まだまだジャンゴさんのほら話は続きます。
「そして一人前になると赤い服を支給されて」
「ほう、それはおもしろい話だ。そのサンタとやらにはもちろんお前がなるんだよな、ジャンゴ?」
その時背後から地の底を這うような低い声とブリザードのような酷寒の気配が。
「アラステア様」
「ひっ! 殿下」
「やあピア。どうやら慰問に私も行けそうだからそれを伝えに来たんだ」
「本当に! 嬉しいです。けど、無理して予定を調整されたんじゃないですか?」
「大丈夫だよ。私もピアと一緒に行きたいんだよ。周りの者も協力してくれてね」
「なら良かったです」
「しかし、ここに来て一つ問題ができたんだ」
アラステア様が眉を寄せて真剣な顔をしています。
「どうやらそのサンタとやらに扮すれば子どもたちも喜ぶだろう?」
そりゃそうでしょう。ジャンゴさんは孤児院でその絵本を読んだと言いました。つまり、孤児院の他の子どもたちもおそらくサンタさんのことを知っているということです。
「ならば院長先生にご恩を返すためにも気合を入れてサンタになりきらなくては。なあ、ジャンゴ」
「へ? はい?!」
ジャンゴさん、声が裏返ってますよ?
「ああ困った、しかしジャンゴを立派なサンタにするためにはあまりに時間が足りない! まずはクレセントベアと特訓か。それから騎乗訓練、それにトゥナ・カーイをテイム。短期間でやれるところまで頑張らねば」
真面目くさった顔でアラステア様がうんうんと頷いています。ジャンゴさんは「いや冗談……」と逃げようとしましたが、それより速くアラステア様がガシッとジャンゴさんの肩を掴みました。
「逃さないよ……?」
「ひっ、ひいいぃぃっ!」
「サボってた罰だ。そもそも私だって忙しくてピアとの時間が取れないっていうのに、おまえは」
そっちが本音ですね、アラステア様?
すっかり冷めた紅茶を半分ほど残したままジャンゴさんはアラステア様に引きずって行かれてしまいました。「たーすーけーてー」と遠くから聞こえたのは気のせいでしょう、きっと。
お達者で。
★☆★☆★
アラステア様は細かい銀の刺繍が華やかな真っ赤なフロックコートに白のズボン、黒のブーツ姿。
私は首元と手首、そしてふんわりと広がった裾を真っ白い毛皮で飾った真っ赤なロングワンピース。
ちょっとサンタを意識した装いで、たくさんのお菓子や本、おもちゃなどをどっさりと携え、星の月二十五日に予定通り孤児院を訪れました。ここまで来る道すがら、馬車に襲いかかった巨大なイノシシの魔獣レッドボアをさっくり捌いて塩漬けを作り(もちろん魔法体質のおかげでしゃらっと完成)、手土産に加えておきました。
そうそう、本人が言っていたとおりの赤いサンタ装束で顎に真っ白い髭をつけたジャンゴさんは、心なしか逞しくなっている気がしますけど、きっとこれも気のせいでしょう。見なかったことにします。
赤いゼッケンだけの姿じゃなくてよかったですね! ジャンゴさん!
子どもたちはジャンゴさんのサンタ姿に大喜び、一人ずつお菓子の詰め合わせをもらっています。どの子も嬉しそうな笑顔です。それを見ている私も幸せな気分になってきます。
「贈り物ってもらう人だけしゃなくてあげる方も嬉しくなりますね」
「そうだね。そんなピアを見ていると私も嬉しい気分になるよ」
そう言ってアラステア様がおでこにキスを一つくれました。
子供も大人も、すべての人が今夜は幸せな気持ちでいられますように。
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