魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

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20章 魔法少女と空

646話 魔導神は資金を得る

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 パズールに帰って来てから、1日。
 あれから私達は混乱を諌めたり、フィリオに召集され街民のための食事を振舞ったりと、大変で休まる時がなかった。

 魔法使いの嬢ちゃんが神エプロンに……とか言った奴の顔を忘れない。
 みんな私のこと知ってるから、めっちゃやりづらかった。神ぶっても、私の本性みんな知ってるし。

 ということで、ようやく休めて今日というわけだ。

「まーだー?僕お腹空いたんだけどー?」
「ワタクシも何かくれないかしらぁ?」
そしてこれが今朝の図。

 お分かりいただけただろうか。

「何様だゴラァ!」
「神様。」
「偽のね?」
「仮のと言ってほしいね。」
「屁理屈捏ねてると魔神の体をパンの生地にしちゃうけどいいかな。いいよね。」
「おいしくないよ。」
「食わねえよ。」
ふざけたことをぬかすこの男に冷水を頭からかけてやりたくなった。

「ボクら客だよ?そっちこそ何様なのさ。」
「神様だよ正真正銘この世の!」
「ねぇ露出狂、ここに虚言癖がいるぞ。」
「あらあらぁ暇人さん、ここに厨二病ちゃんがいるわぁ。」
霊神も乗っかり、いつの間に向こう側に、と思っていると、その矛先は魔神に向いてた。ならば私も指さねば無作法というもの。

「ここに変態ガー。」
そして生まれた三角形。

「ワタクシのことかしらぁ?」
「あら自覚してらっしゃるのね。」
「…………………」
「いやごめんて、そんな顔しないで。」
垂れ目な目から放たれる鋭すぎる眼光で、岩をも砕きそうに思えた。この女は敵に回しちゃダメなタイプだったようだ。

 というか、こいつらなんで人ん家のダイニングでこんな偉そうにしてんだろう。
 連れてこなければよかった。

 神経薬漬けにされてんのかってレベルの無遠慮さ。魔神は足組んでる、霊神はあらあらまあまあしてる。略してあまう。
 ってなんでそうなった。

 ……ツッコミ役いないのって、寂しいね。

 心からいなくなった穴は大きかったようだ。

「ねぇトートルーナさん、このアホどもに料理作ってあげて。」
「メイド1人に、住人5人クルミルさん1人客2人は多すぎるんですけど。」
「ん?住人5人……?私、百合乃、ツララ…………あと2人誰。」
「私です。」「わたしです!」
聞き覚えのある声が重なる。

「ラビア……と、最近出番なさすぎて作者に忘れられた可哀想なアーレ!」
「それは言わないお約束だよ!」
ご都合展開から始まるキャラ紹介。さっきまでいなかった空間に現れた2人は、魔神を一目見て指を差した。

「行儀を燃えるゴミの日に出したのでしょうか。」
「礼儀の概念がないよ、この魔神。」
「うん、突然住人面する2人の方がよっぽど厚かましいよ。」
そもそもラビアは王国に送ったはずだ。

「もうお見合いの強要は疲れたの。だからここに住まわせてもらうことにしました。」
「もう決定事項みたいに言うね。」
「わたしもっ、ソラさんと長い間話せなかった分いっぱいお話しするの!」
小動物がキャピキャピ跳ねる。可愛いのでよしとする。

 でも、それじゃ流石に狭くない?確かに広い家ではあるけど、そう何人用も部屋無いよ。

「まぁ……それは後で考えるとして、料理はよろしくね。」
「なんて人任せな雇用主。」
「ボーナス弾むからさ。」
「ボーナスって……そんなお金どこにあるんですか。」
呆れたように腕組みをする。

 ちなみに私の金欠(と言うより手持ちゼロ)情報を知ってるのは、昨日のうちに諸々の事情は教えてあるからだ。

「ちっちっちっ、実は今から収入入るんだぁ。百合乃とツララと、あとラビア。ついて来て。」
「え、私はようやく安心安全な自宅ライフを……」
「わたしは!?」
それぞれ別の意味で絶叫する2人を置いておき、百合乃ツララペアを引っ張り出す。

「ようやく出番ですか。」
「昨日めっちゃ叫んでたじゃん。」
「昨日は昨日です。」
「アタシも、頑張る。」
「頑張ること、今日あんまりないけどね。」
ふんす、と頑張るぞいポーズをする。頭を撫で撫でする。

「ちなみに、どこに行くんです?」
「王都。」


 ところ変わってフィリオの家。
 いちいち馬車でパッカパッカ端の方に行かなくても転移で行けるから楽できるようになった。

 土地の関係上仕方ない立地なんだろうけどね。領主の家がそんなところでいいのかってのはいつも思う話だ。

「おはよ、ネル。」
「皆さんおはようございます。」
いつもの客席に案内されると、館の主であるフィリオと可愛いネルがいた。ネルもついてくるようだ。

「今日は今回の件の報奨金についてだったよね。」
「あぁ。だが、あまり期待するなよ?今回で受けた損害は目を背けていられる次元を遥かに超えている。復興にも金を使う、国を変えるのにも金を使う、何にだって金はいる。」
「えぇー、世界救った神に対してそんな態度ぉ?」
「そんなこと俺に言うな。」
管轄外だ、とフィリオは歯牙にもかけずに私の言葉を振り払う。

「じゃあ、頼む。」
「はいはい。」
使い飽きた魔法を発動させた。もう少し神を労ってほしいものだ。

「うぉ……転移です?」
「そ。」
百合乃がキョロキョロ見回す先にあるのは、王都の平原。広く場所を取れるのはここだけだ。

 知らぬ間に居住者が増えてるし……少しくらい弾んでもらいたいな。

 と、下卑た心で見上げていると、ネルの訝しむ声が耳に届く。

「魔力の流れがなかったように思えるのですが。」
「お、ちゃんと勉強してるね。偉い偉い。」
「そっ、ソラさん……髪が乱れちゃいます。」
ネルは顔を綻ばせながら私の手を受け入れる。

「対応の差が激しいです……」
背後に醜い嫉妬を感じた。いつものことなので放っておく。

「でも私は魔力の流れなんて相手に見せないんだよ。そういう魔法を重ねてる。」
「非常時でなくても、ですか?」
「そう。逆に、いつもやらないことを非常時にできるわけないし。」
「ですね。」
ネルは再び微笑んだ。守りたいこの笑顔。

「早く行くぞ。国王陛下を待たせてはいけない。」
「はいはい。」
フィリオは群衆に目を向けた。そこにいるのは、全て今回の功労者のみ。下っ端騎士達はいないが、相当な金額は懐に入っているだろう。

 私もお金もらって、さっさと行こ。

 人混みを掻き分け、視界の奥にリュウムとルーア、国王の姿を捉えた。
 人混みの中には見知った顔もあったが、声をかけるのはやめておいた。

 しばらくすると、国王はこの場にいる全員と同じ目線に立つ。同じ人として。

 ちなみにフィリオの事前情報によると、国王のお言葉の次に表彰のようなことをして、終了らしい。
 私はトップバッター。

「此度は多大な功績を上げてくれたことを、王として感謝する場だ。そう、固くなることはない。」
国王はその言葉から始めた。

「国の存亡、世界の存亡を、己の命と誇りを賭けて守ったことを心から感謝したい。ありがとう。」
周囲は絶句した。王が、ありがとうと口にした。

「ひとまず、1番の活躍者を讃えるとしよう。」
国王は切り替える。ルーアを一瞥したと思えば、そのルーアはこちらをじっと見つめ、口をぱくぱくさせる。

 なになに?「はようでてこんか」?
 早う出て来んか。

「じゃ、私は行ってくる。滅多にない国王の感謝なんだから、しっかり目に焼き付けときなよ。」
手をひらひらさせて、国王の元に足を運ぶ。

 これで、は平和を取り戻した……のかな。復興とか、いろいろ必要なことはあるけどさ。

 視線が集まる。国王は私の目を見て、再び謝辞を述べる。

「冒険者ソラに『魔導神』の名を授け、領地としてパズール領東部の領地及び領地経営の資金を与える。」
国王は真っ直ぐな目で私を見た。私はそれにもちろん応え……

 ん?領地?

「おい待てこら!」
国王の表彰は、つつがなく進むのだった。

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 もう大晦日なのに全然ゆっくりできていないcoverさんですが、最近とあるアニメにハマりました。絶賛漫画追っています。
 いや執筆しろや。そもそも遅れてるんだから。

 まぁそれはそうと、あのイカれ具合が好きですね。ここまではっきりぶっ飛んでるといっそ安心できます。
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