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20章 魔法少女と空
644話 魔導神は王国復興へ
しおりを挟む目が覚めると見知らぬ天井が目に飛び込んできた。というか最近は知った天井を見ることがなかった気もする。
「おはようございます、空。」
「ん、夢か。」
横を向くと、変人が映っていた。知らない天井よりも奇怪な存在だ。
「現実です。」
「現実かぁ……」
仰向けになりながら頭に手を置いた。
いやまぁ、別にいいけど。
布団をどかして、よっこらせっと立ち上がる。
「うぇぶしっ。」
残った布団を上から被せた。どうせクンクンするから時間稼ぎだ。
「……お腹すいた。」
くるくると鳴くお腹の音に耳を傾けながら、食材のない私はどうしようかと頭を捻る。
何もしないってのも息が詰まるし、ちょっと外行ってみようかな。
部屋を出て、小さめのこの家から出た。もっと大きく作ってくれてもいいんじゃないかな。ルーアも配慮が足りないな。
「起きたか。」
「……ルーア?」
玄関前で薄暗い空を見上げていると、ちょっと際どい服を着た少女がいた。
「なにかの?そんなにジロジロ見て。」
「いや、服エロいなぁって。よくよく考えてみたら。」
「よくよく考えるでない!気色悪いのぅ……」
ぶるるっと震えたように体を抱いた。それに加えて「これはミュール殿の趣味であっての」と視線を彷徨わせていた。
地味に気に入ってるくせに。
私の神眼にはばっちりと映っている。
「起き抜けで悪いがの、主にはついて来て欲しいところがある。」
「デート?」
「そんなわけがなかろう。」
こっち、とだけ言って、引っ張るでもなく歩いて私を案内する。
「まぁ、私のいなくなった後、色々してくれてありがと。」
その背中に感謝の言葉を投げかけた。ルーアはそれに反応し、ヤバいやつを見る目をして振り返った。
「……主、頭打ったのか?」
頭を2度、指でトントンした。握り拳を振りかぶるのをもう片方の腕で防いだ。
「私1人じゃ、神を殺せてもこの世界を守ることなんてさ、できないから。」
「それを言うなら我も同じになるの。」
「どういうこと?」
「我も、この世界を守れても神を殺すなんて不可能だっと言っておる。」
「じゃあ、ルーアも私にありがとうだ。」
「そういうことになるの。」
「なら口に出そうよ。私も出したでしょ。ありがとう、って。本当に感謝してる。私の守りたいものを守ってくれて、本当に。」
「……随分と丸くなったの。」
ルーアは私のいい子っぷりに心打たれたようだ。
あれ?それにしては表情が硬い。
「感謝しておる。我も、龍神様の守ろうとしたこの世界を、居場所を、好いておる。」
「60点。」
「配点を教えてもらえんか。」
軽口を交わし合いながら、いつの間にか並んで語り合う。
「でもま、及第点かな。」
「変革の神からのありがたい言葉じゃの?」
「それ煽ってるぅ?」
「さあの。」
いつの間にかルーアの口元は柔らかく弧を描いていた。これも、私の守りたかった景色なのだろう。
「それでこれ、どこ行ってるの?」
「とある人物の下だ。」
「誰?」
「国王。」
「こくおう?」
「そう言っておるだろう。」
私の表情に、ピシリとヒビが入った。
記憶をどこかへ追いやるため、私達は無理矢理話を続けた。
私の強引テクでルーアから、四神の話を聞き出しまくった頃には、目的の場所についてしまっていた。
「ここ?」
今朝の私の寝床より少し大きめといったサイズの、一軒家だった。
「我にとって王だの国民だのは知ったことではない。」
そもそも我、龍。そう言って普通にノックした。
私も神なんだけどさ。
「あ、間違えました。」
ルーアの開けた扉を、私は拳で封鎖した。
んんんんん?ん?
私は再度、頭の中で今見た光景を思い出す。
国王の正面に、神龍のリュウムが座って話していた。なにあれ、いつの間に?
奥に無心(という名の殺気)を持つオリーヴさんが見えた。国王って、結婚して子供までいなかったっけ。
いや……側室って線も?
「物凄く失礼なこと思っておらんか?」
ルーアは私の腕をポンポンと払い、再び戸を開けた。
「龍神様、魔導神様。お戻りになったのか。」
紫髪の龍が口を開いた。かたん、とソーサーにカップを置く音だけが響く。
「我の代わりに大使となってくれたこと、感謝しておるぞ。」
「ありがたき幸せ。」
リュウムは凛とした姿勢のまま胸の辺りに手を置いた。血気盛んな四族龍とは思えない振る舞いだ。
「早よ来んか。」
玄関を潜ったと思えば、首だけこっちに回して指図する。
「まぁ……うん、国王も元気そうで。」
「ソラもソラだな。神になったと聞き多少の憂慮はあったが、どうやら杞憂に終わりそうだ。」
「それ、どういうこと。」
王にしては無邪気な笑みを携えて、目を細めた私の視線を躱していく。
「で、この状況何。」
「こちらから説明しよう。」
国王はルーアを一目見て、挙手した。
「では、任せるとするかの。」
「紅茶でございます。」
ルーアはリュウムの横に着席すると、しれっと用意された紅茶に口をつける。
「私は立ってろと。」
仕方なく、そのまま話を聞くことにした。
かくかくしかじか。
「つまり、これは龍と人との共存を示す一環というわけだ。」
「私が神界にいる間になにやってんの。」
話を聞かされ、知らぬ間に国が変わっていたこと知った。色々世界、変わりすぎだ。
簡単に説明するとこうだ。
この危機を乗り越えるのに国の力じゃ足りない。だから龍という格上の力を盾に、士気を上げながらこの空間に逃げて来た。そのため、王国は龍王国と名を変えた。
神龍として、人の世界でいう大使のような役回りでリュウムを差し出し、共存を目指すため手を取り合っているという面目を作っている。とのこと。
それを淡々と話されて、今こうしてなんとか整理できた。
「国王も国王で、色々やってくれてたってことにしとくか。」
驚きは全てその答えに捨てて、ルーアに視線をやる。ここに来た目的は、こんなことのためじゃないだろう。
「リュウムよ、他の3人は知らんかの?」
「無視すんなよ。」
「気のせいじゃないかのぅ。」
わざとらしい演技を交えて、ルーアは自分の質問を貫いた。
「偵察に行ったのかと。」
「そうか。奴らもなかなか自覚が出て来たじゃないか。」
そう言って、あの時命令が聞かれずにやいやい言っていたルーアは賢しらに振る舞う。
「で、なんのために連れて来たの?」
「我に聞くな。用があるのはそこの王だけなのだからな。」
「そうなの?」
「その通りだ。」
国王は頷いた。
なら言えや。
と心のツッコミを炸裂させていると、国王は居住まいを正した。紅茶も手から離し、真剣な面持ちを向けてくる。
「此度は、ある願いがあって呼び立てたのだ。疲れているだろうが、頼まれてくれるか?」
「できることだけね。」
「協力、感謝する。」
国王は深々と、座ったまま頭を下げる。ゆっくりと頭を上げると、再度口を開いた。
「これは我々の問題だ。できうる限りは我々王国の力で解決したいと望んでいる。神の力に、頼り切りというのも面目が立たぬだろう。」
「だから、できることをやるって言ってるでしょ。私だって、この国の国民の1人なんだから。」
「……そうか、そうだったな。ソラは神である前に、この国の民だ。失礼を言ったな。」
国王は含み笑いをした。
「早速だが働いてもらうことにしよう。」
「え。」
私の朝ごはんはブラックホールに吸われて消えた。
———————————————————————
あれ、アーレどこ行った?
そう思った方もいるでしょう。私も思いました。というか、最近忙しすぎて記憶がみっちみちで死んでます。過労死しそう(?)
ですがあの子は旅に出ているのです。そう、どこか遠くへ。
まぁそんなわけもなくただ単に忘れていただけなので、「実は裏から色々してました」っていう設定で今度出します。
自分のキャラを忘れてすみませんでした。矛盾があっても、キャラは責めないで下さいね。私はならいくらでも見下していいので。
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