魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

文字の大きさ
上 下
673 / 681
20章 魔法少女と空

643話 魔導神は再会する

しおりを挟む

「主、心なしか元気になっておらんか?」
「そう?」
移動中、ルーアは突然そう言ってきた。

「この前までのシリアス展開からの落差が凄くてちょっと引いておる。」
「急にメタいのやめて?」
「もうすぐそこに奴らも集まっているはずだからの。主のいなかった間の話は、あそこでしよう。」
「展開も切り替えも急っ!」
何事もなかったかのように会話を戻した。下手なジェットコースターより厄介だ。

 というかこのジェットコースター道途切れてない?レールのメンテしないと。

 いつの間にかジェットコースターの話になっていた。

 と思ったら、正面からジェットコースターみたいな速さで駆け抜けてくる人間がいた。

「空あああああああああああああああ!」
「百合乃は叫ばないと死ぬ病気にでもかかってんの!?」
という疑問は真正面からタックルで吹き飛ばされ、百合乃は私を巻き込んでトライした。

「私はラグビーボールか!」
私の腹部に抱きついて地面に倒れ込む百合乃は、私のお腹に顔を擦り付けながらにひにひ言っている。

 きっも。

 普通に引いた。

「……どいてくれない?」
「ん?抱いてくれない……です?空ったらもう。」
百合乃は顔を上げ、恥ずかしそうに呟いた。

「えっち。」
「最近の流行りに乗ればいいってもんじゃないからね。」
百合乃を殺す魔法でも創造しようかと思ったところで、こちらに視線を向けられているのに気づいた。

「其方は神になっても変わらないな。」
「人神はいつになっても小さいね。」
「もし其方がこの世界の神じゃなければ捻り潰していた。」
「大丈夫、私強いから。」
拳が握られる人神にそう返しておく。今の私は、四神という偽りの神なんてゆうに越しているのだ。

 人神がいるってことは……そういうことだよね。

 不意に、2つの影が私達を覆い被せた。

「魔神と霊神も、久しぶり。」
「久しぶりってほどでもなくない?」
「立派になったわねぇ。」
前者適当後者母性の攻撃。2人に手を貸してもらい、百合乃ごと引っ張ってもらった。

「よくあの創滅神を滅ぼせたな。ボクらが必死こいてたのがバカみたいだ。」
「ワタクシの封印がなければ、今頃は焦土でもおかしくないわよぉ?でもぉ、まほーしょうじょちゃんには感謝しなくちゃねぇ?」
「ほら、わたしとOne night loveを……いや、永遠の初夜を!」
「初夜ってなんだっけ!?」
いつまでも抱きついてきてそろそろ鬱陶しい。この腕力ゴリラのコアラ化した百合乃をグイグイしていると、ザッザッと足音が耳に入る。

「マスター。お勤めご苦労様でした。」
「アリア。」
「いかがなさいましたか?」
これ百合乃、よろしく。」
こくりと頷く。ゆっくり接近する。四神が何故かブルッと震えてる道を開ける。

「セイッ!」
百合乃は意識を失った。

 あ。この子、ヤベェタイプだ。

 というか、アリアって使徒をハンバーグにするくらいの狂人か。このくらいまだまとも……なのか?

「これで邪魔者は消え失せました。会議にいたしましょう。」
メイド然とした空気を纏うアリア。髪をふわっと靡かせ、こちらに首を回した。

「誤魔化せないよ?」
「そうですか。」
私達は屋内に行くことにした。


「うん……凄いこと起こってない!?」
私は困惑を口に出す。

 あの国王、なんかやらかしそうな人ではあったけど……さすがにアクティブすぎない?

 ほぼ全国民をここに集めるとか、一体どんな労力と人望と牽引力があるんだよとびっくりする。
 そもそも、この人数普通に帰すとか無理でしょ。

「キミに帰ってきて欲しかった理由、分かった?」
「うん、ものすごく分かっちゃった。」
つまり私は王国民の足となれってことだ。渋面を浮かべる私に、魔神はこう言う。

「がんば。」
「頑張ってた相手に頑張れって、酷と思わない?」
「いやまったく。」
「他人事すぎる……!」
拳を握りしめてプルプルする私は、口を噤むしかできなかった。

「はぁ……でも、これで一件落着ってことかな?」
バァン!

「終わってねえだろうが。」
「銃声かと思った。」
「テメェの頭に鉛玉ぶち込んでやろうか。」
指鉄砲が向けられる。その男の名は、蓮。

「俺を日本に返す、そういう話だっただろうが。」
「今じゃないでしょ絶対。」
「忘れてねえか、っつう確認だ。」
「随分アグレッシブな確認方法だね。」
「横文字使うな鬱陶しい。」
ドア開けっぱなしでズカズカ入ってくる蓮。こいつに無いもの、礼儀・遠慮。私に無いの、こいつに対する敬意。

「そういや、お前に会いたがってる奴らがいんだが………」
「主っ!」
蓮の言葉を覆い被せるように叫ぶ声が聞こえてきた。

 この可愛さ……もしや。

「ツララ?」
「主!……おいてかないで。もう離さない。」
「いたい、いたい……ぎぶ。」
ツララは私の顔面に抱きついて、そのもふもふを押し付けてきた。あったかい。可愛い。

 じゃなくて苦しい!いや……いいかも、しれない。……ってそうでもない!

 何かに目覚めてしまう前に、神様パワーで無理矢理引き離す。
 ツララの目には、いっぱいの涙が溢れていた。

「入ってもいいかしら。」
ツララから視線を移すと、ラビアが立っていた。その奥には、見覚えのあるメンツ……私が守った人達がいた。

「みんな……」
「この広さにこの人数って、合ってないと思う。」
キョロキョロしながら入ってきたメイド娘は、トートルーナさん。隣にはもちろんクルミルさん。

「みんな、ソラが帰ってくることを待っていたんですよ。」
トートルーナさんの隣で微笑んだ。

「ただいま。私、ちゃんとみんなのこと守れたよ。」
その姿を見て安心し、思わず破顔する。……けど。

「尺的に全員登場は無理だからカットで。」
「主、2000字前に戻ってみたらどうかの?」
ルーアが真面目な顔で見下げていた。


 ということで、しっかりロアやネルとは挨拶できた。ロアは心なしか大人びてたし、サキもお姉ちゃんの風格があった。
 さては、テレスさんがもう……いや、なんかレインに申し訳ない。

「みんなが無事だって分かったから、もういいや。」
どこか抜けなかった緊張感は、この瞬間に切れてなくなった。

 私、ちゃんと守れたんだ。

 わざわざ神界に行って、いっぺん死んだ甲斐があった。

 百合乃とアリアを除いてみんな帰って行ったあと、私は脱力した。

 そんな私に近づく人神。

「其方は本当によくやってくれた。今日はもうゆっくり休め。」
ぽんっと、後ろから頭を撫でられた。

「どんなもんよ。」
「こんな世界のために、関係ない其方が命を、魂までも賭けて救うなんて、狂ってるな。」
「ちょっと強いだけなのに創滅神に突撃かました奴に言われてもなー。」
椅子に座ったまま顔を上げる。図らずも見つめ合う形になった。

 からと言ってラブコメは発生しないよ。

「直接戦って身に染みたよ。この世界の生物じゃあどうあってもあれには勝てない。すごい神だった。」
もっと向上心あったら負けてたかもしれない。

 イフなんて語ったって何にもないない。
 今は今、それだけだ。

「その神に勝った其方はもっと凄い神だな。」
「そうだね、私はすごい神。……だから世界を運営しなきゃいけない………くっ……!」
今考えるとめちゃくちゃ面倒だ。創滅神が神達に全てぶん投げてた理由がよくわかる。

 ちゃんと、向こうも整備しないとなぁ……

 面倒をどうにかするのに面倒が必要なんて非効率だ。けどこれって、そういう問題じゃないんだよね。

「明日から其方中心に忙しくなる。休めるうちに休むといい。」
「人神からまさか、そんな優しい言葉がかけられるなんてね。」
「余のことなんだと思ってるんだ。」
「鬼畜魔王。」
「せめて人間であってくれ。」
人神はツッコミの後に、後ろの部屋を指差した。

「ここ、余った空き家だから好きに使えとルーアが言っていた。そこで寝ておきな。」
「はーい。」
「返事だけは一丁前だ。」
そのまま、もう好きにしろと言うように出ていった。ここには空気のアリアと沈んだ百合乃が残された。

「百合乃、頼める?」
「はい。」
私はアリアに全投げして、寝室へ向かった。

「はぁ……疲れた。」
日本での疲れも出てきている。備品のベットに腰掛けて、ググッと伸びをする。すると、向こうの部屋から何やら音が……

「セイッ!」
「いや何してんの!」
アリアの拳が、百合乃の眼前で止まっていた。

「頼まれましたので。」
「そういうことじゃない。」
果たして、私は平和な日々を守れたのだろうか。

———————————————————————

 そして増える空ファミリア……
 空ファミリアってなんだって?そりゃあ、空ファミリアは空ファミリアですよ。

 変人1名、獣1名、人間2名。そこに加えられた使徒1名。空さんに逃げ道はないです。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

転生をしたら異世界だったので、のんびりスローライフで過ごしたい。

みみっく
ファンタジー
どうやら事故で死んでしまって、転生をしたらしい……仕事を頑張り、人間関係も上手くやっていたのにあっけなく死んでしまうなら……だったら、のんびりスローライフで過ごしたい! だけど現状は、幼馴染に巻き込まれて冒険者になる流れになってしまっている……

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々

於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。 今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが…… (タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

処理中です...