魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

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20章 魔法少女と空

639話 魔導神と両親

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 11月30日。今月ももう終わりだ。
 明日には冬到来と言われているが、もう若干朝は肌寒い。昼は暑いんだから、調節が難しい。

 まぁ私は神だし関係ないけど。

「いってきます。」
丁寧に梱包された一輪の花を持ち、私は家を出た。

 これを渡したら本当の意味でさよならだ。
 中指立てるより、唾を吐くより、よっぽどスッキリする。

 形があるってそういうことだ。

 家の位置はなんとなく覚えていた。持ちたくもない帰巣本能で、かつて住んでいた家に戻ってこれた。電車を何本も乗り継ぎ、歩いて。
 今は、別の家庭の色が伺える。暖かい色を感じる。

 一抹の寂しさと嫉妬の念を抱いて、その場から立ち退いた。変な目で見られても困るから……そういうことにしておいてほしい。

 そこから、今度はバスだ。
 詳しい場所までは覚えていない。なのになんで分かるかといえば、行く前に昨日お義父さんに聞いたからだ。
 お義母さんからの話を思い出してもしかしたらと思ったら、ビンゴだった。お義父さんはお父さんとまだ連絡がつくようで、たまに、話すそうだ。

 ……なんかこう、複雑な気分。

 バスに何十分も揺られながら、無心で外の景色を眺める。途中からは知らない景色が流れ始め、なんとなく道に目をやる。

 目的地が見えると、降車ボタンを押して降りる。
 あとは本当に歩くだけ。

 この辺りに住宅はない。雰囲気からして墓地という空気が流れ、遠くから線香のような香りが漂う。

「ここ、かな。」
確認するまように呟くが、確認するまででもなく墓地だ。墓がずらっと並んでいる。

 ここから探すのかぁ……

 でも、幸い時間は無駄にある。
 ひとつひとつ虱潰しで探していけばきっと見つかる。

 頬を叩いて、心を入れ替えた。

 それから少し経った頃。とうとう、目的のものを発見した。
 話は変わるけど、墓をひとつずつ回っていくうちになんとなく2種類の墓の形があることに気付いた。雑草が生え放題の管理されていない墓と、綺麗に管理されている墓の2通り。

 ついに見つけたお母さんの墓は、後者だった。
 目を疑っても、白河未春と書かれた墓は確かにそこにあった。

 近づいて、墓石を触って、真実と受け止める。
 何が正しい作法かなんて知らないから、とりあえず墓に魔法の水をぶっかけた。腹いせ半分、というのは秘密だ。

 次にしゃがみ、花を取り出す。

「…………2輪、買ってこればよかったかな。」
綺麗に磨かれた墓石の両サイドには、花を備える窪みがある。墓と花を見比べて、ため息をつく。

「ま、いっか。」
梱包用紙を丸めて燃やし、残った瑠璃色の花を1本、入れる。魔法で水も加える。

「これで本当におしまいだよ、お母さん。」
手を合わせて、言葉で呟きながら本心を心で語る。

 だからもう私の心にまとわりつかないで。過去が私を止めないで。
 私には、待ってる人達がいるから。

 自然と目も閉じられ、墓地らしい静寂が生まれていた。これでいい、これでおしまいだ。

 未だざわつく心を抑えていることに勘づきながら、合掌を続けていた。

 足音が耳に届くまでは。

「……………え。」
私は咄嗟に振り向いていた。本当に突然のことで、声が出た。その先にいた人間の顔を、私はよく知っているから。

「お父、さん……?」
束になった花を片手に、痩せぎすなスーツ姿の男が立っていた。私をじっと見て。

「…………………」
お父さんはなにも語らない。口を開こうともせず、気まずそうに視線を下にそらす。

「……………ッ!」
何も言わないお父さんに、私は一瞬手が出そうになった。現に拳を握って1歩足を踏み出している。しかし私は、そこで止まった。

 ……これが半年前なら、胸ぐら掴んで殺してたかもね。

 神になって、少し感性が変わりでもしたのだろうか。それとも、異世界の半年間のおかげか。

 見れば分かる。あんなに健康的な見た目だったお父さんが、ボロボロになっている。
 これを見て心配だとか歩み寄りだとかはしないけれど、考えなしに突っ込むのは愚策だ。

 一呼吸して、冷静になる。深呼吸は大切だ。

「何か、言うことはないの。」
「っ……?」
「以外って顔?殴られるとでも思った?」
なら、尚更殴れない。

「……すまない。」
「ん?」
「すまないと、思っているよ。」
「そんだけ?」
「……すまない。本当に、すまない……」
泣きそうな声。責めるに責められない、なんて甘えたことを言うつもりはない。

 けど……少し話くらい聞いてみようかな。
 なんて。

 どんな弁解を聞いてやろうか。どこまで聞いてやれるだろうか。そんなことばかりを考えていると、向こうから口を開いた。

「誤解、なんだ…………」
「……なにが。」
「すまない……この言い方は、正しくは、なかったね。」
唇を噛み締めて言葉を選ぶように閉口する。

「確かに、僕は不倫をした……でも、それは仕方なかったんだ……会社が倒産することになって……ストレスの捌け口に酒を呑んで…………そんな時に、彼女は『会社を建て直してやる』と僕に囁いた……」
「言い訳……?」
「聞いて欲しいだけだよ。空には、本当のことを、生きているうちに。」
お父さんの視線が墓に向いていたのは、気のせいか。

 いや、そんなんじゃない。

「こんなところでする話じゃ、なかったね。」
お父さんは震えて言った。

「お父さんの……僕の家に、来てくれないか。」
お父さんは、初めて顔を上げて私の目を見た。私は、静かに頷いた。

 何年振りの親子再会……まぁでも、もう親子じゃないよね。
 なにせ、私が頭の中で中指を立てて吐き捨てた相手だ。

 そんなお父さんは「これだけやらせてくれないか」と花を見せた。
 私は横に退いて、黙殺した。勝手に察せ、という意だ。

 そんな相手が、熱心に墓を手入れして、その見た目には不相応な花を生けた。
 1本の瑠璃色の花に、花束。バランスが明らかに悪い。

 けど、少し微笑んでお父さんは立ち上がる。

「行こうか。」
疲れたように投げかけられた。私が返事をすることはなかった。

 神になったって、変わらないものは変わらないね。

 心に4人の私がいればな、なんて空想を浮かべつつ背を追った。2メートルほど距離を空けて。

 ここから歩いて行ける距離。10分ほど歩いた先に、ギリギリのラインでビルと言えなくもない会社が見えた。

「ここどこ。」
「お父さんの仕事場だよ。」
空のお義父さんからの紹介だけれど、と申し訳なさそうに、面目なさそうに呟く。

 おんぶに抱っことはこのことか。いい具体例だ。

「用があるのはそこだよ。」
左の寮を指した。社宅といった風の家。

 何があっても反撃はできるし、いいか。少しくらいなら。

 どうせ、これも解決しなきゃいけない課題だ。この世界に未練を残しちゃいけないんだから。

 お情け程度のお邪魔しますを終えて、私はお父さんの社宅に入る。
 極端に物が少ない。そんな印象を受けた。

「そこに、座って待っていてくれ。」
ダイニングらしき場所に案内された。周囲を見ても、話せるような場所はここしかない。

 ここで全てを終わらせよう。向こうから来てくれたんだ。

 お義父さん達のこと、湯姫のこと、お母さんのこと、今回で全てを解決させよう。

 そう覚悟を決めたところで、お父さんは飲み物と共に帰ってきた。

———————————————————————

 当方、憧れている作家が数名おりますが雲の上の存在過ぎるので首が痛いです。
 見るのをやめるか自分が上に上るか……後者がいいんですけど、ねぇ。ねぇ……

 なんにせよ、このお話を完結させないことには前には進みませんから、どんどん突き進んで行きましょう!と、現在進行形で止まってる人間がいっております!

 追伸
 思いっきり時間設定ミスってました。
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