魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

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19章 魔法少女と創滅神

632話 創滅

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「死ね。」
放った一撃は、重圧創造。実験を兼ねてなんて言ったら不謹慎だろうが、物事に犠牲はつきものだ。

 ……これじゃ、死なないか。

 創滅神は、体を歪ませてなお口を開く。彼女の執着は一体どこへ向いているのか。
 世界か、破壊か、創造か。それとも私か。

「これが報いというならば、存分に受けてやろう。それで世界が美しく曲がってくれるというなら、我としては本望だ。」
「結局したいことはされちゃったわけか。」
「悔しいか?生まれたての神の子よ。」
「その生まれたてに圧倒されてるの、誰かな。」
死ぬことが決まっているというのに、どんなメンタルの持ち主だとなんとも言えない気持ちになる。創滅神は、自分自身に執着はないらしい。

「どちらにせよ未来を紡げないのだ。好きにやらせてもらう。」
「まだ足掻くか。」
私はその尽くを無に帰し、1歩また1歩と距離を詰める。空中を歩く私と、撃墜しようとする創滅神。一見するといじめだ。

 まぁいじめてんのはこっちだけど。

 早々に決着を付けようと、無理矢理攻撃の姿勢を貫く創滅神の動きを強制的に止める。が、抵抗される。

「ここ、そっちの世界か。」
はたと思い出す。そりゃあ、戦いづらいわけだ。

「塗り変えろ。」
世界を壊すのではなく、上書きする。そんなイメージで世界を変革させる。

 太陽と対立するなら、月か。

 あたりはだんだんと暗くなる。空には星が瞬く。ならばそこに相応しいのは、満天の月明かりだろう。
 皆既日食を起こすように太陽は消えていく。

「私のターンだ。」
わざわざ私が行くまでもない。淡々と、機械的に役目をこなす。

「来い。」
そう言うと、向こうは自然にやってくる。磁石が引き寄せられるみたいに。

 これでおしまいか。燃え尽き症候群、だっけ?もうそんな感じだ。

 目と鼻の先に創滅神がいる。手を伸ばせ触れられる。ゆっくり、右腕を持ち上げた。

「あぁ、惜しい。実に惜しい。我が生きて、世界の崩壊を目の当たりにしたかった。他者に託すしかできないとは、実に無念だ。」
左腕がボロボロだというのに、痛がるそぶりもなく笑って言った。

「我はお前を殺したかった。」
「そう。」
「殺せば変わると思っていた。」
「そう。」
「確かに、変わったな。お前は変革した。」
無駄話だと、私は切り捨てた。持ち上げた右腕で創滅神の胸に指を添える。

「老害は退場の時か。」
瞑目した。その顔は、諦めの中に強がりと名残惜しさが混ざっていた。

 そうか。……創滅神が固執してたのは私でも神の本能でもない。
 この、世界だ。

 だから創滅神は最期まで世界を気にし、死にゆくのだ。

 もっといい風にはできなかったのかな。

 いや、無理か。

「所詮、神は神だ。」
本能も私への殺意も本物だった。本質を見たところで今更すぎる。

「———創滅。」
触れた指の先から、創滅神の身体は粒子となって消えていく。存在が抹消されていく。

「グッドラック。」
そんな陳腐でチープな言葉で締めくくり、私は踵を返した。空気が揺れる。世界が徐々に揺れていく。

 『核盤』は創滅神の世界だんもんね。死んだら、そりゃ消えるか。

 私は偽物の王都の地面に足をついた。
 私は、勝ったんだ。

 その瞬間、世界に気配を感じた。

「お見事でございます。」
ぱち、ぱちと小さく拍手が聞こえる。

「あなたは。」
「リンズベル、と呼ばれていました。」
「呼ばれていました、ね。」
その少女は、これで3度目の邂逅となる。目の前で主人が消滅していっているのに、真顔を貫いている。

「いいの?」
「何がでしょう。」
「創滅神、死んでるけど。」
「死んだ主人に興味はありません。今、世界の主導権は貴方へ移りました。」
私は、ゆっくり創滅神の方向へ視線を向ける。もう見ないと決めていたが、そうもいかなくなった。

 これで、完全に消えたか。

 足の先から頭のてっぺんまで、綺麗さっぱり消え失せた。

 そして、目の前にまたもや文字が浮かび上がる。それが何か。予想は簡単についた。

 ———世界の改革を終了。世界の管理者が喪失したため、所有権を移行。………完了———

「これにて、私のマスターは貴方になりました。」
「あなたを作ったの、創滅神だよね。」
「所有権は世界の管理者にあります。何なりと、ご命令を。」
「あのさぁ、リンズベル……だっけ?元々、敵だったのに手のひら返しはないでしょ。」
目を細めて文句を垂れていると、更に文字が流れてくる。その文字に、より私は顔を顰めた。

 ———創滅神改め、魔導神が世界の管理者となり、全ての所有権を取得。称号の変革を開始。……終了。全ての変革を終了———

「なんなりと、ご命令を。」
私は頭に手を置いた。深いため息と共に、疲れを吐き出す。

 何が何だか。ほんと、何が起きてるんだろう……

 にわかに、足がふらついた。

「あれ…………意識、が……」
燃え尽き症候群なんかじゃない。突然体に力が入らなくなり、よろめいた。

「魔導神様……?」
「ここはもう、壊れる……から、私を……下界、に……」
「それは……」
「…………命令だ、!」
「ッ!了解しました、マイマスター。」
その声を遠くで聞きながら、ふと思う。

 私、最近意識飛ばしすぎじゃない? 

 そう思いながら、私の意識は遠くへ追いやられた。

—————————

 その日、世界が揺れた。

「……やってくれたな、魔法少女。」
待ち望んだように、笑みを口に貼り付けた。

 魔神は、安寧の地にて天を仰ぎ見た。

 いや、世界に住む全ての人々が天を見た。今まで見たこともない美しい皆既日食が浮かんでいた。それはただの現象ではない。
 天から神が舞い降りた、神々しい輝き。

「ヴァル。ようやく終わったな、余たちの戦いが。」

 自然と四神は集まった。
 大昔からの悲願が、この時この瞬間、成った。

「ワタクシの魂の反応がなくなったわぁ。あの子が、やってくれたのねぇ。」
「龍神様、貴方の願いはここに。」

 下界は、浄化されるように変革を終えた。


「空……」
時を同じくして、百合乃も空を見る。2つの意味で空を見た。

 この現象はどこからでも、何をしていてもその目に映る。
 多くの魔物も、多くの人々も。
 蓮もリュウムもロアもネルも、ユユもシャープもエージェンも、全てが瞳に同じ姿を描いていた。

 新たな神を祝福するように、世界は煌めいている。

 この日この時、世界は生まれ変わった。

———————————————————————

 ……今章最後なのに短くなってしまってすみません。ここで文字数稼ぎをして、なんとか3000字に到達させたいと思う次第でございます。はい。
 ということで、次章最終章となりました。次も次で短くなるため、650話より多いかな?程度に収めるつもりです。

 700話まで行けたらスッキリするんですけど……私も私で、この辺りで区切るのがやはりちょうどいいかなと感じていまして。
 話数的には全くちょうど良くないですけど。

 と、こんな風につらつら語っておりますと字数がどんどん埋まって参ります。

 さて、ここで少し作者である私の話をしましょうか。

 当初、ここまで続ける気はなかったんですよ。だから、いつでも終われるような、ちょっと特殊な異世界スローライフを演出していました。
 なのにこの様です。後半、ばちばちダークなファンタジーに変貌していました。私自身驚きを隠せません。
 一体誰がやったんだ!

 今章も無事終了し、最後は空の問題を解決する番です。
 今まで『異世界』という鳥籠の中で逃避し続けていた空さんにも、現実に向き合う時が来ました。
 魔法少女でも魔導神でもなく、美水空の物語に決着をつける章が始まります。

 まぁ、簡単に言えば日本に戻ってやり残したことをやるだけです。

 ではでは、文字数も稼がせてもらったところで。また数日後。
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