魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

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19章 魔法少女と創滅神

625話 魔法少女と創滅神 1

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 いかにもボス戦。そんな雰囲気をムンムンに湧き出させるこの部屋の空気。見た目。
 テンプレに沿ったようなこの空気感の中、創滅神は立ち上がった。

「ゆっくりとお膳立てをしてきた甲斐があった。今、我がお前を殺そう。折角だ。ゆっくり味わわせてもらうとするか。」
「嬲り殺しにでもするつもり?」
「そうならないようせいぜい足掻いてもらおうか。」
パチンとまた指が鳴る。すると今まで体重を支えていた座面が消え失せ、尻餅をついてしまう。

「……痛い。」
地味な嫌がらせをされ、腰をさすりつつ起き上がる。

 確かにまぁ、雰囲気が出るようお膳立てされた感はあるけど…………わざわざ私を殺すために気合い入れすぎじゃない?

 右手にステッキ、左手にラノスを握る。

「やられた分くらいはし返したいよね。」
半年間の恨みつらみを拳に込めて、ステッキを差し向ける。

「重力世界。」
その一言が世界の命運を左右する最後の宣言となった。

 もうやるしかない。

 まず駆け出した。相手に魔法なんぞ効かないとは思うけど、ものは試しだ。
 立ち上がったまま私を見下す創滅神へ、神速で接近する。

 なんの武器も構えずにって……舐められすぎてない?

 そんな心配は頭から振り落とす。無駄な思考が、ここでは命取りになる。

「ぁぁぁああッ!」
叫びながら創滅神の斜め上から現れる。どうせ、神速の速度程度じゃ撹乱にもならない。

 少しくらい避けて欲しいんだけどな。

 余裕綽々、飄々と目を細める創滅神にそんな感情を抱く。

 私の手には巨大な槌。ステッキが持ち手になり、左手を添え、バチバチと電撃が弾ける音を耳元で聞きながら思い切り振り下ろす。

「いい魔法だ。」
それは片手で受け止められた。そのままトンっと奥に押されると、とてつもない圧力に後方へ飛ばされた。

 重力世界があるっていうのに……

「少々動きづらいな。が、許容範囲だ。」
手を握っては開きを繰り返し、階段をゆっくり下る。急ぐ必要はないと言わんばかりに、一段一段降りていく。

 魔法名、叫んでる暇なんてない……!

 ステッキに魔力を込め、魔力光が燦々と煌めく。心で放てと叫ぶと、創滅神の周囲に暴風が巻き起こる。

 その隙に、大きく右足を踏み込んだ。

「神速っ。」
気合いをいれるように言葉を吐き、エアリスリップによる暴風へ突っ込んだ。

「ほぅ。」
目を細めている創滅神を、激しい風の中で捉えた。

「動いちゃダメだよ。」
その位置から移動させないため、空間を固定する。左腕を繋ぎ止めているのと似たような状況を作り出す。

 本来なら岩をも穿つ水弾なんだけどなぁ……まるで小雨同然みたいに。

 涼しい顔をする創滅神に苦情を浮かべる。

「この程度ではかすり傷ひとつも難しいぞ。」
「はいはい!今からやるから黙ってて!」
一瞬だけ、精霊解放と龍化を。龍法陣を使ってゼロ距離射撃を狙う。バーストを織り交ぜた、爆裂レーザー。

「流星光槍!」
それに加えて重力で加速させた光の槍を放つ。目の前は強烈な閃光と爆煙に支配され、視界は奪われた。

 ……ダメ、か。

「いい戦略ではあったな。」
しかしその顔には期待はずれとはっきり書かれていた。

「この程度では温い。まだまだ、本気を見せてくれ。そうでないと絶望は引き出せないだろう。」
階段の中ほどから、重力に押しつぶされているはずの創滅神は何事もないように言ってのける。しかも、そのまま降りてくる。

 どうすれば…………

 ない脳を無理矢理回転させ、絞り出す。何か案は、打開策は。
 四神の言葉を思い出す。

 この世界ではない魔法を使えばいい。それが有効だ。そんなような話を聞いた気がする。
 けど、それを今使ってしまっていいのだろうか。

 ……創滅神なら、慣れるかもしれない。皇帝だって、ラノスをすぐに見切ったし。それ以上のことをしてきても不思議じゃない。

 私はラノスの銃口をあげ、見え見えの時間稼ぎをする。パァァンッ!と5度音を響かせる。

 そのすべては虚空へ飛んでいった。

「物体は何があろうが空気中に存在しているものだ。気流程度、いじれて当然。」
「性格悪いと嫌われるよ!」
「結構だ。」
その言葉を発した時には再び駆け出していた。ステッキは宙を舞っていた。私が投げた。

 来い!トロイ!

 その願いに呼応するようにステッキから降ってくる巨大な銃。それを神速で回収し、己に重力を課して急落下。創滅神の眼前に着地すると、銃口を押し付けて引き金を引いた。

「ぐっ…………」
反動で手がイカれそうだったが、身体激化で堪えた。痺れた手に代わり、ブーツで創滅神の腹を蹴飛ばしてトロイを後方へ投げ飛ばす。

 足の感触は……芳しくないよね。

 まるで柱でも蹴っているような感覚を思い出す。

「これが神をも殺した凶弾か。はっはっはっ!我とて、少し焦ったな。」
腹には、少し焦げた服の跡があった。

「この服は気に入っていたが、仕方あるまいな。」
「がッ!」
創滅神が手を挙げたのは見えた。どこか諦観した顔を捉えたところで意識が飛びかけ、無理矢理全身に魔力を巡らせることで正気を保つ。

 やっ……ば!死ぬかと思った、いや死んだ……

 ギリギリのところで膝を地面につけ、立ち上がる。トロイとステッキは無惨に放り捨てられたままだ。拾いに行きたいが、許してくれるわけがない。

「言ったろう?気流をいじったと。」
ニヒルな笑みを貼り付けて、さらに言葉を付け足した。

「結局のところ、お前はズブの素人。力を出せ。」
咄嗟に左腕で胸を庇った。激しい衝撃に身が揺れ、飛ばされた。壁に激突し、肺から空気が抜け落ちる。

 確実に背中やった……痛すぎる。

 体の悲鳴に耳を傾けてながら創滅神の姿を見れば、少し感心したように息を吐いていた。

「そうだ、その顔だ。そのやりきれない表情こそが絶望の一途となる!」
「うる、さいっ!」
残った力でなけなしの弾を3発。仰向けのまま、腕が3度跳ねる。無論、当たるはずもない。

「立て。我の恐怖した相手はこのようにひ弱な存在ではないはずだ。」
「んなこと、言われても……」
体に巡らせた魔力で無理矢理身体機能を保っている。重力世界は私達に丸投げし、重い体を持ち上げる。

 うまく頭が働かない……1発くらったくらいでこれって、もろに喰らえば……

 即死。頭にその言葉が浮かぶのに1秒もかからなかった。

「では、こうしよう。」
突然景色が移り変わった。

「ここでなら本気も出したくなるだろう。」
「……パズール?」
西洋風の城ではない。そこは青空と、見慣れた街の姿。

「ここは下界と繋がっている。」
「……ッ!」
嘲笑うように弧を描く目に、私は視線で怒りを放つ。

「どこまでイカれてるんだよ……」
ギリっと歯を噛み締める。

 どこまでも自分の欲を満たすために動くのか、この神は。本当に、狂ってる。

 創滅神はそんな怒りなど意に介さず、その手のひらに魔力を踊らせた。

「あと5分。」
「……どういうこと?」
「あと5分後にコレをぶち撒ける。この街を容易く焦土にする威力はあるぞ?」
その言葉には嘘はなさそうだ。その自信に重なり、膨大な魔力が全てを物語っている。

「それを消せとか言わないよね?」
「消せるものなら消してみればいい。」
「消せないから聞いてんの。」
「我に攻撃を当ててみよ。そうすれば、この街の破壊は取り下げよう。」
その提案は、私にとってメトローンのゲームよりもクソゲーに思えた。

———————————————————————

 とうとうこの時がしましたね。
 意外と早く終わりそうでびっくりしています。そして内容の適当さにもびっくりしてます。時間ないんですすみません。

 創滅神と空さんが戦うのは、《女王蜂》戦あたりから考えていたことなんですよね。それ以前はどう終わらせるか迷ってましたが、まさかこんな適当になるとは。

 まぁ、これはこれで……あり?
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