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19章 魔法少女と創滅神

620話 魔法少女と『天啓神』

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 光の中へ飛び出して、階段をいくらか上ったところ。そこでようやく使徒の背中をとらえた。
 床は、本当に自分が立っているか不思議なレベルで黒い。光が全く反射されていない。

「これって『核盤』に向かってるんだよね!」
「お静かに。」
「あ、ごめん……」
たったったっ、と階段を駆け上がって1段後ろへ辿り着く。そこで、今度は囁くように尋ねてみる。

「気持ち悪いです。」
「……もういいや。」
興味を失ったように、景色に視界を移した。

 『神盤』も『銘盤』もいやに明るかったけど、ここはもっと……いや、ゆっくり暗くなっていってる?

 階段を上るにつれ、最初に感じていた閃光のようない印象が薄れていってる。慣れただけではない。確実に薄暗くなっていってる。

「この先、中継地点があります。そこに1度立ち寄ります。」
「なんで?」
「そちらが『銘盤』と『核盤』の境目になっておりますから。『神盤』から『銘盤』では特殊船にての移動が可能ですが、ここからは狭間を通って次元を越える必要がありますので。」
長ったらしい説明に、最近覚えたばかりの神界隈のワードの波。押しつぶされそうになりながら、なんとか整理させる。

 めちゃくちゃ厳重体制だけど、まぁそんなものだよね。ラスボスって。

 しばらく階段を上って、何度かあとどれくらいか尋ねそうになったところでふと、シャープの意味深な言葉の数々を思い出した。

 創滅神が私に執着……?確かに転生させられたけど、それだけなような……

 未来の私もそんなようなことは言っていなかった。……からと言って、語られなかった可能性も捨てきれない。あの私は何を考えてるか本当に分からなかった。

 めちゃくちゃに長い階段をそれなりに上る。どこまで続いているか分からないから、終わりの見えない長距離マラソンでもしてる気分。
 魔法少女服なかったら、足がパンパンになるどころの騒ぎじゃないだろう。

「こちらです。」
しばらくしたところで、何もない階段の途中で彼女は足を止めた。

「こちらって……どちら?」
という純粋で至極真っ当である質問には答えず、綺麗な右向け右で向きを変えた。

 いやだからどちらよ。

 心の中で再度ツッコミをすると、突然道ができた。手を壁に置いたら、氷が急速に溶けて無くなるように道が出てきた。

 わぁお。使徒マジック……

「このまま進んでいても何もありません。永遠に終わらない道を歩くことになります。正確に、ここを通らなければ辿り着くことはないです。」
横道を通り抜け、また歩き出す。

「ねえ。なんであなたは私を案内してくれるの?おかしくない?」
そもそもの問題を問う。だって、圧倒的に敵。

「知る絶望と知らぬ絶望。知らぬ間に死んでしまうより、知って絶望し死にゆく様を見たい。そう、創滅神様はおっしゃっておりました。」
「うわぁ……この上なく性格悪い。」
「あ゛?」
「いや、あの、申し訳ないです。」
その圧に負け、私はおずおずと引き下がる。猛獣から後退りするように。

 この使徒ほんとに怖いんだけど。

 創滅神を殺す側、それを連れてくる側、本人。この構図を成り立たせる方程式がいくら組んでも生まれない。だって、殺害予告してるやつを家に呼ばないでしょ。

 しかし向こうは逆に殺し返す覚悟が決まってるらしい。とんだ変人……変神だ。

 またまたいくらか歩いた先。そこは行き止まりだった。光の壁が立ちはだかっている。

「あれ、私はめられた?」
「貴方は創滅神様がその手でもって殺しますから、安心なさってください。」
「安心できないよぉ!それ!」
その言葉は本当に信用できるのか。というかそれ以前に殺される前提なことについて叫び、その声は光に吸収されるように反応されることはなかった。

 あれだけ神界で殺されかけて……なに?つまり私、いい餌を食わせまくって肥えた状態で殺される豚みたいなもの?

 さらに苛立ちが増加する。
 初めの頃は「いつか会ってやる」みたいな目標的な立ち位置だったのに、いつの間にか殺す相手になっている。なんの因果だ。

「ここから次元を移動します。次元の狭間、とでも言いましょうか。」
足で、地面をトントンと叩いた。光の地面は波紋を広げ、徐々に浸透し歪んでいく。

 ん……?なんか体に浮遊感が?

 と思ったら、歪む光のなか私達はぷかぷか浮いていた。

「え?」
「口を閉じてください。舌、噛みます。」
私はボールのようにぶっ飛ばされた。


「上には上って、物理的すぎない……?」
真っ青な空、緑の大地。天国パターン2くらいの景色を広げている土地に立ち、呟く。

「ここ、どこなの?」
「『天啓神』の住処です。どれだけ探そうが、どれだけ足掻こうが、『銘盤』からここへ向かうのは不可能ということです。」
「真っ向からさっきまでしてたこと否定してくるね。」
人の心を折るのに特化したような性格だ。ジト目で早足になる背中を睨む。

「光だけだったり闇混ざってたり、青空だったり。どういう仕組みなの?この世界。」
「ここは『天啓神』が管理を一任されております。彼女の趣味でしょう。」
「趣味て。世界を趣味で染めないでほしいんだど。」
「そもそも、下界自体創滅神様が好きなように創造なさった世界ですので。」
話してる規模がデカすぎて、話を紡ぐ気になれない。スケール、もっとスモールに。

「素敵でしょう、この空。」
どこからか声が聞こえてきた。名前を呼ばれたと思ったが、どうやら文脈的に上のアレのことのようだ。

「彼女が『天啓神』エージェン。」
「アナタがレリアル様に狙われてるという……へぇ、なかなか面白そうね。」
ぺろっと舌なめずりをした。しかし、そんな妖艶そうな仕草の前に1つ言いたいことがある。

 服着ろよ。

 全裸だった。
 そもそも神が服着てるという時点でアレなのかもしれないけど、服ありが普通の脳をしていた私にいきなり全裸をぶつけられても困惑しかない。

 現状、思考停止している。

「自ら死地に飛び込む勇気は賞賛に値しますよ。」
褒めてるんだから貶してんだか分からないけど、笑みを湛えて拍手していた。

 うーん……このコンビ、真逆なタイプだ。

 淡々としまくってる使徒と、独特な雰囲気のある『天啓神』。神の声を告げるとか言っていたから、もっとこう、女神様的なものをイメージしてたんだけど。

「全裸、ねぇ……」
そこはもう暗黙の了解だ。10人中10人がないと言えばない。

 この場にいる全員が気にしていないなら、それは気にするものではないということだよね!

 そう暗示をかけ、なんとか納得まで漕ぎ着けた。

「それで、こっから『核盤』に行くんだっけ?」
「はい。ここは中継点なだけですから。」
軽く挨拶を交わした程度で、もう去るらしい。『天啓神』については全裸であること以外何も情報がない。

 もうちょっとゆっくりしててもよかったんだけどなぁ。疲れたし。

 そんな願望の真逆をいかれる。足は止まらない。全裸のエージェンさんはというと、聖母の笑みで手を振っていた。

「ワタシはレリアル様の言葉を他者に落とすことしかできないから、この言葉だけ送りましょう。『楽しみにしている』。」
「今言うことじゃないよ確実に!」
「早くしてください。創滅神様をお待たせしてはいけませんので。」
「ちょ、引っ張んない……でっ!?」
存在がボケに挟まれて、ツッコむ間もなく空に飛ばされた。

 だからなんでこんな物理的!?

 私と使徒さんは青空を突き抜け、闇の世界を潜っていった。

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 この度coverさん、予約していたダブルワクチン接種をすることとなったんですよ。
 つまりはそういうことです。

 以前副反応で38.5度熱出したんですよ!?もしかしたら投稿されないこともあるかもしれませんが、その時は「こいつまた死んでんな」とでも思ってやっていてください。
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