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19章 魔法少女と創滅神

619話 魔法少女は早くも再会

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 ユユとの休憩も終わり、程なくしてのこと。
 バレないようにこっそり探し回っていても、それは砂漠の中で一粒の砂を探すような行為だ。
 馬鹿馬鹿しいにも程がある。

「ほんとに何かない?役立つ情報。」
「『天啓神』なんて、『銘盤』の神でもそうそう出会える神じゃないんだ。そう簡単に見つからないさ。」
「にしたって、普通に探して見つかる場所に道があったら、誰でも行くでしょ。」
「それはそうだけど……」
うむうむと悩んでいると、ふとある言葉を思い出した。

 確かアウラはこう言ってた。『『天啓神』より授かった任を受けた『刈命神』が、消息を断ちました。乗船していた者は全て検問させていただきます』と。

 『天啓神』から任を授かったというアウラなら、居場所を知っているのではないだろうか。

 いやいやいやいや。あの神が教えてくれるわけがない。『天啓神』ってのはラスボスへの片道切符みたいな存在だ。(勝手にそう思ってるだけだけど)
 そんな相手のことを簡単に教えるわけがない。

「なら、手を組んでそうなラグダスは?」
「ん?」
「いや、『天啓神』と繋がってそうじゃん。」
「確かに……可能性はないとは限らない。」
「なら会いに行ってみようよ。もしかしたら、まだ簀巻きかもしれない。」
思い立ったが吉日というように、私達はつい先ほどまで死にかけていた場所に舞い戻ることにした。

 まぁ死にかけてる時点で吉日どころか人生最底辺レベルだけど。


 てなわけで戻ってきたコロッセオもどき。
 こそこそっと中を覗く。

「もっと詰めてくれないかい。」
「こっちもきついの。」
ぎゅうぎゅう詰めで隙間から覗く。何か影が見える。2つ、神の気配もある。

「簀巻き神いる?」
「『刻狂神』ね。」
「まぁ、神っぽいとこ見たことないし。」
印象で名前を決めるのは覚えやすくていい。名前も一緒にくくりつければ思い出せるし、一石二鳥。

 最初は怖かったけどもはや簀巻きされてるだけの神だし。……あれ、あのイケオジ帰ったから今の簀巻き野郎は簀巻かれてないってことじゃ?

 嫌な考えはよそう。人生ポジティブが1番。レッツポジティブシンキング。

「あれ、あそこにいるのってシャープじゃない?」
まだいたんだ、と予想外の状況に少し警戒を強める。

 ということは、反応の正体はシャープと簀巻き神ってことね。

「私から離れないで。」
「……うん。」
重力世界ではなく、空間を張った。隔離空間。私達の周りだけ、私の絶対領域となっている。

 神の世界での理の力ってめちゃくちゃ強化されてるから、便利だよね。
 それが神によらないものだから、さらにここでは効力を発揮する。

 一歩、進入した。

「どこのネズミかと思えば、君たちか。」
中央から声が届く。私でもユユの声でもない女のような声。

「いやはや、犯罪者は現場に戻ってくるとよく言うがよもや本当に戻るとはな。」
「……まさか、そんなののために待ってたの?」
「たわけ。そんなことあると思うか?」
シャープはすでに平静を取り戻しており、余裕を持って会話に乗ってくれる。

「そこの簀巻きに用か?」
「そう、そこの神もどきに用。」
視線をそちらに向ける。面白いくらい激怒している。悔しいというか、絶対ぶっ殺すというオーラを感じる。

「よもやそこの男は協力者をも手をかけようとした。豪胆だ豪胆だ!だからついでに、断罪しておいた。」
それを聞いて安心した。襲われる心配はなさそうだ。

 というか、確かシャープも『天啓神』から私のことを聞いたとか言ってたよね。

 私の記憶力が正確であれば、だ。

「ついでに聞きたいんだけど。」
「ついでなら聞かないが。」
「なら聞きたいんだけど。」
視線をシャープに戻す。まだ席に着いている。

「『天啓神』の居場所、知ってたりしない?行きたいんだけど困ってるんだよ。」
「殺神に破壊行為、逃走、侮辱……罪状をあげればキリのない君が、私に教えろと?はっはっはっ。強かなのは認めてやろうが、私は断罪の神。罪を斬っても、加担はしない。」
「なら私を断罪しないのはどうなのかな。」
分かっていながら聞く。「性格の悪い奴め」という視線の矢が上から降ってくるが、外面の盾でそれを防ぐ。

 神は性格がないわけじゃない。ただ役職に引っ張られるだけでね。
 メトローンが遊戯に堕ち、死ぬのを抵抗しなかったように。だから、教えてくれるかもしれない。

 そんな一縷の望みを託し、返答を待つ。

「分かってるでしょ、創滅神のしようとしていること。」
「何のことか分からないな。」
しらばっくれようとしているのか、はたまたただのおふざけなのか判断しづらい。

「今下界ではすっごい戦闘が起こってる。創滅神が送り込んだ使徒やら教徒やらが暴れて、対処が遅れてたら大陸が滅んでたレベルのね。」
「それはそれは。」
「創滅神はこの世界を滅ぼそうとしている。」
言い切った。特に驚きもない表情でそれを飲み込み、ふっと息を吐いた。

「神の流れで下界で変化が起きているのは知っていた。創滅神様が何かに執着しているのも知っていた。それは、君だろう。」
どっかの神はいないものとし、シャープは肩肘をついて呟いた。

「だから、君を排除したかったが……見ての通り無理だった。」
「私が……?執着?」
「なんだ。君は気づいていないのかね。」
ニヤリと笑った。やはりダグラスはガン無視。というか、さっきから奥で叫んでる。

「君は創滅神様のお気に入り……いや、殺すべき生命体だ。」
「だから、何言って……」
「本当に気づいていないのか。」
笑いもだんだんと薄くなり、呆れかえって肩をすくめた。

 というか、なんでこんな話に……?
 『天啓神』の居場所聞きたいんだけど……

 なんて思っていても、全く教えてくれそうにもない。

「君は仕組まれているんだ。興味本位でこの世に連れられ、そして恐怖し葬ろうとした。身で持って体感した。君はとてつもない何かを有しているな。」
ここまできて悟った。

 話の復帰無理だこれ。

 仕方なく向こうの話に合わせる。
 まとめれば、創滅神は私に固執して殺そうとしていると。世界の滅亡はそれに関連すると。

「いやいや、そんな……」
嫌な予感を感じて、謙虚風を装う。

「言葉にはできないが、必ずあるさ。君には、唯ならぬ力が。それも、圧倒的にご都合的なもの。」
「なんか、ふわっとしてない?」
「仕方あるまい。実際ふわっとしている。」
にわかにカンッ!と音が鳴る。シャープが木の小槌で音を響かせていた。

「どうやら創滅神様は待ちきれぬ様子だ。」
私から視線を逸らしたシャープの目の先は、断罪される際立っていた舞台上の中央に定まっていた。

「『天啓神』からのお告げだ。君はそこを通りたまえ。」
視線の先。光に塗れた空間、その中に闇の階段が現れた。その奥から気配が降りてくる。

 あれ……見たことあるような?
 神、じゃない。ってことは、使徒?

 神は神っぽい雰囲気を持っている。特殊能力からか、はたまた生成する生命力からか。
 でも、あれはまさしく人形のような身体をしている。

「『核盤』へようこそ。」
「……あの時の。」
「ええ、お世話になりましたね。」
私の口は開いたまま閉ざされない。目の前にいたのは、過去から戻る際に対応された女性だった。

「ソラ……知ってるのかい。」
「使徒だよ。」
「使徒…………?」
困惑の中に、若干のわくわくが見えた。見なかったことにした。

「では、ご案内しましょう。」
綺麗にターンし、光の中へ入って行った。どうすればいいか分からず、首を振る。シャープは恭しく頭を下げていた。ユユは……

「言い忘れておりましたが、そこにいる一般神は同行不可ですのでご注意を。」
「ダメなの?」
創滅神は極度の潔癖症なのかもしれない。そう思っていると、「あ゛?」という視線が私を確実に射抜いてきた。怖い。泣きたい。

「あたしはここで待ってるさ。ソラ、最後にひとつ。」
おもむろに私に接近すると、軽く抱擁される。

「あたしは情報屋だ。あんまり役に立った気はしないけど……あたしは、情報屋だ。」
「……はいはい。」
守ればいいんでしょ、と心の中で呟いた。

 置いていくのは心配だけどね。流石に、殺されはしないでしょ。

 最後の別れを済ませ、私は急足で光へ突き進んだ。

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 えー、今話、本来なら存在しなかった話です。じゃあなぜあるかと言いますと、ハンバーグのつなぎ的な感じです。

 どうやって『核盤』に行こうか。そう思った時、2つの選択肢が浮かびました。

『このままダラダラ続けて確実に道を掴む』
『折角神とかいうトンデモ存在いるんだから頼っちゃう』

 この2択です。

 つまり、これは後者。前者を選んだ場合、もう体力がミジンコ並みに衰えてきている私にはキツイ展開となります。
 そのために、こんな無理矢理展開になっております。

 今話を一言でまとめますと、空さんが『核盤』へといくためのお別れ回って感じです。
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