魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

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19章 魔法少女と創滅神

617話 魔法少女はゲームスタート

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 神も大概野次馬根性が備わっているらしく、我先にと爆発源に集まってガヤガヤと騒いでいる。
 多分、中にいる神は木っ端微塵だ。その辺は可哀想とは思うけど、まぁ神だしと頷いておく。

 そもそも罪人だしね!問題ない問題ない。

 クソみたいな理論を吐き捨て、高みの見物を高みで見物している。

「そろそろ隠れたほうがいいんじゃないかい?『天啓神』の下に行くったって、見つかってまた捕まったら世話ないさ。」
「そうだね。」
適当に登った建物から降りて、フードを被った。怪しさ満天だけど、ないよりマシ。

 ユユ曰く、『銘盤』の各班にはそれぞれ『天啓神』に至る道があって、そこから神の声を聞くらしい。
 つまり、その道とやらを探さなきゃいけないわけだ。

「直談判なんて、うまくいくのかい?」
「いく保障もいかない保証もないんだから、行ってみないと。」
「行き当たりばったりすぎて怖い。」
そそくさとその場を去る。できるだけ中央から離れて、脇道脇道を進んでいく。神の世界の建物は本当に適当に建っており、街全体で要塞のようだ。

「ユユ、何か心当たりとかあったりする?」
「あると思う?」
「ないと思う。」
じゃあ何で聞いたと聞かれれば、作者の都合と言わざる得ない。

『メタい』
久々のツッコミが脳を冴え渡らせる。時々ツッコミウムを摂取するのも悪くはない。

『勝手に新種の元素生み出さないでもらって』
それは置いといて、この辺りで位の高い神をユユに尋ねる。

「この辺りの神と言われても……そんな詳しいことまでは分からないんだよ。」
情報屋と言っても機密情報まで分かるわけじゃない。そう言って難しい顔をした。

「この前言った『与命神』とか、ちょっと意味合いが違うんだけど……『遊戯神』なんかも危険。『魂魄神』も厄介かも。」
つらつらと並べられるその名に、ちっとも聞き覚えなどない。気になったと言えば、遊戯の神がいるということだ。

 遊戯の神って、何するんだろう。名前だけじゃ分かんない。

「それって、僕のことだったりしないか?」
「いや知らないけど…………………誰。」
その瞬間、私は即座にユユを抱えて神速を使った。

「逃げるよっ!」
身体中に小さな震えが広がり、鳥肌が立った。本能のまま逃げていると、何かに阻まれ激突する。

 障壁…………?

「『遊戯神』は僕だ。名はメトローン。君、面白そうなことしているな。」
気づけば目の前に『遊戯神』を名乗る神が現れた。周囲にあった建物は消え失せ、そこには障壁で囲まれた何もない空間が広がっていた。

「僕のゲームに参加したな。」
「いやしてないけど。」
何とかユユだけでも逃がそうと後ろに回す。神は神でも、非力な神だ。守らないといけない。

 これ、なんのクソゲー?
 大事な情報抱える戦闘不可の神を守りながら戦闘とか……まぁ、勝手に動き回るタイプじゃないだけマシか。

「始めよう、連帯創傷ゲーム。」
パチンと指が弾かれ、私は強制的に名前からして痛そうなゲームを始めさせられた。

「ルールは簡単。1ターンに1度、アクションを起こせる。例えば『攻撃する』なら、1度攻撃できる。『歩く』なんてお茶を濁す行為は不可。盤上で身体の損傷を起こす必要がある。」
私とメトローンの間に巨大なサイコロのようなものが生まれた。

「勝利条件はどちらかが倒れた時。その際、勝者はゲームで負った傷全てがなかったことになる。敗者の負傷はその身に刻みつけられる。」
サイコロが回る。青色の魔力光と赤色の魔力光がそれぞれ一面ずつ、半々で光っている。

「止まれ。」
その言葉通りに、サイコロは突然全ての運動を止め静止した。その色は、赤。

「これ、イカサマ?」
「ただの目押しだ。君が言わないから、僕が代わりに言ってあげたんだ。」
「そんなルール聞いてない。」
「聞かれなかったし、言わなくても不都合はない。」
「今出てるよ。」
と、こんな建設的でない会話をしていても何も始まらない。ゲームは始まってしまった。

「じゃあ僕が先攻で。」
「いいの?後攻じゃなくて。」
何やら押し付けられたような気もしないでもない。ただ分かるのは、これは後攻不利なゲームということ。

 ルールだけ教えられたけど、どういう趣旨か分かんないし、どう進めればいいかも分からない。
 ルールだけ教わって、駒の動きを知らされずにやるチェスみたいなものだ。

「…………ッ!」
突風が吹きつけたような衝撃を肩に感じた。思わずうずくまる。

「血……?」
手にはベッタリと、鮮血が張り付いた。訳も分からず前を向くしかできない。

 連帯創傷って、そういう……

 ようやく理解した。このゲーム、先攻だろうが後攻だろうが、私に不利なことに変わりないゲームらしい。

「君のターン。」
そう言ったメトローンの右肩からはドクドクと血液が流れ出ていた。

「絶対、自傷じゃないとだめなの?」
「そんなことない。そんなのじゃあ、本気になれない。」
にんまりと楽しむような笑み貼り付け、口にする。その言葉全てが狂気に感じる。

 自分が受けたダメージをそのまま与えるのか、与えた攻撃を同じく与えるのか……似てるようで違う。この場合、どっちなんだろう。

 ステッキを左手で持つ。右肩は使い物になりそうにない。

「トール。」
鋭い雷撃が飛ぶ。アクション中じゃないからか、メトローンは動かない。その腹に確実に命中した。

 ……ちょっと痺れた。

 メトローンの焦げついた腹部を見る。余裕そうだが、本当に余裕なのだろう。

 私は雷系統に対する完全耐性がある。なのに、痺れたってことは……

 ダメージそのものを移動させる。つまり、私がいくら攻撃したところでダメージは通らない。そんな時間稼ぎは意味ないし、自傷以外の道はない。

 ここは遊戯の神の領域内。空間も重力も大した威力はないだろう。絶対の強制力が働いている。

「次は僕だ。」
何処を狙おうか。私を見て、自分を刺す位置を決めている。

「心臓はやめよう。君が死んでしまう。」
「自分も死ぬからじゃないの?」
「別に死んだって構わない。ドローになれば再戦になるだけだから。」
長考の末、左膝という結論に至った。私の膝は槍にでも刺されたような傷が生まれた。

「少しでも長く遊びたい、そう思うのはおかしいか?」
当然とばかりに言ってのけるメトローンは、君の番だ、とゲーム進行をつつがなく済ませようとする。

 このままじゃ完全にジリ貧…………というか痛い!めちゃくちゃ痛い!

 左膝と右肩。まともに立てないし、動けない。

「どうした?パスするか?」
「気ぃ、短いね。」
痛みを歯を食いしばって耐えて、ステッキを支えになんとか立つ。

 これ、マジでどうしようもないじゃん。

 ステッキからラノスを出す。右腕じゃあ反動が痛むけど、仕方ない。

 自分の左腹部を狙った。命中した。私の腹から血液が漏れ、制服を血まみれにする。
 メトローンの腹からも血が流れる。

「僕のターン。」
地獄の宣言を耳に捉え、あと何回保つだろうとそんなことしか考えられない。

「ソラ……」
後ろから小声で聞こえてくる声には、恐怖と不安でいっぱいだ。

 どうにか、しなくちゃ。

 死ぬことはできない。百合乃も、みんなも、待っている。

『私』

 なに?

『要件、分かってるよね?』
私Aが代表して語る。もちろん、同じ私なんだから言いたいことは分かる。

『確実性なんて微塵もないクソみたいな方法と、このまま耐久戦するとかいうクソみたいな戦法、どっちがいい?』
結局クソなことには変わりないらしい。けど、私が思いつく作戦なんか大概クソだ。

「もう少し付き合うかぁ。」
後2回は保って欲しい。そう願いながら、新たな痛みを受け入れた。

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 人生、本気でやる気が出ない時って多々ありますよね。
 それが今です。
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