魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

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19章 魔法少女と創滅神

613話 魔法少女は大逆転

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「断罪するのは決まったことだが、弁明のひとつでも聞いてやろう。」
感謝したまえ、そう豪語してにんまりと気色悪い笑みを浮かべた。

「そもそも、そこのあたり繋がってません?『天啓神』『断罪神』『痕跡神』『刻狂神』と。私を陥れようって考えが見え見えで、もっと工夫してほしいよ。」
「面白い憶測だ。汚いレッテルを貼らないでもらおうか。」
「じゃあ、アウラに見て貰えばいいじゃないですか。『真偽神』っているんでしょ?アウラに見てもらって、その真偽を確かめる。それで繋がりの証拠は見つかる。」
あえて回りくどく、かつ順序立てて喋る。矛盾しているようだけど、話の方向を変えているだけ。

 簡単に言えば、私の罪をなかったことにしよう作戦だ。私の話から逸らして、向こうが結託してる証拠を見せてしまって逃げる。
 私の腕の見せ所だ。

「そもそも私、バビロンを殺したなんて言いましたっけ。襲われた、とは言いましたけど。」
「それは君の所持品から生命力が検出されていることから、証拠はある。」
「攻撃を防御しただけですよ。」
嘘八百を並べ、その中に1個くらいは本当を混ぜる。まるで被害者になったように騙る。

 被害者であることは変わりないけどね。私は襲われた側。罪は無いよ。

「ほう、確かに言い分としては認められんこともないな。」
少し目を細めて、どうしようかと考えている。

「これでも私は『断罪』の神として長い。罪で無いものを断つことは躊躇われるな。」
顎に手を添えて呟く。心でガッツポーズを決めた。

「———が、神の名を詐称したことについては言い逃れできまい?」
「え。」
勝ちを確証した自慢げで、煽るような笑みを確実に私に向けて放った。

「『断罪神』、一言いいかい?」
にわかに、外野から声が出る。立ち上がったのは、ラグダスだった。

「許可しよう。」
「特殊船内にて、私は彼の少女に遭遇し会話を重ねたのです。そして、確かにこう名乗りました。「『重換神』セレスト」と。」
「事実かね?」
「ええ。疑わしいのなら、『真偽神』なりそこにいるアウラに見てもらえばよいでしょう。」
見下げるような視線がそこから飛んでくる。完全に抜けていた。一瞬、顔に出てしまう。

 ここまで全部出来レースだった……?私が言い訳して話を逸らそうとしたところで、一気に落とす……性格悪いにもほどがあるでしょ!

 さすがは創滅神直属の神達だな、と逆に感心してしまう。

「万事休す、とはこのことか?」
「……元からこうなるように仕組んでたんでしょ。」
何を施しても同じだった、というわけだ。覚悟もできぬまま、斜め下を見て言葉を絞り出す。

「君の罪は確定した。判決を言い渡そうセレスト、死刑だ。」
キィ、キィ……床を擦る音が響いた。鎌を持った小さな子供が歩いてくる。

「さて、私の仕事はこれまでだ。私の断罪からは逃れられないと知れ。」
カンッ!と、また小槌の音が鳴る。閉廷の合図だ。

「変わりまして、わたくしめが。」
幼い声。それと釣り合わない得物。

「其奴は君の殺したバビロンに変わり、新たに生み出された『刈命神』だ。其奴が生まれた時点で、とうの昔に罪は確定していた。とんだ飾り裁判だったな。」
椅子の上から笑い声が聞こえる。裁判ですらなかったろうに。

「何もかも、舞台装置ってわけね。」
私は手錠をかけられている。普通に処刑していればいいものの、こうやって公開処刑するために準備をしていたようだ。

 ほんと、神ってこれだから嫌いだ。今すぐできることをせず、回りくどく最悪の最善を選ぶ。

 これだから、分かりやすい。

 人間とは感覚が違いすぎる。だからこそ分かりやすい。

「別に、私の能力が制限されたわけでもないしね。あなたには申し訳ないけど、後釜が勝てると思ってる?」
子供の足が止まり、顔は驚きに染まる。

「そこから先は私のテリトリーだよ。」
重力世界が広がっていた。手錠は『断罪神』の決定力で破壊できないが、あの子供は違う。

 私が逃れられないんじゃない、あの子が逃れられない。使命から。

「首刈じゃなくて、自殺でも命じればよかったんだよ。まぁ、もう遅いけどさ。」
まるで縫い付けられたように代替の『刈命神』の足は動かない。動かそうとしても、そこだけ箱で固めれたように止まっている。

「セレスト、何をしたんだ?」
この状況でもまだ粛々と進めようとする『断罪神』に視線だけを送る。

 本当に、神は神なんだね。いくら役職が付こうが、性格が変わろうが、本質は同じなんだよ。
 理、秩序、それに準じたものにしか従わない。従えない。

 そう考えると、創滅神の行動にも合点がいく。創造と破滅、その2つしかできない。その2つにしか娯楽を感じない。

「何をしているんですか?……シャープ!私がやらせてもらおうか!」
イライラしているのか、形式など無視して呼び捨てしにて舞台上に降りてくるラグダス。

「しないほうがいいよ。」
「どういうことです?」
こちらに歩みを進めようとしているラグダスに助言する。

「今の私はそこの子を除いて、誰も殺せない。」
「何を言って…………まさか!」
目を剥いた。その次に、『断罪神』改めシャープに向かって叫ぶ。

「早く断罪を取り消せ!」
声を荒げて、身振り手振りで激しく伝える。

 取り繕わないとこういう性格なのか。イケメンが台無しだ。

「1度決めた断罪の理を変更できるわけないじゃないか。」
「このままではこの女を殺せない!」
「その場合私の存在は消え失せるのだ、やるわけなかろう。」
はぁ~、と長いため息を吐いた。やってくれたな、と厳しい視線も向けてける。

 そう、図った。あの牢の中、何もやってなかったわけがないじゃん。
 ずっと攻略法を模索していた。

 半分運もあっただろうけど、それでも結果成功している。

 というか、あそこまで私を徹底的に貶めてくるとか思わなかった。

「私の勝ちなんだから、諦めなよ。」
私が捕まった時に笑った意趣返しに、私も笑ってやる。できるだけウザくをモットーに。そこには、静寂と僅かな怒り。

 原理は簡単だ。
 私がしたのは、ただあの子の足を重力で固定しただけ。

 まず整理しよう。
 この場はシャープの理が第一優先となっている。だから私の重力じゃ手錠は壊れないし、動けない。
 それがシャープの断罪。言葉に表せば『私は新たな『刈命神』に殺される』というもの。
 私は殺されなくちゃならない。避けられないし逃げられない。でも、殺せるのは『刈命神』であるあの子だけ。あの子以外は実行できない。それが絶対のルール。
 このルールは覆らない。

 何故かって?そりゃ、自分の理を破っちゃったら理の下にしか生きられない神はどうなる?
 そりゃ、消えちゃう。

「で、どうする?このままだと断罪を全うできない。つまり、それは神としての死を表す。でしょ?」
形勢逆転。いつもやっていることをやり返され、ぐうの音も出ずに顔を顰めている。

 動かずして勝利。かっこよくない?

 心にも余裕が生まれ始め、あそこまで絶望的な状況を乗り越えられた自分を自賛したくなる。

 けど、ここからが本命だ。今のでようやく対等になったようなものなんだから。

「ひとつだけ、生き残る方法があるけど。聞く?」
「……聞くだけ聞いてみようか。」
「あの子、断罪しなよ。どうせ私の命を刈り取れなずに理に反して死ぬんだから。」
周囲がざわつき始めた。そっちだってもっと悪どいことしてるのに、救う側の神がこれなんだから神頼みも意味がなさそうだ。

 強さにあぐらをかいてるとこうなるんだよ。弱者の本気に覆される。ちょっとしたグラつきから一気に倒壊する。

 木槌の音が響いた。

「………………判決を告げよう、『刈命神』よ。君は、私の刑を執行できなかった。よって、死刑。自殺しろ。」
「…………了。」
巨大な鎌の先端を持ち、首にかけた。

 …………せめて見届けよう。

 そのまま頭部は転がって魔力の粒子となり、程なくして消えてしまった。

———————————————————————

 空さんヤベェことさせますね。
 さすがに自分の命がかかってるから本気にもなりますが、それにしてもヤベェです。

 空さんこういう土壇場では何故か頭働きますよね。神の性質を利用した回避術、よく思いつきましたね。
 自分も動けませんが、代わりに誰にも殺されない鉄壁防御です。
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