魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

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19章 魔法少女と創滅神

605話 魔法少女と神斬り

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「ここかぁ?叛逆者が侵入したってぇのは。」
パラパラと瓦礫の礫が床に落ちる中、靴の音を響かせて男が声を発した。中だけじゃない、外もボロボロ。一瞬にして最悪のビフォーアフターをされた。

「あっ、あたしの店ぇぇ!」
甲高いユユの声をよそに、男は店内にずけずけと入ってくる。邪魔な瓦礫を足で蹴り飛ばす。

「一般神を巻き込むたぁ、良い度胸でねぇか。」
咥えていた何かをぺっと吐き出し、それを踏み潰した。ずっと片手に持っていた刀が床を擦りながら構えられた。

 いや、どっちが巻き込んでるのって話よこれ!明らかに、10:0で向こうが悪いよね!

 心の悲鳴は表に出さず、ゆっくり後ろに下がる。が、そこにはカウンターが。

「ねぇあなた、この人知り合いなのかい!?」
「なわけないじゃん!」
「だよね!」
お互いが叫びあっても何もない。男は冷酷な瞳を向けて、左足を1歩引いた。

「ワシの間合に入ったのがぁ、運の尽きだな。」
話が通じない奴ほど、やばい奴。

 特に、初対面で殺しにくる奴は100%なんだよ!

 という、当たり前のことで喚く。脳内で。

 男の腕が少し動いた。何か来ると察し、カウンターの奥で突っ立っているユユを引っ掴んで背負い投げした。心の中でごめんと言っておく。

 それを追うように、ヒュンと風を切る音が耳を撫でた。

「ほぅ、こいつを避けるたぁやるじゃないか。」
「ぎゃぁぁぁぁ!あたしの、あたしのぉ!」
「ちょ、今は黙ってユユ!」
その辺に転がったユユをさらに遠くへ投げ飛ばし、ステッキを振り抜いてバックステップ。

 やばいやばいやばいやばい!
 こいつはほんとにやばい。勝てる相手じゃない。私がどうやっても、こいつには勝てない。

 心臓がバックバクしてる。今のは手加減してくれていた。もし本気なら、壁が削れるだけじゃ済まない。

 男の方を見る。少しだけ穴の空いた後方の壁。原型があるだけまだ良いほうだ。

「『 刈命神かいめいしん』バビロンの名にかけて、本気でお前さんの命、いただくぞ。」
姿が消えた。神速で思い切り外へ逃げると、腕の一部が切り裂かれた。

「ぐぁ……っ!」
「大丈夫かい!」
遠くからユユの声が聞こえてくる。

 あっぶなぁ……斬られたの、左腕で助かったぁ……

 一命を取り留め、切断されかけた腕を修復する。

 ユユの話によれば、その名が神の能力に直結しているらしい。例えば創滅神。創造と破滅の神。だから創滅。

 つまり刈命神っていうのは、命を刈り取ることに長けた神ということか。
 漢字を変えれば、名前を変えてきそうな名前してるけど。

「来るなユユ!」
血相を変えて走り寄ってくる。何度も躓きそうになり、最後には私に支えられてなんとか立ち上がった。

「来るなって言ったじゃん。」
「思い出したんだ、あの神のこと。」
視線を刀を振る男に向ける。

「詳しい話は後に回して。」
「分かってるよ。あれは、上盤の神バビロン。鬼の処刑者と呼ばれてる、命を刈ることになんの躊躇もない鬼だ。」
柔和な顔つきをしているが、殺意だけは異様に高い。私達にその殺意を向けたまま、口を開く。

「そこの神、どかんなら諸共殺すぞ。」
なんの感慨もなしにその言葉を繰り出した。殺す、神にとって命とは無にして発せられる言葉であるのだ。

 コイツは、創滅神と同じ類ってことか。

「バビロン様!何故にこの娘を狙いになるのでしょう?」
ユユが前に出て言った。先ほど、耳元で『任せて』と囁かれた。任せてみればこれだ。

「言っただろう。そこにあるのは絶対の神である創滅神様に叛逆を企てる下郎だ。それを始末することになんか、異論でもあるっつぅのかぁ?」
私を生物としても認識していないような口ぶり。命ある、おもちゃ。そんな程度だ。

「そういえば、君はなんていうの?」
「空だけど。」
「ならソラ、走るよッ!」
「え、はぁ……?ちょっ!」
私の腕を掴んで途端に逃走に転じた。

「こんなところで情報屋を終わらせてまるかいって話よ!」
「こんなところで命を終わらせてまるかいって話だよ!」
ダッシュで建物の角を曲がった。曲がりくねり、もはや整理など行き届ようもない区間。そこを、ぐるぐると逃げ回る。

「これなら流石に……」
「おいおい、お前さんも創滅神様に逆らうってのか?」
嫌な音。何か岩を裂くような音が聞こえ、振り返れば建物がごと斬られていた。まるで豆腐のように、林立された建物が斜めに切り落とされて道を切り開いていく。

 ちょちょちょちょっ!なんなのあの化け物!自分らの住処荒らして、アホじゃない!?

 アホだからあんなことをしてるんだと、私が脳内からツッコむ。

「なんか弱点ないの!?」
「もしかしてソラ、バビロン様を倒す気なの?」
「殺す気なの。」
アホを見る目のユユに、愉快そうに笑って見せた。どうやらあれは上位の神らしい。何か証的なものをドロップしてくれるかもしれない。

『どこのゲームだよ』
という言葉は置いといて、ユユに掴まれた右腕を払って体を抱える。

「一旦引く。」
空間歩行と神速で、無理矢理距離をとった。

 安息……とまではいかないけど、時間は稼げる。ぐっちゃぐちゃになった建物。あの倒壊に巻き込まれて、死んでる神もいるんじゃないだろうか。
 それはバビロンという神も同じようで、少し手間取っているのが見てとれた。

「バトルジャンキーじゃないんだよ、私は。確実に勝てない相手には基本挑みたくない。だから、何か弱点、それに準ずる情報があったら教えて。」
お姫様抱っこのように抱かれたユユに問う。

「ない?そういう情報。」
「———あるよ。」
ニイっと、今度は自らもアホになって笑っていた。

 なら、後はうまく策に嵌められればだけど……

 すると、ユユは首だけ動かしぐっちゃぐちゃの島の上を指した。

「神は、だいたい秩序や理に則ってしか動けないわけ。あたしが生命力から神が生きるための栄養と魔力排出を行うように、バビロンは『死』を、それも『刈る』という行為を理にしてるの。」
いいかい?と、ユユは今度は私の目を見て言った。

「あんな化け物とやり合ってたんじゃ、命がいくらあっても刈られ放題死に放題だよ。」
「それは知ってる。」
「神には死はないけど、破壊はあるのさ。体のどこかにあるコアを破壊すれば、おしまいさ。形は様々だけどさ。あたしも細かいことまで知ってるわけじゃあないけど、このくらいで良いかい?」
私は「もちろん」と苦笑いのまま頷く。この場では理が絶対だ。重力魔法やら空間魔法は相手によっては木偶の坊もいいところ。だけど……

 これ、成功するのかな……一か八かの賭けだけど、一応、やるにはやってみる。

 目を向けた先には、一瞬でここまでやってきたバビロン。瓦礫を蹴って、飛んできた。
 私のすぐ横を通っていき、ギリギリ斬られずに避けられた。

「ユユは向こうに。」
空間認識阻害の盾をいくつか並べ、さらにはローブを被せて飛ばした。そうそう、攻撃が当たる位置にはいないはずだ。

 アニメのバグキャラじゃあるまいし、どこからでも攻撃なんてできない。と信じたい。

 相手は重力に従って、加速しながら落下していく。その切先は、私を捉えている。

「重力世界。」
口が動いた。

 ここでは理が優先される。つまり、

 世界がそのまま固まった。
 ここは創滅神の世界ではなく、あくまでも神の世界。私の理は、まだ通用する。

「…………お前さん、神なのか?いや、でも話が違う……」
「どう思おうが勝手だけど、襲われたんだからこっちも襲ってもいいよね。」
空中で静止してしまったバビロンに近づく。

 核があるんだよね、確か。

 じっと観察する。が、特に何かを感じるわけでもない。何か思いつくことはないか、ない脳をフル回転させて推理する。

 形は様々ね…………
 神は理に則ってしか動けない……なら、理を失ったり逆らったりすれば?

 そうか、と合点がいった。

 『死』を与える神に『死』を与えてやれば、理に反する。ユユは言った。神に死はないけど、破壊はある。刈る側が刈られる側へ。

「まぁ、普通にやればいっか。」
ステッキを持ち上げた。そのまま、思い切り振り下ろす。

「案外あっけなかったかも。」
バビロンのいたであろう場所には、黒い粒子が舞うだけだった。

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 11月というのに、まだ昼は暑いですね。寒暖差もありますし、皆様風邪にはご注意ください。
 そんな私は、頭痛が痛いでございまする。
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