魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

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18章 魔法少女と神の使徒

600話 魔法少女はまたまた助太刀

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 リディキュールを討滅し、夜の顔を覗かせた頃。ルーアからの追加報告とネイファの襲撃を受けた。

 前者は、ルーアも人神の方に加勢に行くという話。この点においては私が行った方が確実だ。襲撃を受けた国民の方はというと、蓮が到着したという。結構ありがたい。
 そして後者は、百合乃が引き受けてくれた。

 本当はしてほしくなかった。未来では、相打ちになって死んでしまった。そんな姿は見たくないし、させたくもない。
 でも、今は祈るしかできない。願うしかない。

 何もできないって、辛いね。

 百合乃の気持ちを少しだけ理解できた気がした。

「人神達の位置は分かるの?」
「同じ四神だ。最悪の場合を見越した連絡手段程度は作ってある。」
ネイファから逃げ仰せ、ラビアを腕に抱えて森の道無き道を駆け抜けていた。

「あの……恥ずかしいのだけど……?」
「ラビアは大人なんだから、我慢しようよ。」
「私はどうして高校生に嗜められてるのでしょうね。」
精神年齢切り捨てて30歳のラビアは目を細めた。もし四捨五入しようものなら、険悪な視線を突き刺してくる。怪我しちゃうよ。

「話を戻していいかな……?」
「あ、ごめん。いいよ。」
呆れ目を宥めてから、話に耳を傾ける。

「四神が揃えば、最も完全な方法でキミを創滅神の下まで送ることができる……けど。」
「けど、なに?そこで止めないでよ。」
「直接、とはならない可能性が高い。」
「ま、そうだよね。」
思わず苦笑が漏れる。考えたくもないことを考える時は、そういう無駄なことをして精神を和らげる必要があるのだ。

 いくらなんでも、ラスボス直行なんて真似は普通できない。オープンワールドのゼ○伝じゃないんだから、パンイチラスボスとかはない。
 向こうは楽しみたいんだから、前振りがあるはず。

 考えることが多くて、脳がパンクしそうだ。いったい幾つの脳が犠牲になったか分かったもんじゃない。そろそろお腹も減ってきたし、どこかで軽く腹を満たさないとやってらんない。

 悩み全開オーラを出していると、ラビアから見上げるような視線を感じた。

「ん?」
「いえ……空は、疲れていないのかと思いまして。」
「抱えられながら言われると皮肉に聞こえる。」
「なら下ろしていただけません?」
「無理。」
「なんでそう、貴方がたは私をこうも背負おうとするのですか。」
もう諦めているのか、大きなため息だけで終えた。しかし、話は終えさせてくれないようだった。

 ま、気づかれるかぁ。ラビア、なんか鋭いし。

 咎めるとまでは言わずとも、何かいいたげだ。

「疲れてるよ、そりゃ。休みたいし、寝たい。惰眠を貪って布団と一体化したいくらいにはね。」
私は英雄様とは違うから、とやっつけ気味に口にした。

「でも、人なんだから大切の1つや2つはある。それを守るために足掻くのは、ダメ?」
「……空が良いのでしたら。」
何を言っても私は聞かない。それを悟ってか、やりきれない様子で口を噤んだ。

 ラビアなりに気を遣ってくれてるんだから、そんな顔しなくてもいいんだけどね。

 内心苦笑していると、膨大な魔力を感じた。視線を前に向ければ、巨大な門ができていた。

「今から転移する。突っ込め!」
「安全なんだよね!なんだよね!!」
「なわけないよ。今から、神の使徒と交戦するエディたちに加勢するわけなんだからさ。」
「神の使徒……?処刑人じゃなくて?」
「キミ、もしやルーアの話聞いてなかったな。」
じっとぉー、と、執拗に視線をぶつけてくる。

「ごめんって。……神の使徒ってことは、私が戦ったみたいなやつってことか。キツくない?」
「ボクらをなんだと思ってる?神に一泡吹かせた四神だ。それが揃っているのに、負けるわけがない。」
それは傲慢ではなく、確信に近いものだった。驕っているわけではなく、事実を述べるように。

 まぁ私の目から見れば『ボク、最強だから』とでも言ってるようにしか見えないけど。

 そんな魔神の背を追って、私は門に飲まれていく。


「終わってんのかい。」
門を潜り抜けた後、その辺の木や草、地面が血潮に染まっていた。

「ヴァル、遅い。其方ももっと早く来てくれ。」
人神の小さい体がこっちへ向いて、文句を言いたげな顔で見つめてきた。

「ボクらだって処刑人やらネイファやらと襲撃が重なったんだ。許してくれ。」
「別にぃ、そんなに苦労したわけでもないからいいんじゃなぁい?」
霊神がぽわわーとした空気を放って間に入る。なんか、存在だけで議論がぶち壊されそう。

「これで、四神が全員集まったというわけだ。」
声が聞こえた。さっきまで姿が見えなかったルーアが、喜ばしい顔でなんか言っているのだ。

「いたんだ。」
「主、我に対して雑すぎないか?」
「まぁ。あんまり神って感じもしないし。」
神々しさというか、そういうのに欠けている。もっと神って、ズンとした威圧感があるものだ。知らないけど。

 その点、私ってちゃんと神してたんだね。

 絶望に染まったような瞳はもう見たくないけど。

「そんな能天気なこと言ってるけど、状況は全く芳しくないからね?まだ、結構劣勢。」
「知っておる」と言って私達の輪にはいる。

「国民が襲われている時点で、私の目標は結構危ない。あそこにはネルがいる。」
「安心せい。命に変えても、守り切るようにいっておる。」
「それはそれで心が痛い。」
とは言っても、そうするように願ったのは私だ。そんな私がそんな思いをするとか、おかしなことだ。

『今の私の体力的に、後何日もこんなイタチごっこみたいな戦闘やってらんないよね』
『そうだな。安っぽい神の使徒などとうに逃げ仰せてしまっているし、次の相手となれば『使徒』と同類レベルになるな』
『そんなのむり~』
Dの言うとおり、無理だ。魔力は高速回復でなんとかなってる。けど、それは体力や精神力を回復するわけじゃない。

 決めるなら、今から出ないといけない。

「時間はない。私が元気なうちに創滅神の下に行かないと。」
「焦るな。創滅神の世界ということは、それは奴が本気で戦える巣穴ということだ。ここよりも、もっと厳しい戦いになる。」
魔神は結論を急ぐ私に待ったをかけた。

「一旦、休め。」
「でも…………」
「休め。」
魔神は、私が次にないを言うのか分かっているように遮った。

「分かった。少し休憩する。」

—————————

03ゼロスリーの投入はいかがなさいますか。」
「見遅れ。魔法少女もからくりに気付いたようだしな。」
玉座にふんぞりかえる皇帝のように座る創滅神。何もない空間中に世界の映像が浮かび上がっているのを眺めながら、ふっ、と笑った。

「我の力が強大すぎるのだ。幼き時分に作ったおもちゃだ。作るたびに強制力が働いて、必ず我に危害を加えることができぬガラクタになってしまった。

そしてそのガラクタを乗り越えた先に生まれたものが神の使徒。それは、未来永劫誰にも話す気はない。

「では、いつ?」
「この世界に降り立ってからでよかろう。魔法少女は、招き人として手厚くもてなせ。」
もてなすの意味が若干違うが、その意図を汲んで頷く。

「創滅神様。」
「どうした?」
「世界を破壊した後は、いかがなさるのでしょう。」
創滅神の目がスッと細くなった。

「もっ、申し訳ございません。無礼をどうか、お許しください。」
「いや、怒ってはいないさ。そうだな……次は、人が……生物が、その種らしく生きられるような、そんな世界にしよう。」
「……それは?」
「なに、気まぐれだ。永遠の命があれば、そんな世界を見てみたいと思う日も来る。」
そんな世界であれば神を疎ましく思うものもいるだろう、なんて笑うばかり。茶化されているようでならない。

 底が見えない。何を考えているのか、その性格は、本性は。何も分からない。
 けれど、『神の使徒』である限り、自分は彼女に命を捧げる。

 主人と共に、世界を見届けたいという願いを抱いて。

———————————————————————

 久しぶりに激おこ空さんを描きたくなってきました。しかし、そんなシーンの予定はないので困っています。
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