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18章 魔法少女と神の使徒
593話 魔法少女は普通に断る
しおりを挟む「ごめん、無理。」
「へ?」
「いやだから、無理。」
私は、溜めに溜め込んだ渾身の一言を口にした。
「今の流れ……普通、断ります?」
「断るね、普通。」
「さっきまでの雰囲気なんなんですぅぅぅ?!」
百合乃が突然叫び声をあげ、狂人のようにジタバタし始めた。やかましいことこの上ない。
「普通、ラブコメならキスくらいしてもらってもいい場面でした!それを、普通に断るっ!びっくりしすぎて言葉も出ません!」
「スラスラ出てるんだけどそれは。」
「……」
「急に黙んのやめて。」
なんか、さっきまでの勢いを殺せずに感情がつんのめってるような感じだ。
「何を言われようと、私、百合乃と付き合うとかないから。」
「結婚は?」
「あるわないじゃん。」
「可能性は?」
「ゼロ。」
「ゼロです?」
「ゼロ。」
百合乃は体操座りでそっぽを向いてしまった。土をいじいじし始めた。
あれぇ?やりすぎた?
……でも、やりすぎたとかないよね。別に。私、至極真っ当なこと言った気しかないよ。
「別にさぁ、百合乃のことは嫌いじゃないよ?友達としては普通に好き。だけど、それとこれとはニュアンスが違うというかさ。」
「励ましはやめてください……傷口に醤油を塗らないでください……」
完全に闇落ちモードに入った。
「じゃあ、逆に傷口を開いて開き直る作戦で行こう。」
「なんです、それ。」
「まず成功すると思ってた?私、どっからどう見ても百合側の人間じゃないよね。」
「雰囲気でいけると思いました……」
「なら、世の中の男子とか大体雰囲気で告白成功できるでしょ。カップル大量発生するよ。」
百合乃に10のダメージ。HPはマイナス10になった。いきなりオーバーキルに死体蹴り。
「あと、いくらなんでもやりすぎ。」
「ぐふっ……」
「うるさい。泣きながら殴るな。」
「うぐっ……」
「キザなこと言って、成功しなかった時のこと考えた?」
「やめて!わたしのライフはもうゼロです!」
うわーんととうとう子供のように泣きじゃくりだし、空がいじめますー、とか言ってラビアに寄っていった。
「側から見ていた私からすれば、なかなかにイタかったと思うわ。そうね……安っぽい少女漫画の告白シーンを見ているようだったわ。」
「酷い!わたし、わたし頑張ったんですよ!」
私は肩にポンと手を置いた。
「頑張りって、報われるとは限らないんだよ?」
「今は正論とか聞きたくないです!」
あーあー聞こえないー!とか言って、喚き散らす。どうやらやけになっている。酒が飲めたらやけ酒しそうだ。
「まぁでも、ありがとう。その気持ちは微塵も嬉しくないし迷惑だから受け取りたくもないけど、助けに来てくれたことは嬉しいよ。」
「空ぁ……それ、貶してるんだかお礼を言ってるんだかわけわからないです。」
それでも嬉しそうに表情が変わった。
何この子、告白失敗してるのに笑顔になるなんてドMかな。あ、ドMか。
「助けてくれたんだからついでに、頼っていい?」
「ついでってなんです?」
ジトーっと視線をぶつけてくる。刺さると言うより、粘りつくような……
「でも、絶対死なないでね。」
「死にませんよ……置いてかれたからここにいるのに、空を置いていくわけないです。」
真っ赤に腫れた目元を、最後に拭って綺麗に笑った。
「あの、感動の最中申し訳ないのですけれど、いつ終わるのでしょうか、これ。」
ラビアの言葉で別次元から戻ってきた空気。仕切り直して、なんで百合乃がここにいるのかと言う最初の質問に戻ってきた。
つまり振り出しに戻った。
「……で、私が心配で心配で心配すぎた百合乃は、国王に直談判してラビアを引っ張り出して、おんぶダッシュでここまできたと。」
「はいです。」
「どんな脚力!いや、いや、うん!それを置いておいても、どういう神経したらそんな行動ができるのか私知りたい!」
1からここまで話を聞き、そう結論を出した。百合乃はやばい。
「まぁ、一応ありがとう。百合乃の思いは死んでも応えたくないけど。」
「それ何回言うんです?」
不貞腐れたように呟き、口を尖らせる。
「あの、ガチで引くのやめてもらえません?今まで通りの距離で……」
「告白した後、振られたからって『明日からはまた友達で』とか言える?」
「言えません。」
「それを今言ってるんだけど。」
「びっくりですね。」
まるで他人事のように笑っている。笑い事じゃない。と言うか、当事者だ。
っていうか、こんなふうに遊んでるけど……四神達相当やばい状況だよね。
やばくない?
今、この状況を知ったら確実に罵られそうだ。
少しでも減刑を図るため、心を入れ替える。
「……そもそも、私こんなところでもたついてる暇ないんだよね。」
深刻目な声を出す。
「こっちの状況、話したっけ。」
「いえ……」
「百合乃は黙らせておきますので、空は続きを。」
ラビアさんのファインプレーにより、本編が始まる。
百合乃がいると、話進まないしね。
私達がやっていた作戦、目的、そして何が起こってどう危ないか、私の低い国語力を振り絞って、まとめ上げた説明文を一気に口にした。
「全員との連絡が付かなくなった……と。さらに魔神がいなければ創滅神との戦闘も不可になっている。要するに超危険、という理解で間違いないわね。」
ラビアが顎に手を添え、苦い顔をする。
「百合乃にめちゃくちゃ言ってた私が言うのもなんだけど、手伝い、頼まれてくれる?」
現状手札が足りない状況だ。
「もちろんです。」
ほんのちょっと、ちょろっと思ってしまったことを除けば、なかなかいいシーンなんじゃないだろうか。
「私が相手をしてられない敵の相手をして欲しいんだけど、いい?」
「はい!」
「ラビアは……」
「私は魔力以外に取り柄はないですから。」
苦笑して、自分で無能の烙印を押した。
魔力……魔力。
魔力があるなら純粋な魔力攻撃でもいいんじゃない?援護くらいはできるでしょ。
ステッキから、ラノスを取り出す。これを模して銃を作り、ラビアに投げ渡す。
「これは?」
「内蔵されてる核に魔力を装填して、引き金を引いて球を射出するって魔導具。」
「あ、はい。」
私の分かりやすい説明に頷いてくれたラビア。
「とりあえず、着いてきて。魔神探すから。」
—————————
「へぇ、こんなんで魔神とか名乗ってんだぁ?」
宇宙のように深く、星のように煌めく瞳を持つ少女が笑う。高笑いを上げる。
対して魔神。身体中に傷を作って、険しい視線で奴を射抜く。
処刑人01、リディキュール。
それが彼女の正体。
「キミは、いったいなんなんだ。」
疑問じゃない。突きつけるような質問の形に、少し、機嫌を損ねるリディキュール。
「立場をわきまえてよ。今、そっちはあたしに攻められてる側。」
「それは、どうかな。」
リディキュールの真後ろに、門のようなものが突如開いた。
「地獄の世界へようこそ。」
門からは、一本の枝のような棒が突き出た。もちろん、それはリディキュールの腹に突き刺さる。
隙をつかれたことに対する驚きも加え、痛みに悶える。
「キミの強さの理由は、創滅神だろう?なら、勝てない試合になっているわけがないんだよ。打ち砕くための希望を作り出すためにね。」
だから、強さを見せてはいけない。強くないまま強くならなければ、創滅神は討ち果たせない。
魔法の効力によってジリジリと門に引き寄せられるリディキュール。
魔神の損傷具合は2割ほど。見た目ほどダメージはない。
「神の雫!」
しかし、それは不可思議な力によって阻まれるようにして消える。波動に当てられたように、門が崩れ落ちた。
「……どうにかしてくれないか、魔法少女……」
ただの四神では太刀打ちできない相手に、叶うはずもない願いを吐き捨てた。
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空は別に同性愛者ではないので、普通に嫌です。確かに、ネルやロアやサキと戯れるのはいいですが、それはそれです。
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