魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

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18章 魔法少女と神の使徒

591話 魔法少女は戸惑う

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「チーターって、これだから。」
格の違いを、というか生物としての格の違いを心から痛感させられた。

「神の使者を汚す不届きものには、死を。」
「じゃあどうすりゃよかったわけ?どっちにしろ、殺される。」
壁に背をつけたまま、刀の先にいるウィリーを睨む。

「大人しく殺されていればよかったんですよ。この僕に、傷をつけた。それが大罪だ。」
「千切られてたくせに。」
表情が険しくなった。もしや、藪蛇だったか。

「貴方は死にたいようですね。」
「死にたく無いから、言ってるんだよ!」
残り2発の銃弾を撃ち切り、それを弾く隙を狙って神速で壁を蹴った。壁に凹みがあってよかったと心から思った。

 ほんと、想定外のことばっかでマジで面倒!嫌だ!働きたくない!……けど、じゃないと創滅神が……私じゃ会うことすらできないし!
 あぁぁぁ!なんで!何でこんなことしなきゃいけないの?何でこんなことしてんの私ぃ!

 心の中で言いたいことを言いたいように叫び散らし、ほんの少しでも発散できてるといいと思いながら鋭い視線ウィリーを射抜く。

 といっても、眼光とかないけど。

「重力の鞭。」
頭の中で想像する。魔法もスキルも、想像が具体的かどうかで威力と正確性は格段に跳ね上がる。

 今までの努力を舐めんな!

 重力世界と併用し、腕を振るう。
 さすが、ガチの神の使徒。重力世界じゃ身動きがとりにくいくらいの制限で済んでしまう。

「だから、直接狙うっ!」
不可視の一閃。重力は物理じゃ斬れない。

「……ただの愚者に理が扱えるのか。ミスソラ、ますます貴方は殺さなければならない。」
流石に冷静さも取り戻し、腕を封じられたウィリーは猛禽類のような目つきで私を睨みつけた。

「殺す殺すって、行動を伴わないと子供みたいだよ。あ、見た目も子供か。」
時間を稼ぎつつ、隙を作ろうと言葉で突く。昔は防御もままならなかったのに、成長が見れる。

 とかハッタリかましてるけど、内心めっっちゃ怖いからね!怖すぎるよ?

『ちょっと、相手やばいんだからいちいち叫ばないで!時間ない!』
私のお叱りはど正論なので、ぐうの音も出ない。少し目を細めながらマガジンに新たな弾を込める。

「重力魔法ですか。」
「使徒は別に、神じゃないから理とか操れないでしょ?」
「借りれば、いけるよ。」
「神の威を借る使徒。」
「それを言うなら虎の威を借る狐だよ、ミスソラ。」
冷静な顔面の裏に、悪辣なほどに煮えたぎる怒りが見えている。私の目は誤魔化せない。しかしそれより……

 刀、どこ行った?

 さっきから姿の見えない武器について、今更に疑問が浮かんだ。

「この刀は理切丸といってね、名の通り理を切るんだよ。」
刀は、ウィリーの胸に刺さっていた。

「人は重傷を負えば死ぬ。この体は受肉した人間の体だから、僕も死ぬ。けれど、死という理さえも切ってみせる。」
その顔は自信に満ちていた。

「ほんと、チーターってこれだから。」
誰にも聞こえない声量で、この世の理不尽を嘆く。神なんて、いなくなればいいのに。

『それをするのは私だろう』

 そりゃそうだけどね。実感、湧かないよね。

 今の所、勝ち筋はない。ないといえば嘘になるけど、その場合創滅神を討つのは不可能だ。
 私……異世界の力っていうアドバンテージが失われる。

 未来の私の能力が今すぐにでも発現してほしい。そんな思いを胸に、どうしようかと頭を悩ませる。
 私の願いなんて、他力本願すぎて草も生えない。

 空間魔法で、無理矢理世界から隔離……が、1番現実的かな。

 日本で言えば厨二乙で終わるようなセリフを、堂々と言える異世界。最高。
 でもこの状況は最低。

 ウィリーの胸を貫通している刀は、そのまま重力の縄も切断してしまった。
 そのまま自分の胸から刀を引き抜いて……血がピューっと噴水のように。血液シャワー。

「血は出るんかい。」
転がされないように、下段で構える。

 構えたとて、殺されそうではあるけど。

 無言で刀をこちらに向けてくる。そして、足が少し動く。その瞬間に視界から消えるように私の正面に移動した。

「っ、でも、人の体なら何とかなる!」
足に力を入れ、後ろに跳ぶ。

 ウィリーの体は一応人の体。なら、死角は当然に存在する。存在する!と思いたい!

 縮光で攻撃範囲を狭めさせ、私の回避で完全回避を図る。強い踏み込みと滑るような移動で、緩急をつけて避け続ける。

「攻撃誘導ですか……僕がその程度に引っかかるとは思えないんですけどね。」
「そんな棒読みで言われても……」
刀は私めがけて綺麗な太刀筋で襲う。ヒュンッという風を切る音が残る。

 ま、陰縮地で避けてるけど。

 真後ろをとった私は、全力で殴る。
 重力を込めてストレートを。

 人間からなっちゃいけないようなバキバキした音を響かせて、ぶっ飛んでいく。
 そもそもバキバキした音ってなんだろう。

「手応えはあったけど……」
行く末を見届ければ、そこにはあるはずの死体はなく肩を回すウィリーがいただけだった。

 重力しか今のところ太刀打ちできる手段はないのに、それでも死なないとか。これ、どうするの。

 本当に八方塞がりだ。

「理切丸がなければ危なかったかもしれないね。……ミスソラ、ますます見逃せない。」
大地を蹴った。刀を振り上げる。

 これ、やばいやつだ。

 刀身が光りを放つ。醒華閃か。行動に迷ったその瞬間、死ぬかもしれないと本能が叫んだ。
 だから、空間の壁を死ぬ気で展開する。

「重力のみならず空間も。」
少し驚いたように刀を振り下ろす。その手は止まらない。私の展開した壁は、最も容易く分断させられた。でも、ほんの少しだけ動きを止められただけでも収穫だ。

 どうするかって?そのうちに神速で逃げるんだよ!

 勝ち目が無さすぎる戦いに挑んだって仕方ない。逃げるも一手だ。逃げは恥じゃなくて戦法だ!

 少しでも遠くに逃げようと、壁を飛び越え上昇。空中歩行で空を蹴飛ばし神国の方へ逃げていく。
 こんな化け物、相手にしてたら命がいくつあっても足りない。

「逃げたって意味はないですよ、ミスソラ。」
私を追ってくる。私より速く追ってくる。

 何か手立てを考えないと……本当に死ぬよ、これ。

 スキル欄に目を通す。
 何か一つくらい、打開策があってもいいじゃないか。

「改革と変革の天転……」
そういえば、あったようなスキルを口に出す。使ったことはないのに、不思議と効果が分かる気がした。

 理の変革。多分、そんな感じ。

 一縷の望みにかけて、そのスキルを使用する。

 『発動条件を満たしていません』

 視界いっぱいにそんな警告文が流れてきた。一縷の望みも消えてなくなった。

「チェックメイト、ですよ。」
横腹に激しい痛みが舞い込んだ。蹴飛ばされたのだと、地面に叩きつけられて理解する。

「……こんなところで、死んでたまるか…………」
「死ぬんですよミスソラ。これ以上の抵抗は、本当に無意味。養豚場の豚に抵抗する権利がないのと同じだよ。」
まるで私を豚だというように見下げてくる。

 絶対死にたくない……死ぬとしても、こんなやつに殺されるのは癪すぎる!絶対、死んでも嫌だ……!

 私は這いつくばってでも、その場から逃げようとした。惨めだとしても、ここで死ぬのだけは納得いかない。

 私の顔の横に、刀が突き立たられる。

「死ね、ミスソラ。」
無理矢理体を跳ね起きさせた。絶対に死んでやるかという意思のもと、体を無理矢理捻ってウィリーと対峙してやろうという気概だけで体を奮い立たせた。

「……は?」
目の前にはウィリーが。ウィリーの生首と胴体がチョンパされたものが、地面に落ちていた。

「空あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「ちょ、まっ、まぁぁぁぁっ!?」
その大声に警戒心むき出しの私の体はすぐに反応した。

 ……ん、何……………ん?ん!?百合乃っ!?

「何でここにい———」
その瞬間、謎の衝撃が私を襲い、意識を狩りとった。

「空ぁぁぁぁ!?」
「そんな、ダイナミック抱擁するからだと思いますが。」

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 ピンチの時に現れる軍服ヒーロー百合乃、見参!

 ちょっとよく分かんないですね。自分でも、ちょっと何言ってるか理解が追いついてません。
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