上 下
617 / 681
18章 魔法少女と神の使徒

587話 魔法少女はサンタクロース

しおりを挟む

「なんで、こうなってんのかな。」
王国を見下げて、私は空中をぷかぷかする。

 ……私1人だけ、なんでこんな悪役みたいなポジションやらなきゃいけないの。

 文句を言いたいが、言う相手はいない。

 無人の王都。知らぬ間に、人っ子一人いない空間が広がっていた。それだけでも不思議なのに、遠くに龍がいる。

「絶望をお届け、ね。」
クリスマスにプレゼントを渡す髭を蓄えたおじさんの図が浮かぶ。まるで私がサンタのようだ。

 絶望だし、ブラックサンタってころかな?

 目の前の面倒の山にため息をぶつけるが、何も起こらない。
 今から、この王都をめちゃくちゃに荒らすのだ。

「戦争をするなら首都を落とせ。まぁこれは常識なんだけど……そんな、運良くいく?」
自分で作った絶望に意味はあるのかと、不安は満載だけど、載積量限界まであるわけでもない。私は私なりに、四神は信頼している

 再生創々があるからといって、ただじゃないんだよ……?私死んじゃったら、この作戦無為になるわけだし。

 ということで、ついでに今回の作戦を振り返ろう!

 創滅神はめちゃくちゃ性格が悪い!絶望に希望が差した瞬間に更なる絶望をプレゼントする本職のサンタクロース!
 だから、こっちがその絶望をコントロールして姿を現してもらおうと言う作戦。手を出してさえくれれば、逆探知も可能らしい。

「作戦的にも、少なくても数十数百は見逃すことになるだろうから、その辺の対処もしなきゃなぁ。めんどいなぁ。」
こんな思いをするなら、やっぱりただのサンタクロースになったほうがマシな気がしてきた。

 つまり、私の仕事は自分で自陣を壊して敵を誘き寄せて、燃やされる前に燃やして使徒を倒す。これが第一の絶望シナリオ。そして、なぜかプラスで神国を壊す役目も受けた。

 で、王都民含めた国民の避難に絶対手を入れてくるだろうから、ここで神龍たちがやられるシナリオ。向こうは調子乗って~って作戦だ。

 子供騙しに見えるって?説明すると簡単だけど、これを超迫真の演技でやれっていう条件ついてるからね。

「サンタって大変なんだね。」
プローターをお手玉のように弄る。ここは、神龍が張った結界のおかげで外界から遮断され、監視されないようになっている。

 龍神の神殿みたいに侵入激ムズとかはないけど。

 今までの憂さ晴らし……ではなく、仕方なく、仕事として王都の破壊に取り掛かる。

「この広さ。結構、魔力消費するかも。」
心の中でごめんなさいをして、容赦なくプローターをぶん投げた。容赦なくごめんなさいという意味のわからない状況の完成だ。

 これを口に出したら完全に悪役な気がするんだけど……誰もいないし、創滅神の監視もないし、いいよね?

「最近ずっと、心が晴れなかったけど……これで紛らわしてやる!ストレス発散じゃあぁぁ!」
ラノスの代わりに装弾したプローターを、連射しまくって爆発音を聞いていた。

 新種の音楽。タイトル、街の破壊。

 この時の私は知らなかった。もう、敵の侵攻は陰ながら始まっていたことを。

—————————

 現在の状況、やや魔法少女側劣勢。

 魔法少女、王都にて破壊活動中。
 四神、蓮、防衛中。
 軍服少女、避難民、神龍と合流。

 創滅神、動きなし。
 神国軍、侵攻中。一部内部侵略開始。

「王都で何か起こっているな?」
「龍神の忌まわしき力で封じられているようです。解除いたしますか?」
「いや、まだ早い。」
ニヤリと笑った。

 性格が悪い。それは事実だ。しかし、それに加えて思慮深い。四神程度の考えることなど、造作もなく予想することは可能だ。

 どうせ、自ら絶望を深めるよう仕向けて創滅神自ら手を下すのを待つ策だろう。それが一番、危険が少ない。

「奴らがただ停滞しているなんて、そのようなことがあると本気で思うか?」
「創滅神様は信頼されていると……?」
「信頼ではない、期待だ。」
その笑みは絶えず、まるで全てを受け入れる準備が整っているように感じられる。

「絶望の底に沈めて、希望を見せる。それが我のやり方だ。その真意を、奴らは分かっていないのだ。」
ようやく楽しませてくれる。

 ベルトコンベアで流れてくる閉じ込められた蟻を、ただ潰してきたような日々とはおさらばだ。
 魔法少女。自らが呼び込んだ、イレギュラー。

 アレが己の前に立ち塞がる事のみが、今の楽しみだった。

「我に見せておくれよ、我が雫。その可愛らしい顔が、絶望に捻じ曲げられる様を。」
今もまた、創滅神の思う通りの道へ捻じ曲げられていく。絶望の底へ誘われていく。

 魔法少女側、劣勢。

 魔法少女、王都にて破壊活動中に使徒に遭遇。

—————————

「トールっ!」
雷が駆け抜け、しかしその存在ごと燃やし尽くされた。

「ネイファ、なんで……いや、元から仲間ですらないのか……」
炎上する王都をバックに、ステッキを向けた。大激戦が始まっていた。

「わたしは創滅神様のお役立たないといけないんです。貴方は、創滅神様にとって邪魔な存在になり得る。」
手には真っ黒な剣を模したような形の武器。

 厨二とか笑ってられる次元超えてるよ、これ……

 冷や汗が浮かぶのを肌で感じながら、魔力を練る。練れば練るほど色が変わって美味しいように、強固な魔法が撃てる。

「創滅神様創滅神様って、自我はどこに置いてきたの!」
「そんなもの、子供の頃に川に流しましたねぇ!」
その闇の剣は魔法をも裂き、そして燃やす。人間技とはとても思えない、使徒の力。

「騙したのは、まずそちらでしょうに!わたしを利用したというのに、それに謝りのひとつもなく文句?はっ、育ちの悪さが伺えますねぇ!」
「育ち悪いけど何か?」
ステッキを直接武器として振い、それを剣で防がれる。長く鍔迫り合いしようものなら、燃やされてしまうため距離を取る。

「もう、そちらは創滅神様によって破滅へ導かれているのです。無駄な抵抗をやめ、全てを懺悔しながら逝っていただきましょうか。」
「破滅を導くのはこっちなんだよ。なんせ、私はサンタクロースだし。」
「わけが分かりませんね。」
「さぁね!私も分かんない!」
神速で踏み込んで、ネイファを蹴り飛ばした。置き土産とばかりに炎上させられた地面を踏み躙り、消火しつつ手にはトロイ。

「ぶっとべ!」
轟音を響かせ、弾丸が射出された。一撃必殺の高火力武器。それを、自由の効きづらい空中で喰らう。いくらなんでも、防ぐので手一杯のはずだ。

「っ……そんなものも隠していたのですねぇ!戦争時に使っておけばいいものを!」
「手の内を隠すのは普通でしょ。ほら、サンタクロースからのありがたいプレゼント、しっかり受け取ってよ!」
ネイファは影を伸ばしてそれを防ごうとする。しかし、それをどこかへ移動させることはできない。しっかり、この空間に縫い付けてある。

「受取拒否は不対応だから。」
ネイファの表情は影に阻まれ見えない。

「鬱陶しいですねぇ!」
怒鳴りながら、着弾に備えた。しかし衝撃を抑えきれず、後方に更に飛ばされる。

「じゃ、バイバイ。」
そこにはちょうど、私が仕掛けた空間転移の罠があった。

 訓練の成果、こんなところで出たね。
 やっぱり何事も経験だ。

 影は防御に使い切り、移動には時間がかかる。

 なす術はなく、ネイファはそのまま壁の外に放り出した。
 放り出したはいいんだけど。

「これ、どないせいと。」
神炎にて過去も未来も燃やし尽くされた王都の街並みを見て、復興不可能を悟った。

「とりあえず、消火かな……」
他への連絡は後に、手に持つ神核。

 私は私で、自分のことで手一杯なんだ。

———————————————————————

 最近、はっちゃけられてない気がします。内容が内容ですから仕方ないんですけどね。

 ではここでおひとつ。
 ひゃはっぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!

 大変お見苦しい姿をお見せしました。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

城で侍女をしているマリアンネと申します。お給金の良いお仕事ありませんか?

甘寧
ファンタジー
「武闘家貴族」「脳筋貴族」と呼ばれていた元子爵令嬢のマリアンネ。 友人に騙され多額の借金を作った脳筋父のせいで、屋敷、領土を差し押さえられ事実上の没落となり、その借金を返済する為、城で侍女の仕事をしつつ得意な武力を活かし副業で「便利屋」を掛け持ちしながら借金返済の為、奮闘する毎日。 マリアンネに執着するオネエ王子やマリアンネを取り巻く人達と様々な試練を越えていく。借金返済の為に…… そんなある日、便利屋の上司ゴリさんからの指令で幽霊屋敷を調査する事になり…… 武闘家令嬢と呼ばれいたマリアンネの、借金返済までを綴った物語

ピンクの髪のオバサン異世界に行く

拓海のり
ファンタジー
私こと小柳江麻は美容院で間違えて染まったピンクの髪のまま死んで異世界に行ってしまった。異世界ではオバサンは要らないようで放流される。だが何と神様のロンダリングにより美少女に変身してしまったのだ。 このお話は若返って美少女になったオバサンが沢山のイケメンに囲まれる逆ハーレム物語……、でもなくて、冒険したり、学校で悪役令嬢を相手にお約束のヒロインになったりな、お話です。多分ハッピーエンドになる筈。すみません、十万字位になりそうなので長編にしました。カテゴリ変更しました。

異世界なんて救ってやらねぇ

千三屋きつね
ファンタジー
勇者として招喚されたおっさんが、折角強くなれたんだから思うまま自由に生きる第二の人生譚(第一部) 想定とは違う形だが、野望を実現しつつある元勇者イタミ・ヒデオ。 結構強くなったし、油断したつもりも無いのだが、ある日……。 色んな意味で変わって行く、元おっさんの異世界人生(第二部) 期せずして、世界を救った元勇者イタミ・ヒデオ。 平和な生活に戻ったものの、魔導士としての知的好奇心に終わりは無く、新たなる未踏の世界、高圧の海の底へと潜る事に。 果たして、そこには意外な存在が待ち受けていて……。 その後、運命の刻を迎えて本当に変わってしまう元おっさんの、ついに終わる異世界人生(第三部) 【小説家になろうへ投稿したものを、アルファポリスとカクヨムに転載。】 【第五巻第三章より、アルファポリスに投稿したものを、小説家になろうとカクヨムに転載。】

悪役令嬢は始祖竜の母となる

葉柚
ファンタジー
にゃんこ大好きな私はいつの間にか乙女ゲームの世界に転生していたようです。 しかも、なんと悪役令嬢として転生してしまったようです。 どうせ転生するのであればモブがよかったです。 この乙女ゲームでは精霊の卵を育てる必要があるんですが・・・。 精霊の卵が孵ったら悪役令嬢役の私は死んでしまうではないですか。 だって、悪役令嬢が育てた卵からは邪竜が孵るんですよ・・・? あれ? そう言えば邪竜が孵ったら、世界の人口が1/3まで減るんでした。 邪竜が生まれてこないようにするにはどうしたらいいんでしょう!?

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

伝説の魔術師の弟子になれたけど、収納魔法だけで満足です

カタナヅキ
ファンタジー
※弟子「究極魔法とかいいので収納魔法だけ教えて」師匠「Σ(゚Д゚)エー」 数十年前に異世界から召喚された人間が存在した。その人間は世界中のあらゆる魔法を習得し、伝説の魔術師と謳われた。だが、彼は全ての魔法を覚えた途端に人々の前から姿を消す。 ある日に一人の少年が山奥に暮らす老人の元に尋ねた。この老人こそが伝説の魔術師その人であり、少年は彼に弟子入りを志願する。老人は寿命を終える前に自分が覚えた魔法を少年に託し、伝説の魔術師の称号を彼に受け継いでほしいと思った。 「よし、収納魔法はちゃんと覚えたな?では、次の魔法を……」 「あ、そういうのいいんで」 「えっ!?」 異空間に物体を取り込む「収納魔法」を覚えると、魔術師の弟子は師の元から離れて旅立つ―― ――後にこの少年は「収納魔導士」なる渾名を付けられることになる。

元外科医の俺が異世界で何が出来るだろうか?~現代医療の技術で異世界チート無双~

冒険者ギルド酒場 チューイ
ファンタジー
魔法は奇跡の力。そんな魔法と現在医療の知識と技術を持った俺が異世界でチートする。神奈川県の大和市にある冒険者ギルド酒場の冒険者タカミの話を小説にしてみました。  俺の名前は、加山タカミ。48歳独身。現在、救命救急の医師として現役バリバリ最前線で馬車馬のごとく働いている。俺の両親は、俺が幼いころバスの転落事故で俺をかばって亡くなった。その時の無念を糧に猛勉強して医師になった。俺を育ててくれた、ばーちゃんとじーちゃんも既に亡くなってしまっている。つまり、俺は天涯孤独なわけだ。職場でも患者第一主義で同僚との付き合いは仕事以外にほとんどなかった。しかし、医師としての技量は他の医師と比較しても評価は高い。別に自分以外の人が嫌いというわけでもない。つまり、ボッチ時間が長かったのである意味コミ障気味になっている。今日も相変わらず忙しい日常を過ごしている。 そんなある日、俺は一人の少女を庇って事故にあう。そして、気が付いてみれば・・・ 「俺、死んでるじゃん・・・」 目の前に現れたのは結構”チャラ”そうな自称 創造神。彼とのやり取りで俺は異世界に転生する事になった。 新たな家族と仲間と出会い、翻弄しながら異世界での生活を始める。しかし、医療水準の低い異世界。俺の新たな運命が始まった。  元外科医の加山タカミが持つ医療知識と技術で本来持つ宿命を異世界で発揮する。自分の宿命とは何か翻弄しながら異世界でチート無双する様子の物語。冒険者ギルド酒場 大和支部の冒険者の英雄譚。

外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~

海道一人
ファンタジー
俺は地球という異世界に転移し、六年後に元の世界へと戻ってきた。 地球は魔法が使えないかわりに科学という知識が発展していた。 俺が元の世界に戻ってきた時に身につけた特殊スキルはよりにもよって一番不人気の土属性だった。 だけど悔しくはない。 何故なら地球にいた六年間の間に身につけた知識がある。 そしてあらゆる物質を操れる土属性こそが最強だと知っているからだ。 ひょんなことから小さな村を襲ってきた山賊を土属性の力と地球の知識で討伐した俺はフィルド王国の調査隊長をしているアマーリアという女騎士と知り合うことになった。 アマーリアの協力もあってフィルド王国の首都ゴルドで暮らせるようになった俺は王国の陰で蠢く陰謀に巻き込まれていく。 フィルド王国を守るための俺の戦いが始まろうとしていた。 ※この小説は小説家になろうとカクヨムにも投稿しています

処理中です...