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18章 魔法少女と神の使徒
587話 魔法少女はサンタクロース
しおりを挟む「なんで、こうなってんのかな。」
王国を見下げて、私は空中をぷかぷかする。
……私1人だけ、なんでこんな悪役みたいなポジションやらなきゃいけないの。
文句を言いたいが、言う相手はいない。
無人の王都。知らぬ間に、人っ子一人いない空間が広がっていた。それだけでも不思議なのに、遠くに龍がいる。
「絶望をお届け、ね。」
クリスマスにプレゼントを渡す髭を蓄えたおじさんの図が浮かぶ。まるで私がサンタのようだ。
絶望だし、ブラックサンタってころかな?
目の前の面倒の山にため息をぶつけるが、何も起こらない。
今から、この王都をめちゃくちゃに荒らすのだ。
「戦争をするなら首都を落とせ。まぁこれは常識なんだけど……そんな、運良くいく?」
自分で作った絶望に意味はあるのかと、不安は満載だけど、載積量限界まであるわけでもない。私は私なりに、四神は信頼している
再生創々があるからといって、ただじゃないんだよ……?私死んじゃったら、この作戦無為になるわけだし。
ということで、ついでに今回の作戦を振り返ろう!
創滅神はめちゃくちゃ性格が悪い!絶望に希望が差した瞬間に更なる絶望をプレゼントする本職のサンタクロース!
だから、こっちがその絶望をコントロールして姿を現してもらおうと言う作戦。手を出してさえくれれば、逆探知も可能らしい。
「作戦的にも、少なくても数十数百は見逃すことになるだろうから、その辺の対処もしなきゃなぁ。めんどいなぁ。」
こんな思いをするなら、やっぱりただのサンタクロースになったほうがマシな気がしてきた。
つまり、私の仕事は自分で自陣を壊して敵を誘き寄せて、燃やされる前に燃やして使徒を倒す。これが第一の絶望シナリオ。そして、なぜかプラスで神国を壊す役目も受けた。
で、王都民含めた国民の避難に絶対手を入れてくるだろうから、ここで神龍たちがやられるシナリオ。向こうは調子乗って~って作戦だ。
子供騙しに見えるって?説明すると簡単だけど、これを超迫真の演技でやれっていう条件ついてるからね。
「サンタって大変なんだね。」
プローターをお手玉のように弄る。ここは、神龍が張った結界のおかげで外界から遮断され、監視されないようになっている。
龍神の神殿みたいに侵入激ムズとかはないけど。
今までの憂さ晴らし……ではなく、仕方なく、仕事として王都の破壊に取り掛かる。
「この広さ。結構、魔力消費するかも。」
心の中でごめんなさいをして、容赦なくプローターをぶん投げた。容赦なくごめんなさいという意味のわからない状況の完成だ。
これを口に出したら完全に悪役な気がするんだけど……誰もいないし、創滅神の監視もないし、いいよね?
「最近ずっと、心が晴れなかったけど……これで紛らわしてやる!ストレス発散じゃあぁぁ!」
ラノスの代わりに装弾したプローターを、連射しまくって爆発音を聞いていた。
新種の音楽。タイトル、街の破壊。
この時の私は知らなかった。もう、敵の侵攻は陰ながら始まっていたことを。
—————————
現在の状況、やや魔法少女側劣勢。
魔法少女、王都にて破壊活動中。
四神、蓮、防衛中。
軍服少女、避難民、神龍と合流。
創滅神、動きなし。
神国軍、侵攻中。一部内部侵略開始。
「王都で何か起こっているな?」
「龍神の忌まわしき力で封じられているようです。解除いたしますか?」
「いや、まだ早い。」
ニヤリと笑った。
性格が悪い。それは事実だ。しかし、それに加えて思慮深い。四神程度の考えることなど、造作もなく予想することは可能だ。
どうせ、自ら絶望を深めるよう仕向けて創滅神自ら手を下すのを待つ策だろう。それが一番、危険が少ない。
「奴らがただ停滞しているなんて、そのようなことがあると本気で思うか?」
「創滅神様は信頼されていると……?」
「信頼ではない、期待だ。」
その笑みは絶えず、まるで全てを受け入れる準備が整っているように感じられる。
「絶望の底に沈めて、希望を見せる。それが我のやり方だ。その真意を、奴らは分かっていないのだ。」
ようやく楽しませてくれる。
ベルトコンベアで流れてくる閉じ込められた蟻を、ただ潰してきたような日々とはおさらばだ。
魔法少女。自らが呼び込んだ、イレギュラー。
アレが己の前に立ち塞がる事のみが、今の楽しみだった。
「我に見せておくれよ、我が雫。その可愛らしい顔が、絶望に捻じ曲げられる様を。」
今もまた、創滅神の思う通りの道へ捻じ曲げられていく。絶望の底へ誘われていく。
魔法少女側、劣勢。
魔法少女、王都にて破壊活動中に使徒に遭遇。
—————————
「トールっ!」
雷が駆け抜け、しかしその存在ごと燃やし尽くされた。
「ネイファ、なんで……いや、元から仲間ですらないのか……」
炎上する王都をバックに、ステッキを向けた。大激戦が始まっていた。
「わたしは創滅神様のお役立たないといけないんです。貴方は、創滅神様にとって邪魔な存在になり得る。」
手には真っ黒な剣を模したような形の武器。
厨二とか笑ってられる次元超えてるよ、これ……
冷や汗が浮かぶのを肌で感じながら、魔力を練る。練れば練るほど色が変わって美味しいように、強固な魔法が撃てる。
「創滅神様創滅神様って、自我はどこに置いてきたの!」
「そんなもの、子供の頃に川に流しましたねぇ!」
その闇の剣は魔法をも裂き、そして燃やす。人間技とはとても思えない、使徒の力。
「騙したのは、まずそちらでしょうに!わたしを利用したというのに、それに謝りのひとつもなく文句?はっ、育ちの悪さが伺えますねぇ!」
「育ち悪いけど何か?」
ステッキを直接武器として振い、それを剣で防がれる。長く鍔迫り合いしようものなら、燃やされてしまうため距離を取る。
「もう、そちらは創滅神様によって破滅へ導かれているのです。無駄な抵抗をやめ、全てを懺悔しながら逝っていただきましょうか。」
「破滅を導くのはこっちなんだよ。なんせ、私はサンタクロースだし。」
「わけが分かりませんね。」
「さぁね!私も分かんない!」
神速で踏み込んで、ネイファを蹴り飛ばした。置き土産とばかりに炎上させられた地面を踏み躙り、消火しつつ手にはトロイ。
「ぶっとべ!」
轟音を響かせ、弾丸が射出された。一撃必殺の高火力武器。それを、自由の効きづらい空中で喰らう。いくらなんでも、防ぐので手一杯のはずだ。
「っ……そんなものも隠していたのですねぇ!戦争時に使っておけばいいものを!」
「手の内を隠すのは普通でしょ。ほら、サンタクロースからのありがたいプレゼント、しっかり受け取ってよ!」
ネイファは影を伸ばしてそれを防ごうとする。しかし、それをどこかへ移動させることはできない。しっかり、この空間に縫い付けてある。
「受取拒否は不対応だから。」
ネイファの表情は影に阻まれ見えない。
「鬱陶しいですねぇ!」
怒鳴りながら、着弾に備えた。しかし衝撃を抑えきれず、後方に更に飛ばされる。
「じゃ、バイバイ。」
そこにはちょうど、私が仕掛けた空間転移の罠があった。
訓練の成果、こんなところで出たね。
やっぱり何事も経験だ。
影は防御に使い切り、移動には時間がかかる。
なす術はなく、ネイファはそのまま壁の外に放り出した。
放り出したはいいんだけど。
「これ、どないせいと。」
神炎にて過去も未来も燃やし尽くされた王都の街並みを見て、復興不可能を悟った。
「とりあえず、消火かな……」
他への連絡は後に、手に持つ神核。
私は私で、自分のことで手一杯なんだ。
———————————————————————
最近、はっちゃけられてない気がします。内容が内容ですから仕方ないんですけどね。
ではここでおひとつ。
ひゃはっぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
大変お見苦しい姿をお見せしました。
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