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18章 魔法少女と神の使徒
585話 魔法少女は世界に挑む
しおりを挟むこの世界に来て、いくら経っただろうか。戻っても戻っても、思い出しかなくて巻き戻せない。
今は冬の前。私が転生したのが春。もう、半年以上余裕で経っている。
多くの苦しい経験と、辛い経験。そんなもの比にならないくらいの大きな壁。それが今私が経っている道。前も後ろも横も、閉ざされた空間。
私はそこに、穴を開ける。
「交代で防御にあたれ!特段、ボクらは奴らを全滅させる必要はない!危険人物だけマッピングして、あとはいなせ。」
司令塔には魔神が買って出た。イグルの家に常駐し、いつでも助けに入れるからという点から採用された。
ちなみに、現在西側を霊神、東側をルーアが担っている。
創滅神の封印をしてる霊神を出していいのかという質問に関しては、そっちの方が都合がいいからだ。そっちというのは、霊神を襲うってこと。
私は創滅神と対面する方法を考えていく方向を固め、本当にヤバい時に手を貸す感じ。らしい。
「お前の案の場合、霊神に危険が及ぶんじゃねえのか?そうなった瞬間、創滅神の独壇場になるだろ。前提が崩れる。」
こういうふうに、余った私達で案だしをしている。
「逆探知する?そんな力ないけど。確かに、封印解かれちゃ終わりだよね。」
また振り出しに戻る。頭を抱えても、捻っても、何も出てこないのが現状だ。
創滅神とか、私だって1回間接的に話しただけで特に接点とかはないし。
どうやったら会えるのかとかさっぱりわからない。
「時間だけならこっちで稼げるから、キミらはさっさと本元をどうにかしてほしいんだけどな。」
「それを考えてるの、今。」
魔神に急かされながら、頭の中から無い知識を捻り出す。
「……その件はボクがどうにかする。」
「え?」
「だから、ボクがなんとかする。」
魔神は疲れたような目で私を見た。なんか、居た堪れなくてやったみたいな顔だ。
「いや、流石にそれは負担が……」
「確実性を求めただけだよ。キミにもっと働いてもらうための犠牲でもあるけど。」
「いい奴ぶって騙したなぁ!」
とは言いつつも、ありがたいことに変わりはない。感謝の気持ちは忘れずに、だ。
「ちなみに、どういうふうに特定するの?」
「相手が干渉を始めた瞬間に分かる。向こうが欲を出して、封印を解こうとするとミュールの魂が反応する仕組みになっている。」
「それはまた、革新的な?」
「そうでもないよ。」
一旦息をついて、椅子に座った。
「きっと、ギリギリまで演出しないと創滅神は警戒を解かない。絶望に絶望を重ねるタイプの悪なんだ、あの神は。」
「何それすっごい性格悪い。」
「あの時も、似たようなものだった。四神の補佐の役目をしていた者が全員裏切り、向こうに付いた。」
思い出しただけで殺意が漲っているようで、黒っぽい魔力が見えてる。怖い。
「だから、シナリオを組んでいる。だからキミには働いて欲しいんだ。」
「シナリオ?」
「性格は終わっているけど、そのおかげで読みやすいんだ。あの神は。」
—————————
王国北部、今回の主戦場であるその地より少し南方。4体の龍が、空を舞っていた。
王龍ニニウル、帝龍リュウム(改め神龍リュウム)、業龍アイルーン、法龍センスフォーン(改め神龍補佐)。その巨軀を自由に動かし、重さを感じさせない見事な舞は人から闘争心を奪う。
「龍神様の名により、これより王国の民を避難させる。異論はないな?」
3体の龍は静かに頷く。
「四神様がたの話によれば、創滅神とやらは大概単純馬鹿らしい。気をつけるべきは、その強大な力。」
「吾輩より強者など、いるはずがないだろうて。」
「何回かやられてるのに。自信過剰。」
センスフォーンにツッコまれ、不快げに目を細める。図星だ。
「避難先に、何か危険があるだろうという話だ。わざわざ、絶望を演出しなければならないが、ワタシたちは国民に避難先まで安全に送り届けなくてはいけない。これはまた、難儀な……」
ゆっくりと下降していく。
まず初めに向かう先は王都。襲撃の意味を察してくれることを願いながら、仮の襲撃を開始した。
—————————
今回の神国の動きは、当然王国内に伝わっていた。帝国を手中に収めているのだから、すぐそこにある神国の動向も筒抜けだ。
神国の信徒が凶暴化し、王国に攻め入っている。しかし、何故か途中で侵攻が止まっている。
そういった報告を受けている。
合衆国も独自に調査しているが、同じような回答が続くばかり。
次から次へと、一体何が起こっているのだ。
国王は、頭を悩ませることとなった。
「陛下。」
「分かっている。ここから、よく見えているからな。」
謁見の間。巨大なガラスが多く貼られた、王城内で一、二を争う美しさを誇るこの部屋から、巨龍が見えていた。
「討伐は不可能だろうな。」
「魔法少女をお呼びしましょうか。」
「いや、いい。…………王国を、一時放棄しよう。」
「…………よろしいでしょうか。」
「どうした?」
「無礼を承知でお聞きいたします。正気なのですか?」
「何故、魔法少女がかの戦争に首を突っ込んだか、理解できるか?」
国王は、突然そんな質問を呈した。
「それは……帝国が邪魔だったから、でしょうか。」
「半分正解だ。」
「半分……」
国王の深謀遠慮は未だ覗けない。
「見て分からぬか?彼女は、純粋に国を愛している。貴族や、騎士や、王族とは違う。何でもない、身に抱えた『大切』を奪わせないために戦っている。」
「魔法少女は、すでに動いていると?」
「そう信じている。だからこそ、我々はここから去るべきなのだ。彼女の守りたい世界を繋げるために。」
外には龍が飛んでいる。しかし、攻撃をしようとはしていない。まるで道を示すが如く、1体、大空を貫いた。
「もう一度よろしいですか?」
「構わん。」
「正気、なんでしょうか?」
「知っているか?国王というのは、欺瞞で出来ているものだ。」
国王は立ち上がり、即座に民間に伝達するように伝える。
「アレが魔法少女の救援である可能性に賭けるのですか?」
「国民の幸せは、どこにあると感じる?」
「ですから、遠回しな質問は……」
「どこにあると感じる?」
そこには、答えなければならない雰囲気があった。
「安心と安全、でしょうか。」
「そうだ。より多くの民が、平和で良い生を過ごすことができるよう、奔走するのが我々の仕事。そして、その平和も嘘によって守られることは多くある。」
「……まさか。」
「そうだ。王の言葉はよく聞くものだぞ。オリーヴ。」
「……仰のままに。」
オリーヴは気付き、すぐさま行動を取ることにした。
国王は言った。王は欺瞞でできていると。
嘘で成り立つ平和もある。嘘は形を変えれば、不信にも確信にもなり得る。
きっと、確信があるのだ。その表には嘘しか見えないが、奥にはきっと状況が好転する真実が。
しかし、真実を言っては真偽を疑う者も出よう。嘘と欺瞞と、さまざまな要素によって塗装された完璧なメッキ。それは、民を守る装甲にもなる。
「歴史は変わる。同じ国が永遠に存続することはなく、同じ景色が広がることもまたない。歴史を変えよう、この国。王国を、新たな道へ誘うのは彼女だ。」
この日、グランド・レイト王国は龍王国に名を変えた。龍の下にある国家。
国王の力によって龍の庇護下に入り、加護を受けたという名目の下にて避難は開始された。
王都は守られる。
それを確信した民達の大半は、避難を決意した。
———————————————————————
最近、シリアスに偏りすぎてギャグ成分に欠けてきていますね。
しかしそれでも……物語を当初の予定通り終わらせるためにはこれしかっ!ということで、合間合間にギャグるだけで許してください。
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