魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

文字の大きさ
上 下
614 / 681
18章 魔法少女と神の使徒

584話 魔法少女は一旦避難

しおりを挟む

「ふぅ………………はぁああああああ!」
周りに誰もいないことを確認してから、私は全身全霊全力で叫び声を上げた。まるで魔物の咆哮だ。

「こわっ!あんなの、ミスって擦っただけでおしまいじゃん!ジ・エンドさよならあの世行きだよね?」
というか、私そもそも1回死んでるけど。そういうツッコミは無しの方向で。

「このプレッシャーを毎回受けるのは結構……」
ため息と一緒に頭に手を当てる。

「一旦、こっちと向こうで分けるか。」
全員隔離は無理という判断のもと、一旦の打開策を講じる。

 魔神に言われた通り、塞いじゃおうか。

 ラノスを収納し、隠れていた空壊輪も回収した。バレずに2キルもできたんだから、言う事なしだ。

 軽く肩を揉みながら、集中力を高める。ステッキを地面に当てる。

 左に山、右に山脈。後ろに森。川が流れているけど、どうせ蒸発させられるから壁にはならない。
 だから、神炎だけに特化した壁を生む。

「地龍魔法……!」
ごっそりと魔力が抜けていく。けど、躊躇わない。どっちつかずの対応は逆に空回りする。

 何のために溜め込んだ魔力なんだよってね。

 戦争の後から貯めた魔力球の数は10個。時間もなかったし、それだけ集められただけマシ。
 これを使い切る前に、神国はどうにかしたい。

 使われる力に比例しない土壁の高さ。そりゃあそうだ。何キロあると思ってる。ベルリンの壁とまではいかなくとも、そのくらいの壁を生まなきゃならない。

「手ぇ、貸してやるよ。」
突然聞こえてきた声。その瞬間に膨大な魔力が流れ込んできた。

「……なにしてんの、蓮。」
「魔力送ってんだよ。俺の魔力はお前より上だ。もちろんステータスもだ。」
「なに?自慢するだけなら帰ってよ。」
「働いてんだろうが、進行形で。」
実際、魔力の流れが早くなり壁の高さは現在1メートルに接近していた。

「それ、私魔壊病にならない?」
「専用のスキルを使ってんだよ。」
「へぇ。」
便利なスキルだ。ちょっと欲しいとも思ったけど、私は消費が主だから使い所がない。

 ま、たまにはいい仕事するじゃん。

 そこからは早かった。10分もしないうちに魔力は尽きて壁は3メートルをゆうに超えた。
 戦争の時、土壁作っといて良かったと思った。経験は、突然活きてくる。

「さてと。どのくらい、こっち側入っちゃってんのかな。」
「お前がチンタラしすぎなんだよ。」
「だったら蓮がやったら良かったじゃん。大変なんだよ、こっちも。」
足に力を入れ、跳躍する。前世の私……というか、人間なら不可能な跳躍力で壁に登る。

「ま、このくらいやればそうそう入ってこれないよね。」
残りは全て四神に任せることにした。

 だって、ここまでやってあげたんだから休みたい。

 私は踵を返して、壁から降りた。その際に、少しだけ細工をした。

「戻るよ。」
「戻るったって、どこに?」
「私達が戻れる場所とか、ひとつしかなくない?」
馬鹿にしたような視線を上げて、蓮の背中を叩いた。

「……ってぇな。」
「攻撃目的ではないから。」
ほら、と指を差す。そこは、イグルだった。

「お前も、大概チートだな。」
「そりゃどうも。努力の賜物です。」
チートであることは認めつつ、しっかり自分の頑張りも押し出すスタイル。なんか、努力を無視されんのってムカつくし?

「これから、どうする?」
「さぁね。こっから先は、私の未来にはあんまり頼れないから。未来を作っていかないと。」
「未来を作る……か。まるで主人公みてえだな。」
「ま、ぶっちゃけこんな世界の存亡を賭けた戦いに首突っ込んでる時点でみんな主人公ないしヒロインでしょ。」
ほら、魔法少女って主人公っぽいでしょ?と言ってぴーすでもして棒読みする。

「俺は主人公になるつもりなんかねぇ。んなもん、キラキラした勇者様にでもやるよ。」
「それは同感。」
面倒そうに捨てられたセリフを掬って返した。

 私が進むのは主人公の道じゃなくて、私の道だから。

 私達が捨てた『主人公』という役職を誰かが背負ってくれるなら、それはそれでいい。都合がいい。
 私は世界のストーリーの脇道を渡る。渡りたい。

『そういうの、主人公しか言わなくない?』

 だまらっしゃい。

 忘れたわけでもなく、雨降ってるのに傘差してないのがかっこいいと思ってる中学生と同じような私の思考の弱点を的確につけるのは、同じ私だからだろうか。

「蓮は手伝ってくれるんだよね?」
「神を殺して、日本に帰す。これが条件だ。破ったら、殺す。」
「はいはい、殺されたくないしやるよ。」
前にも一度確認したようなことを、再確認する。頼もしいことだ。

「お前、笑うんだな。」
「そりゃま、人だし。」
そうやって誤魔化しながら、確かに笑ってることに気づいた。

 異世界に来て、色々私変わった気がする。

 あの時、ふと頭の中に浮かぶのは嫌な記憶。人生の大半を嫌な記憶が埋めているんだから仕方ない。
 目を閉じてもぐるぐる渦巻いていた。

 だけど、今は違う。

 大切ができて、守りたいものができて、過去と決別して、最後にぶん殴ってやりたかったけど、中指立てれたしいいや。
 人らしくなれてるような気がしてきた。

 だから新しい私を作ってくれたこの世界を変えるために、通信機を握る。

「キリがついたら戻ってきて。会議を始める。」

—————————

 一時撤退。言い換えれば逃げ帰ってきた私達と四神。イグルの私達の(勝手に使っている)家の定位置で、会議が始まる。

「今の状況、どんな感じ?」
「其方の壁で、一応防げてはいるようだ。」
人神は冷静に言った。でも、一応。完璧ではない。

「神炎の威力は思っていた以上だ。確かに、余のようなただの神もどき1人では対処できない。」
「協力が必要って、素直に言わないのが可愛いわよねぇ。」
不満そうに、人神はそっぽを向いて無視をきめた。

「ボクはキミの存在がいて良かったと心から思っているよ。異端でこの世の枠を越えたキミだからこそ、創滅神は面白がったようだけど……」
「手中に収めることはできなかった。そういうことかの?」
ルーアがクスッと笑った。

「つまり、エディはこう言いたいんだ。『創滅神は其方に任せるから、残りは余たち四神に任せろ』ってね。」
「なんだ?ここには余の敵しかいないのか?」
「完全に奇襲でなかった分、余裕が大きいからボクらに任せてもらって構わない。」
「そうさせてもらう。」
不服そうな人神だけを置き去りにして、話はどんどん進んでいく。

「あの数だから、時間はかかるかもしれないけれどぉ……それと、避難誘導の処理もお願いねぇ。」
「避難誘導……?」
「我の結界とミュール殿の力で、創滅神から観測されない地を作った。」
ルーアは意外と笑うらしい。私に勝ち誇った笑みを浮かべてみせた。神なのに、大人気ない。

「私、そんなの頼んだっけ。」
「あれば有利になると、我が勝手に思ったのだ。神龍含め、龍をいくらか派遣した。」
「へぇ、気が効くじゃん。」
多少の予想外はあっても、ここまで上手くいきすぎていて逆に怖い。

 慢心しないようにしないしないと。

「ここまで露骨に下地敷かれちゃ、乗んないわけにはいかないね。」
四神全員が私を見る。

「私が創滅神を殺す。当初の目的とは変わっちゃったけど、まぁ、創滅神と会うってことには変わりない。」
転生してすぐの私を思い出す。この世界の神にあってみたい。そう言って天に手を伸ばしたかつての記憶。

 今のばした手には、ラノス。

「やってやろうじゃん。ぶっ飛ばそう、クソッタレの神を。」

———————————————————————

 本当に、終わりが見えてきましたね。約2年間投稿して、最近は休みが多くなって……色々ありましたけど、寂しくなりますね。(←まだ2ヶ月くらいは続くことを知ってる人間の言葉)
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

処刑された令嬢、今世は聖女として幸せを掴みます!

ミズメ
恋愛
かつて侯爵令嬢マリエッタは、聖女を害したとして冤罪で処刑された。 その記憶を持ったまま、マリエッタは伯爵令嬢マリーとして生を受ける。 「このまま穏やかに暮らしたい」田舎の伯爵領で家族に囲まれのびのびと暮らしていたマリーだったが、ある日聖なる力が発現し、聖女として王の所に連れて行かれることに。玉座にいた冷徹な王は、かつてマリエッタを姉のように慕ってくれていた第二王子ヴィンセントだった。 「聖女として認めるが、必要以上の待遇はしない」 ヴィンセントと城の人々は、なぜか聖女を嫌っていて……? ●他サイトにも掲載しています。 ●誤字脱字本当にすいません…!

はっきり言ってカケラも興味はございません

みおな
恋愛
 私の婚約者様は、王女殿下の騎士をしている。  病弱でお美しい王女殿下に常に付き従い、婚約者としての交流も、マトモにしたことがない。  まぁ、好きになさればよろしいわ。 私には関係ないことですから。

恐怖体験や殺人事件都市伝説ほかの駄文

高見 梁川
エッセイ・ノンフィクション
管理人自身の恐怖体験や、ネット上や読書で知った大量殺人犯、謎の未解決事件や歴史ミステリーなどをまとめた忘備録。 個人的な記録用のブログが削除されてしまったので、データを転載します。

裏切られた私はあなたを捨てます。

たろ
恋愛
家族が亡くなり引き取られた家には優しい年上の兄様が二人いました。 いつもそばにいてくれた優しい兄様達。 わたしは上の兄様、アレックス兄様に恋をしました。 誰にも言わず心の中だけで想っていた恋心。 13歳の時に兄様は嬉しそうに言いました。 「レイン、俺、結婚が決まったよ」 「おめでとう」 わたしの恋心は簡単に砕けて失くなった。 幼い頃、助け出されて記憶をなくして迎えられた新しい家族との日々。 ずっとこの幸せが続くと思っていたのに。 でもそれは全て嘘で塗り固められたものだった。

余りモノ異世界人の自由生活~勇者じゃないので勝手にやらせてもらいます~

藤森フクロウ
ファンタジー
 相良真一(サガラシンイチ)は社畜ブラックの企業戦士だった。  悪夢のような連勤を乗り越え、漸く帰れるとバスに乗り込んだらまさかの異世界転移。  そこには土下座する幼女女神がいた。 『ごめんなさあああい!!!』  最初っからギャン泣きクライマックス。  社畜が呼び出した国からサクッと逃げ出し、自由を求めて旅立ちます。  真一からシンに名前を改め、別の国に移り住みスローライフ……と思ったら馬鹿王子の世話をする羽目になったり、狩りや採取に精を出したり、馬鹿王子に暴言を吐いたり、冒険者ランクを上げたり、女神の愚痴を聞いたり、馬鹿王子を躾けたり、社会貢献したり……  そんなまったり異世界生活がはじまる――かも?    ブックマーク30000件突破ありがとうございます!!   第13回ファンタジー小説大賞にて、特別賞を頂き書籍化しております。  ♦お知らせ♦  余りモノ異世界人の自由生活、コミックス1~4巻が発売中!  漫画は村松麻由先生が担当してくださっています。  よかったらお手に取っていただければ幸いです。    書籍1~7巻発売中。イラストは万冬しま先生が担当してくださっています。  第8巻は12月16日に発売予定です! 今回は天狼祭編です!  コミカライズの連載は毎月第二水曜に更新となります。  漫画は村松麻由先生が担当してくださいます。  ※基本予約投稿が多いです。  たまに失敗してトチ狂ったことになっています。  原稿作業中は、不規則になったり更新が遅れる可能性があります。  現在原稿作業と、私生活のいろいろで感想にはお返事しておりません。  

【完結】「お前とは結婚できない」と言われたので出奔したら、なぜか追いかけられています

21時完結
恋愛
「すまない、リディア。お前とは結婚できない」 そう告げたのは、長年婚約者だった王太子エドワード殿下。 理由は、「本当に愛する女性ができたから」――つまり、私以外に好きな人ができたということ。 (まあ、そんな気はしてました) 社交界では目立たない私は、王太子にとってただの「義務」でしかなかったのだろう。 未練もないし、王宮に居続ける理由もない。 だから、婚約破棄されたその日に領地に引きこもるため出奔した。 これからは自由に静かに暮らそう! そう思っていたのに―― 「……なぜ、殿下がここに?」 「お前がいなくなって、ようやく気づいた。リディア、お前が必要だ」 婚約破棄を言い渡した本人が、なぜか私を追いかけてきた!? さらに、冷酷な王国宰相や腹黒な公爵まで現れて、次々に私を手に入れようとしてくる。 「お前は王妃になるべき女性だ。逃がすわけがない」 「いいや、俺の妻になるべきだろう?」 「……私、ただ田舎で静かに暮らしたいだけなんですけど!!」

【完結】妊娠した愛妾の暗殺を疑われたのは、心優しき正妃様でした。〜さよなら陛下。貴方の事を愛していた私はもういないの〜

五月ふう
恋愛
「アリス……!!君がロゼッタの食事に毒を入れたんだろ……?自分の『正妃』としての地位がそんなに大切なのか?!」  今日は正妃アリスの誕生日を祝うパーティ。園庭には正妃の誕生日を祝うため、大勢の貴族たちが集まっている。主役である正妃アリスは自ら料理を作り、皆にふるまっていた。 「私は……ロゼッタの食事に毒を入れていないわ。」  アリスは毅然とした表情を浮かべて、はっきりとした口調で答えた。  銀色の髪に、透き通った緑の瞳を持つアリス。22歳を迎えたアリスは、多くの国民に慕われている。 「でもロゼッタが倒れたのは……君が作った料理を食べた直後だ!アリス……君は嫉妬に狂って、ロゼッタを傷つけたんだ‼僕の最愛の人を‼」 「まだ……毒を盛られたと決まったわけじゃないでしょう?ロゼッタが単に貧血で倒れた可能性もあるし……。」  突如倒れたロゼッタは医務室に運ばれ、現在看護を受けている。 「いや違う!それまで愛らしく微笑んでいたロゼッタが、突然血を吐いて倒れたんだぞ‼君が食事に何かを仕込んだんだ‼」 「落ち着いて……レオ……。」 「ロゼッタだけでなく、僕たちの子供まで亡き者にするつもりだったのだな‼」  愛人ロゼッタがレオナルドの子供を妊娠したとわかったのは、つい一週間前のことだ。ロゼッタは下級貴族の娘であり、本来ならばレオナルドと結ばれる身分ではなかった。  だが、正妃アリスには子供がいない。ロゼッタの存在はスウェルド王家にとって、重要なものとなっていた。国王レオナルドは、アリスのことを信じようとしない。  正妃の地位を剥奪され、牢屋に入れられることを予期したアリスはーーーー。

【完結】どうかその想いが実りますように

おもち。
恋愛
婚約者が私ではない別の女性を愛しているのは知っている。お互い恋愛感情はないけど信頼関係は築けていると思っていたのは私の独りよがりだったみたい。 学園では『愛し合う恋人の仲を引き裂くお飾りの婚約者』と陰で言われているのは分かってる。 いつまでも貴方を私に縛り付けていては可哀想だわ、だから私から貴方を解放します。 貴方のその想いが実りますように…… もう私には願う事しかできないから。 ※ざまぁは薄味となっております。(当社比)もしかしたらざまぁですらないかもしれません。汗 お読みいただく際ご注意くださいませ。 ※完結保証。全10話+番外編1話です。 ※番外編2話追加しました。 ※こちらの作品は「小説家になろう」、「カクヨム」にも掲載しています。

処理中です...