魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

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18章 魔法少女と神の使徒

閑話 創滅神

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 かつて、神を下そうとする愚か者どもがいた。

 その愚者は、多岐に渡る種族を4つにまとめ上げ、そして神となった。神の下で神を名乗る、最大にして最悪の大罪。神を騙る愚者。
 それが、四神の本来の位置付け。

 世界を転覆しようとする、悪の権化。

 しかし創滅神はそれを許した。

『構わんさ。それで我に届くというのなら、やってみればいい。我が雫の本領を確かめるというのも、中々興が乗るではないか』

 そう言って、許してしまった。
 創滅神の顔を見ることのできる数少ない神徒は、もちろん止めた。しかし、よいよいと手を振ってみせるのみ。

 この世界の神はいわゆる愉快犯的行動を好む。楽しめればそれでいい。自分の作った世界など、暇つぶしの一種でしかない。そういう考えしかできないのだ。

 この世界の歴史は新しい。この星ができたのは、1億と少し前。創滅神アヌズレリアルがこの世に爆誕した日、溢れ出したエネルギーの塊が星となって形作られた。
 そして神の成長と伴って世界も発展していき、現在の形に落ち着いた。

 別に、世界は独自の進化を遂げているわけではない。半分はそうかもしれないが、神が成長し生物の成長上限が解除されているに過ぎない。

 しかし、その半分はこの1億という年月によってとんでもない大きさまで膨らんでいった。これが、初めての創滅神の読み間違い。
 これによって、創滅神は下界への侵入を一切することが叶わなくなった。

「創滅神様。いかがなさいますか」
「いや、これでいい。こちらの方が面白いではないか」
「そうでございますか……」
優しげにつぶやいた。これは、後にウィリーを千切って捨てる狂気の神徒である。

「我がこの地に縫い付けられている間、どう動いてくれるか。楽しみではないか?」
「そうでございますね。」
彼女は深く深く、頷いた。

 そしてそれから、何百年の時が経ったであろうか。何もせず、何も動かず、まるでもう全てが終わったかのような空気にあふれた、下界。
 誰も動かぬ四神、降りることのない神。この世の生あるもの全てが神の存在を忘れ、つまらぬ普遍に染まっていた。

「つまらん。つまらん!」
もちろん、この神は心底怒っていた。

「我をここまでさせてみせた愚者どもが!」
ダンっと、何もない空間で空を蹴った。もちろん何もない。この空間は、宇宙ですらない別空間なのだから。

「落ち着いてください、創滅神様。」
「……あぁ、すまない。我が雫ながら、落ちぶれている様が気に食わなかったものでな。」
そして、食い入るを超えて殺してしまいかねない視線を、下界の映像を射抜いていた。

 封印されたせいで、下界の様子を見ることが限界となったという事実に今さら忌々しく感じた。
 楽観するのではなかった。これで何か面白いことが起こるのではないかという予想は、大きなハズレだった。

「お前に名をやろう。」
「…………至極の喜びにございますが、何故?」
「我は見ての通り、あの世に干渉することが難しい。我が雫よ、大海となりて奴らを滅せよ。つまらん世界を作り直す。」
「仰せのままに。」
これが始まりで世界は崩れる。

 リンズベルと名付けられた彼女は、たびたび下界に降りては多くの干渉を続けていった。
 人間の空力は失われ、魔族は数を減らした。強者は堕ちていき、四神も1柱欠損した。

 そして最後は仕上げだ。

「いいぞ、いいぞ我が雫。それでこそ我から生み出された世界!こうでなければな。死を目の前に、崩壊を目の前にせねば貴様らは何も動こうとはしない!足掻いてみせよ、足掻くことをやめた愚者がどこまで我に近づけるか。見せてみよ!」

 そうして現在、盤上の駒が全て揃った。

「封印の穴を発見しました。」
「破壊はできそうか?」
「少々、時間がかかりますが……破壊したその時は、御自らがお手を下すのでしょうか。」
「そうして欲しいか?」
「創滅神様が、楽しいと思われる方法であれば如何様でも。」
そう返事をしたリンズベルに、笑って答える。

「そうか、できた雫だ。水滴一つでも奴らのような愚者に与えてやりたい。」
「では、いかがなさいますか?」
「ゆっくり、じっとりとした絶望の方が面白かろう?人の醜さをたんと見てから、滅ぼす方がいい。」
不敵な笑みを浮かべる。久々に、興が乗る。

 なんと都合がいいことに、未だ神国という神を敬う国が存在するのだ。そこへ、天啓とでも言って力を与えてやれば、勝手に助長でもして世界を滅ぼして回ってくれるだろう。

 それが神のお達しだー、と。

 そんな、人と人の感情がひしめき合い混沌と化し、醜く墜つ様子を見るのがたまらなく楽しい。

 この世が終わるなら、感じたことのない楽しさを感じて見たいではないか。
 それが、普通なのだ。

———————————————————————

 そろそろ最終地点が見えてきました。だから、今まで適当に笑ってたか「我が雫」としか言っていなかった創滅神も出そうかなと。要するに、適当です。(嘘ですごめんなさい)
 閑話ですから、ここは短めに。
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