魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

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18章 魔法少女と神の使徒

581話 魔法少女は反復訓練

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「では、またのお越しをお待ちしております。」
「飲食店じゃないんだから……」
門から見送られながら、帰路を辿っていた。

 もう時間ないし、少しでも訓練したいし。帰ったら、重力操作と空間操作を完璧と言ってもいいレベルまで熟練させないと。

 ここは王都と違って馬車が行き交うこともないから、私は徒歩で帰らなきゃならない。めっちゃ面倒。

 だから私はチートを使うことにした。
 ステッキから空壊輪を取り出す。これ、浮いて動くし移動にちょうどいいことに最近気づいた。

「おっ、バランス保つの案外きつっ。」
重力操作で体重移動をしながら、進む方向とスピードを決めていく。うまくいけば、体重をかける向き、角度で移動が自由自在になる。

 ちなみに、帰る頃には上昇下降も自由選択可能になっていた。私、天才かもしれない。

『自画自賛草』

 ねぇ、今笑った?

『まだ笑ってるけど?』

 その私は私Aだね?よし、分かった。戦争をしよう。

『戦争終わった直後に何してるの……』
『ふっ、所詮私は私。煽られたら煽り返すのが流儀だ』
『たのしそー!』
『楽しくないから、一緒に止めようね?』
この3人のおかげで、なんとか世界が崩壊せずに済んだ。

『いったいどれだけの規模の戦争を予定してたの……』
私Bの悩みは尽きなさそうだ。

 そんなこともありながら、家には無事に到着している。

 「ただいま」と口にすれば誰かが「おかえり」と言ってくれ、ご飯を食べて一緒に過ごす。当たり前になった日々。

 昼食を終えた私は、フィリオの屋敷から帰る最中に決めた訓練を始めることにした。

「とはいえ、何から始めようか。」
庭に出てみて、空を見上げてつぶやいた。わたあめみたいにもふもふだ。皆、1度は乗ってみたいと思ったことだろう。

 四神の言葉を思い出してみようか。一旦。
 何か、見えてくるかもしれない。

 独自の能力、魔法が大切だと言っていた。知っている力だと、簡単に対処される。
 よくよく考えれば分かる。遠回しな言い方をされてたけど、私の重力と空間は立派な武器になり得る。

 それを理解した上で、それを伸ばしていかなきゃならない。他を考えなくていい分、マシだと思おう。

「伸ばすって言ってもね。……でも、常時重力世界展開できるくらいにはしておきたい。」
度々くる四神からの現状報告の内容を思い出しつつ、神経を研ぎ澄ます。

 あれでいて、仕事はきちんとこなしてくれるから、助かるよ。本当。

「ありがとうって、言えたらいいけどね。」
心の底からそう思い、心の底から口にした。

「重力世界。」
上書きするように、力強く言葉にされた。思った以上に力がこもった。

「これを、単独でね。……並行して空間魔法もできないといけないから……」
空壊輪を取り出した。まずは、3個。重力世界内の重力は私の思った通り、手足と同じように動く。そのため、操作は問題ない。

 体の部位が増えたものだと考えればね。私達のおかげで、その辺の処理は余裕だ。

「ラノス。」
最近導入した、呼び出しシステム。座標転移の練習は、あの後もよくしていた。その時、ネルに会いに学園に訪れた際レリアリーレと偶然再開したのだ。そして生まれた産物。

 レリアリーレって、ガチの天才だよね。

 やってと言ったことを数時間後にぽっと出てくる。理由を聞けば「きひひっ……あの時、つっ、作らせてもらった、くくっ、空壊輪。あれは、いろんなっ、技術の結晶体……能力向上に役立った……きひひっ!戦争は、いい経験だった」と薄笑いを浮かべていた。

 青白い肌とか、私と一緒じゃん。キャラ被りー。

 ここ半年間ほとんど直射日光に当たっていない私は、見事に白かった。

「そろそろ、結構粗が出てるかも。」
いくら戦時中でアドレナリンがあったからって、よく戦闘しながら、重力世界を展開し続けられていたなと自分で驚愕してしまう。

「意識して、その場の流れに乗らないように……」
無意識下の発動ほど不鮮明なものはない。ちゃんと、やろうと思ってできてこそだ。

『手伝おうか?さすがに』
『分かるだろう。私は、1人でやりたいのだよ』
『そっとしとこー』
私達の声援ならぬ静援を送られつつ、訓練を続行する。

 重力と空間の操作に並行し、ラノスの銃弾の転移。ちなみに重力世界と空間隔離を同時にやると、ディティーの情報操作を防いだように神と同じような空間を生成できる。らしい。

「この空間を引き延ばせば……攻撃に転換?」
広げたい攻撃の輪を縮めていく。この短い時間で、広く手を伸ばすとかいうことはできない。

 だから今の尖った能力をさらに尖らせる。

「よし、決めた。攻撃への転換。それが1番。」
一旦全ての効果を中断した。

「ちょっと試そうか。」


 日は暮れ、オレンジの先に紺色が見えてきた。途中、トートルーナさんにご飯や時間だと怒られたけど、今日は延長させてもらう。
 もう少しで形になりそうなんだ。

 今、目の前には私の人形がいる。スペックは中の下。使えるのはレイタースタートで用意された魔法と、ラノス系の直接魔力を突っ込むタイプの武器。
 中身は当然私だ。私が交代で担当している。
 攻撃を喰らうための盾も用意してあげた。私って優しい。

「重力弾っ。」
不可視の弾丸が私の手から飛ぶ。今はまだ私を媒介にしないと使えない。

 範囲から離れれば離れるほど、制御がむずくなって威力が落ちる。だから一旦は切り離して捨てる感じのイメージで。
 それからは、鞭のイメージでやるのもいい。

『いい威力だけど、これじゃあ普通にトールブッパした方が強いと思う。』
「だよね……離れると、重力の規模が下がるから……その維持もやらないと。」
音波発声機で声帯をつけた私人形のアドバイスも聞きながら、頭をひねる。

「空間操作で重力を包んでみるのは?」
と言いながら放つ。

『お、いい!これいいよ!』
瞬時に案が採用される。

 さっきまでやってたのは、手にたくさんビー玉握って投げたらあっちこっち行っちゃうよねって話だ。それをカプセルの中に入れればいいっていうことを今やった。

『これ、応用すればいろんな形になる。そこは、地道にやってくしかないけど。』
「とりあえず、攻撃手段の確立という点では成功でいいかな。」
『いいんじゃない?』
私の許可も降りたところで、ひと段落つけることにした。ちょうどよくお腹も減っている。

『このまま私に体を譲ってもらってもいいんだけど?』
「その人形は回収するから。」
私は、私の頭の中に帰っていった。支える力をなくした人形は、地面にガタンと体を打ちつけた。

「どこまで通用するのかな。」
一抹の不安から言葉を漏らして、自分を戒めるために唇を噛んだ。弱音を吐くうちは絶対勝てない。

 戦いは明日かもしれない。明後日かもしれない。いつか分からないけど、あともう少しってことは確か。

 気の持ちようだ私。これは、私がどうにかしなきゃいけない問題なんだから。

 やれることはやってきている。自信を持て私、と最後に気合を入れ直した。

———————————————————————

 圧倒的睡魔に負けました。今日はこのくらいで勘弁してください。
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