魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

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18章 魔法少女と神の使徒

575話 魔法少女は時々護衛

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 あの会議後、何故か私は冒険者ギルドにいた。

「いくら知り合いとはいえ、金銭の面はしっかり線引きしなければいけない。護衛を頼むなら、冒険者と依頼人という体裁は保っておきたい。」
「そんなもんかなぁ……別に私、一緒に帰るってだけだよ?」
眉を顰めて、どういうつもりか聞くつもりで口にした。

 というか、王都のギルドとか久しぶりだね。1回来たきりでもう行ってなかったっけ。

 百合乃の姿も隣におり、更に領主と私のコンビネーションも相待って注目を引いていた。
 領主パワーすげぇ。

「見られてるね。」
「見られてますね。」
一方のフィリオはキリッと決まった顔をしている。こう見るとイケオジだ。

 でもこれ言うと殺されそうだから黙っとこ。

 ヒソヒソ声が聞こえる。なになに?噂?魔法使い?笑い声……

「あ?」
龍の威を振り撒いて、出来うる限りの低音と睨みを生み出した。

「よし、静かになった。」
「やり口がヤクザです。」
「そんなの関係ないよ。」
「オッパッピーじゃないんですから。」
こちらはこちらで、そんなひそひそ話をする。

「次の方。」
順番になる。さすが王都、並ばないといけないなんてなんてめんどくさい!おっと、失礼。

「依頼を頼みたい。そして、この2人にそれを受注してくれないか?」
「は、はぁ……?」
少し疑問を持っているようだが、関係は尋ねないらしい。

「依頼の登録はどういったもので?」
「護衛依頼だ。王都からパズールまで。」
「畏まりました。」
「あ、依頼料は小銀貨5枚で。」
「おいソラ、勝手に……」
「やっちゃっていいですよ。」
私の押し込みで無理矢理達成金は5000円になった。これでも、結構譲歩した方だというのに。

「登録、および受注完了です。ギルドカードの提出と依頼金を願います。」
私と百合乃、2人分のカード。そして小銀貨5枚と大銅貨1枚を払うフィリオ。

 ちなみにだけど、依頼すると手数料として1割増になる。消費税と一緒だね。

「よし、早く行こう。ネルに会いに行きたいなら、早くしようよ。」
「勝手に行くな……まったく。」
困り顔を無視して、私はギルドから足早に去った。

—————————

 一応、会議がどうなったかだけは報告しておこう。

 あれから、国王の乱入によって全てが変わった。

 直接国王から終戦を告げられ、本日中に終戦宣言と共にラミア合衆国と会談しヘルベリスタ帝国の行末について話し合うらしい。

 今回は、その会談に向けての案出しや帝国に飲ませる条件などについて話し合う場にシフトチェンジされた。
 私は、功労者として祭り上げられた。

 これはその後決まる話であるが、会談が行われる地はラミア合衆国と王国の境界にある、地下水が豊富な街ミリエナだという。
 ミリエナ会談を終え、その先どのような条約が結ばれるのか、帝国をどうしていくかを私も聞くハメになった。

 何故かって?帝国にトドメを刺したのは王国。つまり私で、私にはその責任があるという。
 フィリオ越しに伝えられるらしい。

 そんな荷が重い気持ちは捨て去り、現在は学園。ネルの通う王都の学園。
 久しぶりの空気だ。あの頃はまだ暖かさが残っていたのに、もう肌寒い。

 私も会いたかったけど、学園の規則というかそういうので外部から人を中に入れることはできないらしい。親族は別。
 これを聞いては、フィリオの娘になるのも吝かではない。

「あーあ、私も久しぶりに会いたかったなー。」
「わたしで我慢してください。」
「百合乃じゃ代替品にもならないよ。」
「わたしはわたしですしね。」
「そういうポジティブシンキングいいから。」
学園の門の横で待っていると、靴の音が聞こえてくる。

「ん?懐かしい顔だな。」
茶色の髪を後ろでひとつに結んでいる女性が、こっちに近づいてくる。刃の潰れた剣が帯剣されているのも特徴だ。

「久しぶりです、アーネールさん。」
「空、この女の人は……というか、空の周りには女の子ばっかりです……!」
「そりゃ女子の交流関係は女子でしょ。」
両手を震わせていた百合乃に冷静にツッコむ。

 男子ばっかと絡んでる女子とか、私嫌いなタイプだし。嫌いというか、苦手。

「こんなところで何をしている?」
「知り合いを待ってる……?」
「疑問を疑問で返すな。」
そう言いながら、ふっと笑ってみせた。好印象な女性だ。

「アーネールさんこそここで何を?」
「いや、特にはないな。手持ち無沙汰になってしまったから、見回りをしていた。」
「確か今日は休日でしたよね。」
「休みと言っても、わたしは剣の稽古をする以外やることがない。真剣は、流石に使わないが。」
帯剣された己の剣を少し上げ、そして百合乃を一瞥した。

「見た限り剣士とお見受けする。名は?」
「青柳百合乃です。ピチピチの16歳!」
「ピチピチとかいつの話よ。」
その応酬に何故かアーネールさんは笑う。なんでも笑ってくれる、芸人にとってはありがたい存在だ。

「質問ばかりで申し訳ないが、二振りの剣を持つのに、理由は?」
「これは、その……貰い物で?」
「貰い物か……見せてくれないか?」
サーベルではなく、帝剣を抜いて見せる。

 確かに、貰い物だけどね。誰から貰ってるかっていうのは一生言えなさそう。

「……上質な剣だ。一眼で、洗練された完璧な一振りだと理解できる。剣の道にあるものなら、分かる。国宝級の品だ……」
じっと、開かれた目でそれを見つめる。目に焼き付けるとはこういうことか、というくらい。剣を持つ手は、慎重に、手垢がつかないよう配慮したような持ち方だった。

「このような品に触れさせてもらえたことに感謝する。」
「いえいえ。」
百合乃は謙遜しながら剣を受け取る。

「待たせた……ソラ、何をしてる?」
それと同時に戻ってきてしまったフィリオ。

「アーネールさんと話してたの。知ってるでしょ?私が前、ちょっとだけ教師やらされてたこと。」
「学園の教師か。」
フィリオは向き直して一礼する。アーネールさんも同じく。

「で、ネルはどんな感じだった?」
「勉強をしていたな。試験が近いと。それと、ソラに会いたがっていた。」
「なら連れてこればよかったじゃん。」
「そうすると勉強できなくなる気がする、と言っていた。元気そうにしていたから、そう気にするな。」
フィリオはそれだけ言って学園から離れる。自立している娘に、親が執着するのもなんだ。フィリオなりの気遣いなんだろう。

「じゃあまた。いつか。」
「あぁ。今度は、生徒として入ってきても構わないぞ?」
「遠慮しときます。」
最後にそう言葉を交わして、フィリオの背を追いかけた。


「フェロールさんは一緒に帰らないの?」
馬車の停留所で、自前の馬車に乗り込んだフィリオに聞いた。

「フェルはこれから会談に出席する。国王とともにな。」
「うわすごえら。フィリオと釣り合わない。」
「言っていろ。」
言葉を受け流し、御者さんに話しかけて馬車を出発させる。

「フィリオばっか楽してない?ネルと会ったのもフィリオ1人だし。」
「また今度連れてきてやる。だから静かにしておけ。」
面倒そうに口にした。

「……私は私で、やんなきゃいけないことあるし。」
「何か言ったか?」
「耳悪いね。」
「……悪かったな。」
悪口でその場を濁し、窓の景色を見た。

 あの世界では、あれは燃え尽きて消えている。

「……よろしくね。」
「主語が抜けている。」
「そんなところだけ聞こえなくていい。」
こんな言い合いの中に、少しだけの安息を感じた。

———————————————————————

 私もお疲れ、空さんもお疲れ。これにて睡眠。
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