魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

文字の大きさ
上 下
602 / 681
18章 魔法少女と神の使徒

574話 魔法少女は会議に突撃

しおりを挟む

「は~……久々の日本。」
その言葉は十分の一くらい本当だ。安らぐような声で、緑茶を啜っていた。

 緑茶までの行き着き方は知らない。私は葉っぱの方を作った。

 王城の一室で、謎の一時を過ごす。

「あ、フィリオはコーヒーか紅茶か、どれがいい?それとも水?」
「最後の選択肢はないものとして、ソラが今飲んでいる飲み物はなんだ?」
視線を下げ、湯呑みに氷と一緒に入ったキンキンの緑茶がある。私は冷たい緑茶派だ。

 綾○然り、伊○衛門然り、冷たい方が飲みやすいしね。

「緑だな。」
「緑だよ。」
「復唱するな。」
「私にはそれをひとつお願いできないかしら?」
「はい、いいですよ。」
ローテーブルを挟んだ向かい側に2人が座り、横には百合乃。テーブルに、百合乃がさっとふたつの湯呑みに氷を入れて、すっと滑らせた。

 その隙に私が緑茶を投入と。

 緑茶は水の割合が高いので、水魔法として使えるらしい。やったね、初級の魔導書が役に立ってる!

「俺の分もあるんだな。」
「そりゃね。」
「そらのことだから『フィリオの分?ないけど』とでも言うと思ったが……」
「あ、いらないね了解。」
「悪い。藪蛇だったな。」
「それは口に出さないお約束。」
「約束なんてしていない。」
腕を伸ばして、恐る恐る……とはいかずにグイッと煽った。私は目を見張る。

「フィリオは恥ずかしがり屋なのよ。信頼しているのよ、ソラちゃんのことは。ネルがいなければ、自分の娘として扱っていたかもしれないわ。」
「えぇ……フィリオの娘……」
「……余計なことは言わなくていい。」
氷のカランという音を鳴らしながら、机に湯呑みを置いた。

「どう?」
「美味い。ほろ苦さと、奥に感じられる深みと独特な旨みがあるな。これはどこで採れる?」
なんというか、これは何かより産地を尋ねるあたり領主らしい。すでに生産について考えている姿勢だ。

「さぁ?なんか、涼しくて水捌けよければいいんじゃない?」
「アバウトだな。」
「緑茶の茶葉はウーロン茶や紅茶と同じですよ。この世界では発酵していない茶葉は飲まれていないようですけど、それがこの緑茶です。多分、抽出法が悪いのか苦味が強かったんでしょうね。」
隣の百合乃は、ぷはぁ、と美味しそうに飲みながら口にした。

「ドリスの主力商品にしてはどうですか?新商品なので目を惹きますし、あそこは茶葉の生産地ですから。茶葉は、発酵法によってさまざまな顔を出しますから、不思議ですよね。」
「百合乃、詳しすぎて怖いんだけど。」
現に、フィリオの目が点だ。

「あー、でも同じ茶葉ってのは聞いたことあるかも。」
「茶の話はいい、本題に入るぞ。」
「本題ぃ?」
目を細めて、疑わしい視線を突き刺した。

「現在、会議が膠着状態なんだ。」
「は?もう戦争終わってんのに?」
「……それを知っている理由は深くは問わん。」
そう言って目を伏せた。フェロールさんは、いつもの微笑みで緑茶を飲んだ。

「ソラちゃんには、手伝ってほしいことがあるの。」
「フェル。大丈夫か、ソラを使って。」
「大丈夫よ。刃傷沙汰にはならないならセーフよ。」
「何やらとてつもなく不穏な気配を感じたんだけど、気のせい?」
「さぁ?」
百合乃はどこか居心地悪そうにして、小さく欠伸した。

「で、答えは?」
「会議を終わらせてほしいの。」
「会議……?」
フェロールさんの微笑みによるお願い。フィリオに頼まれたら蹴飛ばすところだけど、フェロールさんが言うなら……?

「ソラちゃんの言うように、もう戦争は終わっているわ。国王陛下に、オリーヴちゃんが報告したの。」
「ってことは……もう終戦報告されてるの……?」
「そういうことですね。」
「私来た意味全くないじゃん。」
真顔で言った。噛み締めるように脳内で反芻させる。

「なら、ここで意味を作っていけ。」
「会議を終わらせるって私……そんな便利屋みたいな能力持ってないよ?」
「特段、円滑な解決を求めているわけではない。戦争の話し合いを戦争後にやるという全く意味のないこの会議を壊す。それだけだ。」
「それはそれで、私テロ容疑で捕まりそうなんだけど。」
かつて、実際にそうなっているから笑えない。

「大丈夫だ、手は回してある。」

—————————

 日が傾く前。昼頃に行われることになった会議。

 王城の広々空間の会議室に、多くのお偉いさんが次々と入っていく。見ただけでうん金持ちそうって見た目。

 あ、あれ。

 物腰柔らかそうなおじさま。どこかで見覚えがある。

「クルミルさんのお父さんじゃないですか?あれ。」
「あー、レイモンドさんだ。」
陰に隠れながら、コソコソと見守っていた。

「この人の数だけ街があるんだよね。」
「ですねぇ。」
「色んな人がこの国を支えてるんだよね。」
「ですねぇ。」
相槌を打たれながら、ぶつぶつと言っていく。

 この中に悪徳領主とかはいるだろうけどね……

 それから20分ほど待っていると、どうやら会議が始まったようで警備員らしき人が待機し始めた。

「よし、そろそろかな。」
私達の足は、警備員の方へ向かっていた。

『さて、今回の任務を発表しよう!』
『わー』
『ぱちぱちー』
『どんどんぱふぱふー』
全く盛り上がらない空気に、Cは咳払いをする。

『題して、お前何様だよ作戦!』
『ぶー!』
ヤジが飛ぶ。ネーミングセンスも作戦内容もクソだ。救いようがない。

 その詳しい作戦内容は以下の通り。
 私と百合乃が会議にどんと突撃し、そして返してもらった帝剣をどんっ!
 てめぇら、捌かれたくなかったら黙りな!

 以上。

「馬鹿じゃないのって、私思う。」
「私も思います。」
事情を知っている警備員は、怪しさ満天の私達を捕まえることなく道を開ける。

 うーわ、扉越しにも聞こえてくる。めっちゃ白熱してるな。

 補助金がどうたら、帝国に近いからどうだ、被害想定がなんたらと。

 確かに、主力軍はあそこに集まってるだけで戦争なんだから他のところから攻めたりもするだろうけど、それも各街で対処してるんじゃないの?
 いや、してるから話してるのか。

「って、いやいや無理無理!」
「ですよね、ですよね?!こんなの無理ですよね?」
私達は立ち止まり、小声で喚きだす。隣の警備員は苦笑してる。

「だってさ、領主だけが集まって会議してるんだよ?国王に直接渡る結果を議決する場で、私が現れて止まるわけないじゃん!」
ドアに手を伸ばすか伸ばすまいか、逡巡していた。

「何をしている?」
「え?」
隣の警備員の目が開かれ、ガチガチに固まる。

「国王……?」
「え、空?なんです?今、国王とか言いました?」
「百合乃って初めてだっけ。」
「国王に会える人間の方が少数派です!」
百合乃が小さく耳元で喚く。

 なんでここに国王が?

 疑問は絶えない。
 そこで、国王は困ったように口を開いた。

「ブリスレイから聞いていなかったか?」
国王らしく、覇気の乗った声で聞かれた。

 あ……手を回してるって、そういうことか……

 私は額に手を置き、安堵する。

「いや待て。ということは、フィリオあいつ分かっててこんなクソみたいな案を……」
「そのような理由ではないだろう。目の前に、功労者がいた方がやりやすいという話ではないか?」
国王はフランクに笑ってみせる。

 こういうところ、すごいよね。

 関心半分、呆れ半分。私は、国王の後についていく。

———————————————————————

 私、一つのことを続けることが結構苦手なんですよ。
 また、新作を書き出し始めたcoverさんです。

 他のやつ、まだ全然執筆できていないのに、新しいやつだけをどんどん増やしていって……もうわけ分かんないです。

 一応どんな感じか言いますと、働くのが嫌すぎる女の子がダンジョンの探索者になったけど、過酷(労働ではなく労働時間が)なので辞めたい話です。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

転生をしたら異世界だったので、のんびりスローライフで過ごしたい。

みみっく
ファンタジー
どうやら事故で死んでしまって、転生をしたらしい……仕事を頑張り、人間関係も上手くやっていたのにあっけなく死んでしまうなら……だったら、のんびりスローライフで過ごしたい! だけど現状は、幼馴染に巻き込まれて冒険者になる流れになってしまっている……

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々

於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。 今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが…… (タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

処理中です...