魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

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18章 魔法少女と神の使徒

572話 魔法少女の終わらないお仕事

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 サードミッション!
 徘徊する化け物から帝国民の安全を保障せよ!

 ネイファからされた説明を、とても簡潔かつわかりやすく説明するとこうだ。
 ちなみにファーストは村の奪還、セカンドは戦争のことだ。セカンドはフェーズ制。

『いっちょんわからんな』
Cの決め台詞(?)をスルーしたところで、私は魔神に連れられ帝国にやってきていた。

「なんで私が。」
「わたしも巻き添えくらっているのでおあいこです。」
魔神の浮遊魔法でぷかぷかしながら、風に乗っていた。

「ボクはこれでも、王国軍が死なないように手を伸ばしていたんだけど。その労りもなしにコキを使うのかな、キミたち。」
それでも運んでくれているのだから、魔神は優しい。

 でもさ、私も文句言いたいんだよ。それを押し殺しても溢れてくるんだから仕方ない。
 せっかく終わったと思ったのに、後処理にまた駆り出されるとか……

 戦争は終わったのに仕事は終わらない。
 ワークスパイラル。

「そろそろ着陸するから。」
「着陸て。」
「受け身とらないと死ぬかも。」
その言葉が、どこか遠く聞こえた。

「ん?」
一瞬脳がバグったのかと勘違いしたけど、思考が追いついて見上げると、そこには空高くに魔神が。

 浮遊魔法、解かれた……?

「何やってんの魔神!」
「空の彼方へレッツゴーです!」
「行かないよ彼方とかぁ!」


 その後、ダイナミック着地によって事なきを得た私達は例のお仕事へ向かった。
 街中で、突然叫びながら落下する人間がいたら誰でも目を見張る。注目?浴びたよねめっちゃ。

 首都リリスミア、だっけ。
 その辺にのしてる騎士達が多いこと多いこと。騎士というより、もはやオブジェクト。等身大フィギュアみたいな。

「帝国民の顔、希望も何もない顔してますね。他の街ではどうなんでしょう……」
「化け物の侵攻もないし、別に見たわけじゃないからここまでではないと思うよ。まぁ、それなりのショックとかあると思うけど。」
目の前にいる例の化け物を見据えながら、返事をする。

「トール。」
「瞬刃。」
動きの遅い的に雷が当たり、痺れた瞬間に百合乃が斬る。非常に簡単なお仕事だ。

「思ってたより呆気ない……?」
「それはそれでいいんじゃないです?楽ですし。」
「それはある。」
しかし、あまり見ていたくはない光景だ。何より、ソレ自体が嫌だ。何故かって、そりゃキモいから。

 こう、ドロドロ解けた人間が瞬間冷凍されたみたいな?形容し難い何か。

 そんなのが街を徘徊して、住民が不安にならないわけがない。私ですらこれは不安だ。

「もういっそ、ラノスで片付けようかな。」
流れ弾のことも考えて封印していた。けど、そもそも人が全然いない。どこ行ってるんだろう。

 ま、その方がやりやすいけど。

 けれど、その答えはすぐに現れた。

「貴方たちですか、帝国を穢す不届者は。」
振り返ると、震えた剣を握る女騎士が1人。目はどこか虚で、何をしているか自分でもわかっちゃいないような顔をしている。

「そこ、どいてくれない?私は化け物退治で忙しいんだから。」
「まず答えろ。質問しているのはこちらです。」
「はぁ……?いや、穢すとか言われても……」
女騎士は、ヘナヘナな動きで一歩前進する。

「見たところ、帝国の騎士とか居ないみたいだけど。どこ?」
「それを貴方が言うかッ!」
ガンッ!と、下から強烈な音が鳴る、金属が弾かれる音だ。

 っ!?……そんな、物に当たらなくても。

 空回った使命感のようなものか。なけなしの力が、剣を握らせ石畳を叩いた。

「石橋を叩いて渡っても、石畳は叩かないでよ。」
「うるさい黙れッ!」
「中学生かい。」
百合乃も薄目でその姿を見ている。このくらいの危険度なら、危険と言うまでもない。接近しながら、話しかけてみる。

「私は別に、帝国をどうこうしようとか思ってない。ただ、邪魔なんだよ。私の横を通ってくれるならそれで構わない。でも、私の進む道を塞ぐように進んで、私の大切を壊そうとしている。だから、私はこうしてる。」
「何を……」
「帝国は正義。そんな教育受けた?」
「だから、何を……」
「まぁいいや。で、少しは騎士、残ってるはずでしょ?」
トンっと肩を叩くと、ガクッと膝が折れて崩れ落ちる。理知的な目が戻ってくる。

「どうして、どうして上手くいかない……私は、できることをやっている!なのに、私は現場に行くことすらできず、何もかも終わってから、こんな、こんな……」
「いや、だから答えて欲しいんだけど……」
呆れ目をいくら突き刺そうとも、彼女はもうそこから張り付いて動かなかった。まるで吸盤でもついてるのか、と言うほどだ。

 いや……これが答えなのかもしれない。
 全てが終わってから。つまり、もう何も残っていない。人がいないのは、逃げたのもいるだろうけど殺された。騎士も、あの様子じゃあ役に立ってないみたいだし。

「どうします、空。」
「ネイファに連絡する。どうせ、帝国軍の人だし。何したかったんだろうね、この人。」
「最後に、何もできなかった自分に意味をつけたかったんじゃないです?抗った、っていう事実を。」
「そういうもんかな。」
私には分からない。愛国心も何もあるわけじゃない。

 昔、戦争してた時の日本は天皇が神で、捕虜になるなら死ぬとかいうのが普通だった。けど、私はそれが分からない。というか、ほとんどの人が分からない。
 当事者じゃないし、何がそうさせる?と思う。

 けど、本人にとっては重要なことなのかもしれないね。

 あの時、最後まで悔いていたヒビアさんの姿が頭に浮かぶ。
 こうやって、助けようとしている行為も偽善で自己満で、エゴなのかもしれない。

「~のため、って言葉。奥深いね。」
「唐突ですね。」
「でも、ためってなんだろうって思えてきて。」
「ですね。皇帝のため、帝国のためと戦ってきた騎士たちを見ると、わたしも少し思うところがあります。」
ラノスの空壊輪を背負い、もう片方に通信機。軽く通話すると、仕方ないからどうにかするとのこと。

「行こうか。」
「ですね。」
また、新しい敵を排除するために走る。

 私達みたいな小娘じゃ分からないことは沢山ある。命は大切だなんて綺麗事で、敵を守るつもりもない。

 じゃあ、何が正しいのだろうか。

 私がこうやって、思春期全開の痛い悩みを抱えている間にも、世界は勝手に周っていく。


「もうだいぶやったけど、どうなんだろ。」
「さっきからめっきり合わなくなりましたしね。」
100を超えてから数えるのをやめた化け物達を倒し続けてはや2時間。朝方だったのに、もう太陽が昇ってきている。

「もうこれでいいでしょ。」
「お仕事終わりです?」
「終わり終わり、かいさーん。」
ラノスやらの武器類を収納して、腕を伸ばす。視線の先には、唯一損傷のない帝国府が。

 そういえば先輩、大丈夫かな。
 あの先輩が死ぬとか想像つかないけど、万が一とかあるかもだし。

「何か気になることでも?」
「いや、なにも。強いて言うなら報告するか迷ってる。」
「そこは迷わないでください。」
仕方なく、魔力を通してネイファに連絡を通す。

『何回かけてくるんですか、わたしのこと好きなんですか?気持ち悪いのでやめてください』
「おっけーネイファは1回死ね。」
『嫌ですね』
真面目に返してこられると、こっちもこっちでやりにくい。

「こっち、多分もう終わったんだけど、どうすればいい?」
『はぁ、これだからゆとりは』
「この世界にゆとりとかないでしょ。そもそも時代違うし。」
『そんなことはどうでも良いですよ。いちいち聞かないでくださいと言っているんです』
「それで勝手にしたら怒られるでワンセットと。」
ブラック企業にありがちな気分屋すぎる上司を頭に思い浮かべる。

『あとはこっちでやっときますから、そっちの国王が動くまで休めば良いと思いますよ。人が働いている中休めるような心があれば、ですが』
「よし、休むか。」
通話を一方的に切る。

「ですね。」
2人とも、何の躊躇もなくネイファに仕事を押し付けて、魔神を呼んだ。

 結局、人任せが1番だ。

———————————————————————

 おいお前、しれっと休んだな?
 とお思いの皆様。はい休みましたすみません。いやはや、無理するものではありませんね。死にます。

 ここで、「人間ヒエラルキーがあるなら強いて言っても分解される側」である私から一言。
 できる時にやろう。

 ではでは。
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