魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

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18章 魔法少女と神の使徒

571話 魔法少女は安らぎたい

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 焼肉の逆襲を食らった胃に、水を流し込んでなんとか凌ぐ。
 そんな体調の中、村の中心に向かって肩を借りながらゆっくりと進んでいる。

 空っぽの胃に、脂物と刺激物は私にクリティカルな状況を与えている。

「大丈夫です?流石に肉を焼くのは違いましたよね……」
「それ今更気づく……?私もテンションとアドレナリンで乗っかっちゃったけどさぁ。」
胸焼けというのか、痛みでも痒みでもないキリキリするような不快感を味わう。これもスパイスか。

「もう朝ですよ。これじゃあまるで朝帰りの酔っ払いです。そしてわたしはそれを迎える若妻…………こんな年齢で孕まされ、デキ婚させられた若妻……」
「わぁお急展開。じゃない。人を勝手にクズキャラにしないでほしい。」
「わたしのお嫁な時点でそれはもう幸せ者です。そしてわたしも幸せです。」
「私は嫁にも夫にも、とりあえず家族に類する何かになるつもりはない。金輪際、何があっても。」
「未来は不確定ですぅ!」
仮定未来眼を持つ百合乃は、地味にある説得力を振りかざす。

 まぁ、気持ち悪い胃は置いといて、そろそろレイアードさんとかラビアとか、その辺りに挨拶に行かないと。

「———様。いけません。陛下に怒られるなどという理由で雲隠れなど。」
「私はもう王宮になど戻りたくないんです!肩身と部屋と空気感が狭いのですよ、そこをなんとか、ご理解いただけませんか?」
「無理です。」

「あれ、なんです?」
「私達には関係ないことだヨ。」
東門方面から騒がしい声が聞こえてきているが、私は知らない。やらなきゃいけないこともあるし、早くしてお家に帰りたい。

 ツララとも、まだ会えてないし……大丈夫かな。怪我してないかな?

 しかし、私達みたいな変な格好をしていると目立つ。いくらなんでも、無視して通るということはできなかった。

「空、気づいているというのに無視するとは、酷いのではないですか!?」
「あ、いたんだ気づかなかっター。」
「その外れた視線は一体どちらは向かっているのか気になるところではありますが、助けてくださると助かるのだけど。」
そこには、オリーヴさんに羽交い締めにされているラビアの姿が。抵抗虚しく、捕まっていた。

「あれ、オリーヴさん服は……?」
「私はただ使用人ですので。」
「ただの使用人は貴族の娘を羽交締めなどしないと、私は思うのだけど。」
「そうですか。では、特殊な使用人とお考えください。」
世間話ですらない。通りかかったので挨拶くらいのトーンで、暴れるラビアを制する。

「というか、この状況何。」
一切安らぐ気を与えさせない、これまた特殊な状況に疑問符を打つ。

「私が少し外している際彼女が東門へ向かって走っている様子が伺えたため、捕まえた。と申せば分かるでしょうか。」
「……なんで逃げてるの?」
「それは決まっております。」
少し顔を俯かせたと思えば、青い顔をし始めた。

「勝手に飛び出していって、あの国王陛下から何をどう言われるか分かったものじゃないからですよ……!」
「それは貴方が悪いのでは?」
オリーヴVSラビアは、存在的にオリーヴに軍牌が上がる。ドMと人じゃ、格が違う。

「まぁ、ファイト。私からは以上。」
「なっ、何故……空には人の心がないのですか?」
「そっちこそ、私を変なのに巻き込まないでよ。疲れてるし。」
「そうです!いつまで私の空と話してるんです?」
「百合乃はややこしくなるから黙って。」
百合乃の肩に乗る腕を、首に移動させて〆る。

「愛の鞭です。」
「そっちもそっちで大変みたいね。」
首締めと羽交い締めのシュールな光景。そのまま引きずるように歩いていく。

「あ、一応言っとく。ありがとね。」
「何をいきなり……」
「人の厚意は素直に受け取ったほうがいいと思うよ。」
背中で語りながら、私は進んでいく。


「あ、ヒビアさん。」
目の前に、凛とした騎士の女性がいた。

「こんなところで何してるの?」
「いや、少し……外の空気を吸いたくてな。ソラの方こそどうした?」
「ちょっと、朝から肉食べたせいでね……」
右腕でお腹をさすると、ヒビアさんは何故がぷふっと笑いをこぼした。

「悪い、笑うつもりは、なかったんだ。」
そう言いながらも笑っている。

「めでたいな。」
「いや何が。」
「そうです、おめでたです!」
「焼肉で人体生成の錬金術行わないで?」
左足で百合乃の右足を蹴っておく。

「あの後、なんか問題なかった?」
「ああ、完璧だった。逆に体の活力がみなぎりすぎて、空回ってしまいそうだった。心なしか筋肉のハリがいい。」
「そんな効果ないよ。」
再生創々にそんな深夜のセールスのような効果はない。

「色々あったが、ソラのおかげで目が覚めることもあった。不謹慎と言われようとも、この戦争は私にとって必要なものだったかもしれないな。」
「こんな17歳の若造の言葉が響いちゃったか。」
「それにしては、重みがあったように思えたな。」
「2人だけで秘密の会話……浮気です?!」
もう1度、蹴っておいた。


 偶然か何かは知らないけど、何故か起床直後に様々な人と鉢合わせた。
 総騎士長や拾肆彗、顔見知りの騎士の人達とも挨拶を交わす。

 その雰囲気が、本当に終わったんだと思わせてくれる。

「結局、自分で会いにいく必要なかったですね。みんな元気そうでした。」
「いや、まだツララと会ってないんだけど?」
「ちっ。」
「舌打ちすんな。」
帰路へシフトチェンジしようとしていた百合乃を強引に引き戻す。

「そんなに会いたいなら呼べばいいんじゃないです?一応、奴隷ではあるんですから……そういう機能ないんです?」
「まぁ確かにありがちな設定ではあるけど……」
と思っていた。しかし、主従愛とはとんでもないということを知ることになる。

「主、呼んだ?」
「おっけー百合乃。私は幻覚を見てるらしい。」
「キスして覚ましてあげましょうか?」
「そうすると百合乃がこの世から召される可能性があるからやめておいたほうがいいと思う。」
視線の先には、可愛いもふもふ。

「主。おかえり!」
「ただいま、ツララ。」
主従再会。感動の瞬間だ。

「感動の最中お邪魔しますね。」
そんな中、ずけずけとやってくる人の心を持たない人物がやってきた。

「ネイファ……今帰り?」
「その、朝帰りの夫に怪訝な目を向ける妻のような台詞、気持ち悪いのでやめてください。」
「そこそこ早かったなって思っただけだけど。ネイファこそなんか変な妄想するのはやめて。」
ツララの教育に悪いので、私が壁になって防ぐ。

「余にこんな猛獣の世話をさせるな。2度とやらない。」
「あー、人神いたんだ。」
「よし、今ここで其方をあの世へ葬ろうか。」
「今の私は昔よりだいぶ強いよ?勝てる?」
「その挑発は肯定という意味で間違いないな?」
「ストーップ!Calm down please!」
「何言ってるか分かんないよ!」
とりあえず落ち着けと言われてるような気がして、一歩下がる。

 私みたいな英語弱者に英語をぶつけても何も起こらないよ。
 もしかしたら化学反応みたいなの起きるかもしれないけど。

「ま、そんなことはどうでもいいんです。」
ネイファが百合乃を弾いて呟く。

「貴方にはまだ仕事が残っていますので。その報告に来た次第です。お疲れのところ、申し訳ないですけどねぇ。」
「なら、せめて申し訳なさを出そうよ。」
しかし、どうせやらなきゃいけないことだろうから、断れない。私は、泣く泣く事情を聞くことにした。

———————————————————————

 今回のタイトル、なんかめちゃくちゃどこかにありそうな名前してますね。
 「~は~たい(したい、ない)」系はよく見ますよね。

 今回はとりあえず、キャラが生きてることを見せるためだけの回なので入り乱れてます。何かが。
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