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17章 魔法少女と四国大戦

570話 魔法少女は終戦宣言

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 私は食糧庫と前で唖然とする。

「なにコレ。」
「何と言われても、食糧庫ですね。」
「そうだね。空っぽのね!」
 つい先日まではまだまだ余裕のあった食料達が、見る影もなく消滅していた。私は、少し強めに壁を殴る。

「空、物に当たるのは良くないですよ?」
「分かってるよそんなの……」
 ぐぅ~と、虚しく鳴り響く腹の音。人が死んでようが、戦争が起ころうが、腹は減る。だから米騒動なんて起こるんだ。

 人間、頑張ればもっとコスパ良く生きられるよね?進化していこうよ、環境に合わせてさ。

「ま、少ない魔力で生成するしかないよね。」
「魔力どのくらい残ってるんです?」
「ん、まぁ寝たし半分くらいあるよ。まだ。補助に魔力使い続けてるから、消費速度がすごいことすごいこと。」

 重力と空間をダブルで操作とかするもんじゃないね。あれは人間業じゃない。思考分離様々だ。

「仕方ないし、一旦家戻ろうか。」
「ですね。」
 そう言ってもぬけの殻の食糧庫から出ようとして……

 ん?

 何かが立っていた。さすがに、電気もついてない状態で誰かはわからないけど、誰かいる。
 気づけば、足音が消えていた。

「み、見えてます?あれ。」
「どれか分からないけどあれなら見えてるよ。」
「ですです。」
 自然と忍び声になる。

 あの背格好は……子供?
 まさか、帝国に殺されたイグルの子供の霊……?

 その人影はゆらゆらと揺れる。ゆっくりこっちに近づいたり、止まったり。完全に常人の動きから逸脱している。

「いちにのさんで飛び出しましょう。逃げるしかないです。」
「どこに?あそこしかないよ入り口。」
「わ、私が断絶で切り刻みます……!あの霊を!」
「ちょ、静かに。」
 百合乃の口を強引に塞ぎ、影と対面する。

「そ、そうだ、ライト。ライトだ。」
「そ、そうです。ひっ、光らせちゃえば……怖くありませんね……」
 若干震え声、プラス青ざめた顔で漏らす。ここが、事故物件ならぬ大事故村なことが更に恐怖を助長させる。

「らっ、ライト。」
 食糧庫が明るく照らされる。

「……っ。」
 呻き声のようなものが聞こえた。

「「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」」
「のぉ……っ。」
「「ぁぁ……あ?」」
「お水を飲みにきたら、声が聞こえたから寄ってみただけなのに……眩しいの……」
 しょぼしょぼ目を瞬いている少女が、そこに。ふと我に帰る。なんか百合乃と抱きついてる。

「感想がわかりやすい状況説明だったよありがとう!」
 私は分かりやすく顔を俯かせ声だけを張る。無駄恥を晒した。

「人なら人って看板を下げていてくださいよ……」
「無茶言わないで欲しいの……」
 目に涙を浮かべた少女。特徴的な語尾で分かる、エインミールだ。

「でも、ベッタベタだけどこういう展開消費できたのでグッジョブです。」
「メタいこと言うな。」
「そんなふうに言う方がメタいですよ。」
 と言いながら、自分の体を抱き寄せては、はぁん、空の感触ぅ……だとかほざいて恍惚としている。

「いで。蹴らないでください。DVはよくないです。」
「ねぇ百合乃、DVの意味わかって言ってる?」
「Domestic violenceの略ですよね?」
 やはり地味にいい発音で、ニコッと首を傾げる。1回海外に流してやりたい。

「だから意味は?」
「直訳で家庭内暴力ですね。」
「もし私がこのワードをスルーしてたら、私と百合乃が知らぬ間に家族にされてた事実に冷や汗が……」
「酷いですぅ。」
「帰っていいの?」
 エインミールは、私達を細目で睨む。

「とりあえず、ご飯食べたいんだけど。」
「ですね。」
「エインミールもどう?」
「……食べるの。」
 お腹をさすりながら、顔を上げて呟いた。


「馬鹿!馬鹿すぎる!馬鹿すぎるの!」
「ふぇーい!どんどん食えですぅ!」
「いぇーい!焼け焼け!」
 テンションぶち上げで騒ぎ立てる私達に対し、エインミールは箸を片手に棒立ちしている。現在、私の拠点の庭である。

「朝っぱら食う焼肉サイコー!」
 えげつない背徳感を得ながら、もぐもぐ肉を食べる。柔らかい。

「塩タンいきますよー!」
「おっしゃー。」
 黒色のシュワシュワ片手に、焼肉を楽しむ。

「朝に食べるご飯じゃないの!胃を破壊するための食物兵器なの!」
「そんなこと言ってないで食べようよ。昨日から全然食べてないのに、動きまくって疲れてるんだよ。命をいただいて活力もらおう。」
「あたしは今朝の宴会に付き合わせれたばかりの被害者、腹にそんなブツは入らないの。」
「食えば入る食わねば入らぬです!食いましょう!」
 塩タンと言いながらネギの乗っかったネギ塩タンを丸めて、あっつ熱のままエインミールの口に突き刺した。

「あづいのぉ……!」
「こら百合乃、いじめちゃダメでしょ。」
「……ムカつくぐらい美味しいの…………」
「結果オーライalright!」
「だいじょばないでしょ。」
 火傷した口を冷ますようにお冷やに舌を突っ込む姿を見て、ちょっと可哀想可愛いと思ってしまった。

 百合乃?歯を見せてサムズアップしてる。

「空空。」
「はいはい。」
「終戦報告ってするんです?ほら、国王様とかに。」
トングをカンカンしながら聞いてきた。

「あー、あったね。だる。」
「だるだるですねぇ。」
「だるだるよぉ。」
「どんな会話してるの。」
ようやく落ち着いてきたのか、私の焼いているカルビを掴んだ。

「それ私の。」
「関係ないの。」
「お?焼肉の焼き方問題で戦争勃発できるよ?」
「数分で終わりそうな戦争には興味ない。」
「丸一日拘束してもいいかも。」
「そんな強引な戦争狂ってるの。」
仕方ないので黒くなり始めたキャベツのような葉菜を口に放り込み、トロトロになったナスもいらっしゃいませする。

 はぁー、こういう時にビールでもあったら美味しいんだろうけど、私未成年だし。

 代わりにシュワシュワを飲む。前世の味。

「実際、どういうふうに戦争終わらせればいいと思う?こういう国同士のガチガチ戦争に、終戦宣言がないとかおかしいし。」
「こういうのって、お国のトップがやるものなんじゃないです?日本だったら天皇陛下みたいに。」
「天皇に陛下つける人初めて見た。」
「そりゃあ、天皇とかニュースとかでしか聞きませんし。伝染りました。」
と言って百合乃も私のカルビを箸で取る。

「もういいや。」
代わりに塩タンを頬張っておく。

「気分的に、一応ここで言っとこうか。1回くらい。」
「いいんじゃないです?」
「どうでもいいの。」
とのことなので、気持ちの整理のためにも言っておくことにする。

「これでこの戦争は終わり。王国側の勝利ってことで。おしまい!あとは国王お願い!」
「結局人任せです。」
「最初からこうなると思ってたの。」
「いいのいいの。私が一区切りつけるためのやつなんだから。」
その後、朝ごはんを焼肉にしたことを後悔したのであった。

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 帝国の件、そして終戦の件はオリーブによって国王へ伝えられた。

 戦勝を告げるのは本日の昼頃となるらしい。全街の領主へ早馬が飛び、同時発表となるらしい。

「本当に全てが終わったのですね。」
短いメイド服から一転、いつものドM級のメイドコスチュームで呟いた。

 もう、腕輪も必要ない。大事に保管して、イグルの部屋に置いてきている。

 国の戦は終わった。
 しかし、世界を渦巻く最悪はまだ終わらない。

 神国では今、魔法少女の最後の戦いが始まろうとしていた。

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 風邪は治りました。多分、きっと。微熱ももうありませんし、ちょっとめんどいなー、くらいのテンションです。
 しかしまぁ、眠いです。めちゃくちゃ眠いです。
 なので焼肉食わせてやりました。
 接続詞の使い方間違ってるって?そんなの知りません。

 と、いうわけで今章はこれにておしまい。あと2、3章のうちに終わらせられるよう頑張る次第です。
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