魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

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17章 魔法少女と四国大戦

561話 魔法少女と終戦決戦 1

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 私のステッキと、ディティーの剣が交差した。数度の剣戟を終えると、すぐさま空間歩行で空間を蹴って間合いをとった。

「朕の剣に追いつくとは、見どころのある魔法使いのようだ。」
「そりゃどうも。」
百合乃を守る位置に足を動かし、思ってもない言葉で時間を稼ぐ。

 二刀流ね……アニメじゃないんだから1本でいいじゃん。

 紫色をしていて薄い。それでも存在感を放つ剣に、翡翠色をした剣。前者とは対照的で、全てを飲み込みそうな広さを感じた。

「百合乃は、補助だけに徹してね。」
「分かってますよ。」
尖っているだけに、刺さらなければあまり効果は期待できない百合乃に戦闘の役を務めさせるべきではない。百合乃自身もそれを理解しているようで、防御の構えをとっている。

「そこの娘が最終手段ということか。」
「さぁね。好きに思えばいいんじゃない!」
神速で駆け出し、相手のがら空きの腹部に左手で持ったステッキを突き刺す。

 ……っ、やっぱ避けられるか。

「どんなステータスしてんのディティー!私はレベルチートがあるはずなんだけど!」
「自分の頭で考えてみればいい。シンキングタイムなら死ぬまである。」
初めてディティーを見た日、あの映像の姿と変わらぬ装いの彼女は翡翠剣を振るう。不気味な笑みも相変わらずだ。

「大振りすぎるよそれ。」
なんて言って、横を縫って走った。はずだった。

「縮地ぃっ!」
ガギィィ、と鈍く不快な音声が響いた。

 え……これまじ……?

 ディティーのチートさを再確認した。

 私の右側に、サーベルが見えた。そのサーベルは翡翠色の剣を受け止め、それを行なう百合乃の顔は少し辛そうだ。

 情報操作……?でも、今は使えないはず。いや、干渉するのが無理なだけか……でも、これは……

「絶望し恐怖するか?この剣に。」
「何をしたの。」
「まぁ、この程度は教えた方が面白いかもしれないな。」
ディティーは剣を引く。百合乃の間に割り込む形でポジションを移動し、早めに空壊輪をばら撒く。

「この剣は理を咲かせる剣。名付けるとしたら、そうだな…………そう、理紡剣としようか。」
満足げに頷いて、剣を掲げる。

「……武器に頼るのは良くないと思うよ!」
「ソラが言うか。」
呆れ笑いのように言ってから、私は無視して地面を蹴った。今度はあんなヘマはしない。

「ファイボルト!」
視界を炎で塞ぐ。

「任せたよ、私!」
意識せずとも、勝手に右腕が動く。

「新種の投擲具の類か?確かめれば分かることか、早く来い。」
鋭い風が頬を切った。その剣圧だけで、炎はかき消えてしまった。

 一瞬だけ、重力強くできる?

『分かった、やってみる』
真剣な声を脳で聞く。

 じゃあ行くよ。

「らああああぁぁぁっ!」
「それか。……もう慣れた。」
ラノスを握る手は、真っ直ぐディティーの方向を向いていた。2度、銃声を轟かせる。

「つまらないな。」
まるで銃弾を視認できているかのような動きで剣を動かす。紫の剣の刃の、少し斜めになっている部分に反射するように掠り、軌道が捻じ曲がる。右腕から伸びる翡翠の剣は、斬り伏せるように薙いで対象を排除した。

 今!

「っ……?」
「トールっ。」
少しだけディティーの足が重くなったように感じた。だから、牽制にそれを放って今度こそ空壊輪に銃口を向けた。

「慣れられるもんなら慣れてみろ!」
弾が尽きる限りトリガーを何度も引いた。最後のほうはカチャカチャとおもちゃのような音しか鳴らなかったが、確かに引いた。

 どうだ、これは!

 そう心で叫んだ頃には、入り口を除いて、散らばった5つの空壊輪から様々な方向による銃撃が迫っていた。

 重力と情報が釣り合ってるなら、私が本気で崩せばどうにかなるんだよ。
 知らんけど!

「朕を舐めるな!」
沈む足を強引に移動させると、二振りの剣を舞のように振るいだす。

 そもそもこれはどこからやってくるかすら分からなかった、不可視の連撃。
 避けられるわけがない。

 案の定、ディティーは2発の銃弾を弾いたところで遅いと判断して避けに徹した。

 柔らかなようで、確かな芯のある足捌き。

 私に背中を向けるように立ち、銃弾の位置は真上、左前、右下、正面。今避けようにも避けられない距離。

 体を捻り、上からの銃弾を避け、身を屈めて左の弾を回避した。地面に思い切り剣を刺し、壁にして下からの攻撃を防御したままに、それを支点として半回転。驚異的な身体能力により、全ての凶弾を回避した。

 そう、回避してくれた。

「ぁ……、肩……?」
ディティーは呻いた。回転を止めて、右肩を押さえた。

「そうか、そうか。面白い。回避した弾を移動させたか!そういうことか、このリングの意味は。」
「狂った?」
「楽しくなってきたではないか!朕は、強敵を撃ち倒した果てにある絶対的な征服感と万能感がたまらなく好きなんだ!」
「ほんとに狂ってるね、これ。」
置き土産にプローターを投げ、バックステップ。爆風に乗じてマガジンを変え、百合乃の隣に並ぶ。

「そろそろ、あれいっとく?」
「わたしとしてはもう少し空と一緒にいたいんですけど……仕方ないです……空の負担もありますし。」
落ち込んだフリをしている百合乃は放っておき、万属剣を50本ほどセットした。

「ステッキもついでに。」
スペアのそれを投げ、固定砲台のようにする。私から見て、右後ろ上と左後ろ上だ。

「空、前!」
「オッケー!任せて。」
すぐさま気持ちを切り替える。神経を戦闘に注ぎ込むのだ。

「この程度で朕が止まると思ったか?」
「思ってたらもっと楽なんだけどね!」
剣が動く予兆を感じ、10本の万属剣の雨をあげた。しかし、それは躊躇なく一撃にして打ち払われてしまい、切り返しの突きが私に向かう。

「残念。」
紫色が視界の右端に映った。

「流星光槍。」
回転しながら速度を増している光の槍が、至近距離からディディーに飛んだ。

「なかなかの威力だ!」
瞬時に手のひらでガードし、ごと飛ばされながら叫ぶ。それに追い打ちをかけるが如く、風を貫いて残った万属剣が追いかける。

「こっちもついでに味わってもらいたいね!」
目の前の猛攻に気がとられている。冷や汗を浮かべたディティーの後ろには、いつの間にか2本のスペアステッキが。

「ファイアサークル!」
「魔断!」
ドオオンッ!という爆発音を側で聞く。自分ごと巻き込む炎の渦の外では、粉塵爆発が起こっている。

 ステッキで囲んだ結界もどきを生む。あとは密閉空間での大爆発。簡単な話だ。

 その煙の中を突っ走る人間がいた。
 魔断で炎を消し止めた百合乃は無傷だ。身を屈めて、気配のする方へと一直線。

「朕の用は貴様にはない!」
「わたしがあるんです!」
龍のような鋭い眼光が百合乃を射抜き、そこだけ気迫に負けたかのように煙が薄まった。百合乃は、全く意に介さずにサーベルを振るった。

「ここへ集え、一極天下。」
「有象無象を奈落の道へ、無形一身。」
後手に回ったように見えたディティーの言葉。しかし、百合乃の黒光をその剣は受け止めた。

「マジ……」
はたから見ていた私もそこそこに引く。

 百合乃はあれでも本気を出せば私の攻撃力を上回れるのに……どんな能力してんの、ディディーは……

 相手の計り知れなさに一抹の畏怖を感じながら、ラノスを握る手に力を込める。

「鍔迫り合いと行くか?」
「嫌ですね……」
「そうか、朕はフラれたわけか。」
なんて言いながら、表情は好戦的だ。

 百合乃は両手、ディティーは片手。この状況は結構まずい。

 地龍魔法の岩を生成する。
 なるべく硬く、速くだ。

「しかしソラの方も待ってはくれないらしいな。もう終わりにしてもいいだろう?」
百合乃は怪訝そうに顔を顰める。が、別の意味でまた顔を顰める。ディティーの空いている腕があるのを、ぽっかりと忘れていた。

 私と同じ……気づいてたか。やっぱり。

 拮抗状態を一瞬だけ破った。そういうことか。

「貴様は退場だ。」
百合乃は右腕を突き刺され、乱れた呼吸のまま一通り叩きのめされた後にディティーの蹴りで吹き飛んだ。

「これで今度こそ、1対1だ。まさか、逃げるなどとは言わぬな?」
「……百合乃が負けた…………」
私は困惑したように口にする。

「そうだ、ソラの仲間は地に伏した。朕に屈した人間に用はない。さあ、続きを始めよう。」
付いた血を払って、現実味の強い赤色で地面を染めた。

「百合乃の分も、私が。」
剣に対して、私はラノスを向けて相対する。

「絶対殺す。」

———————————————————————

 どこかで聞きました。なんとかなっている状況というのが1番危険だと。
 全くもってその通りですね、身をもって感じてます。直そう直そうと思っても、時間もなければどう工夫しようかと悩む一方。
 改善はできているのでしょうか。少しは読みやすくなっているのでしょうか。

 一応、本編の内容触れておきましょう。
 理紡剣。読んで字の如く理を紡ぐ剣。まぁどっかの花宮さんの力ですね。皇帝の欲しかったのはこういうやつなんです。
 実際の能力は空間内での優先権を得るというものですが。
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