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17章 魔法少女と四国大戦
552話 魔法少女は知らされる
しおりを挟む「ここがそうですか……くんくん…………なんか、血生臭いです?」
「そりゃ、最前線だし。」
イグルに戻ってきた私。後ろには、百合乃とツララの2人がついてきている。
「主、そういえば。左腕。」
「あっ、そうです!治ったんです?」
「作ったの。流石に戦争にまで片手じゃ不便だし。」
義手をブンブンと振ってみて、「違和感なく作れた」と自慢の我が腕を誇る。
「それで、わたしたちは何をすれば……」
「もう帝国はこっち攻めてきてるらしいから、百合乃は私についてきて。ツララは……」
何を任せようか、と考える。悪いけど、ツララはついでだ。ほんとはクルミルさんのところに置いていきたかった。
でも、あんなに真剣に言われちゃったらね。
考えあぐねていると、見知ったメイド服が目に入る。
「あ、オリーヴさん……」
「ソラ様、お疲れ様です。」
スタタタと素早い動きを止めたメイドさんである彼女は、律儀に頭を下げる。
「そちらのお連れ様は……」
「百合乃とツララ。私の知り合いで、策のうちのひとつなんだけど……あ、そうだ。」
振り返る。百合乃は、「オンナノコ……」とショックを受け、ツララはいつも通りの無表情。
「あの、私が乗り込んでる間にツララと同行してくれません?」
「……私が、でしょうか。」
「はい。」
「構いませんが、何故かお聞きしてもよろしいでしょうか。」
「危険な目には合わせたくないけど、戦力としては使えるから……安全性を高めたくて。」
私はオリーヴさんの腕にピッタリと嵌められた腕輪を見る。
あの、初めの襲撃。そこで活躍していたのは魔神から聞いてる。鑑定眼でその腕輪の効果も見たし、私の勘もある。
あの腕輪は、転生者の力が……魂が宿っている。道具自体が生物のように。
百合乃が、剣姫で剣術が使えるように。あの腕輪の装着者は、転生者と遜色ないステータスを誇る。
これがそのステータス。
名前 オリーヴ・リーベルク
年齢 25歳
職業 ———
レベル なし
攻撃825+5000 防御760+5000
素早さ920+5000 魔法力310+5000
魔力250+5000
装備 神撃の腕輪
魔法 なし
スキル なし
神撃の腕輪
転生者の力を内包した魔導具。適合者にのみ奇跡の力を与え、力ある限り所有者を守る。所有者に危害が加えられると、自動防御が発動し、もし所有者が死んだ場合、死を肩代わりする。
えっげつない内容をしている。
「その時になったら、ツララをお願いします。」
ツララの小さな体を持ち上げ、オリーヴさんに売り込む。
「……よろしく。アタシは、ツララ。」
「よろしくお願いします、ツララ様。私は国王専属使用人オリーヴと申します。」
顔合わせが済み、「ごめん、引き留めちゃって」と一言謝る。
「あの、興味ついでに聞きますけど、何してたんですか?」
「皆様に、英気を養ってもらおうと手料理を振る舞ってまいりました。お喜びになられていたかと。」
「そう、ありがと。」
「では。私はこれで。」
「これでじゃないですよ?」
オリーヴさんはまた別の村へ食の提供を……するための道に百合乃が立つ。
「こら百合乃、邪魔でしょ!」
「空は黙っててください!貴方は空とどんな関係なんです?教えてください!」
「はぁ……どんな、関係……?」
困惑した様子のオリーヴさん。いくら完璧メイドと言っても、この状況には相当困り果てた様子。
ほんとこの子……いくら久しぶりだからって暴走しすぎでしょ……
しかし、そんな状況を打破したのは別人物だった。
「空、大変よ!」
紅銀髪の少女が、血相を変えて走ってきていた。
「それで、なにが?」
少し時間を置き、落ち着きを取り戻したところで尋ねる。百合乃は、何故かもっと険しい目をしていた。
「皇帝の言葉に精神をやられている方々が、どうやら暴動を起こしているらしいの。監視の騎士を次々と襲っていると。逃げ延びた騎士の方からお聞きしたわ。今、総騎士長が向かっているようなのだけど……」
「仲間を傷つけることはできないから、攻めあぐねていると……」
「ええ。皆、正気を失っているようで……攻撃するにもしてどのようにすればよいのかの判断がついていないようね。」
そこまで聞いて、確信した。ラビアは理解しかねている様子だけど、これは完全にディティーの仕業だ。
一回根付かせた情報は再操作可能ってわけね……厄介すぎて泣きそう。
「今どういう状況?」
「半数の村が乗っ取られている状況、と。」
「もっと悪化してるって考えた方がいいね……」
考える時間も惜しく、そばにいるオリーヴさんに目をつけた。
「お願い。ツララと行けない?」
「もちろん。直ぐに。」
「ツララもいける?相手、殺しちゃダメだけど。」
「できる。主のため。」
ふんすとやる気を見せる。可愛いのは、後で堪能しよう。
「空!わたしも行きます!わたしなら、1人でもできますよね?」
「……いいの、百合乃?」
「本当は空と一緒にいたいです。けど、邪魔されない楽しい時間がいいんです。」
邪魔なものは振り払います!と腰に提げられたサーベルに手をかける。
「わたしだって、空がいない間頑張っていたんです。剣姫の上を、上級以上を使えるように……」
「助かるよ、めっちゃ助かる。後で好きなだけ抱きしめてあげるから、今は早く!16から21の扉だよ!」
「分かりました、行ってきます!」
「主も、気をつけて……!」
2人は、オリーヴさんの案内を受けながら全速力で走っていった。百合乃の足、あんな速かったっけ。
「オリーヴさん!これ、もし危なかったら使って。それを空に投げて起爆して!」
と、とある魔導具を投げて渡す。オリーヴさんは見事にキャッチし、小さく頭を下げた。
「私も行こうかな……」
遅ればせながらラビアにお礼を伝え、今から行く旨を教える。しかし、悪いことは立て続けに起こる。
「急いでいるところ悪いが。」
「ん?」
振り返ると、小さな体が。人神だった。
「猛スピードで、数時間しないうちに帝国から2名人が来ている。どう対処する?」
「猛スピード……?それ人間?悪魔じゃなくて?」
沈む気持ちがさらにどん底へ。このまま深淵まで潜れそうな勢いだ。
「ルーアに対処させて。多分それ、えげつなく強い。暴走をディティーの攻撃と捉えた場合、このタイミングで投入するってことは……」
内乱と外からの襲撃。しかもまだ疲弊している状態で、それも突然のこと。
「ここで本軍に来られたら終わる……もし、ディティーを帝国府に帰らせた場合もこっちが一方的に不利になるだけだし…………」
「余はルーアに伝えてくる。其方は其方のやるべきことをやれ。」
人神の姿は消え去る。やはり、睡眠不足が祟ってうまく思考がまとまらない。
「どうすれば…………」
「空。状況は大まかに分かったわ。あとは休んで、他の人に任せましょう。私も、作戦の立案に協力するから。」
「いや、でも……」
「大丈夫。貴方が守る人たちは、本当は強い。私は弱いけれどね。」
ラビアは苦笑混じりでその言葉を伝える。
「貴方が本調子でなかったら、誰が皇帝を倒すの?」
「…………分かった。ちょっと、休憩させてもらう。」
ボーッとする意識を、切断するように倒れ込み……何かに包まれたのを感じながら意識をゆっくり落としていく。
—————————
獣の咆哮のように、雄叫びを上げる人々がいた。彼らは元王国騎士。この言い方は少し悪いか。
暴走した王国騎士が、村で暴れ回っている。
「くっ……鎮まれ同胞!我が祖国グランド・レイトの誇りを忘れたかッ!」
総騎士長は、騎士を代表してその場にいた。
多くの戦力を割く羽目になっているこの暴動。拾肆彗のうちカオスエリーヴも別の暴動を治めている。
騎士の彼らの目の前には、かつてともに戦地を駆け抜け、美味い食事をした友がいた。剣を振い、犠牲者も現れている。
「レイアード様、お下がりくださいっ!」
そんな狂刃から、守ろうと飛び込む騎士がいた。彼らは、皆レイアードを慕うもの。
「やめろ!私なら問題ない!止まるんだッ!」
そんな声も虚空に消えて、狂刃は騎士の背中をなぞられる。
その前だった。
「いよっと、ですっ!」
剣ごと、何者かが吹き飛ばした。数度地を転げて、精神の狂ったその男は意識を飛ばした。
「わたしが来ました!」
それを引き起こした人物は、ヒーローのように立ち塞がる。
軍服をたなびかせた、黒髪の少女がそこにはいた。
———————————————————————
まだ何も完成させていないのに新作を書き始めてしまったcoverさん。また同じ状況が続きそう泣きたいです。
今回はまだヒロインは決まってません。可愛い女の子はたくさん出すつもりです。
別世界の住人が、命の危ないタイプのゲームを仕掛けてきて負けたら世界滅亡勝ったら継続の地獄みたいな世界の話です。
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