魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

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17章 魔法少女と四国大戦

549話 魔法少女は目の当たりにする

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 感じたことのない感覚があり、新鮮な気持ちを体験する。

 転移とは似つかない感覚。転移の場合は、視界が白くなってピースがはまるように戻る。
 これは、それとは違う。何か強制力的なものを感じる。

「魔法が使えない……?」
「未来では干渉ができないので。私は魔法なんて使えませんので、何とも言えないのですがね。」
「そうなんだ。」
辺りを見回す。イグルの村周辺の木々が見える。移動する未来の場所は、『ノストラダムスの大予言』を発動した場所に固定らしい。

 重力魔法は……使える。理に関しては、過去未来通して私に干渉権があるみたいだね。
 何もないよりかはマシかな。

 義手の感覚は……空間魔法で縫い留めてるからいける。でも魔導法が切れている。
 右腕オンリーで行くしかないかと萎えた。

「そもそも、ここはどのくらい先の未来なの?」
「そこまで遠い未来ではないわ。」
「帝国戦の終戦あたりかな。」
「そうでしょうね。」
少し歩いてみて、とりあえずイグルに向かってみる。他の村に行くにも、どこかひとつ村に行かないと扉がない。

「明らかに人の気配が薄い……」
「薄い、というより皆無と言った方が正しいけれどね。この未来は、きっと1番確率の高い未来。」
「……私の理想は所詮理想か。」
「理想なんてものは、向こうからやってくるものではないのですから。自分で掴まなければ。」
ラビアは行きましょう、と言うと扉を目指した。

 多分この時間軸の私は帝国にいる……かな。ちゃんとできてたら、帝国府にいるはず。
 負けることはない……けど、私の奔走が裏目に出てたら……不安しかない。

 心に一抹どころではないもやを抱えながら、ラビアについていく。未来についてはラビアが1番知っている。

「あれ、扉向こうだよ。」
「知っています。あの先がどうなっているか、私はすでに知っているの。」
「そう……」
「誰もおりませんよ。もう、以前に伺いました。」
その足は帝国に向かっていた。

 私は、きっと全力を尽くしてあの私になった。なのに、少し未来を知ったくらいであの私の全力を越えることができるだなんて傲慢だった。


「この未来はもう……」
ラビアと共にイグルを抜け出し、ステータスは健在なため、私が抱えて帝国まで走っていった。帝国府中枢。森林の中には屍が大量に転がり、死屍累々とした雰囲気を乗り越えてそこにいた。

 アーレは何とか生きてる。四神は分からない。ネイファはここにはいない。

 ここにはディティーと私、正真正銘の一騎打ち。

「ここであいつの動きを観察しておこう……せめて何か持ち帰れるものは持ち帰りたい……」
「強かですね……」
「ありがと。」
眼前にいるディティーと私を見やりながら、戦闘を眺める。

 相変わらずディティーは嫌味みたいなスタイルをしている。一回死んで欲しい。

 どうやら私は空間隔離と重力世界を展開したらしい。でも、向こうは情報操作で重力情報をかき消した。
 自分にかかる重力の情報だけなら、消してしまえるみたいだ。

 両者に両者が干渉できる。でも、私は2つ同時に使わないといけない。
 私達フル稼働で大忙しの頃だ。

 私は左手にステッキ、右手にラノスを構えて王国でいう謁見室のような部屋で大立ち回りをする。

 ラノスの銃口が火を吹くならぬ雷を吹き、ディティーは剣で銃弾を逸らすという頭おかしい芸当を披露して私に接近。強い踏み込みは瞬間移動のように見え、腹を剣で撫でられる。斬れはしないが、吹き飛ぶ。

 ディティーの動きは洗礼されている。
 強くしなやかであり、豪快さを兼ね備えながらも動きは軽い。緩急と言っていいか分からないけど、動きのメリハリが激しく、翻弄される。

 撹乱のつもりのラノスも、ディティーは「もう慣れた」と言って意識することなく軌道を逸らされる。
 あの時の視察はその意味もあったのか、と。情報操作の能力向上だけじゃないことに今更ながら気づく。

「劣勢、ですね。」
「でも、勝てるよね。その後が問題だけど。」
私がやられている様子を見ているなんて、気分がいいわけがない。殺意が募る。

 私も知ってる。このままじゃほんとに未来は変わらない。多分100%の負け戦が1%の勝ち戦になっただけ。

 後は早巻で描写しよう。

 空間と重力の操作で万全に行動できない私と、重力の相殺でうまく情報操作のできないディティーは予想以上の泥試合を始めた。
 一太刀入れてまた一太刀。弱ってる私の身体には、情報操作の剣は防げない。
 鮮血が散る。苦悶を顔に浮かべる。ディティーは更に剣を一本生み出し、防戦が増える。

 魔力残量を無駄に減らすだけの私。早くしなきゃいけない決断を先延ばしにし、更に状況は悪化する。
 私は覚醒した。

 覚醒と共に無理矢理ディティーの首を討ち取った。

 そんな死にそうな場面を見て、イラつきを覚える。
 私を殴りたくなった。

 四神が、アーレが、王国の騎士のみんなが、合衆国の協力者が、ついでにネイファ達が、死力を尽くしてこの場を完成させた。その舞台に上がって、成功できなかったとは何事だ。

「やっぱり、成功しなかったね。」
「やっぱりということは、空は元から成功するとは思っていなかったわけですか。」
「失敗するなんて思ってなかったよ?私が負けるわけないし。」
なんて傲慢な言葉で濁す。

 成功はしてないけど、失敗もしてない感じかな。

「これは勝ち戦のはずなんだよ。たった、1%の勝ち戦。」
「円周率より低いですね。」
「でも成功する未来はある。これはそれを掴めなかった私の落ち度。」
目の前で倒れる私を見て、冷たく言う。自分だけど自分じゃないみたいだ。

 未来の私は、もっと悪い状況だった。まだ帝国の反乱がないだけマシだ。
 けど、託されたものを守ることができなかったのは事実。

 現状の問題は圧倒的な戦力不足とディディーの異常な強さ。情報操作の厄介さ。

 あれを崩落させるために、何をすればいいのか。

 ひとつだけ、手を思い付いた。

「私の変革と、あの一撃があれば……」
「何か策でも?」
「……最低で、最悪な、必勝の策がね。」
私は何となく、そうしなきゃいけない気がして手を伸ばした。あるはずのない魔力流れを感じて、その魔力を放出する。

 これは私の意志に反するような気もする……けど、やらなきゃ意志もクソもないしね。

 伸ばした手からは、この世界の物とは似ても似つかない魔力が流れ出る。魔法少女服を通して流れるのとは違う、私の体から放たれる。

「それは魔法……?」
ラビアは、燦々と輝く瑠璃色の魔力光を眺めて漏らす。

「この未来を消去する。」
その瞬間、光の檻が全てを包んだ。

—————————

 世界は複雑に絡まり合っている。

 絶対に解けず、何があっても1本になることはない。解けるとするならば、それは世界が終わる時くらいなものだ。

 それが、神の統治する世界。

 それを壊す者は、どの世界にだって現れる。

「第2フェーズを始めようではないか。」
帝国国境の森林の手前には、約3万の軍隊が列をなしている。

 神国の軍が追加されたのだ。
 あの時は、陽動のための要らぬ捨て駒。
 この3万は、要る捨て駒だ。

 少し、予想外なことはあったものの概ね予想通り。『六将桜』のうち2名は死亡、2名行方不明。概ね、予想通り。

 ルーンさえ生き残っていれば問題はない。

 そのルーンは今、他1名と共に仕事をしている。情報操作の能力も、ある程度熟練した。最後に調整さえできれば、完璧だ。

「よくぞ朕の呼びかけに応えてくれた。神国の兵士たちにも、心よりの感謝を捧げよう。」
神国の人間にも、薄い情報操作をかける。

「王国兵の姿を見たか?朕の言葉に揺らいだ。朕の言葉は正しかったと言うことに他ならない。大義は、朕にある!」
帝国は行動を開始した。

———————————————————————

 もうそろそろ戦争再開ですね。話も終盤に差し掛かってきて……どうやって終わりに繋げよう。


 追記
先日、というほどではないですが、投稿できていませんでしたね。最近ちょっと、疲れの波が押し寄せてきていまして……サーフィンできたらよかったんですけど、溺れています。現在進行形で。
またこのようなことがあるかもしれませんが、できるだけないよう心がけていきたいです……
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