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17章 魔法少女と四国大戦
556話 四神の動向
しおりを挟む「神使いが荒いよ、あの魔法少女は。」
無風の夜。少しだけ月が雲で翳り、暗がりの夜を演出する。森林の中は、通常では何も見えない。
が、魔神の眼にかかれば全て確認可能である。
魔神の見た情報は、魔科学部の面々が準備時間中に作り上げた魔導インクと大量の紙に書かれ続ける。
魔力を通して念じれば、魔力に込められた意思の形がその通りに伝達するという魔導具。
魔法少女はそれを目にして、本当に魔力は異次元だと感想を口にしていた。
魔法少女は、ほとんど全てを1人で抱えようとして、全てを取りこぼしそうになっている、
世界を崩壊させるわけにはいかないが、そんな彼女が気掛かりなのだ。
「少しくらいは手伝おう。ボクのためにもキミのためにも。」
—————————
「この帝国の厳重さで、どうやって其方は侵入するつもりか、聞かせてもらってもいいか?」
「お忘れですか?わたしは神国軍副機卿兼指揮官、帝国へ派遣された軍の上層部。」
「だから侵入は簡単と?」
「詳細は知らされていませんが、わたしにかかれば隠し通路の10や100は見つけられます。帝国も、意外とザルですねぇ。」
悪戯っ子のような笑みを含ませ、ネイファは帝国に侵入して行く。影を使って。
首都リリスミアに行くにあたり、通常なら多くの関所を突破する必要がある。
しかし影を使えば1発で終わる。
ネイファ・リンカは、やはり脅威になり得ると人神は心で感じた。
「さてさて、帝国の大転覆といきましょうかねぇ。」
スクープに食らいつく記者のような鋭い目で、舌なめずりをした。
帝国を骨の髄までしゃぶりつきでもするのだろうか。
—————————
龍神ルーアは、帝国とは真逆の方面へ進んでいた。建物の破壊と前回の相手の排除、もしくは近寄らせないこと。
前回は、余裕を持って戦った結果逃げられてしまった。まさか、完全に逃げを選択した戦闘をするとは思わなかった。
敵はこちらに敵意を持っているものだ、という固定概念を捨て切れなかった。
まだ完全ではない、しかも力を程々にしたルーアに、完璧に逃げを選択した強者を確実に殺す術は持ち合わせてはいなかった。
「今回も、深追いは禁物……我の力も底が知れているのぅ……」
龍神が落ち込むくらいには、ショックな出来事だった。
高速飛行で、ショートカットしながら目的地へ向かう。いくらルーアでもアレが危険だとは分かる。
薄く噴霧された霧状の魔力は、不可視の奇襲と変わらない。
その魔力内では、この世の理に次ぐ優先度を持つ。つまり、擬似的な空間魔法の使用も可能ということだ。
そんな中で戦争をするなど自殺行為。壊しても壊さずとも、今すぐどうこうなる話ではないが、壊さなければ利用されかねない。
本当の敵は、帝国の裏にいるのだから。
考え事をしながら移動していた。普段なら絶対にしないが、心が落ちていたためかそうなっていた。
そのせいで気づかなかった。目の前に目的の施設があることに。
敵である『六将桜』の気配が迫っていたことに。
「……っ、しくじった……」
我としたことが、と息を吐く暇もなく次の攻撃はくる。
さすがに、来ると分かっている攻撃をいなせないなんてヘマはしない。
もう十分なヘマは犯している気もしないでもないが、とルーアは心の底で自嘲する。
「避けるか。」
ルーアの真横には、鉄製のように刺々しい質感をした蔓の塊のようなものが射出されていた。
「我も、これ以上主らに遊ばれているわけにもいかぬからな。」
空間を塞いだ。龍法陣同士を結んで、擬似結界のような役割をしている。
両者、空の上で機会を伺う。
今度は、逃げられない。
「もう目的は完遂した。やるぞ、望月。」
「皇帝陛下の晴れ姿、見られなくなりますよ。桔梗くん。」
「見られるよう努力はするさ。」
桔梗と呼ばれた青年は、膨大な魔力をその手に宿した。
「主らは何故帝国に与する?最期に、それを聞かせてくれんか?」
「人の最期を勝手に決めるな!」
「風よ、咲き狂え!」
暴風が目の前で起きたのを皮切りに、2人がかりで突っ込んできた。
命が惜しくないのか、と思う。しかし、惜しくないのだろう。そんな洗脳じみた忠誠がうかがえた。
「理はすでに陛下の物となった。『創華理紡』理を紡ぐ最後の華。」
「我に理を語るでない!」
「不完全な神が、世界を汚すな!」
言葉と言葉、魔法とスキルのぶつかり合い。
龍法陣にて、無限とも思える魔法の波状攻撃を繰り返すルーア。
瓦解と崩壊の両軸で、魔力の形と魔法の形成を消滅させるルーンこと、桔梗。
一進一退の攻防に水を差すのは、望月菫。
「帝国は第二の故郷であり、陛下は第二の親のようなもの。私の家族を悪く言うようであれば、容赦は致しませんっ!」
「主は一体どこの良家なのかの!?」
お嬢様然とした姿口調とは一変、あの日も見た分身が複数生まれる。
ルーアは片手を振るい、濃縮した風の刃で貫く。
「花を運べ、風凛!」
花の竜巻が起こる。文字通り、花だけの。視界を奪い、魔力の流れすら阻害する。龍法陣の影響はないにしろ、うざったいのは確実だ。
「命を散らして何になるというのかの?主らが子なら、親の悪徳を裁くことも子の使命であろうて!」
「正論などどうでもいいのです!」
花は一向に消えない。そりゃあそうだ。10人もの菫が同時に花吹雪を起こしているのだから。
これも大きな隙だ。
桔梗はそのうちに攻撃を脱し、数メートルというところまで接近していた。
「魔力が阻害されておる……」
ギリっと歯を噛んだ。
「烈壊狂華!」
ルーアは体に魔力の塊をぶつけるようにしてその場から退いた。はずだった。
「理の尽くを、燃るように壊す。狂うように咲かせる。これが、第一将の理。」
「なん、ぁっ……」
肩が少し、抉れていた。
桔梗の目からは血が流れていた。理を作るのは、それだけの情報量が必要となる。桔梗の頭には、蛆虫のように情報の塊が侵食していた。
「歯あ食いしばれ、エセ神。」
「これが私たちの愛した帝国の力です。」
花は咲き、いずれ散る。
その間に力強く存在を示す花は、決して無意味ではないと知らしめようと命を燃やす。
世界は意外と、根性論も好みらしい。
———————————————————————
1分に1000文字くらい執筆できるようになりたいです。(不可能)そんな化け物になれたらいいなと、私は常々思います。その能力を駆使してまだ手直し入れられていない話をなんとかしたいです。
そんなことしたら脳が焼き切れそうですけど。
そんな能力はありませんので、今回は短めで。
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