魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

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17章 魔法少女と四国大戦

540話 魔法少女は力業

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 私はまず大きく後退する。
 プロヘイスと名乗った相手は、小さな鉄球を指から飛ばした。

 こうも考えることが多い中で戦闘させるとか、鬼畜以外の何者でもないよほんと。

「貴方が考えるべきは目の前の鉄球だけ?気の毒ね。視野が狭くなっているの?」
「何が?……いっ……!」
肩に強烈な痛みが。外傷はないが、魔法少女服があるからといってここまでの威力の痛みは無くならない。

 何この出鱈目な威力……しかも、直前までほんとに何も見えない……

 顔のスレスレを通った瞬間、なんとなくで体を捻る。身体激化で無理矢理避けないと、不可能なほどだ。

 人は準備なしに突然動くとか無理だから、こういうふうにしないと動かないんだよ。

「私は戦闘は得意じゃないの。」
「そう、私も、好きじゃないよ。」
次々に闇から現れる黒い鉄球は、姿を見せずに私の体を叩く。

「嘘が下手ね。つまらないわ。」
「そう。」
無理矢理声を張って、耐える。地龍の土壁を手当たり次第に作って配置しても、まるで避けるように当ててくる。

 向こうは全部見えてる……?空間を反射させて……跳弾……

「貴方の考えている通りよ。ふふふっ、痛ぶっているとココが疼いてきちゃうわ。」
下腹部に指を添える。

「うわぁ…………」
痛みより引きが勝った。しかしそれを気にも留めず、口を動かす。

「私は空間を扱うのが少し、得意なの。」
すると、空が突如として煌めいた。空を覆い尽くし、星のように輝く。

「私の声が聞こえるかしら?王国の衆愚の皆さーん。」
私が動けないのを嘲笑うように、行動を起こして呼びかけるように手を伸ばす。

「愚かで、貧しくて、幼稚な王国民は、本当に王国が正しいと思っているのかしら?」
「ちょ、何言ってんのあん……っ……痛……」
気を抜いた瞬間に痛みに襲われる。

「全王国軍に聞きます。貴方たちは満足しているの?いいえ。嘘か本当か分からない中、けれど、大多数の意見に引っ張られているだけ。」
「なに堂々と嘘言ってんの!」
「そんなに焦って否定するっていうことは、なにかやましいことでもあるのかしら?」
その言葉に思考が一瞬止まり、顔面に鉄球アタックを喰らったことでよろめきつつも思考を取り戻す。

 こういうのは必死になって否定した方が何か裏があるように感じられて良くない。
 でも、好きにさせていたらこっちの軍がやばい。一斉崩壊だって有り得る。

「貴方の信じているものをまだ、信じられるなら。戦いなさいな。」
その一言だけを残して、中途半端なまま光を消した。煌めく星はもうどこにもない。

「私はここまで。」
「え……?」
「私は、囮であって囮じゃない。せいぜい痛めつけて帰るわ。んぁ、人を痛めつけるのってとっても気持ちいいわ。」
疼いちゃう、と言って下腹部に指を添える。

 やっぱりものすごい変態だ……!

 この性格あってしてこの戦闘スタイルありといった感じだ。

 時間かけらんないよね、これ。
 さすがにここまでやりたいことやられて、黙ってるわけにもいかないし。

 プロヘイスは最後に笑う。

「戦闘は得意じゃないの。」
「負けると分かって挑んだ戦いってこと?」
私はローブに魔力を流し、大人しく龍化を使う。目の前の、考えの読めないプロヘイスを見定めるようにフードの隙間から顔を覗く。

 もしそうだとしたら、私はまんまと策にはまった敗者ってこと?なんかムカつく。
 しかも放っておく選択肢がない囮。囮に使う人、間違ってない?人選、おかしくない?

 手にはいつの間にか鉄球。いくつあるか、周囲を見渡して数える。
 こういうのは、身体能力が一線越えれば嘘のように避けられるようになる。

「ちょっと怠いけど、本気出すか。」
そう呟き、球の軌道を予測する。手にある球が3個、周囲にあるのが7個。これを同時に扱うとか普通に感動。

 迫り来る鉄球を気配察知を使って避ける。
 万能感知とは違って範囲は狭いけど、なんとなくで空気の流れやら物の配置が感じ取れる。

「これ、ひとつひとつ狙って跳ね返してる?やばすぎでしょ。」
こんなんしてたら、キャパオーバーで私なら死ねる。

 鉄球と空間の板がワンセットで、10個同時に操るってこと?

 当のプロヘイスは無心で鉄球を振るう。戻ってきた鉄球をキャッチし、投げては跳ね返して私を穿とうとする。
 それを私は、のらりくらりと回避する。

 反射パターンとかあればいいんだけど……相手は空間だから思った方向には飛ばないんだよ。

 そのため私は、鉄球が反射してから足を動かす。相手は私を見て、結果的に私に向かって投げるんだ。なら、縮光は使える。

「さっきから当たってないけど、大丈夫?」
「貴方こそ、あまり場所が変わっていないようだけど。大丈夫かしら?」
「もちろん。」
武器を切り替える。両手にラノスを持ち、ステッキは腰。私の肩甲骨を狙うのがひとつ、肩口にひとつ、脳天にひとつ。

 頭は避ければいっか。

 避けると同時に身を翻し、ラノスでその鉄球を狙う。照準を合わせる。

「高速に動く見えない小さな鉄球?望むところ!」
私は引き金を引く。確信を持って引く。

「今度は、私のターンだよ。」
迷いなく体勢を整えて、前屈みに踏み込む。そのまま全力疾走。本来なら2つの球が私を阻んだはずだが、何もない。

 このまま…………集中。まだ鉄球はある。

 ラノスに弾かれ失速し、地面に落ちる鉄球は拾われることなく転がった。プロヘイスの視線がそっちに動いたのを、見逃さない。

「弾かれた……?あの距離とはいえ、私の……?不可能で、不可解で、ありえないわ……」
その一瞬の攻防に、僅かに驚きを見せた。その僅かが命取り。

「陰縮地。」
私の姿はもう、彼女の目の前にある。

「………んぁ…くあっ!」
くとかの間の音を鳴らす。私が真正面から銃底を横にして殴った。

「色っぽく呻かないで!」
色っぽさを乾燥させて粉にして水に溶かしてできた、濃度1%の色っぽさ水溶液と同濃度の私と比較した結果、泣きそうになった。

 ……躊躇なく殺すのはまぁ、簡単だけど……

 私は流れのままに首を鷲掴みにした。

 今まで私が殺してきたのは完璧な悪。
 帝国もどちらかというと悪サイド。けど、盗賊みたいな人間として終わってる人達と同じかといえば首をかしげざるを得ない。

「あなたを殺さないとまたなんかしてくるんでしょ?いやもうされてるけどさ。」
「早くしなければ……貴方のお仲間が、死んでしまいますけど、よろしいの?」
「そんな柔じゃないし。私の仲間はトンデモキャラばっかだから。」
残った片手でラノスを頭に擦り付け、最後に脅迫でもしておこうかと思い、やめた。

 どうせ、結果は分かりきってるし。

「じゃあ、無事に地獄に行けるといいね。」
パァァンッ!と音だけが響き、腕力に任せてプロヘイスを投げ捨てる。

「まんまと時間稼がれちゃったね……」
龍化を解きながらラノスを収納する。早く、村に戻らないと。

 また面倒なことになりそう……プロヘイスの言ってたもう1人も気になるし……

「ああもう!行ってみれば済む話!」
気持ちを切り替え、神速で帰ろうとしてまた戻ってくる。

 これ、遺体は燃やした方がいいよね。なんか湧くと嫌だし。

 こっそり大炎上という矛盾を発生させながら、今度こそ村への道を進むのだった。

———————————————————————

 はい、今話が消された540話の後釜である540話改でございます。
 マジであの時は本当にやばいくらい焦りました。私、こういう経験ないので自分の書いたものが目の前で消えていくというものに一抹の恐怖を抱いてしまいました。

 10分くらいスマホの画面と睨めっこした挙句、「あ、また休稿しなきゃ……」「どうしよう、遅筆も進んでるのに」「まず皆様に知らせなきゃ……」と、雪崩れ込む思考の波に包まれて今執筆しております。
 泣きたいです。
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