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17章 魔法少女と四国大戦
539話 生まれる亀裂
しおりを挟むどうやら、『六将桜』のうち第四将と六将が出陣したらしい。
そしてそのまま半数の軍を戻してブルーライトが突入することを知った。
「ここでブルーライトを殺せれば、大きなアドバンテージになる……か。」
そうして、ホリーこと櫻川柊の顔をしたアーレは行動を開始した。
ブルーライトは単独で動く。
広範囲の魔法攻撃を、人体改造により可能にした。魔力を供給し続ける魔核という魔導具を開発し、それを身体中につけて身体機能の増加をもしている。
これでは人体兵器だ。
目標は皇帝の殺害のみ。しかしそれが遠い。立ちはだかる壁は高く厚く大きく。皇帝を殺したとして、その反発をどう収めるか。それすら考えなければならない。
皇帝は恐ろしい。力もあり、そして弁舌だ。その言葉に皆魅了されてしまう。
王国も、国王という君主を立てているが、合衆国を見習い議会は存在している。
国王中心、というだけで独裁政治を行なっているわけではない。
しかし、帝国は完璧な独裁政治。それに反発しない理由は、できないのではない。しないのだ。
洗脳紛いの方法で帝国民から不満を取り除き、全ては帝国のためにと、尽くさせている。理解させられている。
それを止めたい。意思だけは自由であれ。それを、今のアーレは座右の銘にしている。
「ブルーライトは止める。絶対にこの手で。」
同じく出撃命令を下されたホリーは、裏切るために司令塔を出た。
さようなら、憎き我が祖国。
ブルーライトは森を飛んでいた。この世界ではあり得ないジェットエンジン搭載で、彼女は空を飛んでいた。
「ホリー……くるのよね。髪の毛はねてないかしら。」
なんて乙女チックな発言をしながら、頭を数度撫でる。
ブルーライトは、ホリーの連れてきた人間だ。魔物に体のあちこちを喰われ、死にかけていたところを助けられてこうして今や『六将桜』の一員として仕事をしている。
それが誇りだ。
しかしまだ、その礼をできてないない。少し恥ずかしいのだ。
「今日こそは伝えるわ。……なにもおかしくないわ。ただお礼を伝える、それだけ……」
感情の昂りと比例して加速する。とてつもなく分かりやすい。もはや国境を飛び越えて一周する勢い。
だがそうはならない。彼女の目の前には、遠方を見定める青年の姿が映っていた。
「おう。」
「……どうしたのよ、そんなところに突っ立って。」
「どうもしない。攻め時を伺ってたんだ。」
「そう。」
ブルーライトは逡巡した結果隣に立つ。
「『六将桜』は表舞台に出ない。ここまで派手に動いてしまったら、もうそうはいかないわね。」
「別に、もうどうだっていい。」
ブルーライトは「え?」と声を発し、振り返る。
「……え…………?」
もう一度、今度は混乱の声。
「僕が壊すから。」
「……なん、で……ホリー ……」
彼女の腹には茨が突き刺さって、とめどなく血が流れている。
「前衛組は戻ってくるみたいだけど、僕たちは邪魔だね。」
突然景色が変わる。誰もいない、モノクロな世界。
「裏切ったの……?裏切ったの!?どうして、どうして……?なの?」
「そもそも、僕……ホリーという存在はもうとっくに死んだ。」
情報を解く。得られなかった情報が得られるようになると、ブルーライトは目を剥いた。
「ホリー……は、どこ?」
「だからこの世にいないの。」
彼女の目に映ったのが、今度こそ本物の体。まだ小さい少女。
「ホリーを返せ!」
魔力強化された体は、とうに止血を終えて文字通り飛んでくる。
魔法が乱れ飛ぶ。赤黒い閃光が瞬き、轟音と共に爆発を生む。煙を巨大な爆風で吹き飛ばすと、全方位レーザーのように単純な魔力の塊が四方八方へ飛散する。
ホリーの姿を剥いだアーレは、迫り来る嵐を涼しい顔で消去する。
「あなたとホリーの記憶情報までは消さないであげる。そうしちゃうと混乱しないし。」
死神に見えた。死の宣告をするように1歩ずつ、それを超えて距離という情報を消去した。
即ち急接近。
「…………あなた、ネインアーレ……?」
「誰ですかそれ。」
アーレは見開かれたブルーライトの目を見返し、肩を手で触れた。
「わたしはもうあなたたちとは違うの。」
と思えば、子供らしい無邪気な笑みに変わる。
ブルーライトの腹には剣が突き刺さっており、魔法を使う暇もなくそれを引き抜かれる。次に瞬きをすれば、右肩、左肩、左足、右足。体の先端から中心までくまなく刺し続けられ、彼女は苦しみに喘ぐ。
「ソラさんを邪魔する奴は死んで当然です。」
最後に心臓をねじ切り、返り血を浴びながら剣を引き抜いた。血は情報で消し、遺体も同じくして消した。
元の空間に戻ってくると、アーレは早々に行動を開始した。
今は少し危険な状態。魔法少女を助けに行く。
きっと、大変なことになる。アーレは直感でそう思った。身に張り付くこの嫌な感じが抜けきらない。
遠くで微かに戦闘音。
「ほう、ネインアーレ。朕は悲しいぞ。」
「最初から知っていたくせに。」
アーレはアーレのまま皇帝と対峙する。
今彼女をこの先に進ませるわけにはいかない。
「朕を足止めする気か?」
「1秒でも長く、遊ぼうよ。わたし、ずっと閉じ込められてたんだから。」
帝剣と帝剣が混じり合い、死闘が始まった。
—————————
時は少し遡る。
「どうやら、この国を蝕む毒虫がいるらしい。」
皇帝は焦りの含まない冷静な声音で呟く。
「しかし、戦争というものを舐めている。朕の勝ちは揺らがない。」
足を鳴らして人を呼ぶ。『六将桜』、ルーンとバイオレット。
「慈悲を与えてこい。絶望の慈悲を。」
2人は何も言うことなくその場から消え失せた。それこそが全幅の信頼の証。
皇帝は帝剣を帯剣し、戦地へ赴かんとする。君主直々に手を下す。外聞だけはいい。それでいい。
「朕が世界をひっくり返そう。見ていろ、神を名乗る愚者。世界はお前など必要としていない。」
———————————————————————
最近、コッテコテのツンデレキャラは好かれないご様子で。
まぁ私も同じなんですけど。
例えば五つ子のラブコメの次女とか、1期はツンを超えてトゲの塊でしたけど2期以降好きです。ああいうのです、私の好きなのは。
ツンデレのオーラを醸し出しながらデレる。これが私の好きなツンデレです。見えるトゲが鋭そうでも、触ってみたら案外シリコン製だったみたいな、そういうのが好きです。
つまりツンデレは「ツンっ」であって「グサッ」ではないということです。何事も程よく、です。
何の話ですかこれ。
先の怪文書を書いた2日後くらいの私です。
まだちょっと傷ついてます。それだけです。
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