魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

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17章 魔法少女と四国大戦

535話 魔法少女は泣かせる

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「こんな正体不明の女、信じられないの!」
机を勢いよく叩きつける音が部屋に充満する。ここは、アイディンという集落(だった)の1番大きな家の一室。

 帝国に近い場所だったし、ここを総騎士長たちの中心拠点にしておいた。
 ははは、感謝はいらんよ。

「この状況で、こんな奇妙な女の言葉を信用することなんて、あたしはできないの!」
言いたい放題言いつつ、さっき叩いた右拳を左手ですりすりしている。

 これからについて説明をするためにも、1度みんなの住む村を軽く案内してから、こうして主要人物をここに集めた。

「だから言ってるでしょ?私はパズールの冒険者をしてる空。ほらこれギルドカード。」
投げたカードを受け取ると、渋い顔で投げ返してきた。

「Cランク……相手する価値もないの。」
席を立ち上がり、涼しい顔で出口に向かう。まぁそうさせないための席どりで私の後ろに出口があるんだけど。

「させないし、協調性がないのはよくないよ?」
「うるさい。指図するんじゃないの。」
幼女は拳を振るってきた。体がブレず、ノーモーションからの一撃。

 素人じゃないねこれ。絶対訓練受けた人の動き。

 私はそれを、1

「…………っ!どうなってるの……」
周りはきょとんとした顔で、蚊帳の外。

 縮光。先輩の技のひとつ。最近私の姿が見える敵とかいなかったし、使う機会なかったんだよ。

 相手は私の位置を誤認した。私より少し前を目立たせた。スポットライトを当てただけ。でも、それで脳は勘違いしてそこに私がいると思う。そして攻撃をした。

「今の、戦場なら大きな隙だったけど。」
「……何をしたの。」
「さぁ?でも、聞く耳は持ってくれた?」
「……拒否するの。」
それでも帰ろうとする彼女を、ステッキで静止させた。

「逃さないよ。」
「なら、痛い目を見るといいのッ!」
見えない速度で何かを振るった。刃物であることは間違いない。私は咄嗟に左に首を曲げた。

「っ!どうして!どうなってる!なんで当たらないの!当たれ、当たれ!」
その結果は、見るまでもなく決定されていた。もちろん、私が全て避けている。

 まぁこんな上手くいくとは思ってなかったけど。この子ちょろ。

 内心笑いながら、体を逸らしていく。

 縮光の弱点は割と明確だ。避けきれない規模の攻撃をする。それだけ。特大ビームを打てば、私はドヒュンだ。他にも複雑な攻撃。縮光の性質上、目立たせられるのは1箇所になる。
 つまり、相手が単調だとめちゃ避けやすい。

 この的当てやすいですよーって言って景品が10円ガムの射的を100円でやり続けてくれてる感じ。

 でもと、よく見てみる。

 その速度は私でも認識がギリギリの速さ。ヤバい。動きは単調だけど、真っ直ぐ。やばい。

『語彙が行方不明だから探してきてー』
『ラジャー』
私のうち何人かが行方不明者「語彙」を捜索に向かった。何してんの私達。

「ふざけてないで、席座って。」
でも、いい加減鬱陶しい。あっちこっちでビュンビュンされる私の気にもなってほしい。私はちょっとだけ本気を出し、手を伸ばした。

「重力世界。」
「……………!!」
動きが突然止まった。いや、動けなくなった。

「ここは家。戦うんならよそでやって?」
「………なんで。」
幼女は床に這いつくばりながら、その瞳を潤ませる。

 あれ?あれれ?これやっちゃった?私また何かやっちゃいましたをやっちゃう感じ?

 突然泣きだす幼女ちゃん。大粒の涙が重力にかき消され、啜り泣く声だけが聞こえる。

「ええ……これ私が悪いの?」
重力に晒されている幼女を見て少し狼狽する。

 何もしてないよね?私、動き止めただけだよね?うん。正当防衛。これは正しい判断だったんだ。
 私自身も大丈夫って言ってるんだから大丈夫だ。

 だからと言って放置するわけにはいかない。

「……ねぇ、名前は?」
咄嗟に出てきた質問がそれだった。何これ見合いかな?

「…………………守英団拾肆彗エインミール……」
「じゅうしすい……あ。」
何か言ってた気がする。神に近い存在とかなんとか。つまり、結構大事な存在。

「あーえーっと、とりあえず、座らない?」


 空気を最悪にした張本人はなぜかまだ啜り泣いてる。小声で何かぶつぶつ言っており、情けなさと悔しさ的な感情だ。

「ま、まぁ色々あったけど、私が強いことは証明されたでしょ。」
異論を唱える者はいなかった。

「とりあえず、順を追って説明するけど———」
そうやって話を切り出し、必要最低限の内容だけをかいつまんで話す。

「宣戦前に帝国軍の部隊が……」
「きひひ……っ、考えることは、向こうも一緒。」
「部長、今は特別にここにいさせてもらってるんだから静かにして。」
口角を上げる者然り、考え込む者然り。大なり小なり反応はあり、その中で口火を切るのはやはりというべきか総騎士長。

「だが、ソラの言葉に具体的な証拠が何一つとして見受けられない。」
「そりゃまあ、かいつまんで喋ってるわけだし。今このうちにも帝国軍は攻めてきてるわけで、いちいち納得するまで説明はできないよ。」
「しかし納得しないことには、軍隊という組織は動かない。」
視線がばちばちと重なる。ほんと、噛み合わない人だ。いい人ではあるんだろうけど。

「でも、肝心の軍隊の数が少なくない?せいぜい1万と少しくらいに見えるんだけど。」
「3つに分けて行動させている。現場監督の者も用意している。私が何を思ったとて杞憂だ。」
絶対の自信を醸し出している。動じない姿勢に、出席している騎士たちは目を輝かせていた。

 でもこういうのが人望厚い理由なんだよね。自信のある人について行きたくなる。
 私だって、リーダーにするならネチネチ小うるさい頭脳派より動じない精神を持つ筋肉系の方がいい。

『リーダーにするなら、ってだけで実際は1人で動くでしょ私は』

 その辺はね、空気を読んで。

「まぁいいけど。」
席に座って頬付をつく。

「私はどうしても帝国戦は勝たなきゃいけないし、いざとなれば私達だけで特攻する。でも、それだと世界は終わる。」
皆息を呑む。私は語り方を変えた。あの時の私のような声音に変える。

「なーんて。まぁ背けたかったら背けていいよ。夢でも見て現実から目を逸らしたらいいよ。」
今日はこれで終わり、といって解散を伝える。住居は、多分一家4人を基本で入れれば7村くらいで間に合う。多分。足りない分は増築してもらえればいい。

 あー、これをあと2回。めんどいったらありゃしないよ。だるいだるい寝たーい。

 総騎士長含め、甲冑を着た方々は退出していく。まだ泣いているエインミールは放っておこう。ほとぼりが冷めたら帰るでしょ、多分。

「ひひ……質問、いい?」
「えっと……あなたは?」
「レリアリーレ。先生、でいい?」
声をかけたのは、明らかに不健康な白い肌の子。よく見れば可愛いのに、体から出る不幸と悪オーラが全てを台無しにしている。

 先生……あ、王都の学園か。あれは学園内全部で放送されてたし、生徒さんかな。

 とそこで、疑問が浮かぶ。

「なんで学生が?」
「ひひ……わ、ワタシは、専門部生。専門部生は、いくつか、招集を受けている……きひっ。」
「自分は同じく専門部2期生のルービア。放送は見てなかったけど、噂は知ってますよ。」
「噂……ね。」
頭に浮かぶのはやはり襲撃事件。私は犯人にされ、恵理と逃走劇を繰り広げた。

 これ終わったら墓参りでもしに行こ。百合乃に和菓子の作り方でも教えてもらって供えておけば満足するよね。
 ついでに、制服も。丈をゴリゴリに短くしておこう。

「ワタシは、魔科学部に所属、している……先生は、魔導具の多くを自作し使用していると、聞いた。きひひ、ひひっ!見せて、くれないだろうか……!」
グイッと食い気味にきたチラッと見えた服は制服で、白衣に似たものを羽織っている。肩をがっしり掴まれ、不健康な黒目が突き刺す。

「……………とりあえず、離して?」
「しっ、失礼した……」
どうやら、まだ終わらせてくれないらしい。

———————————————————————

 プロットが機能しない件について。
 エインミールが暴れるシーンも、レリアリーレが質問に来るシーンも、全部その瞬間に思いついたお話です。

 そういえば、全校放送していたなと思い出しまして。
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