魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

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17章 魔法少女と四国大戦

533話 飲むは煮え湯か蜜の茶か

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「いつまでこんなコソコソしてんだろうな。」
「さあな。お偉いさん方の考えることなぞ知りゃせんよ。」
休憩中の騎士たちは、動きにくい森林の中休憩をとっていた。魔物も襲ってくるというのに、だ。

「きひ、ひひひ……危険だから集まって、でも発見の危険が高まって……ひひ…‥悪循環。」
「部長、不謹慎なことは無しでお願いしますよ。」
水を傾けながら、ジト目で注意する。

「口にすると魂が宿る。言霊ってあるじゃないすか。」
「きひひ……科学的に証明できない……魔力反応もない、生体反応もない、意思存在?きひひ、ひひひひひ!新しい、扉……」
「部長、落ち着いて。」
水を突き出し、飲むように伝える。この人は暑さで頭がやられているのだ。もう冬だけど。

 逆に寒くて凍ってるいるのか。

「皆、休憩中悪いが報告をさせてもらう。」
そんな中、空気を変える声があった。総騎士長レイアードだ。

「帝国が宣戦をした。国王陛下から直々の連絡があった。これを各人で知らせ、3つのチーム編成を行う。そして、1人。」
1度目を伏し、1歩下がる。

「王国使用人兼、国王陛下側近オリーヴと申します。本日から、不肖の身でありますが皆様と同じく戦争を共にしに参りました。」
胸には王国の国旗が描かれたブローチ。そして、腕には細いリングが。

 ざわざわと声が広がる。

「実力が疑わしい、というのならば、時が来た時発揮いたしましょう。」
「とのことだ。国王陛下がお送りなさった勅命を受けた仲間であることを忘れず、接することを心がけろ。」
オリーヴが下がり、レイアードが代わりに前進する。カンペも台本も無しによくやる。

「編成についてだが、15班を5班に縮小、そしてリーダーを決定しそれぞれで動いてもらう。私は、第1班。1、3、5、8、9班をまとめる。」
休憩はもう終わりという雰囲気が漂い、バラバラの約4万5000の兵は隊列を成していく。

 この人数をここまで器用に動かせているのは、日頃の訓練の賜物か。

 王国の騎士たちの多くは実践経験が少ないが、代わりに対応速度が速い。何度も訓練されている。

 2班は2、4、10、12、13。
 3班は6、7、11、14、15。

 それぞれリーダーを、レイアード、カオスエリーヴ、ヒビアだ。

 それぞれ左右に分かれ、別の方向からの侵攻をするという。これは、向こうも軍を分けさせるという予想による編成だ。

 この判断は的を射ていた。

「他の部員は別班行っちゃったか。」
「きひ……帝国に、魔科学を……ひひっ!」
「落ち着いてください。」
もうレリアリーレの暴走も慣れてしまった。

 第1班に配属となったレリアリーレは、おかしそうに笑って足を運ぶ。

 オリーヴもまた、この第1班だった。

「あたしもいるの。」
「ひっ!」
レリアリーレに気を取られ、突然の声に驚き咄嗟に飛び退いてしまう。

「きひひ……安心しろ。ひひ、人、だ。」
「なら先に言ってよ部長……」
後ろに現れた人物に目を向けると、黒いベールを纏った、アメシストのような髪の幼女。ふんわりとした雰囲気を醸し出している。

「あたしは、ラミア合衆国、守英団拾肆彗が伍彗、エインミール。これから、よろしく頼むの。」
「はぁ、ルービアです……」
「ひひ。わた、ワタシの、後輩が至らなく、申し訳ない……アングラント国立学園専門部生、こっ、こいつが魔科学部所属2期生のルービア、ワタシが、5期生のレリアリーレ……ひひ、よろしく……」
不健康な白い手を伸ばす。エインミールは、どこからどう見ても戦闘できる見た目じゃねえの、と心で思う。

 見た目口調全てイカれてる。そう判断した。

「これは大統領の命。ただの同盟なのを忘れないこと。あたしは馴れ合うつもりはないの。」
「いひひ……連携も取れない、護り手に……意味はない。」
「生意気な口を叩くの。力の差を、見せてあげる。」
エインミールはその腕を伸ばし、レインアーレの首を掴んだ。

「教育してやるの。」
「部長ぉっ!?何してんの、仲間同士で!」
テンパるルービアを置いてけぼりにし、エインミールの握力はどんどん増す。

「知ってる?人は首を絞められると血が止まって気絶するの。逆に言えば、ちょうどいい具合に締めれば苦しみだけを味わう。」
宙吊り状態。顔色の悪い顔はみるみる茶色くなり……

「茶色?」
ルービアが頓狂な声をあげた。

「……きひひ、さすが、合衆国の、守英の1人。で、でも……やっぱり、対応力がない……ひひ。」
彼女は、木のそばで笑っていた。

「なっ、なんで!あたしはしっかり掴んでいたの!なんで木に変わっているの!」
「…………まさか、遠影映し?」
「いひひっ!正解。万物には魔力が宿る。万有引力があるように、万有魔力の法則もまた存在する……内包されていなくとも、全ては結びつく……きひっ!」
「もしかして、木に映る魔力を投射して形作ったの?」
何か恐ろしいものを見る目で、レリアリーレの目を見た。その目はどこか虚ろだ。

「わ、ワタシの全ては、魔科学にある。」
「……悪かったの。ただし、口は気をつけるの。」
不機嫌そうに吐き捨て、先を急ぐ。正面部隊である1班は、国境沿いの村を通って敵を迎え撃つ算段だ。

 地の利を生かすためだ。

 最後列を金魚のフンのようにゆっくり進む2人の後ろに、メイドの姿が。

「先程のもの、拝見しておりました。」
「……後ろから話しかけるの、流行ってるの?」
「?」
オリーヴは首を傾げた。

「魔科学。興味深いですね。彼女も目を輝かせておりましたし、国王陛下も同じく乗り気でした。その意味が分かった気がします。」
「国には、感謝してる……資金提供はあり、ありがたい……」
「ええ。存分にその手腕を振るっていただいてください。」
「きひひっ!進む、研究が……ワタシの、ワタシのり、理想が……」
指先を震わせて、喜びに浸る。しかし、ルービアにはひとつだけ疑問点があった。

 元々2人は合衆国民だ。
 合衆国で、魔科学をすると言えば笑われ、資金提供どころか研究所の建設すら阻まれる。

 だというのに、王国ではどうだ?魔科学を目につけられたと思えば、推薦入学で高等部に入籍。そして専門部で新部の立ち上げ。

 どういうことなのか。

「あの———」
しかし、その疑問は質問に変える前に砕かれてしまう。

「魔物の群れだ!魔物の群れが雪崩れ込んできている!」
先頭からそんな声が聞こえてきたのだ。

「あの方向……村。まさか……?」
「どうして?今までそんなそぶりはなかったと思うんだけど。……って、焦りとかしないんすか?」
「……ひひ、面白い。」
ダメだこりゃ。そう思うしかない。

 今は目の前の相手に、集中しなければならない。


「1万近くいなかった?合わせてさ。」
「9811匹……きひひ、何かおかしい……」
時間をかけ、ようやく全ての魔物を討伐した。出発準備を始めている頃、レリアリーレは球体を上に投げてはキャッチしを繰り返し、遊んでいた。

 ちなみにそれは、核石を感知して魔力の流れに合わせて振動を起こし、外から核石を破るという装置だ。

 流石に、1万5000もの兵がいるため、掃討は完了した。しかし多くの怪我人を出した。現れた魔物が低ランク冒険者でも敵うような、数だけの雑魚だっただけマシだった。

 この世界の最も注意すべき点は魔物だ。どこにいるとも分からぬし、それほどの兵がいれば誰かに当たる。

「ここ数ヶ月、魔物の発生率は低いと聞いていたのですが…………」
オリーヴが口元に指を添える。

「理由、分かったんですか?」
「いえ。しかし、こういったケースは稀にあります。」
指を3本立てた。そしてひとつを折る。

「巨大な群れを率いて餌を探しに大移動する魔物がいます。その時期に被ると、そうなりますが……」
「魔物の種類は別々、か。」
ルービアが気づいて口にした。2本目の指が折られる。

「冬の訪れの際、多くの魔物は寒さを凌げる場所を見つけるために棲家を見つける。しかし、ここは……」
「ひひ……森林のど真ん中。隠れるなら、崖沿いの洞穴……とか、暖かい場所……」
煙を出さないよう、炎の核石で焼滅される光景を見つめる。

 今は、魔物の素材にかまけている暇はない。

 最後の指が折られた。

「逃げなければならない、何かがある場合。」


「列を整え、再出発する。怪我人は中央に、守るように陣形を組め。回復薬の数は限られている。くれぐれも慎重に。」
そう言われてから2時間弱。歩き続けている。

 いくら訓練された騎士たちであっても、魔物の大群との戦闘後、甲冑を着ながらの森林の行進は堪えるようで、苦悶の声がちらほらと上がる。

 そんな時。

「あれ、なんだ……?」
多くの騎士たちの声が聞こえる。

 彼らが目にしていたのは、人っ子1人いない、村の姿だった。

「ここは確か……イグル村だったはずですが。」
しかしオリーヴは何かに気づいたように、そういうことですか、と呟いた。

 レリアリーレたちも、それを遠目から見ていた。

「ん?あれ、なんか人いない?そこに。」
「きひひ……なん、なんだ?幽霊でも、いるってこと……か?ひひひ……」
「いえ、あれは人です。」
ゆっくり近づいてくる。何か悪寒を感じたのか、騎士たちはゆっくり後ろへ下がっていく。対して、レイアードは前に出る。

 部下の手前、逃げるわけにもいかない。それに、確認しなければならない。この状況を。

 彼らの視界には今、フードの女が見えている。

「あれ?なんか人少なくない?」
深手に被っているため、顔が見えない。

「まぁ……いいや。とりあえず入って。説明は後。」
彼女はくるりと踵を返すと、ついと来いと言わんばかりに歩き出す。

 彼女は敵か味方か。この状況はなんなのか。分かるものはいない。
 願わくば敵ではないことを祈り、一行は固唾を飲んで足を踏み出した。

———————————————————————

 最後適当です。見れば分かりますね。
 まぁなんやかんやあって謎の女性の後をついていくことになった1班はどうなるんでしょうか。戦闘シーンも最近描けてませんし、描きたいですね。
 一体、あのフードの女はダレナンダー。
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