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17章 魔法少女と四国大戦

525話 魔法少女は移動する

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 私は、とある村にいた。龍神ルーアと共に、戦闘を見届けている。

「その程度の攻撃は届きませんよ。」
「どうだかな。」
目の前には転生者らしき人物が2人。互いに刃を向け合い、互いに笑っている。バーサーカーだ。怖い。

「知ってるか?世の中、見えるもんだけじゃねえんだよ。」
「貴方こそ、知っていますか?人間は理の元でしか動けない。」
そこで、転生者の片方。男の方の口が動く。

「宵闇。」
もう一方の女性の目が開かれる。私の(ルーアから借りてる)眼に映るは、脈を超えてすべてのエネルギーを食らいつくす場面。

 うお、これ凄っ。私の魔力喰らいの上位互換じゃんずるー。
 多分、相手方は魔法とは違う魔力を使った風の操作かな。

 それにしても。うん。
 早く終わらせて次に行きたいなー。

 心の中で、文句を呟いた。

 いやだってさ。もしこの男が負けたら、ネイファの作戦おじゃんじゃん。流石の私も分かるよ。こんなあからさまに閉鎖空間作ってるってことは、帝国にこれ気づかれたくないわけじゃん。
 だから移動するにもできない。私、参戦しようかな。

「いやいや、それなんかあいつの特殊能力みたいになりそうだやだ。」
「焦ったいのぅ……我が一撃でどひゅんしてくれようか?」
「どひゅんて。」
なんかツボった。効果音が軽すぎ。

 あ、戦況今どうなってる?

 目を離しすぎてもう何が何だか。今は、男の方が色々カットされた着物の女性を攻めている。
 ……なんか、この言い方はダメな気がする。

「もうここには魔力のかけらもねえ。」
「……なぜ、貴方は動けているのでしょう。」
玉のような汗を頬に這わせ、目を細めた。聖剣が、護身用っぽい小さな小刀で受け止められており、鍔迫り合いと言うより一方的な押し込みが行われていた。

「ハッ。俺にはそんな便利な力は備わってないもんでな。こんな風に、消すくらいが精一杯だ。」
厨二病……と言いかけてやめた。彼は、でもなと言って続ける。

「魔力を操作することくらいはできんだよ。」
「なッ!」
くはっ、と肺から空気を押し出す形で悲鳴をあげ、近くの民家の柵に背中を強打し咽せ返る。

「かはっ、かっ………はぁ………ぁ……」
「ちょろいな。」
男は余裕そうな笑みを絶やさず、聖剣を下ろした。さっきまで女性のいた位置には、鎧の兜があった。

「今の、何やったか見てた?」
「うむ。しかし、いつの間に魔力を……」
「さっき、202人殺したとか言ってたでしょ?そん時じゃない?」
「そうかもしれんの。」
うんうんと2人して頷く。もう完全に観客の1人になってる。

「お前ら、さっきからうるせえんだよ黙れ。」
「そっちが遅いからじゃーん。私だって暇じゃないんだぞー。」
「うざい喋り方やめろキメエ。」
「は?そっちの厨二病ばちばちのキャラの方がきもいし。ねぇルーア。」
「我に聞かないでくれないかの?」
板挟みにされ、宙に逃げた。

「ルーア?」
しかし、途中で動きが止まる。

「……ルーア?」
「主、避けろッ!」
それは誰に言われたセリフだったのだろう。唐突なことすぎて分からなかった。

 っ、やばいやばいやばいっ!

 明後日戻した正面に向けられた視線には、明らかにやばい竜巻があった。これは、まともに相手をしたらやばい。

「そこ退け厨二野郎!」
「誰が厨二だy」
その先を言う暇もないくらい逼迫している。こんな状況を経験しすぎて、もうスローモーションだ。

 もちろん私自身もね!

 ゆっくりとチンタラする野郎の服の袖を引っ張り、無理矢理進路からどかす。

「重力世界!」
一定の範囲内、急だったためほんの小さな範囲。重力が展開された。

 重力って光すら曲げるらしいよ?

 視界が真っ白になる。竜巻をこれでもかと凝縮みたいなものが長いようで短い時間纏わりつく。

『私にしてはよくやったね』
『私の力を借りずにね。褒めてもいいよ』
『ふっ、私の力は底知れずということだ』
『調子乗んな』
『のるなー』

 うるさいなー。今からもういっちょやるから黙ってて。

『手伝う?』

 よろしく。

 その短い言葉でも、それすらなくても通じ合う。私達は同じ私なんだし。

 私はとりあえず集中する。

「どっ、せい!」
同時に、この世界から弾かれたように風の膜は消滅した。したことといえば、右腕を正面に振るったこと。

「はぁ…………主は本当に規格外すぎてため息も出ぬの……」
「はちゃめちゃすぎんだろうが……」
ありがたい感想を耳に、しかし返答はしない。まだ終わってない。

「それ、自分の魂も一緒に使ったでしょ。」
「何が、起きたんでしょうか……」
私の真正面に、倒れた女性。最期に名前くらい聞いておきたかった。

「貴方が何者かに弾かれたように、見えましたけど……」
「ねぇあんた、通訳お願い。」
「蓮だあんたじゃねえ。」
「ラブコメのヒロインじゃないんだから……じゃあ蓮、通訳お願い。」
半分虚な目になってきた。早くしないと本格的にまずい。そう思えたのでルーアに視線をやる。

「我を見られても困る。」
「やりゃいいんだろやりゃ。」
「…………本当、貴方は不思議ですね……ここは、本体にも連絡が行きませんし……なんなん、ですか……?」
途切れ途切れに、荒い息を吐いた。

「さっきから、もう1人……2人いてな。お前に伝えたい言葉があるそうだ。」
不愉快そうに眉を顰めて言った。

「自分の身ごと使ったでしょ、さっきの。リピートアフターミー。」
「…………さっきの自分の身削ってんのかってよ。」
「…………答える必要、あるのでしょうか。」
「知らねえよ。」
一段と顔色が薄くなってきた。

「あーもー……じゃあ名前!名前だけでも!」
「名前だとよ。」
渡されたボールを適当に投げ返し、彼女の頭にぶつける。

「名前…………おみあい、ですか……?」
「早くしろよ。テメェ、もう死ぬだろ。」
「死にかけの、にんげん、に……いたわりの……」
「だからどうでもいいっつってんだろうが。」
蓮は近づいてガンを飛ばし始める。

 何この人。日本で不良してた?

「すみれ、です……もう、いいですか?」
そう言って目を閉じてしまった。何にも聞き出せないまま、ほぼ自殺で死んだ。

「姿見えないって意外と不便……」
「俺の身にもなってみろ。次頼んだら殺すぞ。」
「あーハイハイ。」
「聞いてねえだろ。」
不愉快そうに皺を寄せる。

 コイツ、年取ったらしわくちゃになりそう。

「これでこの村にいるやつは全員始末したと。はー……疲れた。」
「お前何もしてねえだろ。」
「したじゃん。蓮の命を助けた。別にー、あれ私だけ守っても良かったんだよね。」
「……黙っとけ。」
何も言い返せず、そっぽを向いて呟いた。なまじイケメンなだけあって、うざいったらありゃしない。

 うざさを豚骨と一緒に24時間煮込んだ感じ。

『それどんな感じ?』
『いっちょんわからん』

「どうやら、他の村々もすでに壊滅しておる様子だのぅ。そのうちのいくつかは、他の四神が制圧しておるようだ。」
「お、やるじゃん仕事早い。」
「それぞれに魔法で空間閉鎖しておるからの、心配はなさそうかの。」
と言いつつ、座標転移の魔法陣を張り巡らせていく。

「ルーアも分かってんじゃん。」
「我は移動用と言っておったろう。ならば、やることといえばこれしかあるまい。」
「じゃ、蓮は囮役ね。次からはそんな悠長にしてる暇とかないし。」
「は?」
「だって私達見えないんだから。みんなから。」
「だからってなんでおr」
目の前が真っ白になった。これはポ○モン的なアレじゃない。お金も取られたりしない。

 座標転移は私も空間操作で再現できるようになったけど、座標がたまに踊り狂って見えないんだよ。
 どうにかなんないかな。

「は?」
「…………これ、どういうことだよ。」
視界が晴れた瞬間、私達は呆然となる。

「これも何かスキルかのぅ?」
目をスゥッと細めた。先程死んだ、を見て。

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 なんか生き返ってる菫。一体どんな能力を持ってるんでしょうね。

 ちなみに、このあとがき擬きに書かれている文量が少ない時は元気とやる気がない時です。
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