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16章 魔法少女と四神集結
523話 局所的戦争 2
しおりを挟む淀み始めた空模様の中、帝国軍は止まることなく村への侵攻を開始した。
「襲われんぞ。いつ行くんだよ。」
「襲われてからですよ、そりゃ。」
「はぁ!?」
レンは大声を出す。聞こえることはないが、ネイファには聞こえている。
茂みに隠れている2人の前には、今から虐殺が始まるのだ。
「おい、村人が殺されてるんだぞ?人民を殺して得られるメリットはなんだ?」
「我々の確実な安全、ですね。」
ネイファは続けてピシャリと言った。
「我々は、別に慈善団体でも王国の仲間でもありませんよ?頭ついてます?ついていないからそんな発言ができるんですね。知っていました。」
「黙れ。」
「いいですか?わたしは、帝国を潰したいから協力をしている。帝国を討ち滅ぼせる可能性に手を貸すことで、わたしも勝利することができる。だからこうして戦っている。」
立ち上がりそうだったため、レンを影で縫う。
「助けてやる義理なんてねぇんですよ。」
「………………確かにな。」
小さく頷いた。頷くしかなかった。その気迫に負け、自分の弱さと情けなさに拳を握る。
「さて、滅ぼされるのを待ちましょう。どうせ、定期連絡でもするんですから、向こうに偽りの占領を知らさせて葬ればいいんです。」
「できんのか?あの数。100倍だぞ。それも、21村のうち1つでこれだ。」
「貴方は雑魚ですね、心も体も雑魚すぎて反吐が出ますねぇ。」
「うるせえ。やればいいんだろやれば。」
舌打ちが横から聞こえ、「綺麗な音ですねえ」と更に機嫌を損ねさせる。
これぞヘイトマジック。人間の怒りのパワーは、底知れない力を内包している。
「聞かないほうがいいですよ。人間の恨みって、案外すごいんですから。」
「心配どうもありがとう。返品する。」
「いらないのでお返ししますね。」
軽口の中、虐殺は一方的に行われた。
きっと、この光景は21の村全てで見られるだろう。ここは駐屯地として一時的に使われ、帝国から物資が運ばれ中継地点になる。
しかしそうでは都合が悪い。
「わたしたちの仕事は王国を守ることではない。それをしっかり理解していてください。」
「さっきも聞いた。」
「貴方が分かっていなさそうなので。」
「馬鹿じゃねえんだから。」
「いえ、貴方は馬鹿そうな顔をしていますが?」
そろそろ仲間割れが始まりそうな予感を感じた。
それでもじっと耐え忍ぶ。さすがに、他者が蹂躙し尽くされている中乳繰り合っている暇はない。そもそも、こんなやつと乳繰り合う可能性は未来永劫あり得ない。
あり得ても全力で拒否する所存だ。
「多勢に無勢、更に実力差は歴然。」
「そりゃあ訓練された軍とただの村民ですから。見るまでもなく勝敗は決しています。」
襲われる村をただ見つめ、冷静に分析する。
リーダー格と思しき、黒髪の女性は指示をしそこに立っている。風格からして、自身が弱いという可能性は薄い。
そもそも、弱者であればこんな場にいようはずがない。
辺境の村に連絡手段などない。逃がさないための努力だけをする。数人の村人を先んじて確保し、残りを出会い頭に切り捨てていく。
200人余りの軍人が取り囲み、3人ペアになって動いているため、隙をつかれることもない。
ただの村に対する侵攻にしては周到すぎると言わざるを得ない。
「見てて気持ちいいもんじゃねえな。嫌いな奴が死ぬのは嬉しいけどな。」
「こんなん気持ちい人、イカれてるか狂ってるかでしょうね。貴方はイカれてるってことです。」
「黙っとけ。憎い奴が死ぬのはこの世の全員が嬉しいんだよ。」
レンは心の中で、たとえば神とかな。と漏らす。口に出なかったのは、直感だ。鍛えられた野生の勘。
「ありゃー、もう半数近く壊滅ですね。逃げようと思っても、囲まれてるので逃げようもないですねぇ。」
「包囲を抜けて外に出られりゃ、土地勘で有利な向こうが逃げられるだろうが……」
「それも無理ですね。」
「いちいち否定すんじゃねえよ。」
「事実ですから。」
ほら、と指を指す。その拍子にネイファの細いツインテールがペタッとあたり、うざいと思いながら目を細める。
「あれがなんだ?」
「まったく、馬鹿にも程がありますね。」
こちらを向いた。もうひとつのツインテールがぶつかる。
「その髪千切るぞ。」
「乙女の命を粗末に扱わないことですね。」
「お前が乙女ぇ?んな馬鹿な。」
「馬鹿に馬鹿と言われるのは心外ですねぇ。そこのおにーさん、目もついてないんですか?」
レンはとうとうキレて手を出した。ストレートパンチ。
「おっと。」
手を添えて、そのまま背負い投げ。
「…………………」
「無反応ですか。さすがの防御力。」
適当に感想を述べつつ、話をつなげる。
「あれは『六将桜』が1人、第二将バイオレット。詳細は不明なんですけど、名前くらいなら聞き及んでます。神の御使であるわたしならそのくらい分かっちゃいます。」
「……んで、『六将桜』ってのはなんだ?」
「説明はまた。混乱のせいか、もう終わりましたから。」
「……死んだのか。」
のっそりとレンが立ち上がる。
「では、いきましょうか。」
影を操るネイファは、一直線に帝国軍へ足を向けた。
ネイファ・リンカの大仕事だ。
—————————
「終わりましたか。」
村を見まわし、何もないのを確認して息をつく。
「他の村はどうでしょうか。」
「数村から報告が。どれも、完全制圧だと。」
「こちらの損害は?」
「ゼロです。文字通り、完全勝利にございます。」
「よくやりました。よく、欠員を出さず勝利を収めましたね。」
「ありがたき幸せ。」
もう1度、はっと息を吐く。
バイオレットこと望月菫は、異世界に召喚されてから5ヶ月ほどが経つ。
突然異世界に行きつき、言葉も分からずわけも分からぬまま盗賊に捕まり、犯される寸前。死んだと思った、穢されるなら舌を噛み切ってやろうかとも思った。
その覚悟が身を助けたのか。
『エインズの言う通りだったな。』
菫の周囲が荊棘で包まれた。何を言っているか分からなかったが、次に望んだ言葉が耳に届く。
「助けに来たけど、日本人でいいかな。」
「…………っ、はい!」
「僕は櫻川柊。君とは少し違うけど、同じようなものだと思ってくれいいよ。」
これが、帝国との出会いだった。
帝国には恩がある。だから、絶対に帝国を守らなければいけない。
失敗するわけにはいかない。
「……………風が乱れている……?」
「雷煌の檻。」
身を翻した時には遅かった。菫の周囲には雷の檻が、その存在を主張していた。
「……っ、早々に破らせてはくれないようですね。」
雷に触れ、顔を歪ませた。
「敵襲です。全員、連絡を!」
「させませんよ?」
200人余りの軍をすっぽり覆おう影ができた。人の気配を察し、菫は顔を上げる。
「ようこそ、奈落へ。」
剣を担いだ青年と、キャスケットの少女が突然姿を現した。
「……この影はなんでしょう。それに、あなたは……」
「雨が降りそうだったもので。わたしは見ての通りネイファ・リンカ。神に敵する貴方たちを、滅殺しに来ました。」
「そちらは?」
「置物ですのであしからず。」
「殺すぞ。」
雰囲気的に、仲間ではないと悟った。しかし、協力者ではあることは察しがつく。
「神国の副機卿ですね。聞き及んでおります。帝国側であるネイファ卿が、なぜこのような。」
会話を引き延ばし、少しでも報告の時間を作る。死んだって構わない、わけではないが二の次だ。
「時間稼ぎに付き合っている暇なんてないんですよ。こっちだって、少ない戦力なんですから。」
「俺はその辺の雑魚を狩りゃいいのか?」
「はい。さすがに、彼女を相手にさせるのは苦でしょうし。」
「私と、やる気ですか?」
竜巻が菫の周りに生まれ、雷をかき消した。せいぜい、このくらいの時間稼ぎしかできなかったということだ。
「もちろん。」
陰に始まる戦争の、開戦の合図となった。
———————————————————————
私のスマホにあるアプリ、変なのしかないんですよね。しかも、まともにやってるアプリが音ゲーしかないという。別に上手くもないのに。
どのくらいと言えば、最近遅筆でやれてないのでなんとも言えませんが、過去の栄光に縋るならプ○セカのmaster30前後フルコンギリって感じです。
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