魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

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16章 魔法少女と四神集結

520話 魔法少女は帝国へ

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 朝。ふわっとあくびをし、眠気とグッバイした体に心でおはようと言う。こんな凶悪な世界に、少しくらいメルヘンがあってもいいじゃないか。

 すると、メルヘンの権化がやってくる。又の名を霊神。

「起きたかしらぁ?」
「うん、バッチリ。疲れはまだ残ってるけど、眠気は取れた。」
「おはよう。神を待たせて眠る気分はどうだ?」
「気持ちよかったよ。」
ふっと鼻で笑っといた。人神の髪に寝癖がついていたのを見て。

「神って寝ないとどうなる?」
「それは知らない。余は知っての通り本物の神ではなく信仰と過去の積み重ねで培った擬似神。模造品だ。」
「で、神って寝ないとどうなる?」
「さぁ?死にはしないんじゃないか?」
ルーアに用意された布団をどかし、立ち上がる。足取りは軽い。

 よし、行くか。寝起き早々だけど、どうにかなる。寝ちゃった時間を1秒でも取り戻さないと。

 と、思い立ったはいいが足りないものを見つけた。私は少し首を回す。

「ねぇ、ルーアは?」
「寝てるな。」
「どこで?」
「そこで。」
指を刺された先には、赤色の龍がとぐろを巻いて寝ていた。ルーア……?

 確かに神殿の設備は私が借りちゃってるけど……普通あんなとこで寝る!?寝ないでしょ!?

 その辺で眠りこけているルーアに声をかける。龍の姿は久々だ。ルーアからしてみれば何百年ぶりとかだと思う。

『いくら寝ておっても、聴覚細胞は常に働かせておる。しっかり起きているぞ。』
「あ、起きてるんだ。」
のっそりと体を起こしたと思えば、魔力を収縮させて体を縮め、いつものサイズに元通り。

「魔神様の元へゆくのだろう?我が座標転移で一っ飛びさせてやろう。」
「わー。」
無い胸を張ったルーアに軽く拍手を送り、気持ちよさそうに魔法を発動する。

 ま、実際にすごいんだけど。

 構築されていく魔法陣を見て、いつもの小並感を並べて見つめる。

「座標設定完了。———転移。」
私じゃ不可能なほど卓越した魔法技術を体感しながら、視界を白く染めていく。

 これ、耐性ない人がいきなりやられたらやばそうだよね。だって、人の視界を突然真っ白にするんだよ?ひとたまりもないでしょ。

 神の魔法の中、そんな感想を抱けるほど慣れきっている私だった。

『そんなふざけたこと言ってられるのも今のうちだよ?もう、そんな暇なくなるんだから』
目の前の光が消える。色彩がはっきりしてくる頃には、魔神の背中が見えた。

「お、戻ってきたんだ。」
某音ゲーの最高難易度を画面すら見ずにオールパーフェクトしている魔神が、そこにいた。

「なにやってんの。」
「見れば分かるでしょ?」
「音ゲー。」
「そう。今、イベント中だからイベランしてる。イベント曲にイベントキャラを揃えてね。」
なんか、そう自慢げに語っていた。

 確かに。もうスコア凄いことになってるし。ランクS行ってるし。

「やっぱ音ゲーってキャラゲーだよね。」
「ランクはキャラに依存するからね。」
軽快なリズムでタップしており、パーフェクトをつなげる。

 私、音ゲーあんま得意じゃないけど凄いことは分かる。って違う!私、別に音ゲー鑑賞会しにきたわけじゃないんだけど!?

「知ってる知ってる。四神、集められたんだろ?ちょっと待って。」
よっこらせ、とYo○iboからの腰を上げると、チラリと画面からALL PERFECTとキラキラとしたロゴが現れた。

 ちゃんと決めてくあたり、もう魔神というより遊戯神じゃん。改名しようよ。詐欺だよ詐欺。

「随分早い帰りだね。」
「まぁ、残りは全員知り合いだし。」
「知り合いに神がいる時点でお察しだけど、キミは本当に世界から愛されている。」
「はいはい。そういうのいいから早くして。」
せっかく迎えに来たというのに、軽口ばっか叩いている。もうちょい真面目にできないものか。考えものだ。

「それで、どうする?」
「どうするって……そりゃ、帰るんでしょ。」
「大々的ではないが、もう帝国は動いてるみたいだけど。ボクの見立てだと、あと1日もすれば国境付近の村は制圧されて拠点とされる。」
「……戻ったら後戻りはできない?」
「そりゃあね。」
戦争だというのに、めっちゃ軽く言ってくる。

『でも、余計に張り詰めたって心労が増す一方でいいことないよ。別に、何しようが向こうから勝手にやってくるんだから、それを振り払うのに余計な不安は持たない方がいい』
『危機感がないのも危ないんじゃないかな?』
『我が力が解き放たれしとき……』
『私は黙ってろ』
『理不尽がすぎないか?』
ふざけすぎた罰が下る。それは自業自得だ。

『私の個性を奪うな』
『うるっさいなぁ。そんな個性とか神の前じゃペラッペラの紙よ紙』
何かのひび割れる音がした。

 ちょっと待って、その心私の!?必要以上に私の心を傷つけないで?

「作戦会議はする?」
「どうせ、もう分かってるでしょ?神だもん。」
「さあね。」
「どっちみち、そんなのしてる時間ないよ。」
モタモタしていると、ロア達に被害が及ぶかもしれない。私は、焦りを押し殺して帝国へ戻るよう念押しする。

「どうしてキミはこの世界を救おうとする?」
「どうしてって?」
唐突な質問に疑問を返す。

「キミの故郷は日本だろ?どうしてこの世界を救おうとする?メリットは?」
「逆に聞くけど、日本を救うメリットは?」
心底呆れたように肺から息を吐き出す。神でも、所詮偽だ。

「確かにゲームとかアニメとかラノベは興味を惹かれるし、力があれば守るよ。でも今はそれどころじゃないし、日本には大事なものなんてほとんどない。」
「親兄弟は?友人も少なからずいるだろ。」
「いるね。1人も。」
はははと笑う。ゼロよりマシだ。

「1人で「も」を使う人間初めて見た。面白いな。」
顔が全く笑ってなかった。

「友達なんていると思う?」
「いないと思うな。」
「この髪、日本じゃありえないから。いじめられてた。よく分からずに始まったいじめは、よく分からないまま継続されて、私が消えるまで続く。いじめの快感を知った奴は、いじめられるまでいじめはやめない。」
真理だよ、と口に出す。

 いじめっ子って、最初は出来心かもしれないけど、それからはもうどうしようもないんだよ。いじめなきゃ、空気が読めない奴としていじめられる。だからいじめはやめられない。
 こういう人もいるんだから、結局のところやめるにやめられないんだよ。

「両親はドクズ。義母義父には感謝してるけどさ、本当の親じゃないんだよ。血が繋がってないんだよ。」
「ははっ、こんな小娘を拾った義両親も可哀想だ。」
「だね。こんな変人拾ってさ。……というか、早く行こうよ。ほんと。」
「キミ、敬語覚えたら?」
軽口を飛ばし合いながら、ようやく開かれる帝国への門。

「待った。侵攻されている可能性があるなら、帝国へではなく国境付近に移動し殲滅しながら帝国へ向かう方がいいと思う。」
「賛成よぉ?そうすれば、魔法少女ちゃんもちょうどいいタイミングで帝国府に乗り込めるしねぇ。」
「我は、3柱の決定に従うのみ。」
多数決というなんとも少数の意見を塗りつぶすにちょうどいいもので決定が下される。別に反対はないけど。

「余の目的は世界を守ること。四神の目的も同じく。今こそ、四神としての責務を果たそう。」
静かに、展開された門への扉を開いた。

———————————————————————

 最近腹痛が多いんですよね。怖いですねぇ。夏ですから、食中毒の危険もグッと高まりますし、体調管理にはどうぞ皆様お気をつけを。
 もちろん、遅筆も問題なく進行しております。問題があってほしいです。
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