545 / 681
16章 魔法少女と四神集結
519話 魔法少女は最後の仕事
しおりを挟む「それじゃ、今度こそ行こうか。」
ルーアを引き連れ、神殿内部に歩を進める。神龍の件をようやく終わらせ、やっとの思いで漕ぎつけた対話のテーブル。
なんでこんなに苦労しなきゃいけないの……
心の中でそう恨みを吐く。
あの日努力の結晶が粉塵と化した階段を容易に登っていき、世界遺産よろしく荘厳な趣深い神殿に目をやる。
前に来た時は適当に探索したよね。まぁなんもないから中枢部の天井の紋様のとこに行ったんだけど。
「四神の中でまともに神をしていたのは、今覚えばルー爺さんだけだったかもね。」
「そうかしらぁ?ワタクシも神として頑張ってるわよぉ?」
「其方は露出狂でしょ、ただの。」
神達ですら新鮮らしいこの神聖な空気に、ルーアはそうじゃろうそうじゃろうとでも言いたげな顔で中央に向かう。
あれに魔力注げばつくんだよね。
着いた瞬間炎吐かれでもしたら死ぬね確実に。
ジリジリとした視線を、ルーアにぶつけた。
「な、なにかの?」
「いやー、なにも~?そういえば、ルーアに到着早々炎吐かれて死にかけたな~って。」
「あ、あれは龍神様……前龍神様に命令されてやったことなのだから、我は知らん。」
「知らんことないでしょ。」
「知らんもんは知らん!我は無関係に決まっておろう!」
駄々を捏ねる幼稚園児みたい。高一の家庭科実習みたいなので幼稚園児の相手させられたけど、その感じ。
「わ、我を生暖かい目で見るな!」
もう行くぞ、と魔力を流した。強引に話を白紙に戻すように、私の視界は白くなった。
徐々に視界に色が戻る。
何度か経験を繰り返すと、パーツがハマるような感覚からスッと色が降りてくるような感覚になる。
2度目の空中闘技場(?)何度見ても闘技場。
「何か馬鹿にしたかの?」
「してないしてない。」
適当に首を振っておく。
ルーアってなんか勘いいよね。野生の力?さすが龍。
なんて思っていると、ルーアは少し前に出て振り返る。
「我もとうとうこれができるようになっての。振る舞ってやろう。」
指をパチンと鳴らす。すると、私の後ろに椅子、前に小テーブル、紅茶が現れた。
「四神流もてなし術、もう完璧にマスターしておる。」
キランって効果音が付きそうだ。可愛い。
「これ、もてなし術だったの?」
「ま、半分正解ねぇ。信仰してくれる子たちを喜ばせるためにやってるわぁ。」
「そうなの?」
「そうだったな。今はもう、其方くらいにしか使わない。」
「え、何口説いてる?ごめんけどショタは見るだけで結構なタイプで。」
「余はショタではない!それに、事実を伝えているだけだ!」
人神のヘイトが溜まりきらぬうちに、本題を進める。
「それで、今回ここに来たわけなんだけど……」
「と、唐突だのぉ……」
「まぁ、早いほうがいいし。」
と、軽く対話の席を温める。
この話は何度目だろう。3度目?まぁ、いいや。この話はあんまりしたくないってのは変わりないけど、だからと言ってしないわけにもいかない。
「帝国の動きが怪しい……というより、戦争が行われようとしてるのは知ってる?」
「うむ、もちろん知っておる。」
「それを止めたい、って言うのは本心だけどゴールはそこじゃない。その奥の、神国。」
「神国かの?」
龍神は眉を顰めた。
「あそこはそれほど強い軍を持っているとは聞いておらん。帝国は大量の転生者を抱えておることは知っておるが、神国は……」
「だからこれから話すの。」
私の未来の話。絶望の未来の話を語った。
見慣れた反応。呆然と聞き入っている。
「だから、侵攻に対抗したい。神の力に耐えられる力と、急速な対応。未来では神々の対応が遅れて、手がつけられなくなった。」
「……それは理解したが、どう対応する?前者に関しては我らが手を貸すしかないが、後者は……」
「まず、神国を囲んで閉鎖しなきゃいけない。散らばらせたら、4人で対応とかできないし。」
「それは一理あるの。」
ふむ、と考え耽る。
「まず帝国をどうにかしなきゃいけない前提はあるけど、どれだけ余力を持って、準備を万端にして次戦に引き継げるかが肝になる。これは、四神の協力がないと不可能。だからお願い。」
椅子に座りながら、頭を下げる。
「分かった。これは、我にも……四神にも深く関係する事項。世界を守護する我らが、世界の崩壊を止めねばならんのは自明の理。任されようぞ。」
神の中で底辺のルーアも、どうやらやる気になったようだ。そんなこと言えば協力してもらえなくなりそうだから言わないけど。
「よし、これでまとまったね。…………………ようやく、四神全員を引き込めた……やった……」
椅子の背もたれに体を預け、落ち着くために紅茶を飲む。人神と霊神はいるだけだった。
「この世界は本当にどうなっているのかの。帝国に神国、次々と面倒なことこの上ないのぉ。」
「帝国は帝国で脅威なのに、その上神国もね。帝国班と神国班で別れた方が良さそうだね。」
飲み終わった紅茶をソーサーに戻す。と、並々注がれた状態になる。
何これ怖。
「王国だって弱くはない。合衆国まで取り入れて大戦を行うのだから、相応な勝負になる……が、質が違うか。できるだけ混乱を避けて終戦まで漕ぎ着けなければならない。」
「そうねぇ。その上、気づかれないように神国に潜入するっていうのもねぇ。」
「その辺は、戦争中盤で私が堂々侵攻で帝国府に攻め込むから、なんとかなるでしょ。」
まとまったと思ってもまだ考えることが山積みだ。3柱と1人の対話は続く。
「本当に詳しいことは魔神も交えて話そう。ネイファには極力内緒、アーレにも触りだけで。これは世界を揺るがす秘密だから。」
「そのくらい分かってる。」
「了解しておる。」
この話し合いもようやく終着点が見え、最後の仕事を終わらせた。まだ追加の仕事が大量にあり、残業確定なのは一旦忘れて、今はゆっくりしたい。
あれ……気が抜けたらなんかめちゃくちゃ眠くなってきた。
腹の中には大根と肉しかない。それと、家帰って風呂とトイレと食事をしたい。あと寝たい。
「今日は一旦休んだら?一応、この神殿には基本設備あるでしょ?」
「あるの?」
「なくてどう生活せいと。」
「さぁ?」
とのことなので、今日1日だけは休み明日魔神の元へ向かうことにした。
たまには優しいじゃん。たまには。
まぁこれからはこんなのんびりできないけど。戦争に戦争を重ねて、歴史が動くんだから。
私の未来のようにはさせない。絶対。
ルーアに肩を支えられながら、神殿に戻っていった。
「本当に、終わらせられるのか?この戦を。」
人神は、人知れず小さく呟いた。
—————————
「ついに、ついに訪れたぞ。この時が。どれほど待ち望んでいたか。この大陸を支配する時がっ!」
帝剣を手に、皇帝ディティー・ヘルベリスタは歓喜に目を剥いて宣言する。
「火蓋は切られた!今、朕の世界征服が始まった。各所に軍の出撃は完了したか、ルーン。」
「もちろんだ。」
小さく頷いた。
「王国と合衆国の同盟を確認。直ちに近隣国に潜伏させたスパイを出撃させ、軍の先陣を切っている。主力軍にはプロヘイスを配置、各所の遠征にはバイオレット、帝国の警備にホリー、ブルーライトを。エインズは国境に就かせている。」
「配慮感謝しよう。」
「これが仕事だ。こちらが礼を言うべきだろう。」
「そうか、そうかっ!」
カカカっと豪快に笑う。
この大陸を支配し、次は西へ海を渡ってみようか。そう未来を描き、脳内のゴミ箱に捨て去った。
「世界史に轟く大戦を始めようではないか。転生者を巻き込んだ、史上最高の戦争を。」
———————————————————————
少し前に公開した私のびみょいイラストに、ちゃっかりサイン的な何かが載ってだと思うんですけど、あれなんなんでしょう。自分でも分かりません。
もうちょい捻れないもんですかね、デザインのかけらもないじゃないですか。
0
お気に入りに追加
120
あなたにおすすめの小説
転生をしたら異世界だったので、のんびりスローライフで過ごしたい。
みみっく
ファンタジー
どうやら事故で死んでしまって、転生をしたらしい……仕事を頑張り、人間関係も上手くやっていたのにあっけなく死んでしまうなら……だったら、のんびりスローライフで過ごしたい!
だけど現状は、幼馴染に巻き込まれて冒険者になる流れになってしまっている……

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々
於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。
今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが……
(タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる