魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

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16章 魔法少女と四神集結

519話 魔法少女は最後の仕事

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「それじゃ、今度こそ行こうか。」
ルーアを引き連れ、神殿内部に歩を進める。神龍の件をようやく終わらせ、やっとの思いで漕ぎつけた対話のテーブル。

 なんでこんなに苦労しなきゃいけないの……

 心の中でそう恨みを吐く。

 あの日努力の結晶が粉塵と化した階段を容易に登っていき、世界遺産よろしく荘厳な趣深い神殿に目をやる。

 前に来た時は適当に探索したよね。まぁなんもないから中枢部の天井の紋様のとこに行ったんだけど。

「四神の中でまともに神をしていたのは、今覚えばルー爺さんだけだったかもね。」
「そうかしらぁ?ワタクシも神として頑張ってるわよぉ?」
「其方は露出狂でしょ、ただの。」
神達ですら新鮮らしいこの神聖な空気に、ルーアはそうじゃろうそうじゃろうとでも言いたげな顔で中央に向かう。

 あれに魔力注げばつくんだよね。
 着いた瞬間炎吐かれでもしたら死ぬね確実に。

 ジリジリとした視線を、ルーアにぶつけた。

「な、なにかの?」
「いやー、なにも~?そういえば、ルーアに到着早々炎吐かれて死にかけたな~って。」
「あ、あれは龍神様……前龍神様に命令されてやったことなのだから、我は知らん。」
「知らんことないでしょ。」
「知らんもんは知らん!我は無関係に決まっておろう!」
駄々を捏ねる幼稚園児みたい。高一の家庭科実習みたいなので幼稚園児の相手させられたけど、その感じ。

「わ、我を生暖かい目で見るな!」
もう行くぞ、と魔力を流した。強引に話を白紙に戻すように、私の視界は白くなった。


 徐々に視界に色が戻る。
 何度か経験を繰り返すと、パーツがハマるような感覚からスッと色が降りてくるような感覚になる。
 2度目の空中闘技場(?)何度見ても闘技場。

「何か馬鹿にしたかの?」
「してないしてない。」
適当に首を振っておく。

 ルーアってなんか勘いいよね。野生の力?さすが龍。

 なんて思っていると、ルーアは少し前に出て振り返る。

「我もとうとうこれができるようになっての。振る舞ってやろう。」
指をパチンと鳴らす。すると、私の後ろに椅子、前に小テーブル、紅茶が現れた。

「四神流もてなし術、もう完璧にマスターしておる。」
キランって効果音が付きそうだ。可愛い。

「これ、もてなし術だったの?」
「ま、半分正解ねぇ。信仰してくれる子たちを喜ばせるためにやってるわぁ。」
「そうなの?」
「そうだったな。今はもう、其方くらいにしか使わない。」
「え、何口説いてる?ごめんけどショタは見るだけで結構なタイプで。」
「余はショタではない!それに、事実を伝えているだけだ!」
人神のヘイトが溜まりきらぬうちに、本題を進める。

「それで、今回ここに来たわけなんだけど……」
「と、唐突だのぉ……」
「まぁ、早いほうがいいし。」
と、軽く対話の席を温める。

 この話は何度目だろう。3度目?まぁ、いいや。この話はあんまりしたくないってのは変わりないけど、だからと言ってしないわけにもいかない。

「帝国の動きが怪しい……というより、戦争が行われようとしてるのは知ってる?」
「うむ、もちろん知っておる。」
「それを止めたい、って言うのは本心だけどゴールはそこじゃない。その奥の、神国。」
「神国かの?」
龍神は眉を顰めた。

「あそこはそれほど強い軍を持っているとは聞いておらん。帝国は大量の転生者を抱えておることは知っておるが、神国は……」
「だからこれから話すの。」
私の未来の話。絶望の未来の話を語った。

 見慣れた反応。呆然と聞き入っている。

「だから、侵攻に対抗したい。神の力に耐えられる力と、急速な対応。未来では神々の対応が遅れて、手がつけられなくなった。」
「……それは理解したが、どう対応する?前者に関しては我らが手を貸すしかないが、後者は……」
「まず、神国を囲んで閉鎖しなきゃいけない。散らばらせたら、4人で対応とかできないし。」
「それは一理あるの。」
ふむ、と考え耽る。

「まず帝国をどうにかしなきゃいけない前提はあるけど、どれだけ余力を持って、準備を万端にして次戦に引き継げるかが肝になる。これは、四神の協力がないと不可能。だからお願い。」
椅子に座りながら、頭を下げる。

「分かった。これは、我にも……四神にも深く関係する事項。世界を守護する我らが、世界の崩壊を止めねばならんのは自明の理。任されようぞ。」
神の中で底辺のルーアも、どうやらやる気になったようだ。そんなこと言えば協力してもらえなくなりそうだから言わないけど。

「よし、これでまとまったね。…………………ようやく、四神全員を引き込めた……やった……」
椅子の背もたれに体を預け、落ち着くために紅茶を飲む。人神と霊神はいるだけだった。

「この世界は本当にどうなっているのかの。帝国に神国、次々と面倒なことこの上ないのぉ。」
「帝国は帝国で脅威なのに、その上神国もね。帝国班と神国班で別れた方が良さそうだね。」
飲み終わった紅茶をソーサーに戻す。と、並々注がれた状態になる。

 何これ怖。

「王国だって弱くはない。合衆国まで取り入れて大戦を行うのだから、相応な勝負になる……が、質が違うか。できるだけ混乱を避けて終戦まで漕ぎ着けなければならない。」
「そうねぇ。その上、気づかれないように神国に潜入するっていうのもねぇ。」
「その辺は、戦争中盤で私が堂々侵攻で帝国府に攻め込むから、なんとかなるでしょ。」
まとまったと思ってもまだ考えることが山積みだ。3柱と1人の対話は続く。

「本当に詳しいことは魔神も交えて話そう。ネイファには極力内緒、アーレにも触りだけで。これは世界を揺るがす秘密だから。」
「そのくらい分かってる。」
「了解しておる。」
この話し合いもようやく終着点が見え、最後の仕事を終わらせた。まだ追加の仕事が大量にあり、残業確定なのは一旦忘れて、今はゆっくりしたい。

 あれ……気が抜けたらなんかめちゃくちゃ眠くなってきた。

 腹の中には大根と肉しかない。それと、家帰って風呂とトイレと食事をしたい。あと寝たい。

「今日は一旦休んだら?一応、この神殿には基本設備あるでしょ?」
「あるの?」
「なくてどう生活せいと。」
「さぁ?」
とのことなので、今日1日だけは休み明日魔神の元へ向かうことにした。

 たまには優しいじゃん。たまには。

 まぁこれからはこんなのんびりできないけど。戦争に戦争を重ねて、歴史が動くんだから。

 私の未来のようにはさせない。絶対。

 ルーアに肩を支えられながら、神殿に戻っていった。

「本当に、終わらせられるのか?この戦を。」
人神は、人知れず小さく呟いた。

—————————

「ついに、ついに訪れたぞ。この時が。どれほど待ち望んでいたか。この大陸を支配する時がっ!」
帝剣を手に、皇帝ディティー・ヘルベリスタは歓喜に目を剥いて宣言する。

「火蓋は切られた!今、朕の世界征服が始まった。各所に軍の出撃は完了したか、ルーン。」
「もちろんだ。」
小さく頷いた。

「王国と合衆国の同盟を確認。直ちに近隣国に潜伏させたスパイを出撃させ、軍の先陣を切っている。主力軍にはプロヘイスを配置、各所の遠征にはバイオレット、帝国の警備にホリー、ブルーライトを。エインズは国境に就かせている。」
「配慮感謝しよう。」
「これが仕事だ。こちらが礼を言うべきだろう。」
「そうか、そうかっ!」
カカカっと豪快に笑う。

 この大陸を支配し、次は西へ海を渡ってみようか。そう未来を描き、脳内のゴミ箱に捨て去った。

「世界史に轟く大戦を始めようではないか。転生者を巻き込んだ、史上最高の戦争を。」

———————————————————————

 少し前に公開した私のびみょいイラストに、ちゃっかりサイン的な何かが載ってだと思うんですけど、あれなんなんでしょう。自分でも分かりません。
 もうちょい捻れないもんですかね、デザインのかけらもないじゃないですか。
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