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16章 魔法少女と四神集結
518話 魔法少女は鉄拳制裁
しおりを挟む帝龍と業龍が飛翔する。あと数秒もないくらいの時間で到達しそうで、私は逡巡しながからも腰のステッキを振り抜いた。
そして、重力を後ろに向けて急後退。
「重力世界。」
結界ごとかき消すように、私の重力は広がった。ここら一帯、私のテリトリーだ。
それでも怖気ゼロで突進してくるの何?さっきまであんなビクビクしてたのに、忘れたの?
というより、慣れたが近い。そう直感で答えを出す。
「龍法陣、恢恢熾炎。」
「バースト!」
重力世界内に豪速で炎が駆け巡り、焼き付けていく。熱い。
これ、使った事ないけど勘でいけるかな?
2人の攻撃は無視し、自分のことに集中する。無視できるような規模ではないけど、頑張る。
「……空間選択。」
フッと炎が掻き消えた。そして、私も2人の視界から消えた。
「はいプレゼント。」
ドガァッッッ!!!地響きがし、世界が揺れた。そう錯覚するほどの威力。数ヶ月ぶりの威力。
「ケアーの味はどう?」
そこには、血だらけでぶっ倒れる業龍の姿が。
「何をした、お前……」
「簡単だよ。ここは私の世界。私の世界にいらないものは削除するし、私の世界にあって欲しいものは追加できる。」
「そんなもの……まるで神じゃないか。そんなわけがない、あるべきではない……」
「べきべきべきべきうるさいなぁ。」
重力で重くし、上に向けたその一撃を顎に決める。「ぐばぁっ」と呻き、同じく倒れる。片方は死んでそうだけど、一応生きてる。
あれでも威力調節したんだけどなぁ。重力ってやっぱりすごいね。どんだけ筋肉ムキムキだろうと、宇宙じゃ意味はないし。
いや、あるね。なかったら宇宙空間で筋肉萎みまくって終わる。
「確かに、私のステータスはそっちより少し低い。けど、ステータスより恐ろしいものなんてこの世にいくらでもあるんだよ。」
ラノスを引き抜き、重力を大きく、そして加速させる。空間魔法で、私の空間内にある物質の質量を上昇させ、さらに重く。
ラノスだって、ちゃんと準備した上で撃てばトロイと遜色ない威力にまで跳ね上がるんだよ。多分。きっと、おそらく。
引き金を引いた。ちょっとだけ外して撃っているため、顔面スレスレで着弾することだろう。
あ、ズレた。
「其方、そう言う趣味があったのか?」
「たかが死体撃ちじゃん!あと誤射!誤射だから!」
弁解も無意味に終わり、残ったのは死にかけの龍と倒れる龍。
「ねぇどうするの?殺すんじゃなかったの?」
もちろん王龍は動けない。重力で重みを増し、さらに動ける範囲を限定してあげた。何をどうやっても動けない。
「ねぇ、これどうすればいい?」
ルーアに視線を向け、転がる龍を足蹴りにする。
「もう……どうにでもせい。」
疲れたように言う。龍神の許可も得られたところで、その部下たる龍には死なない程度にどうにでもすることにした。
「まだ反抗する?」
私が1発蹴りでも入れようかと歩み寄れば、龍法陣を出して対抗しようとする。まぁ即座に消されるんだけど。
「私に勝てると思ってる?もうここは私のテリトリーなんだから、何をどうしようと勝てないよ。」
蹴っても吹き飛ばない。王龍は空間に閉じ込められているから。
「ただの魔法じゃ効かないよね。アレ、使ってみようかな。初めてだけど。」
そう呟きながら、何かを撒いた。もちろん、王龍の空間内に。
体内破壊粉塵は、体に取り入れた粉を魔力によって変形させて内側から攻撃する悪辣な兵器。それを撒いた。
「それじゃあ、お楽しみのショーを始めようか。」
体を完全に縛られた王龍と業龍は、軽い治療を受けたのちその辺に捨てられていた。
王龍は内側からグサグサ、外側からパンチとベッキベキにされた。というかした。頭とかどうなってるんだろ。(他人事)
業龍はもう、ほぼ即死?
「それで、神龍は帝龍さんで異論はないね?」
「ワタシは一向に構わない。それがワタシの望みだったわけだしな。」
「別にいい。あの2人が嫌だっただけ。」
「って言ってるけど、もちろん異論はないよね?」
捨てられた2人にも、一応、一応の確認をする。
「は、はい。」
「お望み通りに……」
随分と忠実になった。これじゃあ忠犬だ。
でもまぁ、邪魔者がいなくなるとスッキリするね。
さすが調教のスキルを持つ私は違う。
『それ関係ないでしょ、絶対』
『力は無限だ。見方使い方によりて姿を変えるのだ』
『何言ってんの』
「それじゃあ、帝龍が神龍就任ってことで、おめでとー。」
乾いた拍手を数回して、簡単に締めくくる。ようやく、ようやく終わった。
「なんでこんな全く関係ないことしなきゃいけないんだろう。」
「お疲れ。」
「頑張ったわねぇ。」
柔和な笑みに包まれる。これが神の力か。
「後のことは4人でなんとかしてよ。めんどいしやだ。もうやりたくない。」
集中力が完全に欠如してしまっている私は、呪文のようにそう唱える。
重力魔法も空間魔法も魔力いらない分集中力いるんだよ。色々すり減るんだよ。
「任せてもらって構わない。ワタシはこれで、名実ともに神龍の座を得たのだから。」
そう言いながらも、少し考える素振りを見せる帝龍。
「しかし、伝統に従った故このような迷惑をかけてしまってことは素直に申し訳ないな。少しばかり、変革を加えようか。龍神様、構わぬか?」
「好きにせい。その代わり、もう我は関与しないからの。」
「了解した。」
一呼吸おいて、隣の法龍を見た。
「よし。神龍には神龍補佐をつけよう。次代龍神は引き継いで神龍が成り、神龍補佐を神龍とする。そして、神龍が補佐官を決める。下剋上でもない限り、これでスムーズに事は運ぶ。」
「なら、それで良いかの?」
「いいよね?」
私の一押しにより、完全に決定した。空気感的に、いま現在ここのトップは私になっているため異論はない。
「じゃあ、その補佐は誰がする?」
「センスフォーン、そなたしかいないだろう。」
「……あたし?」
指を自分に向け、小首を傾げる。なんとなく、可愛い。
「決まりだ。神龍リュウムと、補佐官センスフォーン。魔法使いのそなたも、これからは名で呼ぶといい。」
「……まぁ、うん。頑張って、リュウム。」
「あたしからも、よろしく。」
「そなたはワタシの補佐官だ。」
こんな風に、綺麗に場がまとまった……と思っていたのに。
「げっ。」
「開幕早々それか。」
私にベッキベキにされたべきべき野郎が、こちらに歩いてくる。縛って放置していたらこれだ。
これだから中途半端に強い奴は。中途半端にしてたら微妙に抜けてくるんだよ。
私だって常に全力は無理だよ?そんな根性ないし。というか、寝たいがためにここに来てるのになんで眠気覚ませれてるんだろう。
「文句を言いに来たわけではない。私は私なりに、少し考えを改めたのだ。」
「主が何をしたのか、分かっておるか?」
「もちろんでございます、ルーア様。」
「ソラは世界を変革しうる唯一の可能性。だのに、主は愚かしかも殺害を企てた。」
「蛮行であった事、不肖ニニウル、身と心をもってして理解いたしました。」
膝をつき、目を閉じて平伏する。
「それは我にすることではないであろう。」
「承知しております。」
くるりと綺麗に回り、私に膝をつく。
あれ、やりすぎちゃった?殴りすぎて脳壊れちゃった?
「その、ね?気味悪いからちょっと寄らないでもらって……」
「いえ、一言謝罪の言葉を。此度は、申し訳なかった。」
後ろでのびている業龍などいないように、頭を下げた。
「あは、あはは。」
心で少し、反省するのだった。
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仲間はぺしゃんこ、体は外から中からぐっちゃぐちゃ。これで正気を保てるやつがいるかどうかですね。
そろそろ今章も終わりが近づいて参ります。遅筆が加速を続け、投稿も安定しなくなっている現状ではありますが、なんとか軌道修正したいと思います。
応援ありがとうございます!
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