536 / 681
16章 魔法少女と四神集結
510話 魔法少女は森へ赴く
しおりを挟む「ほんと、ここどうなってるのかいくら見ても分からないよね。」
おそらく精霊の森。私は魔力の遮断されたこの空間で疑問を呈した。
「ベール分からないの?神霊になったんでしょ?」
「神霊は神じゃないのよ。そこの人神様に聞いたらどう?」
「人神の扱いに慣れてきたねベールも。」
「そりゃあどうもありがとう。」
無駄な会話で時間を潰し、長い道のりを歩んでいく。確か、あの時も結構遠かった記憶がある。
王都旅行だったし、記憶に新しいね。
『久々に煉獄指弾突を使いたくなってきたな』
『厨二病全開で笑える』
『原獣とか出てきてと処理めんどいからベールなんとかしてくれないかな』
面倒そうにAが口にした。確かにそう思う。
「だ、そうだけど人神さん。この結界について知ってることとかない?」
「はいはい教えればいいんでしょ。」
投げやり感で頭をガシガシ掻いた。
「この結界は5重、と見せかけて6重に重なってできている数的強力結界。徐々に結界範囲を狭めて完全に魔力が潰えるまで3つ、結界内ごと移動するために1つ、隠蔽に1つ。」
「ミュール様はやっぱり凄いわ!」
「ねえ、1つ足りないけど。」
「よく気づいたね。そこの精霊は鈍感だけど。」
「だっ、誰が鈍感よ!」
プリプリ怒ってほっぺを膨らます。風船か。ヘリウムでも詰まってるのか。
「このままじゃブリ大根になるよ。」
「ぶりだいこん?」
「ブリがブリブリになるまで大根と煮る料理。」
「話戻していいかな?」
「あ、うん。」
頬をひくつかせていた。まあ、私が人神の立場だったら殴ってるだろうしその辺は心が広い。
「最後の1つ、それが霊冥結界。ただ魔力がないだけじゃ人は死なない。だから、人間の肉体を弱らせるようにできている。」
「ならなんで私と人神は大丈夫なの?」
「あんた大丈夫?人神様は神様じゃないの。」
「分からないならいいんだよ。」
生暖かい目でベールに悟らせるように語りかけた。
ベールもアレに巻き込まれてるのかな。まぁ、知らないに越したことはない。重い話は合わないしね。ここはメルヘンな精霊の棲家。
あるかもしれない悲しい未来の話はどうでもいい。
「霊神はあんななりをして1番まともなんだ。余は適当だし、ヴァルはバカだ。前龍神は詰めが甘いし、現龍神はまだ未熟だ。民を守って慎重に行動に移す。」
「褒めるねえ。まさか好きだったり?」
「するかあんな露出狂。会うたびにレンちゃんレンちゃんベタベタ触ってくるんだぞ?」
思い出すだけで虫唾が走ると言わんばかりに体をさすった。「そんなことしないわ」と言い張るベールがいるが、信憑性は薄い。
ベールって信じたものは信じる質だし。
へカートなんちゃらもその賜物でしょ。やりたいことを信じて続けた。
普通にあれ、すごいし。日本のこと知らずにミサイルとか頭いい以外言いようがない。
「複雑なことは分かんないけど、まー大体わかった。ありがと。」
「素直な人間は好きだよ。」
「うわキモ。」
「素直すぎる人間は嫌いだ。」
心の中で、なら素直になろうと決意した。例えば父親と母親がベットでナニをしていとしても「なにをしてるの?」と聞いてしまうくらいに。
それはどちらかと言うと空気が読めない奴か無神経な奴だ。
いや待て。そもそも空気って吸うものだよね。なんで我々人間は空気を読んでるんだろう。
ここにひとつ哲学が生まれた。
「あ、原獣。」
そんな哲学を豪速球で返球し、目の前に現れた原獣と目を合わせる。なんだろう。クマみたい。シロクマ。
ただし棘のついた真っ黒な目の化け物だけどね!
私パスで。そう言おうとして、人神と目があった。
「私、やるよ。」
「いや余がやろう。」
何この典型的な定型ネタ。いつの時代だよ、とツッコミをしたい気持ちを抑える。
「いやいや私が。」
「いやいやいや、余の出番だろう。」
「ならわたしがやるわ!」
「「どうぞどうぞ。」」
両手を小さい腰に当て、胸を張って言った。
引っかかったよこの子!
純粋な子だ、と濁して感想にした。
「遂に完成したへカートを見せてあげるわ!」
そう言って、露出の多い服の胸元から小さな飾りを取り出した。
「サモン、スーパーへカートモード1〈エレクトル〉!」
空を天に掲げると、呼応するように光出して姿を現していく。正しく表現するなら、形成されていく。
お、お?ん?
「行くのよ!わたしのへカートっ!」
「ちょいちょいちょいちょい!」
「なによ。」
目の前に現れたのは、人間より少し身長の高い、真っ白な装甲に水色の線が入っているような機械人形だった。関節の部分もうまくつくられており、さしもの私もびっくりドンキー。
「わたしのへカートの晴れ舞台を邪魔しないでちょうだい。原獣、ヤるんでしょ?」
「そうだけど……」
「ならいいのよ。」
ベールは手を伸ばし、さぁ行きなさい!と意気揚々とはしゃいでいる。少しクールになったと思いきや、すぐこれだ。
今更だけど、へカート完成してたんだ。あんなⅤⅡ3(試作機)とか迷走してたのに。
これを完成と言ってしまっていいのかは謎だけど。
へカートは燃料を投下されたように動き出し、瞬時にクマに接近した。クマがその爪を振り下ろすと同時に腕に滑り込み、それを掴んだ。
そしてファイア。
「どうよ!精霊術が使えるのよ!」
「普通にすごいけど……」
テンションについていけず、されどへカートの快進撃は止まらない。何かが噴出され勢いのままサマーソルトキックを顎にくらわせ、へカートは距離をとった。
物理も完備と。なんか高性能すぎて怖い。
「仕上げよ!」
関節部分がカパッと折れ、両腕を合わせた。
「へカートビームよ!」
「ネーミングセンス低っ!」
ブーメランが帰ってこようが、あえて言おう。
ネーミングセンス低っ!
そのビームは混乱状態のクマに衝突し、毛皮もろとも消滅して肉が焦げ、美味しそうな匂いを発する。
「クマの毛皮は処理が大変なのよ。特にクマの手なんかはね。」
こんがり丸焼きになったクマを見て、ふわりと笑った。死体を前に精霊が笑うとか、世紀末すぎる。
「へカート、運びなさい。」
いつのまにか腕が再接合され、呼ばれたへカートは命令を遂行する。
「ヴァルが見たら喜びそうなおもちゃだ。」
「おもちゃじゃないわよ。スーパーへカートモード1〈エレクトル〉よ。」
「長い。」
「長くないわ。」
「余も長いと思う。」
「何よよってたかって。へカートはへカートなんだから。」
プリプリと再びブリ大根。原獣の処理を終えると、へカートを携えてベールは案内を再開した。そこそこの道のりとなる。
「まずどこに行くの?そのまま霊神のところ?」
「エスタールのところよ。」
「あー、あの……」
ぶっ飛ばされた記憶が蘇る。今度は扉を叩くのやめよう。
「なんでこんな遠くに作ってるんだろうね。面倒以外の何者でもない。」
「万が一にでも入られないように、ということだ。原獣もいるこの中で、運よく目を覚ましたとして、魔力がなくてこの距離をどうにかできるわけがない。」
「実際さー、入ったら死ぬわけじゃん。私でも死にかけたんだよ?意味なくない?」
「そういう抜かりのなさに裏打ちされたあの露出だ。あんな露出でも余裕、そういうことを暗に伝えているんだ。」
「そんなもんなのかな」など、あとはうんとかすんとか生返事を繰り返す。
「うんとかすんとか言ったらどうだ。」
あまりにも適当なことを繰り返しているうちに、うんとかすんとか言ってる中でそんなことを言われた。
「言ってるじゃん。」
「うんとすんは言うな。」
「わん。」
「それは犬だ。」
「ばう。」
「それも犬だ。」
「わう。」
「それも犬だ。」
やっすい漫才を披露したところで、「そろそろ真面目にしなさいよ」との伝令が。ここは隊長であるベールに従うべし。
「まったく、2人して変ね。強いやつはみんな変なの?」
なんて、呆れながら苦笑していた。
「そんなことしてたら、捕まっちゃうわよ?」
冗談まじりに指を差した。
あれ、これって……?
「そんな典型的なフラグがあるわけ……」
「確保ォっ!」
「あるんかい!」
そこでは、今のベールより一回り二回りも大きい、大人サイズの精霊が武器を構えて私達を狙っていた。
———————————————————————
本当、なんでこんなことになってるんでしょう。
当初、もっとほんわかした感じの異世界日常系を描いていたつもりなんですけどね……知らぬ間にどろどろ異世界系に変わってました。
大切と目標。これが題材って感じですかね。知りませんけど。
0
お気に入りに追加
120
あなたにおすすめの小説
転生をしたら異世界だったので、のんびりスローライフで過ごしたい。
みみっく
ファンタジー
どうやら事故で死んでしまって、転生をしたらしい……仕事を頑張り、人間関係も上手くやっていたのにあっけなく死んでしまうなら……だったら、のんびりスローライフで過ごしたい!
だけど現状は、幼馴染に巻き込まれて冒険者になる流れになってしまっている……

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々
於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。
今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが……
(タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる