532 / 681
16章 魔法少女と四神集結
506話 魔法少女と魔神
しおりを挟む「……何これ。」
Yo○iboを見て……正確にはそれを含めた光景を見て堪えきれずに漏らした。
「見て分かる通り、ボクの部屋さ。」
そこらに電化製品の転がった、異世界にあるまじき姿をとったその部屋からは、絶えず電子音が聞こえてくる。
「クリスマスイベントだってね。変な格好の装備を着るとコインのドロ数が上がるから仕方なく着てるけど、弱いな……」
不満げに独り言を漏らす。せっかくの強武器が、などと語っている。
ちなみに変な装備とはサンタコスのことだ。
しかし、そのビジュになにか既視感を感じた。
「それ……まさか、アナザーエデンス?」
「ほぅ、この良作を知っているか。キミ、見る目あるな。」
「このグラフィック……投影機能付きと見た。2だと有り得ないし、まさか3出たの?」
「電撃発表があったんだ。予告は3ヶ月前。」
「ほほう……」
そのグラフィックの美しさに、少し見惚れてしまいそう。
これが1世代前ならハードがバグるところだけど、今じゃそんなのない。物によっては、フルダイブとは行かなくともハードに付属する擬似スクリーンに投影して直に感じることができるようなものもある。
この半年で、このゲームもそうなるとは。
「多分もうすぐ定期イベントがあるね。そのための前段階。」
「イベントコインで良アイテムが買えるな?」
「ボクも同じ考えだ。なんだ、意外に趣味合うじゃないか。」
キャラクター操作をしながら、魔人は器用に笑って見せる。その間キャラは、敵の攻撃を悉くかわして隙をついてキャンディーの杖で叩きつけた。
「思ってたより来るのが早いんだけど。」
「イレギュラーが発生した。」
人神が面倒そうに話す。
「でも、しかたない。ボク直々に教えてやろう」
カチカチカチ、カチッ!敵は光の粒子となった。そこから、赤と白と緑のコイン(200)とサンタ帽がドロップする。
「これで100万コイン。イベント装備じゃないと50コインとかいう鬼畜仕様でここまで貯められたボクを褒めて欲しい。」
フハハ、とゲームの世界で大虐殺をしたであろう魔人は声を上げる。
「高グラフィックだけあって最初の1000匹くらいの討伐は楽しかった。けど……あとはもう……」
電話の無感動なぽちぽち音の正体を知った。何故だか無性に悲しくなってくる。
「ゲームの話はもういい。ヴァル、話をしろ。」
「普段は怠惰のくせにこんな時だけ調子がいいな。ボクはボクのやりたいようにやってるんだ。」
ようやくゲームの電源を切った。
「要するに、この城は通常状態からキミの成長を促すよう特殊な配置に置き換えた。」
「あのクソみたいな罠、故意に仕込んだんかい。」
「確かに、やりすぎとは思った。」
人神が苦笑混じりに言っていた。なら止めろよと思わないでもない。
「ここまで辿り着いちゃったし、ボクが直に戦って叩き込もうという話さ。キミ、そこに立って。」
「なら、余は離れて観戦しているとするよ。」
「酷。」
私の疲労を他所に、人神は部屋の端に行った。なんかゲーム機見てる。やったら殺そう。
「ほい、結界魔法。」
パチンとと鳴らすと部屋の中央が広がり、透明な結界が張り巡らされた。
「空間魔法が使える人間は初めて見た。ボクにその魔法、使ってみせて。」
手をクイっとする。横目で見ると、イカが武器を持ってインクを塗るゲームをプレイしている人神がいた。ウデマエXとかやり込みすぎだろ、と思った。
ほんとにこの神ゲーマーだな……ゲームのことしか脳にないのかな?
「ねぇ、いくつかいい?」
「答えられることだけなら。」
「分かった。……………………その、クソダサいTシャツ何?」
「……そんなにダサいか?」
魔神が細めで自身の服を見た。白地のTシャツに、黒字で魔神と書いてある魔神Tシャツ。魔T。
「うんクソダサい。何その安っぽいフォント。」
「このTシャツ色違いで7種、そこに入ってるけど。」
「まだマシな部類だったことに驚き。」
同じ服に紫とか緑があることを想像すると、絶妙に嫌な気分になる。魔法少女服より着たくない。
「そんなこと言ったら、キミの服の方が何倍も恥ずかしいと思うんだけど?ボクは人に見せない、キミは人見せる。これが違いだ。」
「私はこれ着ないと善良な一般市民になるからダメなだけ。脱がないんじゃない。脱げないんだ。」
「キメ顔で言うことではない。」
「で、いつ始まるの?」
人神がゲーム画面を見ながら聞いてきた。21キル。ノックアウト。
「ゲームされてると気分乗らないなー。」
「ボクのゲームに勝手に触れないで。負けたらボコすよ。戦績に泥を塗るな。」
「勝ったんだけど?余、余裕で勝ってるんだけど?」
理不尽(?)な責められ方にツッコミを入れ、眉尻を下げて仕方なく審判に移る。
「そもそも、何を審議して判定するのこれ。」
「余が聞きたい。」
いるだけの審判になった。用済みだ。
「じゃ、改めて始めようか。」
私は刀を取り出した。一見、銃の方が身軽で空間魔法とは合いそうな雰囲気醸し出してるけど、それは醸し出してるだけだ。
実際はラノスでも十分使えるけどね。そのまま銃弾転移させたり。撃った瞬間相手にドーン。あれ、こっち方が強い?
避けられない理不尽にちょっとだけ引いた。誰かにやられでもしたら、私死にそうだ。
この戦法は、一生口外しないことにした。
と、無駄話が過ぎた。
今からやるのは、先輩の技と掛け合わせた空間魔法。見えるもの見えないもの、消えるもの。その全てを認識できる知覚能力がある奴なんて多分いない。しかも空間魔法で私を増やせる(誤認という意味が強い)。
「それに。」
縮地。百合乃のを真似た。足の踏み位置の座標を設定して、瞬間移動のように見せる。そして、刀を縦に振るった。
「そんな適当な一撃、当たるとでも?」
「思ってないよ。」
次の瞬間には魔神の目の前。私から身の危険を感じるまで、私の姿には気づかない。
「ディメンションプレス!」
さっきの私の真似。魔神は少し驚いたように身を捩ると、魔法を発動した。
「7つの輝く魂に。」
鮮やかな7つの輪が回転し、空気を重たくする。
「重力世界。」
「反重力。」
その輪をひとつ、腕につけた。大きな輪は収縮し、腕にぴったりのサイズとなる。
効果を打ち消す系の魔法?全く分からない……意味不明なんだけど?
軽い予想を組み立てつつも、しっかりと攻撃を加えていく。空間魔法で空間とものとを繋げる攻撃。向こうも軽くジャブと言うように小さな弾幕を飛ばす。
それは縮光によって誘導されており、少しだけ首を傾げてそれで終わり。
そのまま陰縮地で陰となり、刀を突き刺そうする。
「脳が麻痺している?いや、錯覚か。どうしようもないな、これは。」
諦めたような顔で、少しだけ体を捻る魔神の服を貫いて、空中に繋ぎ止めた。瞬間だった。
「ディスタブ。」
空中に刺さらずただ空気を裂く結果となった。
「……なにそれ。」
「さぁ?暴いてみせてよ。」
「そんな遠回りな……」
仕方なくラノスに変更する。やはり現代武装が合う。
ラノスのどこでも転移をぶちかます。
パァァンッ!パァァンッ!パァァンッ!音だけが3回こだまする。その3発は、確実に魔神の体内に転移させたはずだった。
「物体は触れている空間に影響を及ぼす。これは常識だ。」
魔神はただ、遠回しな発言で笑っているだけだった。
———————————————————————
序盤に出てきたゲームの話、最初普通にアナザーエデンにしようと思ったんですけど、普通にそのゲーム存在してました。
確認途中でしたし、少しいじる程度に留めました。あれ、1文字追加されただけじゃ……?
0
お気に入りに追加
120
あなたにおすすめの小説
転生をしたら異世界だったので、のんびりスローライフで過ごしたい。
みみっく
ファンタジー
どうやら事故で死んでしまって、転生をしたらしい……仕事を頑張り、人間関係も上手くやっていたのにあっけなく死んでしまうなら……だったら、のんびりスローライフで過ごしたい!
だけど現状は、幼馴染に巻き込まれて冒険者になる流れになってしまっている……

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々
於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。
今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが……
(タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる