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16章 魔法少女と四神集結

501話 魔法少女は順調……?

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 小休憩を終えた私達一行は、かけられた梯子に手をかけて3階へようやく到達する。あと7階とか、バグってる。

「はい?」
「まぁ…………余には関係ないな。」
 そっぽを向いた人神。誰か、この苦しみを共有してほしい。

 説明しよう。
 今目の前に広がる光景。それは。

「燃えとるやないかい。」
 エセ関西弁を引き出すに足るインパクトが、そこにはあった。例えばそれは、朝起きたら氷河期が突入していたみたいに、目が覚めると宇宙にいたように、脳の処理能力が限界を超えた。思考停止が働いた。

 私、あっても火炎放射器くらいかと思ってた。

 この城、絶対壊れない。イコール、燃やしてもセーフ。再生する城+炎上×未知数の罠=やばい。そんな方程式が立てられている。
 つまるところ、熱い。

「いくら私でも神の炎は耐えられないよ?神雷耐性あっても神炎耐性なんてないよ!?」
「考えてみよ。何も即死というわけではない。神の炎は回復の効かない神痕が残る。しかし、少しでも耐性があれば死ぬほどの苦痛しか味わわない。」
「ほうほう、それなら安心……できないよ!」
目の前の燃え広がる城内(もちろん今いる場所を除いて)を見渡し、絶望と共にツッコミを添える。

「ここを通るには、耐性を獲得するしかない。ほら、やって。」
「でも、痛いの、怖い。」
「やって?」
「だって、熱いし、嫌。」
「早くしないと、帝国に遅れをとるけど。」
「や゛り゛ま゛す゛よ゛……」
喉が反射的に閉じる。無理やり声を出した結果、こんな声になった。

「再生創々再生創々再生創々再生創々再生創々再生創々…………………………………………………………」
私は呪文を唱えるように連唱した。そのまま、恐怖の炎の中に身を投じる。さながら滝修行の修行僧のように。

 これ、ひょっとしたら1番きついかも。ヘルプ、ヘルプミー……SAN値がピンチ!

 身を震わせながら耐える。耐え忍ぶ。これぞ忍耐。今まで、キツイけど直接的なダメージは技量で防げた。けど、今回は無理。

 焼死する人間の気持ちを味わういい機会、ではない。味わう暇とかないし。

「んんんんんんんんんんんん———!!!」
涙目。燃えるコート。残る魔法少女服。泣き喚くのを我慢して、歯を噛み締めた。

『魔法少女炎上中』

 どれだけ時間が経ったかは分からないけど、体感は死んで生き返ってもうすぐ死にそうなくらいな時間感覚。

「1時間とちょっとだよ。」
「なんもいってないじゃん。」
炎の中から、冷静なツッコミを浴びせる。

「そこからそれだけ言えるならもういいんじゃないかな。さ、余も行くとしよう。」
「あっさりしてるね……」
淡白な反応に思わず苦言が。これだけの辛い時間を過ごしたんだから、このくらいは勘弁してほしい。

「次元氷界。」
サラッと技名を言った。炎が全て消え去って、氷が壁や床に張り付いた。空間が冷たい。

「いくら魔神とて、自動発動の魔法くらいなら世が相殺することなど容易い。」
「最初からそれやってよ……私の1時間の今はどこに……」
「あるでしょ。」
人神は何かをポケットにしまいこみ、靴を鳴らした。

「今何隠したの?」
「なんのこと?」
「いやなんでも……」
気掛かりはあるものの、いちいち気にしていても意味がない。凍えた3階を歩いて、次の階を私を目指した。

 それにしても、寒すぎる。

 次の回を見つけるのは簡単だった。あれは、炎に耐えるだけのSAN値ピンチステージだったってことだ。
 1階が罠だらけ、2階が特殊レイド、3階が忍耐。じゃあ4階は、という話だけれど……

「光魔法か闇魔法しか効かない相手だね、多分。」
目の前でフヨフヨしている謎の霊魂を見て、人神が言った。

「鑑定眼……」
なんとなく結果を予想できるが、現実はまだ分からないのだ。

 死せる魂(A+)
死せる魂が具現化し、半実体化したもの。物理攻撃はもちろん、魔法攻撃も無効。光、闇に類する魔法のみ適応。それぞれ脅威度に差異があり、範囲を表すならばE~Sである。


「あ、はい。」
私は、いろいろな霊魂が浮遊する中、orzのような姿勢で床を叩く。なんか、落武者が見えた。

『案外、けるかもよ。ラノスとかの核石は光属性の核石に変質させて撃てば効くし』

 その手があった!私天才!

 と、思ったが実際使える魔法は少ない。
 万属剣。これはランダムに生成されるため、確率は低い。混合弾も同じく。暗黒弓、流星光槍、そのくらいだろう。重力ももちろん範囲外。

「ちなみに、弱った心に魂は集いその者の心を喰らうと言われている。」
「しゃ!やる気出てきた!」
空元気を振りまいて、私は立ち上がる。心霊が苦手な人、絶対に来れない場所だ。

 このためだけにSPを使うのは勿体無いし(レベルが上がるごとに上昇量が減っているから)、現状でどうにかするしかないか……

 しかし、思っていたより楽だった。
 これは人神も予想外だったようで、神が近くにいるからかあんまり寄ってこない。弱い奴は群がるけど、ラノスを撃ち込んで終わらせた。

 1番キツかったのは、階段前だ。

 人を呪い殺さんばかりの呪詛を吐いている顔でびっしりの階段。空中歩行は何故か使えず、土魔法もダメ。マジックキャンセラー的な何かがある。

「これを踏み越えていけってことだ。」
「そういうことだね。」
人神すら顔を顰めた。嫌なことは、できるできないに限らずに嫌。これが真理だ。

 今日は魔力をついすぎてもう全然ない。3分の1あるかないか、そんな感じ。
 高速回復してますか?これ。そんな感じ。

「これ、行くしかないよね。」
こういうのは勢いが大事。人神と同時に、私は階段を踏み締めた。すると、苦しげな呻き声が聞こえた。

 なんか階段光ってるんだけど。

 不思議なことが起こりすぎて、また階段が発光するくらいじゃあ驚かなくなっている。人間の適応能力の凄さに、驚嘆する。

「霊神の力……其方、何か霊神から力をもらわなかったか?」
「なんだったかな……霊神之祈?だったかをもらった気がするけど。」
「この階層が簡単に思えた理由はそれだ。余の力じゃない。さすがに、余には霊を追い払うオーラなんてものはない。」
え、と小さく区切られた声を出す。

 私がやってたのこれ?
 私、何かやっちゃってたんですか?いやこれは違うな。神のスキルなんだから。貰い物で調子に乗ってるようじゃあ勝てる相手にも勝てない。

 次の段に足を踏み込む。呻き声。次、呻き声。呻きサンド。

「うん、気分がいいことではないね。」
「これを気分良くできる人間がいたら、余は引く。」
「いるんだよなぁ、多分。」
日本という狂気の国を思い出し、苦笑する。

 あそこの人間は狂ってる。性癖、フェチ。言い換えはあるけど、マニアックがすぎるのが日本人。頭のおかしい猟奇殺人鬼も眠ってるかもしれない。

 5階に到着する頃には、普通の階段となんら変わりのない木製の階段に変わっていた。人間がこの城にいたら、もうそろそろ100回くらい死んでるかもしれない。

 なにせ、私ですらこんなんだから。

 ようやく半分か、とため息の最上級が口から漏れる。肺の底からやってくる。
 半分、そう半分。大抵こういう時は、何かある。

 大きく仕切られた襖を開けると、そこにはメカニックでエレクトリックでマーベラスなものが。

 黒光りする鋼鉄のボディ。蜘蛛のような形の体躯に、時々全身に青白い光が走る。

 これはあれだ。

「機動要塞デスト○イヤーだ!」

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 機動要塞さんが鎮座しております。戦闘形式は2階に似ていますが、まぁ5階ですし、どんな事件が起こってもおかしくないです。
 そう!どんな!出来事が!あったとしても!それは5階、ターニングポイントなので許されます!
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