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16章 魔法少女と四神集結
503話 魔法少女と未来
しおりを挟む「私…………?」
ショートした。呼吸が止まりそうになった。脳に対して明らかにオーバーワークだ。
あれは、2階で見たようなまやかしの私じゃない。突然消えたりしない。そこにある。でもそこにないみたいな。
思わず鑑定眼を開いてしまった。
ステータス
『称号』
世界を統べる魔導神
名前 美水 空
年齢 20歳
職業 魔導神
レベル 測定不能
攻撃測定不能 防御測定不能 素早さ測定不能
魔法力測定不能 魔力測定不能
原素測定不能 呪力測定不能 神力測定不能
装備 魔導神の魔導着 魔導神の杖
御技 重圧創造 時空間創造 創滅 全能創造
不死 輪廻還魂 久遠之終焉
全身が震える。名前は私だ。
でも、年齢も能力値も何もかもが違う。何もかもが極限の域に達しており、もう誰にも敵う奴は存在しない。と、本能的に察知した。
何より称号に目がいった。神堕とし。魔導神?
意味不明だ。私が神だって?そんな馬鹿な話はない。
「馬鹿じゃない。」
美しい魔導着を棚びかせ、女神然とした姿の女性が。艶やかな瑠璃色の髪。凛とした顔立ち。低めの身長だが、低すぎず胸は控えめ。分かる。私だ。
自分で女神とか言うって、なんかキモいな。
私達も完全になりを潜め、もう心には疑問しか残らない。
「初めまして。いや、おはようからおやすみで毎日一緒か。美水空、20歳。」
しかし声音は女神のかけらもない。私から愛嬌をとった感じだ。
「そりゃあ、3年も経ちゃ何もかも変わるさ。男子が『3日会わざれば刮目してみよ』なら、女子だって3年会わざれば刮目してみてもいいでしょ。もしかしたら、神になってるかもよ。」
空中をぷかぷかしながらそう言った。
「美水空……17歳」
「知っている。何もかも。私は3年後の未来から来た、いやこれは違う。3年後の未来が現在の、私。」
「どういうこと?」
話が理解できない。というより、なんであんな格上の人間(かどうかも怪しい)のステータスを確認できたの?
「それは見た方が手っ取り早いからに限る。私だ。包み隠すことなんてない。」
「それって……」
「まったく。こんなに私がだらしないから、こうなっているのに。」
哀れなものを見る目で、少しだけ怒りの灯った目で、私を見る。
「つまり、私は未来から来た私と。」
「だから違う。」
「ならなんなの?」
「今ここは、私から見て3年前の現在であり、そっちの私から見た3年後の現在である。ということ。」
「いっちょんわからん。」
「ふざけんな。」
私は床に足をつけた。さっきまでデストロイヤーがデストロイしていたはずが、木端も微塵も残ってない。
「馬鹿な私に説明をする。まず、今の私について。質問は全てを話し終えてから。」
「あ、はい。」
少し大人びた顔付きなのに、なにか違和感があるのは同じ私だからだろうか。
「私は3年後の未来。そっちの私がが歩む可能性のある1つの未来。歩む確率の最も高い未来から来た。創滅神を降し、私は魔導の神となった。」
「神……」
唐突すぎて、もう何言ってるか分からない。というか、神って何?
人神みたいな感じ?
「だから質問は最後と言ったはず。」
「心の声くらい無視してよ。」
「答えると、全く違う。奴らは創滅神を殺すために徒党を組んだ種族の代表であり、神なんかじゃない。神格化した、ただの人と魔族と龍と精霊。」
また、何言ってるか分からない。しかし何か考えるだけで怒られるため、思考はよそう。
「その私は今、ここにいる。でも、未来に行くことも過去に行くことも、どんな神であろうと不可能。まだ過去の方が簡単だけど、それでも無理。」
淡々と、無感動な顔で事実を述べる。
「アーレのような情報操作は、ただ情報を元の位置に戻しているだけ。手動だ。ズレはある。よく見れば分かる。パン屑の落ちる位置は?服の皺は?違うはずだ。」
口の挟む余地がない。
「だから、私の元いた3年後を未来と設定し、今私がここにいるこの時空間を現在とした。私は現在にいる。そっちの私も現在にいる。何もおかしくはない。」
私は、無理をしたような顔でこっちを見て言う。「質問を」と。
「どうして未来と過去に、いけないの?」
「正確には、行けなくはない。行ったとしても、どちらかの私が死ぬ。」
「え?」
頓狂な声。もう、さっきからこんなんばっか。
「同じ空間に別次元の同一人物が存在することはできない。なぜか。それはタイムスリップをすれば、当然それをした地点の私が消えたことになる。未来へ行っても、未来はない。なぜなら、現在の私が未来へ進んでいないから。未来の私は、現在の地点でもう死んでいる。未来に行った時点で、両方の私が消滅する。」
「お、おぅ……?」
「過去に行こうとすれば、そこには過去の私と未来の私が同時に存在することになる。その時点で、過去から抜け出せなくなる。未来に自分はいないのだから、未来も何もない。ここは強制的に現在となり、未来が無くなった未来の私は現在に帰結する。つまり、同一化する。」
私は生前国語をちゃんと勉強しなかったことを後悔した。だって、何言ってるか全くわかんないんだもん。
本当にこれ私?こんなの私理解するのも無理だよ?説明とかもってのほか。
「つまり、『同じ空間に二人存在できない』のではなく、未来に行けば過去が消え、過去に行けば未来が消えるために存在が不可能というわけ。」
わかった?とすげなく聞いてくる。分かるわけがないというのに。
「まぁ、そんくらい私も分かってる。この頃の私がものすごい馬鹿なことくらい。」
「え?私に罵倒された?私自身に?」
「馬鹿に馬鹿というのは当然。自明の理。」
本当に私なのか疑わしくなってきた。
「ね、ねぇ……じゃあさ、なんで今私はここにいるの?今の話なら、20歳の私は消えるはずでしょ?」
「…………説明、ちゃんと聞いてよ。」
ジトリと嫌な視線を喰らう。内容が難しいせいだ。私に罪はない。
「ここは私から見てもそっちの私から見ても現在。両方現在にいるんだから、何もおかしくない。私にとってここは現在で、そっちにとってもここは現在。」
「ん?んんん?」
「この場所を現在と設定し、現在へ戻るという形をとった。戻るには未来を現在に戻せばいい。いくらでもある無限の未来の1つを選んで。」
手を伸ばして、空を握った。虚しい顔をして、少しだけ深呼吸をして、私を見た。
「何も言わなくていい、何も重ねなくてもいい。だから、独り言を聞いて。」
「うん。」
「やっぱり、今の私は優しい。」
「今の?」
「私が今のこの状態になった理由と経緯を話す。そして、1番肝心なここに来た理由も一緒に。」
私は頷いた。向こうの私は表情を変えず、瞬きを1つ。
「本当なら、話を聞いただけで察してほしい。そのための下地をさっきの説明でした。でも、今の私にそんな器用なことはできないのは承知している。」
「ひっどいなぁ……」
「事実。」
正論を突きつけられると痛い。
「長話になる。座って。」
指をパチンと鳴らした。痛んだ心を押さえていると、目の前に突然椅子と机とティーセットが現れた。
「創造の力をこんな風に使うことが来るなんてね。」
自重気味に笑った。初めて笑った。
「……なんで?…………いや、そうか。安心したのか。私は。今の私を見て。私の馬鹿さを見て。はは。ははは……」
「えなに?怖っ……ぁぅっ?!」
抱擁された。私の匂いが私の鼻を突き抜け、私の髪の色が視界に広がる。
「座って。話を始めようか。」
すぐに離すと、私は座って紅茶を注ぎ始めた。それを困惑の視線でぼーっと見ていると、もう1度催促される。
これから始まる昔話。いやこれは、未来を語る未来話。
———————————————————————
本来なら今話でこの話を終えたかったのですが、そうすると6000字とか超えそうなのでやめました。
次回かその次くらいで元に戻ります。
それにしても、また壮大なお話ですね。
今回出てきた未来と過去と現在の定義やらお話は、持論をもとに制作しております。これはガチの持論です。
読んでみたら分かると思いますが(あんな長ったらしい説明読む奴がいるかどうかですが)、私はタイムスリップ不可能派です。例外はありますが。
時間遡行には現在が重要になってくると思っていますから。現在の在り方が崩れるため、『未来過去へ行く』ということ無理だと考えています。
〈これは天の声です。次回は推定5000文字を超える(かくいう現在もまだ執筆途中)大作(かといってクオリティは保証できない)なため、お休みをいただきたく思い神託を下しました。クソ雑魚作者でごめんなさい〉
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