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16章 魔法少女と四神集結
502話 魔法少女とデストロイヤー
しおりを挟むメタリックな外装には、一部分だけデカめの塊が頭部の役割としてついている。その中央に、目玉の二重丸が。そこに、光が宿る。
『生態感知、休眠解除』
「なんでこの世界にないものがここにはあるんだろうね。」
「時空間魔法を通常で使えるのは今のところヴァルしかいない。余は魂を招く程度で限界だ。」
「それはそれで普通に———」
視界が幕で覆われ、さらに何重かに防御膜が構築された。声も視界も何もかも外界とは隔離された。
流石に私が何人もいるとかは……ないよね。
周りを見渡して、その事実を確認する。ここには本当に、私とデストロイヤーしか無いみたいだ。
『駆逐開始』
ピカリと電気のような電光が走った。その瞬間、目玉が強く光り、紫色のレーザーが放出された。しかも、全範囲。
「ぬあっ!」
変な声が出て転げる。威力が凄すぎて、語彙力がさよならした。グッバイ。
「熱がここまで来たんだけど……こんなん、勝てっこなくない?」
少しだけ諦念が滲む。
思い返してみれば、実際はだんだん難易度は上がってる。1階はゴリ押し可能。2階はちゃんとやれば勝てない相手じゃない。けど、負ける可能性は大いにあった。3階は、私がたまたま火雷耐性があったから即死せずに再生創々ができた。本来ここで死ねた。
更には4階。あそこ、霊神からのスキルがなかったら100パー突破は不可だった。
たまたま、本当に偶然にもこの城の適性を持っていた。それだけ。
なら今回、ど直球の力比べが始まれば?
「私は、負ける……」
可能性は大いにある。ありすぎるくらい。ステッキを握る手に力が籠る。
「トール。」
電気を通しやすいはずの金属。が、弾かれる。
「先輩の技能も使えないし、魔法も無理とか……」
とりあえず、接近する。頭部には滑車か何かついてるようで、360度どこでも見渡せる便利機能!足には関節がちゃんとあり、1本につき3つ。可動域は広い。
『魔力電動、オートマチックソード』
機械音が淡々と流れる。と、どこからともなく剣が10本現れる。構築されると言った方が的確か。
『魔力制御開始、発現』
火がつくように、ぽっと10本の剣に属性が付与されていく。燃え、冷気が溢れ、光で満ち、風が渦巻き、闇を漏らし、水を纏い……様々な剣が生まれ落ちる。
「これ、1人で……?」
プローターを投げる。牽制だ。転移石を遠くへ投げ飛ばし、距離をとってラノスを構える。パァァンッ!パァァンッ!パァァンッ!3発、撃った。
っ、効いてない……流石に向こうのが頑丈だよね。剣にも有効な手段とかないし……これ、詰みじゃ……
いや、いかんいかん。こんな早くに負けを認めてたら勝てる相手にも勝てない。もっと、策と思考を凝らして……
上を見る。天井は低めだ。ちょっと厳しい。
トロイが最大火力になるだろうと予想できる。転けさせて頭部(?)に一撃。これが最善の策。
「私は今日から、忍者になるっ!」
指に絡められた脈を引っ張り、魔力を通す。
空力になれすぎて、さらに脈まで探知できるようになった結果編み出された私の技。不可視の糸。しかも、どんな合金よりも強度がある。ちなみに見えるようになって、空力を使うと切れるようになる。
脈を切り取っただけだとそのまま。けど、魔力を通すと伸縮自在、脈に絡めたりして罠を張れる。
私はデストロイヤーの足元の脈に私の脈糸を張り巡らせ、ピンと張る。
デストロイヤーはその目を光らせて、宙に投影する。投影されたそれは、拡散レーザーとなって降り注ぐ。
脈が、千切れる……千切れる?
「なんで脈が千切れてんのぉ!?」
ほわぁい!と叫びたくなりながら、脈で縄を作る。
「何がどうなってんのこの機械!?」
まるで富士山でも見ているような重圧。聳え立つその巨体に、一抹の恐怖が芽生える。
いや、違う。この感情は嘘だ。私は散々私に嘘をついてきた。私の存在をいつも私自身が否定してる。私達がそうしているように。
だから、出来る。私を欺くことくらい。
私は取り出す。どんな理不尽も粉砕する私の最強。細く長く、それでいて重厚感のある銃。トロイ。
もう弾数やら魔力なんか気にしてたら勝てない。休憩すればいい。時間をかけて登ればいい。だからここは一旦、本気出そう。
「覚醒。」
久しぶりの発動。機能するかは不安だし、この後倒れるんだろうことも理解して、呟いた。
流石に、これで勝てなかったらお手上げだよ。
装備は発光し、指開き手袋には指の部分がつき、全身が薄く膜で覆われるように布が現れる。足や腕の関節、胸板に覆いができ、体は軽い。
ステッキを数度振り、感覚を確かめる。ステータスは4倍。つまり、今の私の平均ステータスは4万。
「身体激化。」
全身の筋肉が魔力によって強化される。痛みは伴うが、もう慣れた。百合乃風に英語で言うならアカスタムド。
これなら、ぶっちゃけ神とも一戦できるくらいはある気がする。
神速でデストロイヤーに突っ込む。それを目で追ってくるあたり、ヤバさをひしひしと痛感させられる。
剣がこちらに向く。高速で飛来する剣の1本1本が、今はスローに見える。刀のように変形したステッキで、それらを打ち返す。
華麗に舞うように、上に弾き、しゃがみ、後ろに振って勢いのまま正面へ。少し飛び退き、そうしてそのことごとくを打ち払う。
その間にも脈に魔力を注ぎ込み、デストロイヤーの足に絡めて引きつける。少し動く。いける。
剣から離れるように大回りに走り出し、壁を蹴って中へ躍り出る。そのまま、風魔法で補助しつつ思いっきり引っ張り上げた。
『巨大魔力反応検知、危険と判断危険と判断、速やかにプロテクトを開始』
機械音声が響く。直感的に、早くしなければと思った。
2階みたいに岩を回転させる時間はない。トロイの威力に賭ける!
ありったけの魔力を注ぎ込んで、中の核石がぶっ壊れるほど極限まで注いだ。
「これが私の、最後のターンだ!」
トリガーを引くと、私の動体視力ですら御尊顔を拝することが困難なほどの速度で弾丸が飛ぶ。
『プロテクト』
私は強く体を強打した。デストロイヤーの頭部は少しだけ欠け、中身が見えていた。
『予想以上の性能を確認、出力最大モードへ移行』
浮遊する剣は回収される。全てがデストロイヤー本体に送られるように、力が高まる。
これ、ちょっとやばい……
間に合わなかった。悔しさが溢れる。
魔力は限界まで使って、体は痛い。そりゃ、激化してるんだから。弾丸の装填時間は?無理だ、そんな暇はない。
その巨体のくせして、奴は無音でこちらにやってくる。狭小で矮小な人間様にとって、あのロボは高みすぎた。
さすが、神が作っただけあるよ。
あはは、と自嘲のように笑いが溢れた。
でも、と。
「私はまだ負けてない。」
認めていない。
「まだ戦える。」
方法はある。
「最後まで戦う。」
諦めない。
こんな時に出る魔法なんだから、もっとでかくて強そうなやつがいいんだけど……
ステッキからバチバチと雷が弾ける。
やっぱ、これだよね。
限界、本当に限界まで魔力を捻り出す。いつのまにか忍耐なんていうスキルを獲得していたから、精神を削ってでも魔力を込める。
「トール。」
ステッキの先端から飛び出した、凝縮された雷撃。それは直撃し、少しだけ動きを鈍らせることに成功した。
すこしは足掻けたかな。まだ、もうちょっとできないかな。
これから訪れる最後を否定する。諦めようとする私を否定する。
デストロイヤーは無慈悲にもレーザーをこちらに向けた。
最後まで私は、戦う。
「ディメンションプレス。」
バギッ゛。鈍く、決して何かから発されていい音ではない。気づいたら、目が開いていた。
「へえ、ここに着くんだ。」
不遜と傲慢を足して2で割ったような声音。顔を上げると、そこには。私がいた。
———————————————————————
2階のレイドバトルで空さんは増えました。しかしそれとは少し毛色が違うようですね。
ディメンションプレス、なんかすごそう(小並感)な技ですね。
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