魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

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16章 魔法少女と四神集結

500話 魔法少女はレイドバトル

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 突然訳のわからない場所に飛ばされた。
 ところどころ水色っぽく発光している、綺麗な白色の箱の中にいるような、そんな感じ。

 ここには喧しい人神はおらず、謎の琵琶の女と私がいた。それも4人。

「貴方方で協力し、この私を倒して見せてください。さすれば、道は開かれるでしょう。」
琵琶が鳴る。綺麗な音色は、とても不気味な雰囲気を纏っている。

 多分、あの鍵はこの戦いに挑める人数に関することだったんだと思う。3つだったら3人だし、2つなら2人。

 4箇所開けといてよかった……と、自分の行動を褒める。

 私ナイスプレイング!

 そこで、はたと違和感を覚えた。
 私がツッコんでこない?

『あのねー』
ビクッと肩が跳ねた。この感じ、Dだ。

 ねぇ、他の3人は?

『うーんとね、あそこに』
私の意識が差したのは、面倒そうに佇む私と、落ち着かなそうに鼻の上あたりをくいくいしてる私と右目に手を当てて笑っている私。

 まさか、ね。そんなことあるわけ……

「うん、現実逃避はやめよう……」
深いため息をついた。目の前に敵がいると言うのに、脳の処理は追いつかない。

 あれは多分、私達だ。ABC。Dだけ何故か体がないけど。

『ぶー』
なんか膨れっ面の私の顔が。

「私達、こんな風に協力するのは初めてだけど、いつも通りいける?」
「もちろん。」
「私を誰だと思っている?自由な体を手にした今ッ……」
「はーい、そのくらいね。」
私が集い、少し騒がしくなる。

「では、開始とします。」
琵琶が鳴った。空間から腕が這い出て、女を守るように4つ現れた。剣、槍、弓、盾と役が揃っている。

「魔力喰らい。」
Aがまず目眩しに暗黒を放った。私は便乗し、闇に隠れて飛び出した。

「C!一緒に行ける?」
「任せろ!」
「「流星光槍!」」
高火力の光の槍が挟み打つように放たれた。女は、手首を動かした。弦が1本弾かれると、呼応するように剣が動く。もう1本弾けば、盾が動く。

 これは効かないか……
 これを1人で相手にするとか言われたら発狂してたね確実に。

 空間歩行で宙を蹴り、一旦その場から離れる。

「吹き飛びなさい。」
激しく弦を掻き鳴らし、荒っぽい曲調を奏で始めた。魔法が飛ぶ。

「万属剣!フルスロットル!」
「補正!」
七色に光る人より大きな万属剣を、重力マシマシ投擲でぶっ放す。

「キャンセルしなさい。」
曲を奏でながら口にする。

「させないよ!」
Bがいつの間にかトールを射出し、効果を打ち消す。

 ここで必要なのは攻撃魔法……特殊な大規模魔法とかじゃなくて、一点の。なら、初級の魔法を極めれば。

 私はステッキにいっぱいの魔力を込めて、地龍魔法の低位の魔法、アニメ風に言うならばストーンバレットを発動し、鋭い岩の塊が現れる。1つ。けれど、それで十分。私の膨大な魔力を思いっきり注ぎ込み、岩の塊は高速回転を始め、摩擦熱で岩が赤く変色する。

 もっと早く。もっと鋭く。

 もはや岩盤くらいなら壊せそうなくらいの高速回転をする。そこに、さらに炎の魔法を。

「あの腕をなんとかして!」
「了解。」
万属剣の軌道を、重力魔法で捻じ変えた。それは無防備に曝け出された腕に突き刺さり、同時にピンッと1本だけ弦が切れた。

「あの腕だ!あの腕を攻撃しろ!」
私Aは他の私達に指令を出す。士気を高めた私達が、こぞって腕を狙う。しかし琵琶が奏でられ、攻撃を防がれてゆく。

 多分、腕だけじゃないと思うんだけど……本体にも1発ぶちかまさないといけない気がする。

 私は今もまだ超速回転を続ける岩を見て、ラストアタックを決めた。
 腕の次に本体。弱体化の基本だ。

「私達!腕一本は私がやる!残りはなんとかして!」
琵琶が弾かれる。辺りに灯火が生まれると、四方に拡散する。雷の尾を引いて、私のファイボルトのようだ。

 何属性も魔法も使えるの?そんなの聞いてないって!

 他にも風やら、合わせて火の竜巻やらが飛んでくる。それに合わせて私達が魔力喰らいを発動し、プローターを投げた。

「流星光槍!」
その煙やらなんやらに紛れて腕の目前まで迫り、腕を突き刺す。

「ファイアサークル!」
自分すら巻き込み、腕をごと燃やした。ピンッという音に、私Bは満足げな顔をした。

「あと2つ……」
いくらか琵琶がなり、2つの腕はのそりと動く。盾と槍の腕だ。盾が槍を守るように配置され、私を狙う。

 やっぱり、一番ヤバいのを狙うよね。

「隙を作って!そしたら全部やるから!」
「「「了解!」」」
私達は一斉に飛び出す。それぞれ魔法を携さえて。階段のように土壁が現れ、巨大な土の槍を投げつけた。盾はそれを防ぎ、盾が上を向いた瞬間に入り込み、トールのこもったステッキを叩きつける。

 凄い……私とは思えないコンビネーション……

 素直に驚く。

 ステッキを叩きつけた私に、矛先が向く。

「身体激化。神速。」
気がついたら槍は床を突き刺し、槍を踏みつけるようにして着地した。

「やれ!」
「あとは任せるよっ!エアリスリップ。」
腕を中心に竜巻が発生した。何度も琵琶が鳴るが関係ない。それは私Cが防いでる。

「私が引き立て役になるのは今回だけだと心得ておけ。いいな?」
「分かってるよ。」
エアリスリップの発動時間はおよそ20秒かそこら。威力の代わりに持続って感じか。そもそもこれ、もう拘束用の魔法にしかならないからいいけど。

 そろそろかな。

 私は魔導法で繋げたステッキを空に投げる。魔力は途切れない。

 落ちてくるステッキがスローモーションに見える。そこから落ちてきたのは、ゴツい銃身。私の第2か第3かそんくらいの相棒(?)、トロイだ。

 ステッキが落下する直前、一直線上に2つの腕があるだろう場所に目掛けて照準を合わせ、トリガーを引く。

 ピンッ、ピンッ。

「弦が切れてしまいましたね。」
何もなくなった琵琶を、カンカンと叩く。何か起こりそうな気配がして、私達は構える。が。

「こんな時のためのストーンバレット(仮)だよ。」
もはや存在感のないその岩の塊に、私達は視線を向けた。私はトロイを床に置き、宙に放られていたステッキをバシッと掴む。

「ストーンバレットっ!」
もう回転しているかどうかも分からない。そんな速度のそれを、琵琶の女に向けた。

「そうですか。」
琵琶の女はこっちを見た。

「では———っ!?」
私は、もう女の眼前にいた。

「ブラフだよ。」
岩が放たれた。風を切り裂いて、空気抵抗などまるで感じさせない。琵琶女の胴体には、くっきりと穴が空いていた。

「これは…………」
パラパラと女の体が崩れていった。その様子を4人、眺めていた。にわかに風が吹いた。

 景色が戻ってきてる……?

 淡く光る水色が、パネルをひっくり返すように反転して襖が目に入る。白は青に変わり、青は景色を取り戻す。

 そうしていつしか、ここに来た時と変わらない状態になった。

 私は1人、トロイが1つ、琵琶の女はどこにもいない。代わりに、天井に穴が空き梯子がかかっていた。

「お疲れ様。」
「めっちゃ疲れた。」
人神の声に返事をし、一旦その場に腰を落ち着けた。

「めっちゃ魔力使った……」
畳に寝転ぶ。

 お義母さんとお義父さんの家は畳部屋だったよね、ほとんど。いくつか洋室で私がそこを使わせてもらってたけど。
 でも、畳って素でも寝心地いいよね。フローリングって痛いし。好きだけど。

「本当にお疲れ。この城を、無傷でここまで来れる人間はいない。まず、城に入れないからね。」
「人神にしては珍しく褒めるじゃん。」
「飴と鞭さ。」
「そんな酸っぱい飴くれたって何も変わらないよ。」
よっと、と体を持ち上げる。3階へ行こう。

———————————————————————

 とうとう500話。突然の思いつきがやってきました。
 今後、謎の展開があると思いますがそれが突然の思いつきです。学園長もびっくりな唐突さ、私でなきゃ見逃しちゃうね。

 500話記念何やりましょう。特に思いつきませんね。
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