526 / 681
16章 魔法少女と四神集結
500話 魔法少女はレイドバトル
しおりを挟む突然訳のわからない場所に飛ばされた。
ところどころ水色っぽく発光している、綺麗な白色の箱の中にいるような、そんな感じ。
ここには喧しい人神はおらず、謎の琵琶の女と私がいた。それも4人。
「貴方方で協力し、この私を倒して見せてください。さすれば、道は開かれるでしょう。」
琵琶が鳴る。綺麗な音色は、とても不気味な雰囲気を纏っている。
多分、あの鍵はこの戦いに挑める人数に関することだったんだと思う。3つだったら3人だし、2つなら2人。
4箇所開けといてよかった……と、自分の行動を褒める。
私ナイスプレイング!
そこで、はたと違和感を覚えた。
私がツッコんでこない?
『あのねー』
ビクッと肩が跳ねた。この感じ、Dだ。
ねぇ、他の3人は?
『うーんとね、あそこに』
私の意識が差したのは、面倒そうに佇む私と、落ち着かなそうに鼻の上あたりをくいくいしてる私と右目に手を当てて笑っている私。
まさか、ね。そんなことあるわけ……
「うん、現実逃避はやめよう……」
深いため息をついた。目の前に敵がいると言うのに、脳の処理は追いつかない。
あれは多分、私達だ。ABC。Dだけ何故か体がないけど。
『ぶー』
なんか膨れっ面の私の顔が。
「私達、こんな風に協力するのは初めてだけど、いつも通りいける?」
「もちろん。」
「私を誰だと思っている?自由な体を手にした今ッ……」
「はーい、そのくらいね。」
私が集い、少し騒がしくなる。
「では、開始とします。」
琵琶が鳴った。空間から腕が這い出て、女を守るように4つ現れた。剣、槍、弓、盾と役が揃っている。
「魔力喰らい。」
Aがまず目眩しに暗黒を放った。私は便乗し、闇に隠れて飛び出した。
「C!一緒に行ける?」
「任せろ!」
「「流星光槍!」」
高火力の光の槍が挟み打つように放たれた。女は、手首を動かした。弦が1本弾かれると、呼応するように剣が動く。もう1本弾けば、盾が動く。
これは効かないか……
これを1人で相手にするとか言われたら発狂してたね確実に。
空間歩行で宙を蹴り、一旦その場から離れる。
「吹き飛びなさい。」
激しく弦を掻き鳴らし、荒っぽい曲調を奏で始めた。魔法が飛ぶ。
「万属剣!フルスロットル!」
「補正!」
七色に光る人より大きな万属剣を、重力マシマシ投擲でぶっ放す。
「キャンセルしなさい。」
曲を奏でながら口にする。
「させないよ!」
Bがいつの間にかトールを射出し、効果を打ち消す。
ここで必要なのは攻撃魔法……特殊な大規模魔法とかじゃなくて、一点の。なら、初級の魔法を極めれば。
私はステッキにいっぱいの魔力を込めて、地龍魔法の低位の魔法、アニメ風に言うならばストーンバレットを発動し、鋭い岩の塊が現れる。1つ。けれど、それで十分。私の膨大な魔力を思いっきり注ぎ込み、岩の塊は高速回転を始め、摩擦熱で岩が赤く変色する。
もっと早く。もっと鋭く。
もはや岩盤くらいなら壊せそうなくらいの高速回転をする。そこに、さらに炎の魔法を。
「あの腕をなんとかして!」
「了解。」
万属剣の軌道を、重力魔法で捻じ変えた。それは無防備に曝け出された腕に突き刺さり、同時にピンッと1本だけ弦が切れた。
「あの腕だ!あの腕を攻撃しろ!」
私Aは他の私達に指令を出す。士気を高めた私達が、こぞって腕を狙う。しかし琵琶が奏でられ、攻撃を防がれてゆく。
多分、腕だけじゃないと思うんだけど……本体にも1発ぶちかまさないといけない気がする。
私は今もまだ超速回転を続ける岩を見て、ラストアタックを決めた。
腕の次に本体。弱体化の基本だ。
「私達!腕一本は私がやる!残りはなんとかして!」
琵琶が弾かれる。辺りに灯火が生まれると、四方に拡散する。雷の尾を引いて、私のファイボルトのようだ。
何属性も魔法も使えるの?そんなの聞いてないって!
他にも風やら、合わせて火の竜巻やらが飛んでくる。それに合わせて私達が魔力喰らいを発動し、プローターを投げた。
「流星光槍!」
その煙やらなんやらに紛れて腕の目前まで迫り、腕を突き刺す。
「ファイアサークル!」
自分すら巻き込み、腕をごと燃やした。ピンッという音に、私Bは満足げな顔をした。
「あと2つ……」
いくらか琵琶がなり、2つの腕はのそりと動く。盾と槍の腕だ。盾が槍を守るように配置され、私を狙う。
やっぱり、一番ヤバいのを狙うよね。
「隙を作って!そしたら全部やるから!」
「「「了解!」」」
私達は一斉に飛び出す。それぞれ魔法を携さえて。階段のように土壁が現れ、巨大な土の槍を投げつけた。盾はそれを防ぎ、盾が上を向いた瞬間に入り込み、トールのこもったステッキを叩きつける。
凄い……私とは思えないコンビネーション……
素直に驚く。
ステッキを叩きつけた私に、矛先が向く。
「身体激化。神速。」
気がついたら槍は床を突き刺し、槍を踏みつけるようにして着地した。
「やれ!」
「あとは任せるよっ!エアリスリップ。」
腕を中心に竜巻が発生した。何度も琵琶が鳴るが関係ない。それは私Cが防いでる。
「私が引き立て役になるのは今回だけだと心得ておけ。いいな?」
「分かってるよ。」
エアリスリップの発動時間はおよそ20秒かそこら。威力の代わりに持続って感じか。そもそもこれ、もう拘束用の魔法にしかならないからいいけど。
そろそろかな。
私は魔導法で繋げたステッキを空に投げる。魔力は途切れない。
落ちてくるステッキがスローモーションに見える。そこから落ちてきたのは、ゴツい銃身。私の第2か第3かそんくらいの相棒(?)、トロイだ。
ステッキが落下する直前、一直線上に2つの腕があるだろう場所に目掛けて照準を合わせ、トリガーを引く。
ピンッ、ピンッ。
「弦が切れてしまいましたね。」
何もなくなった琵琶を、カンカンと叩く。何か起こりそうな気配がして、私達は構える。が。
「こんな時のためのストーンバレット(仮)だよ。」
もはや存在感のないその岩の塊に、私達は視線を向けた。私はトロイを床に置き、宙に放られていたステッキをバシッと掴む。
「ストーンバレットっ!」
もう回転しているかどうかも分からない。そんな速度のそれを、琵琶の女に向けた。
「そうですか。」
琵琶の女はこっちを見た。
「では———っ!?」
私は、もう女の眼前にいた。
「ブラフだよ。」
岩が放たれた。風を切り裂いて、空気抵抗などまるで感じさせない。琵琶女の胴体には、くっきりと穴が空いていた。
「これは…………」
パラパラと女の体が崩れていった。その様子を4人、眺めていた。にわかに風が吹いた。
景色が戻ってきてる……?
淡く光る水色が、パネルをひっくり返すように反転して襖が目に入る。白は青に変わり、青は景色を取り戻す。
そうしていつしか、ここに来た時と変わらない状態になった。
私は1人、トロイが1つ、琵琶の女はどこにもいない。代わりに、天井に穴が空き梯子がかかっていた。
「お疲れ様。」
「めっちゃ疲れた。」
人神の声に返事をし、一旦その場に腰を落ち着けた。
「めっちゃ魔力使った……」
畳に寝転ぶ。
お義母さんとお義父さんの家は畳部屋だったよね、ほとんど。いくつか洋室で私がそこを使わせてもらってたけど。
でも、畳って素でも寝心地いいよね。フローリングって痛いし。好きだけど。
「本当にお疲れ。この城を、無傷でここまで来れる人間はいない。まず、城に入れないからね。」
「人神にしては珍しく褒めるじゃん。」
「飴と鞭さ。」
「そんな酸っぱい飴くれたって何も変わらないよ。」
よっと、と体を持ち上げる。3階へ行こう。
———————————————————————
とうとう500話。突然の思いつきがやってきました。
今後、謎の展開があると思いますがそれが突然の思いつきです。学園長もびっくりな唐突さ、私でなきゃ見逃しちゃうね。
500話記念何やりましょう。特に思いつきませんね。
0
お気に入りに追加
120
あなたにおすすめの小説
転生をしたら異世界だったので、のんびりスローライフで過ごしたい。
みみっく
ファンタジー
どうやら事故で死んでしまって、転生をしたらしい……仕事を頑張り、人間関係も上手くやっていたのにあっけなく死んでしまうなら……だったら、のんびりスローライフで過ごしたい!
だけど現状は、幼馴染に巻き込まれて冒険者になる流れになってしまっている……

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々
於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。
今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが……
(タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?
歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。
それから数十年が経ち、気づけば38歳。
のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。
しかしーー
「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」
突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。
これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。
※書籍化のため更新をストップします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる