魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

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15章 魔法少女と帝国活動記

489話 頑張ってのその一言

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 ネインアーレの仕事は簡単だ。普段、大掛かりな仕事が舞い込んでくることはまずない。大抵は下の人間がどうにかしてくれる。そのため、自由時間は腐るほどにある。

 アーレの仕事は一朝一夕には叶わない。全帝国民をどうにかしなければ、魔法少女の自由はない。街を簡単に歩き回ることも危険だ。関係者なしで歩こうものなら、即座に捕縛される可能性もある。

「……98%。あと、98。」
心は折れない。元は機械のような無心だった。情報をまとめてしまえばそれでおしまい。

 情報の消去付け足し自由自在のチーターであるが、それでも不可能は存在するし、それを消去するにも苦労の連続だ。

 相手は帝国。慎重すぎる方がいいほどだ。
 今のアーレの仕事が終われば、魔法少女は神達をこの場に連れてくる。そして戦争だ。陰が光を打ち破る瞬間を皇帝の目に焼き付けてやろう。

 そう決意するが、やはり遠い。現実逃避のように目をギュッと瞑った。

 目を開ければ夜が明けていた。魔法少女は今頃メイドにでもなっている頃合いだ。

 のそのそと布団を退けていると、部屋の扉が開いた。

「アーレ起きてる?」
「ソラさん……」
魔法少女がメイド姿で顔を覗かせた。少し驚きながらも、アーレはいつも通りに振る舞った。

「アーレも、頑張って。それじゃ言ってくる。」
遅刻だ遅刻だと呟きながら去っていった。なら、ここによる必要はないじゃないか。

 心に温かいものが溜まっていく。堰き止めるものの存在が今までなかった分、どっと押し寄せてくる。これで、2回目だ。
 なにがそんなに嬉しいかは具体的には言えない。言葉自体も普通だ。

 でも、その普通にアーレは感動した。
 普通でもいいんだ。特別がなくてもいいんだ。心が初めて理解した。情報じゃあ分からないこともあるんだと、また理解した。

 アーレは、身を投げ打つ覚悟を決めた。


 このままやっていたのでは確実に間に合いはしない。昨日2%もの人間を洗脳できた理由は、単に関係者各所に当たっただけ。エンタメ戦争くらいにしか用途のない軍人やらを洗脳し、数を稼いだに過ぎない。

 一網打尽にするには、それこそ影響力のある人間の力が必要だ。公演でもしてるうちに、声から繋がり支配だって、可能だ。
 意を決した。今から、皇帝を落とす。

—————————

 情報操作。それには少し、弱点がある。

 心の強い人間には効きずらい。全ての人間に同じ効力があるわけではない。
 そして、情報量が多くなるほど難度は上がる。その辺の雑兵なら存在くらい容易く消せるが、皇帝など逆に殺されてしまう。

 そして人神の作戦の乗じて、ネインアーレの記憶も上書きすることにした。そうすれば、立ち回りはうまくいく。
 神がいれば戦力も十二分。成功するか否かはアーレ次第となった。

「さて、余のすることはなにもないがどうすればいいのか。」
惰眠を貪ることにも飽き始めてきた人神が、実体を消して帝国府頂上に座していた。下を眺めると、忙しなく帝国府を出ていく魔法少女の姿を確認し、様になっているなと感想を抱く。

「魔法少女の記憶が消えてしまえば、それに類する記憶も消える。革命の記憶が消えれば、ネインアーレからアーレへの転身の予想もつかなくなる。情報操作の弱点を上手く躱してそこだけでも上手く消すことができれば……」
爪を噛みながらぶつぶつと言葉を漏らす。

 ここで一度創滅神には痛い目にあってもらわなければならない。その足がかりとして帝国を壊す。その次は神国だ。神に繋がれるものは積極的に壊していけ。それが反創滅神派の常識だった。

 この作戦に100%必要なのは、ぶっちゃけ魔法少女1人だ。彼女さえ生きていればこの世界は周り、変革を生む。革命が始まる。だから、世界を変えるにはあの少女以外に適任はいない。

「少しでも魔法少女の安全を優先したいな……こうなっちゃあ、怠惰ではいられない。」
ブロンド髪を風で靡かせ、魔法少女を向く。

「最優先保護対象人物として、人神エディレン・メヴィスは魔法少女の保護を開始する。」
その瞳を爛々と輝かせ、見下げた。

 しばらくぶりの本気の戦争が始まろうとしていた。

—————————

「朕に用事があるとは、珍しいこともあるのだな。して、何用だ?」
王座にふんぞりかえる皇帝。女帝と言えど、この雰囲気に対抗できる人間などそういてたまるか、と思える。

「…………特にない。」
「くははっ!特にないか。貴様は暇な奴だな。」
「なら、する?」
「なにをだ?」
「模擬戦。」
「ほう。」
ごおっと燃え上がるような魔力が広がった。人間にはほとんどないはずの魔力が。

「…………ダメ。」
起伏は薄いが語尾は上がった。

「構わんさ。朕に挑む覚悟のあるのなら、機械だって構わん。なあに、殺しはせん。」
ゆっくりと立ち上がると王座がハラハラと砂のように消えた。

「さあやろうか。剣を持つのはどれだけぶりだろう。かかって来い。」
虚空から王者の剣を取り出した。帝剣。紫色をした細長い剣。薄く、軽く、何よりも硬い。

「貴様も出せネインアーレ。情報体でいくらでも剣は出せるんだろう?」
「……了解。」
同じく虚空から取り出したのは、帝剣と変わらぬ形をした白銀の剣。

「部下の力量を確かめるの皇帝の務めか。かかってこい、ネインアーレ。」
かつて前線で猛威を振るった帝王の剣が、燦々と輝いてアーレを照らす。対して白銀の剣は淡々とした冷たさを放ち、触れるものを凍らせるような雰囲気を場に与える。

 アーレは剣身に触れ、鞘から抜くように剣を振り抜いた。皇帝は、受けずに躱した。流れるような足捌きでアーレと間合いを詰めれば、高速で帝剣が振り下ろされる。
 アーレはやむなく自身の位置情報をずらし、移動を図った。

「もっとソレを使いこなせネインアーレ!まさか、朕の力を借りて時を逆巻きにした程度で使いこなした気になってはいまいな?」
振り下ろされると思われた剣はまるで意味のない太刀で、続けて本命の下段からの斬りが炸裂。アーレは苦し紛れに剣を据えて防御する。

「もっと楽しませよネインアーレ。こんなにつまらぬ児戯に時間を浪費させる気か?」
「………まだ。」
表情筋は動かさない。動かして仕舞えば、勘のいい皇帝にはバレてしまう。

 これは分の悪い賭けだ。剣を交えれば触れ合う隙も作れる。そこで、魔法少女に関しての記憶だけを書き換えることができれば。
 咄嗟に感情が表に出る可能性と、皇帝へ入れる一太刀。今回の難題だった。

 皇帝の言った通り、情報操作は十全に使いきれていない。加えて戦闘の最中、皇帝に直接情報をかけることは不可能。

 アーレは帝座を埋め尽くすように情報を並べた。白銀の剣が、約1000本。空中に浮かんでいた。

「射抜け。」
ひゅんひゅんと風を切り裂く音がそこらで鳴り、皇帝は剣を掲げた。もう片方にいつの間にか握られた翡翠色の剣は、輝く皇帝の瞳とリンクしているかのように光を放つ。

 皇帝はその1つひとつを見極めるように、観察した瞬間に腕を振るった。人間の知覚能力を遥かに超えた剣の動きが1000本の剣をいとも容易く斬り伏せていく。

「面白い……!」
降り止まぬ剣雨の中に、アーレがいた。重力に伴って落下したアーレを斬り伏せた瞬間に別の剣にアーレが移り、気づく。

 この剣の雨全てがアーレであってアーレでないことに。

「空間を呪属性に変化させたか。なかなかやってくれる。」
不敵に笑った皇帝の剣は速度を落とさない。たとえ呪いが発動していても。

 アーレは更に情報を加える。返還と爆破。剣の数をまず倍加し、この部屋全てに情報を加え力を加えた分、力を返還する。
 剣が破壊される度に爆破が起こるようにも設定し、皇帝に地獄の雨を降らせた。

「その能力は役立つな。今後も使え。」
腕を振りながら命令する。それだけの余力を残している。その調子のまま、本当に全ての剣雨を斬り伏せてしまった。

 皇帝の強さを再認識させられただけだった。
 しかしそれではいけない。魔法少女のためにどうにかして一撃、加えなければ。ダメージを期待しているわけではない。接触を期待しているのだ。

 アーレは最後の一瞬まで諦めず、背後の床から剣を生やして移動した。

「グッドゲームだ、ネインアーレ。」
白銀の剣が、皇帝の背中に当たっていた。悲しいことに傷のひとつもつかないが、確かに当てたのだ。

 喜色で溢れる脳内を情報で押さえつけ、アーレは勝ちを確信した。
 情報を忍び込ませ、魔法少女の記憶を覆う。

「……まいった。」
心では微笑みながら、負けの宣告をした。

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 最近流行りの推○の子の漫画を拝読させていただきました。金銭事業により無料アプリでの初回無料に頼らせていただきましたが、その、まぁなんというかすごいですね。
 内容がどんどん闇深くなってきて……癒し成分が欠如していく感覚に……面白かったですけどね!とっても素晴らしい作品でした!(あとがきに書く内容ではない)
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