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15章 魔法少女と帝国活動記

487話 魔法少女はてんてこ舞い

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 訓練が終了し、とうとう最後の一仕事がやってきた。

「初めは見ていてください。無駄に動かれても困りますので。」
「はぁ……」
メイド達が一斉に散らばった。武器を隠すためというロングスカートとエプロンには今、掃除用具が大量に詰め込まれている。

 こんなひっろい帝国府を掃除なんてもう、途方もなさすぎて死ぬんだけど。

「1つ、無駄話を宜しいですか。」
「仕事中ですよ?」
「見学しながら聞けば良いでしょう。」
ズバッと両断された。まぁ確かにとしか言えないのが辛いところだ。

「フィフィアに懐かれているようですが、どうやったんですか。」
「え、知りませんよ私が聴きたいです。ご飯食べようとしたら手招きされたんで、付き合っただけです。ほんと。」
訝しむようにジロジロ見つめられる。嘘言ってないって。

 私が1番聴きたい謎だよそれ。特段私は気に入られるような……そういう態度で決める人じゃないかぁあの先輩……

「多分。」
声を出すと、案外声量が出て自分でビビる。

「すみません……。あの先輩、きっと態度とか見た目とか役職では判断しないんですよ。直感というか、その人を見ている、というかですね。」
「抽象的ですね。」
「先輩が抽象的な人だからじゃないですか?」
「まぁ、それもあるでしょうね。あの方、ここに来てから負けなしなのです。圧倒的な強さ。それこそ、軍人になるべき強さ。」
アングレア指揮官が強く考え込むように俯いた。

「しかし言ったのです。『帝国の光に陰は合わない』と。あの方は、帝国も帝国府もどうでもいいようです。」
「そうでもないんじゃないですか?」
視線を上げて言う。そこには、楽しそうに天井の隅に溜まった埃の塊を丁寧に掃き出していた。

「少なくとも、無関心ではないと思いますよ。」
「そうですか。」
一通り無駄話を終え、指揮官はリボンを締め直す。

「ここからは一気に片付けますよ。」
「え?」
「働いてください。給料天引きしますよ。」
さっきの無駄話のトーンから一点、朝のように叱咤するような声音で職権濫用された。

 私って、何のためにここにいるんだっけ。

 目的を見失った。

『そもそもここにいる目的とかないけどね』
なんか、色々失った気がした。


 もうすぐ夕暮れだ。なのにまだ清掃は続く。朝っぱらから働いて夜になっても就業しないといけないとか今の就業時間短縮の世の中に合わないクソ会社だ。と言いたいけどここは異世界。まだ産業革命も来てなさそうな中世ヨーロッパ。
 魔力があるんだからもっと頑張れよ、と思う。

 科学を研究してよこの世界の人達!魔法で火出せるから、じゃないよ。科学で火を生み出して魔法でさらにっていう手もあるじゃん。

 と言う与太話は時間の無駄だ。

「ラストスパートです。ここの窓拭きを全て終わらせ、本日の業務を終了させましょう。」
帝国府でどんちゃん騒ぎすることは流石にできないので、みんな心の中で叫んで窓拭きに移る。私は、みんなの届かない外側を任された。

 空中歩行ってこの時のために作ったわけじゃないんだけどなぁ。
 まぁ、いいや。

 今日は一刻も早く寝て疲れを癒したいっ!

 水魔法で一気に片付けたいけど、そんなことしたら帝国府が大洪水……やって破壊しようかな。
 いや、それしたらアーレの作戦が台無しだ。

 考え直し、腕に力を込める。明日、筋肉痛を覚悟して臨む。

「水洗剤水洗剤水洗剤水洗剤水洗剤水洗剤水洗剤水洗剤水洗剤水洗剤水洗剤水洗剤水洗剤水洗剤水……こっち水交換お願いします!洗剤の補充も!」
巨大な窓をピッカピカに磨くには、それなりの量の洗剤が必要だ。私は死んだ目で、淡々とこなしていく。

 帝国府の威厳を保つためと言われても……これは広い。っていうかメイドって絶対ここ以外にもいるよね。ここ絶対「区画B」的なポジションの奴だよね!?

 そんな雑念の山を振り払い、全てを磨き上げること体感天文学的数値。綺麗な夜月が帝国府を照らし、その頃同時に作業が終わった。

「お疲れ様です。特に、セレスト。初日からどうなることかと思っていましたが、よくやりました。」
「は、はぃ……」
疲労によりグッダグダな返事をし、「しゃんとしなさい」と背中をチョップされた。

「いふぅ……っ」
「変な声を出さないでください。」
「いま、せすじ、しんでるん、で、す……」
周りからくすくす声がする。なにわろてんねんと言いたかった。腰を曲げながら作業していたせいで、そんな気力はないけど。

 疲労軽減はあっても、体勢による痛みは改善できないらしい。

「……まぁ、みなさんはしっかり夕食と睡眠を摂ってください。明日の業務に、支障の出ないよう。では、解散とします。」
手を叩き、それを合図にメイド全員がフッと息を吐き出して気を緩めた。ちなみにここは完全週休一日制だ。

 私は完全週休三日制の会社に入りたかった。せめて二日は欲しかった。

 でも文句は言えない。そんな権限ないし。

「後輩、一緒に夕飯食べない?」
ツンツンと肩をつつき、振り返るとほっぺを指でつかれるというクソみたいなことをされた。ほっぺが凹んだまま、「別にいいですけど」と答えた。

「反応薄いですねぇ。」
「何に反応しろと言うんですか。こんなしょぼいやつに。」
「そんなしょぼいのに引っかかったのは後輩じゃないですか?」
いちいちムカつく返しに、ちょっと反撃とばかりに口を開く。

「先輩、何で後輩の私に敬語なんですか?雰囲気と相まって気持ち悪いんですけど。」
「直球な悪口は受け付けてません。」
「受付を破壊してお届けするので結構です。」
「実力行使しないでもらえます?後輩のくせに生意気ですよ。」
「生意気なくらいが可愛いって言うじゃないですか。」
意外に弾む話。と思ったけど、これは会話のバレーボールだ。キャッチボールなんて成立してない。

「で、何で先輩は敬語なんですか。」
横目で見て聞く。

「癖ですね。ワタシより下の人の関わり皆無ですし。」
「先輩の性格髪とリンクしてそうなのに意外ですね。」
「遠回しにいじられてる気しかしないけどワタシは先輩だからそのくらい受け止めてあげます。」
寛大な心(?)を発揮したところで、食堂に着く。ここのご飯美味しいし楽しみだ。

「そこじゃないですよ。」
「え、ここ食堂じゃ。」
「メイドは全員帰るんですから、もういませんよ誰も。」
「……まじすか。」
「まじす。」
お腹の音が虚しく響いた。

「ご飯、いきましょうか。」
先輩に引かれ、私は帝国府から出た。


「ここ、酒屋じゃないんですか。」
「ここぐらいしか飲食店なんて空いてませんよ。」
私服に着替えた後、私達は正真正銘の酒屋の前にいた。私はローブだ。

「私も未成年ですけど。」
「酒を飲まなきゃ成年未成年無関係ですよ。」
私の言葉を無視して入っていった。

 酒場とか酔っ払いに絡まれる確率100%でしょ。(偏見)

「テキトーなのお願いします。」
「……あのお客様、毎度申し上げますが注文をしてください。」
「これ毎度なんだ。」
呆れて顔を手で覆いながら、席に座る。なんかどっかで見たことある骨付き肉とか唐揚げ的なやつから味の濃そうな奴が次から次へと運ばれる。

「いつもこんな感じなんですか?」
「そうなりますね。」
「……ほんと敬語やめたらどうですか?」
「後輩がそこまで言うならやめてあげますよ。」
「やめてないじゃないですか。」
言っているうちにビールが来た。先輩はジョッキを鷲掴むと、一気に煽った。

 ちょいちょいちょい!何呑んでんのこの人!さっき呑まなきゃセーフみたいなこと言ってなかった!?

「はぁ……生き返るっ!」
「生き返んなそのまま地獄にでも潜っててください!」
「何ですか藪から棒に。」
「さっき呑まなきゃ大丈夫的な話してたじゃないですか?なんで呑んでんですか!」
「ワタシ成年ですし。」
もう一度煽ってからそう言った。運ばれた完全につまみな皿から見てるだけで塩辛そうな奴を口に運ぶ。

「……年齢より、若いっすね。」
「そんなこと言ってもなにも出ませんよ。」
なんか、驚愕の事実を知ったようで気分が乗らない。この顔で成年かぁ……

 この世界の人達の体ってすごい。だって実年齢より若く見えるし胸はでかいし可愛いし。遺伝子バグってる。

 ヤケクソで肉に食らいつき、憂さ晴らしをしてやった。

———————————————————————

 最近生きる意味とはなんぞやと考えてし始めています。面倒が天元突破してます。
 まぁ最低でも次の冬までは頑張って生きますよ。どっかの思春期症候群のアニメの映画やりますし。
 その後も別に死にませんけども。
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