魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

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15章 魔法少女と帝国活動記

480話 不可抗力って恐ろしい

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 前回までのあらすじ。
 魔法少女ループ!ネインアーレ救う!人神人里へ降りる!ループ再開!レンの捕縛!魔法少女in帝国!人神転移!

 という事で、人神ことエディレンは今魔法少女の目の前にいた。その魔法少女はというと、見慣れた格好ではなくクラシカルなメイド服。絶妙な着こなしだ。

 何故こんなところにいるか。それはなんやかんやあった挙句少しズレた位置に転移したためである。

「其方の格好こそ、おかしくないか?」
「ほらアーレ、変でしょ?神が変って言ってるんだからこれは変に決まってる。」
「それはそれこれはこれです。とても可愛いです。」
三者三様の反応を見せる。

 というか何故か神がメイド服に負けている。話題性に劣っているというのか。

「そもそも、ここどこなんだ?余は帝国府に用があるんだけど。」
「帝国府のそばにある寮です。」
「其方は?」
「帝国軍の諜報・防諜機関でリーダーをしていますネインアーレ。今はアーレです。」
「ふむ、状況が全く飲み込めない。」
瞑目し、顎に手を添えて頷いてからのそのセリフ。なるほど分からんというやつだ。

「アーレ、私も説明とか苦手だからお願い。」
「承知しました。」
アーレは椅子を生み出すと(空間内に椅子の情報を追加した)こちらにどうぞ、と手を差し出す。

 よく分からないがここは一応乗っておく。「ありがとう」と一言の礼をした後、腰掛ける。

「ソラさんはベットに座ってください。わたしは立ってますから。」
「なんかごめん。」
ギシっと音を立てながら、両手を布団について座る。あ~、と疲れたように天を仰ぐ。

「まずは……」
説明が始まり、聴覚細胞を活性化させる。魔法少女が関わるということは、そういう事だ。

 魔法少女は《特異者》……いや、それは適切でない。言うなれば改革者。この世界を動かしていく存在。この世界を巻き込んで変革を巻き起こす、そんな因子を……遺伝子を持っている。

 アーレは1から話を始めた。
 帝国軍の諜報活動の一環で、100%安全な情報収集のために時間を巻き戻していたことを。実際には全ての物体の動きを逆再生させる事で、過去の再現をしているに過ぎない。
 それを繰り返す内に魔法少女に出会い、影響を受けないことを知り抹殺しようとしていた際に彼女に救われたとか。
 そして今後の方針も共に語り、話を終えた。

「大体は理解した。が、時間を戻すだって?」
「時間ではなく形を戻しただけです。事実、時間は進んでいます。「実質」時間が戻ってるわけです。」
「オーケー理解した。余にはそんな魔法は使えないが、ヴァルならいけそうだ。」
「ヴァル?」
合間から魔法少女が疑問符を打ちつけてきた。エディレンは「魔神のことだ。其方はまだ会ったことないんだったな」と答える。

「魔神ねぇ。どんな感じの人?いや神か。」
「間違いではないよ。元は人と魔物……つまり魔族に近しい人種のハイブリッドだ。」
「へえ。」
「見た目は人だ。感性がバグってるだけの。」
頭にTシャツ姿のヴァルディートを思い出す。あれを神と思える人はいない気がする。

「しかしまぁ、偶然にも余と2人の目的は一致したというわけか。」
「そういえば、人神は何で帝国府を?」
「余は元々、世界の崩壊を阻止するために存在するんだ。このまま静観した時の、世界の損失を考えると帝国は潰さなくてはならない。」
しかつめらしい表情を作ると、自分の手を見た。

 手前味噌ではあるが、人神は他の神や創滅神を除けば最強と言っても過言でない強さを持つ。そのため、何をするにも前線でなければならなかった。
 過去の大戦を思い出す。人類史から消された、今では誰も知らぬその戦。

 この手には同胞の、敵の、あらゆる血が染み付いている。そんな汚い手だからこそ、触れらるものがある。壊すことが許される。

「其方は王国の人間なのか?」
「もちろん。」
「アーレの方は?」
「ソラさんがイエスなら、わたしは従います。」
「なら、其方たちが罪を背負う必要はない。これは、今の時代の人々には荷が重い。」
魔法少女は訝しげに眉を曲げた。

 元々は四神の仕事だ。創滅神への叛逆、神国が関わるのなら必然的にそうなるだろう。
 帝国の排除はそのついででしかない。他者が首を突っ込むべきではないのだ。

「神に抗うなら、四神が必要だな。余が行くのはめんどうだ。行くなら其方が行ってくれ。ちょうどいい、魔神と会ってきたらどう?」
サラッとやばいことを言い退けるエディレン。それでもエディレンには仕事がある。内に入れたのにわざわざ外に出る必要もあるまい。二度手間だ。

「私まだ仕事あるんだけど。」
「諸々が終わった準備段階で行なってもらう。今すぐやれというわけじゃない。自由に動けるようになった段階で、動いてもらう。」
「せっかく自由になるのに?」
また眉を顰めた。確かに、帝国府で動けるようにするための細工なのに、本末転倒だ。

 それに対してエディレンは笑う。

「都合がいいじゃないか。そのほうが。」
「なにがよ。」
「人神は集まったんだ。残りの3人もどうにかなるさ。」
「物凄い流れに乗らせにくるじゃん。え、私めんどくさいしやりたくないよ?」
誰も話を聞いてない。一度手元に渡った爆弾を渡す相手が誰もいないことに気づくと、魔法少女は呻き出す。

 これで対策は万全。今度こそ、創滅神を滅ぼすのだ。

「……もういいや。」
諦念満載の一言が、悲しげに部屋に残る。

 これで決まりだ。
 なし崩しに協力することになってしまったが、少しでも可能性が高い方を選ぶのは何もおかしくはない。

 すると、魔法少女が小さく手を挙げる。

「一応私も、創滅神とのあれこれに手、出したいんだけど。」
当然のように放たれた言葉に、エディレンは驚いたように目を開く。

「其方は理解しているのか?これは創滅神が起こす遊びなんかじゃなく、本当の戦争なんだ。」
「知ってる。でも私、先代の龍神に託されたし。」
思い出したように言って、続ける。

「そんなめんどいことするつもりなかったけど、この世界割と好きだしさ。」
「それなら、わたしもお供します。」
「これだけは四神の問題だ。余たちが、今世に持ってきてしまった過ちだ。」
それを聞いた魔法少女は嘆息と一緒に肩を竦める。

「めんどくさいなぁ。そのくらい頼ればいいじゃん。あとさ、私も一応この世界の住人になってるわけなんだから、権利くらいあるよね。」
魔法少女は立ち上がる。

「あーもーいい。確か、皇帝に挨拶するんだっけ?なら早く行こう。私もう寝たい。ループ疲れた。」
「了解しました!今すぐ!」
「ってことだから、また。」
2人は退室した。椅子に座るエディレン1人が残され、一気に静かになる。

「自由すぎるだろぉ……」
1人頭を抱えた。

 魔法少女の言うことには、一理ある。
 そもそも四神の起源は創滅神に不満を抱える者の集まりだ。今の時代の人間にもそれは適応されるべきだ。

「にしても、あのジジイが人間に頼み事とは……」
下を見る。今頃地獄にでもいるであろう堅物を想像し、らしくないなと失笑する。

「五神になる日もそう遠くなさそうだ。」
あの少女に素質があるかは不明だが、理に触れられる彼女ならば、あるいはと。

 彼女の触れる場所全てが変革の可能性を秘めている。

———————————————————————

 今回は帝国の戦争という一大イベントのため、様々なキャラを介入させるべく執筆に取り組んでおりました。その結果空は主人公だからいいとして、アーレ、ネイファ、エディレン、レンと重要人物が増えました。
 百合乃はいつか来ます。
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