魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

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15章 魔法少女と帝国活動記

467話 魔法少女は回れ右

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 森だ。360度どう見たって森だ。魚眼レンズや定点カメラを使おうと森だ。
 魔物を探すため、私達は歩を早めて山道を踏み締めていく。

「Bランクともなると姿も見ないね。」
「低ランクは見るんですけど……」
身を屈めて横に続く百合乃がそう溢し、首を回す。

 高ランクになると低ランクの人のために雑魚の魔物はできる限り討伐しないようにというルールがあるらしい。
 厄介なことだ。

 今回討伐するのは白鳴という白っぽい虎だ。その上位種に白虎というのがいるらしい。「びゃっこ」と思いきや「はく」という読みらしい。

 というか、カタカナじゃない魔物なんて初めてもしれない。
 今度理由聞いてみよう。

「白鳴の毛皮、ですか。上質で、貴族の家のカーペットや布団になるそうですけど……なんでそんな嗜好品のためにわたしはこんなに苦労しなきゃいけないんです?」
「お金もらってるからだよ。」
正当な対価だと頭にチョップし、先を急ぐよう指示する。

 場所は竹林付近らしい。交易のために馬車を走らせていたら発見した。討伐求と。

 久しく竹林の村に顔も出してないし、暇があったら出してみよう。当面の間は普通に仕事して、またいつか忙しくなる日に備えよう。

「空空空さん。」
「空が多い。」
「空、が青いですね。」
「若干曇ってるけどね。」
「青と空。青柳と空。青柳空。つまり私と空は結婚していると言っても過言ではn」
「過言だよ。過言すぎるわ。」
他所から見たら奇妙な会話も、私にとってはなんの変哲もな日常会話だ。それはそれで怖くもあるけど。

 そして百合乃や。私は百合に萌えることはあっても、百合になった記憶はないぞよ。

「百合っていうのは現実であってもおいしくない。二次元になって輝くんだよ。」
「なんですその実写否定理論。空は実写化映画は見ないタイプです?」
「見ないね。二次元だからこそ許せる展開を三次元でやられてもと。日本人顔に多彩な髪はダサい。」
「韻踏んでます?」
少し前に韻を踏ませてきた私の影響が少し残っていた。私が多いのも困りものだ。

『私がいなかったら私はとっくの昔にお陀仏だったことをお忘れなく』
『そうだよ!誰のおかげで原素を獲得したと思ってるの?』

 はいはい、そこは感謝してますよ。
 さあみなさん、私達に感謝の言葉を。

『ありがとーございました!』
『Dを仲間にするんじゃない!あとその小学生みたいなありがとうの言葉やめい』
こういうところなんだよなぁ。と、心でボソッと呟く。きっと聞こえてるであろう。なのになんで言ったかって?言った方がストレスにならないから。

「私は原作至上主義だからねえ。漫画原作なら漫画しか読まないし、ラノベ原作ならラノベしか読まない感じかな。アニメは別腹。」
「わたしは百合百合しければ。」
にっこりはなまる、両腕で丸を作る。手の形が三角だから、腕の丸か手の三角か判断に迷う。いや、百合乃だから迷わない。

「いやこれなんの話。」
ぺし。百合乃が私に攻撃を仕掛けた。

「さーて百合乃はやる気みたいだし、白鳴の元へ一直線にしてあげよう。」
シュッシュっとボクシングポーズ。百合乃は「やめてください!暴力反対!」と慌てふためきながら腕を盾にする。

 おっと、そんな貧弱な盾でどうやって私のパンチを防ごうというのかね。
 百合乃に向かって数歩進み、右ストレート。

「おりゃあ!」
「ぬぐっ!?」
はせずに、弁慶の泣き所にキック。そのまま軍服の襟を掴んで放り投げる。その先は、もちろん1つ。

『おーらいおーらい~。そこにそれっぽい反応ありー』
『百合乃の実力を確かめておくいい機会だな』
『おー、鬼畜なことするね私』
ぶっ飛んでいく百合乃の行く末を、手で日を遮りながら確認する。

 おー、飛ぶねー。追加で飛ばさなきゃかと思ったけどこれでいけそうだ。

 百合乃目線から見たらどうなんだろうとか、他人事で楽観視する。
 というか、落ちたところで百合乃のステータスなら余裕だ。

「あれ、これじゃ私反応見れなくない?」
結局私も百合乃を追いかけてダッシュした。追いついた時には、なんか囲まれていた。

「見てないで助けてくださいよ!」
サーベルを構えた百合乃が、こっちに懇願するように視線を向けた。4匹、白っぽい虎に襲われている。

「木葉舞木葉舞木葉舞ぃ!」
サーベルを遮二無二振り回す。適当に振ってるようにしか見えないのにちゃんと技なのか、と思う。

 もうやけになってるし。ちゃんと戦ってみてほしいんだけどなあ。

「ファイトー。」
「ファイトじゃありません!でも頑張ります!」
輝く瞳を私に向け、デカい虎にサーベルを振り下ろした。それは地面に突き刺さった。

「烈波!」
波動みたいなのが伝い、直撃した。血液シャワー。白鳴の断末魔が響き渡り、残り3匹は後ずさった。

 うおっ、威力高……っ。
 腹に一撃で即死とか、こんなの当たったら私でも結構痛いんじゃない?

 魔物を即死させる攻撃を「痛い」と形容する私も私で相当だけど、異世界に染まるのならこれくらい慣れなくては。

「わたしだって寝てたわけじゃないんですよ!」
百合乃が消えた。すると、真反対の白鳴の背後にいた。

「縮地、です。」
サーベルが仄かに緑光を発した。

「灯柳。」
技名を宣言した時には、胴体が真っ二つ。綺麗に捌かれてしまった。臓器がこんにちは。

 気持ち悪……っ!中身見せないでよ。目に悪い。私の脳髄にこの光景を焼き付けさせないでほしい。

 剣のデメリットは、こういうところだ。

「ふっふっふっ、あと2匹ですよ……次はどの子から相手ですか?可愛がってあげますよ……」
「怖いよ、怖いよー百合乃。子供が見たら確実に泣く笑顔だよそれ。」
陰のある薄ら笑いにゾッとする。目覚めさせてはいけない何かを目覚めさせてしまったかもしれない。

 ほら、白鳴も怖がって唸っちゃってるよ。え?これは威嚇だって?似たようなものでしょ。

 しかし白鳴も、やられてばかりではないみたいだった。その前足を空中に置くと、立ち上がったのだ。

「空歩いちゃう系です!?」
「さすがBランク。一筋縄じゃいかなそうだね。」
「空も手伝ってくださいよ!」
「白鳴って魔法耐性があるらしいから無理カナ。」
「いける口ぶりじゃないです?それ!空の魔法が効かないならどんな攻撃も通りませんよ!」
右手にいつの間にか、スポーツ観戦のメガホンを持ってカンカンしながら声を届ける。

 フレーフレー百合乃。頑張れ頑張れ百合乃。

 棒読みだ。

 2匹の白鳴は器用に空を舞い、空の上から空弾を放ってきた。そういう特殊能力持ちらしい。タンクが必要そうだ。

 けれど百合乃は、それを回避する。魔断も衝撃断使わない理由は、魔力のこもってない、さらに他者の力によって働く運動ではないためだ。

 百合乃のスキルは謎が多いから実験をたまにするんだけど、衝撃断、これは結構穴がある。
 重力によって動く自由落下の衝撃とか、人の力の加わってない風やら電気やらで働く衝撃は消せない。
 誰かが真下に向かってボールを投げた場合、純粋な落下運動になるまでは効果範囲内だ。

「こんな特殊な相手聞いてませんよ!」
白鳴はこれが効果的だと気付いたのか、攻撃方法を変えない。ゲームじゃないんだから、攻撃方法がランダムなんてあるわけない。

「もう、こうなりゃとことんやってやりますよおおおおお!穿殺しいいいい!」
逃げる足に急ブレーキをかけ、土に足跡を強く残す。そのまま力を前に押し出し、光るサーベルを突き出した。《醒華閃》穿殺し。一撃必殺、堅実の剣だ。

『私、そろそろ抜かれそうな気がするんだけど気のせい?』
『それは真っ当な考えだと思う』
『さすがの私もこれには正直驚いたな』
『びっくりド○キー!』
呆然と柱のように太い光を眺める。心はいつも通り騒がしい。その呑気さを分けてほしい。

「ふぅ……勝利、です!」
Vサイン。光が消え、あたりには何もなくってから百合乃は腰に手を当て声を上げた。

 ……って、木数本消滅してる!?白鳴も……

「何やってんの?素材ごと消滅させたら何も残んないじゃん!」
「空中戦をさせた空が悪いんです。」
「もっとやりようあったでしょ?」
素材を回収しつつ、百合乃に迫る。落ち着いてと両手で制してくるが、気にしない。

「ほらっ、ほら!あそこに変な建物が!」
「気を逸らさせようとしない。」
「本当なんですってぇ……」
渋々振り返る。どんな古めかしい建物か小屋が建っているのだろうと思い、視界に入れた。

「……帰ろう。」
「……そうしましょう。」
それを見て、瞑目した。スゥーっと息を吐き、2人で見なかったことにする。

 こんなところにメタリックな丸形施設なんてなかった。そう、何もなかった。

 再生創々で隠すように木々を再生させ、知らぬ存ぜぬを突き通す。

 触らぬ神に祟りなし、だ。

 私達は、白い虎2匹を戦利品に街へ戻っていった。

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 最近弛んでいる気がするので気を引き締めたいんですけど、どこかに私を叱ってくれそうなバニーガールの先輩っていたりしませんか?しませんよね。
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